アギトが蹴る!   作:AGITΩ(仮)

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お気に入り登録200件突破記念としての番外編です!

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お気に入り登録200&300件突破記念
番外編 覗き兄弟 其の壱


「……こっちは異常なし」

 

「了解」

 

日は既に落ち、辺りは漆黒の闇と化している。そんな夜に、虫の騒がしい鳴き声以外の声が聞こえてくる。

 

「…よし、行くぞコウタロウ」

 

「了解」

 

その声の主達は言わずもがな。

フードを深く被った相棒・ラバがゆっくりと、俺達以外に聞こえそうもない音で、その扉を開ける。

既に赤いのれんは潜った。だから俺達の現在位置は脱衣所だ。脱衣所には小さな灯りが灯してあり、その小さな灯りでも、この脱衣所を見渡すことは十分できた。

その奥には大きめの扉があり、中からはナイトレイド女子メンバーの騒ぎ声が聞こえてくる。

 

そんな声を余所に、俺はカゴに畳んで入れてある下着を丁寧に取り出す。

 

「…見てよラバッ‼︎シェーレさんの下着って、意外に大人っぽくてエロいぞ‼︎」

 

俺は声を潜め、手に持ったパンツを被りながらラバの肩を叩く。

 

「おおっ‼︎……って、何やってんだよ⁉︎そうじゃないだろ!」

 

ラバは一瞬鼻血を垂らしたが、気迫迫る勢いで鼻血を吸い込む。

 

「そうだったね…今回の目的は……」

 

「「正面からの覗きっ‼︎」」

 

今まで俺達は数え切れない程の覗きを繰り返してきた。岩陰から覗いたり、動物の真似をしたり、ジャンケンで負けた奴を囮にしたこともあった。だが、いつもどんな作戦で挑んでも、やはりどうしても失敗してしまう。

何故だろうか?

俺達は、自らの煩悩をフル回転させ考えた。そして、ある一つの結論が生まれた。

『最初から警戒されてる上、姐さんの野生の勘があるんじゃバレて当然』と。

だが、こんなことで諦めるような俺達ではない。色んな場所から覗きが行われる。しかし、裏を突いて、正々堂々と覗けば、チャンスはある……と思う。

思いついたら即実行。

それが俺達、覗き組の信条だ。

 

「まぁ、このパンツは貰っとくか……」

 

俺は風呂へと続く扉を開けるラバに続く。もちろん、頭に被ったままで。

 

「あぁ、今日こそは皆の生乳拝んでやるぜぇ〜」

 

「俺達のコンビは、完全調和《パーフェクト

ハーモニー》だね」

 

俺達は密かに抱負を言い合い、ゆっくりと扉の中へ入って行く。

この風呂は露天風呂だ。普通ならば、側面から攻めた方がチャンスがあるが、最初から警戒されてるなら意味がない。

だが、今日こそは……

 

まずは岩陰に隠れる。

辺りは濃い湯けむりに覆われており、視界は絶不調だ。が、見えないと言う訳でもない。現に、岩に大穴を開けた浴槽が確認できる。中に入ってる人を選別することはできないが、シルエットで大体の人数は把握できる。

 

「……一、二、……あれ?少ないよ?」

 

ナイトレイド女子メンバーは、アカメ、姐さん、マイン、シェーレ、チェルシー。ボスは今、革命軍本部に出張だから……。にしても浴槽に二人って少な過ぎではないか?

 

「……しまった!フェイクだ‼︎」

 

ラバは覗きを行っているということさえ忘れ大声で叫ぶ。

 

「やっぱりお前らか」

 

「…そ、その声は……」

 

俺はゆっくりと、自分が隠れている岩を見上げる。

そこには、いつものセーラー服を着込んだアカメと、指を鳴らしている姐さんの姿があった。

 

「おーい、掛かったぞぉ〜‼︎」

 

姐さんが浴槽にそう呼びかけると、二人が風呂から立ち上がる音がする。

 

「やーい、残念でしたー」

 

その囮役の二人は、チェルシーとシェーレだった。二人はタオルできっちりとガードを固めている。

 

「すみません。騙す様な真似して……あれ、それ、私のパンツ……」

 

シェーレさん?なんでそんなにメガネが曇っていても分かるんですかね?

 

「……おい、コウタロウ」

 

「……ねぇ、コウタロウ」

 

「ひっ⁉︎」

 

背後からドスの利いた声が俺に降りかかる。

 

「なんでシェーレの下着を被ってるの?」

 

阿修羅のオーラを纏いながら、チェルシーが問いただしてきた。

そのオーラに呑まれ、俺は尻餅をつき後ずさる。

 

「すまねぇコウタロウ‼︎」

 

「…あっ!待ってラバ‼︎」

 

ラバが俺を見捨てて脱出しようとする。

 

「……アカメ。肋骨三本」

 

「分かった」

 

姐さんの冷静な指示により、アカメが動き出す。その速さを活かし、ラバの前へ出ると、村雨の鞘でラバの胸を三度突く。

 

「ギヤアアアアアァアァアアア⁉︎」

 

骨が砕ける音って、意外に爽快なんですね。

 

「……ねぇって、聞いてるよ?」

 

その冷めた声で、俺は現実という名の地獄に引きずり戻される。

 

「……いや、あの、こ、これは偶然でして」

 

「へぇ、偶然でシェーレのパンツを被るんだぁ」

 

「痛い痛い痛い‼︎す、すみませんでしたああああぁぁああ‼︎」

 

姐さんにアイアンクローのまま持ち上げられる。脳を締めつけられるようで、正気を保っていられそうにない。

……あぁ、どうせ締めつけられるのなら、別の場所が良かったな。

なんておかしなことを思考してしまう。

 

「コウタロウ。お仕置きだ。しっかり反省しろよ?」

 

「……へっ?ちょ、まって‼︎」

 

「ふんっ‼︎」

 

「いしだたみッ‼︎」

 

アイアンクローのまま、俺は石畳みの地面へと、頭から叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

♢ ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 

 

 

 

 

「……ここは?」

 

「よかった!起きたか‼︎」

 

コウタロウの周りに一斉にナイトレイドのメンバーが集まる。

あの覗き事件から3日。その3日間ずっと彼は眠っていたのだ。

 

「……しい」

 

「ん?なんて言ったんだ?」

 

タツミはコウタロウが放った言葉を聞きそびれのか、もう一度聞いてくる。

 

「ここは…眩し過ぎる」

 

そう答えたコウタロウの目はやさぐれており、何もかもに絶望したかのような表情をしていた。

 

 

続く




改めまして、お気に入り登録200件、本当にありがとうございます!

この作品を読んでくださる方々やコメントや感想を送ってくださる方々、評価をつけてくださった方々、そして、お気に入り登録していただいた方々。

本当にありがとうございます‼︎
これからも『アギトが蹴る!』精進して参りますので、これからもよろしくお願いします‼︎

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