MUV-LUV ALTERNATIVE 救世主になれる男   作:フリスタ

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Side マサキ

 

 格納庫に吹雪が用意されていた。既に新型OSのXM3を搭載してあるものだ。他にもクリスカとイーニァの二人で乗る一つの機体Su-37UB(チェルミナートル)も用意されている。当然こちらにもXM3が搭載されている。

 そして、もう1機がシートを被される様に隠れている。足元すらも覆われておりシートの中の機体は窺い知れない。しかし、タケル達の207小隊の吹雪に挟まれるように配置されているため誰もが「あぁ、訓練兵が小破……いや大破させたか?」と思われるような感じに見える。だから隠されているのだろうと……誰だって思う唯依姫だって思ってる。

 

 それはさておき、今日はXM3の一部公開デモンストレーションの日だ。今のところXM3という新型OSの内容を知っているものは少ない。俺の周辺の人は整備したり、乗ってテストしたり、A-01部隊のような特務部隊は先に乗っているから当然知ってるけど、この基地の全ての人間で言えば8割ぐらいは内容を把握してない。「新型のOSがあるらしいよ」とか「今よりも操作大変なんだってさ」とか「桐島、部活やめるってよ」なんて感じの噂程度だろう。最後のは関係ないけどそんな感じだと思う。

 

 俺はシートの中の機体を最終チェックしてから、機体から降りてシートから出るとタイミングよくタリサ達がやってきた。このシートの中身のこと聞かれるかなぁ、いやだなぁ怖いなぁ怖いなぁと思いながら、ふっと笑顔を作り精一杯誤魔化そうとした。しかし、その意味もなさそうで、タリサ達は強化装備を着てやって来た。

 

「マサキ~。アタシ達も参加していいんだよな?」

 

「へ?……あぁ、うん。頑張ってね」

 

「任せてくれよ。マサキを馬鹿にしやがった奴等の顔を驚きで変形させてやるぜ」

 

 変形って……どうやるのよタリサ。

 

 演習場には既にA-01部隊が吹雪にて待機している。いつもの不知火ではなく吹雪だ。彼女達もデモンストレーションに参加してくれるようだ。夕呼先生の差し金だ。しかし……本当にやっていいのかな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――あれはぁ、昨日の夜のぉ、ことじゃった~。

 

 

 

 

「海堂、明日のデモンストレーション。アンタ参加しなさいよ」

 

「え? 何でですか?」

 

「アンタA-01部隊にただの整備兵……OS担当者ぐらいにしか思われてないのよ。開発者とすら見られてないのよ? ちゃんと自己紹介してないでしょ?」

 

「あぁ、してませんね。でも俺も一緒にXM3動かすだけですか?」

 

「んなわけないでしょう? 派手にやりなさいね」

 

「はぁ……派手にですか? どういう風に?」

 

「いい? ―――――って感じよ」

 

「はぁ!? 怒られますよ!!」

 

「あのね~、テストパイロット達に好かれてるのは良いけど、アンタ整備しかしてないでしょう? そっちの腕も確かだと分からせておいた方が後々が楽よ? それに、怒られるも何もペイント弾でしょう? それに、ソビエトに中国、牽制しておきたいのよ。ちょっとの時間でもね」

 

「はぁ? 良く分からないですが……楽になるのかぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は昨日の夜の夕呼先生との会話を思い出しながら、シートに隠れた膨らみを見つめていた。

 

「最終チェックも完了で準備は万端。……でも本当にやっていいのかな~?」

 

「何がですか?」

 

「わぁ!? あ、おは~唯依姫」

 

「驚かせてしまいすみません。おはようございます中佐。今日はデモンストレーションに参加できないと聞きましたが?」

 

「え? あ、あぁ、うん。そうだね。残念だけどそういう事になってるね」

 

「は?」

 

「あ、ううん何でもない何でもない。予定通り、少しだけ近くの基地に出向してくるよ。すぐ戻ると思うけど、デモンストレーションでのXM3の説明とかよろしくね? ちゃんと挨拶できてないから申し訳ないんだけど……」

 

「えぇ、了解しました」

 

 俺は唯依姫にこの後のことを頼んで、出かけた。向かう先は第二演習場だ。そして、俺が消えるとほぼ同時に、シートに隠れていた戦術機も格納庫から姿を消していた。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 篁 唯依

 

 ヘッドセットを付けて、私は大型モニターに映る演習場を見る。吹雪が11機・チェルミナートルが1機の合計12機がその姿を晒していた。

 

 A-01部隊とタリサ、ステラ、クリスカ、イーニァの合計13人、12機の姿だ。

 

 私は振り返り、同じくモニターを見る軍人達に説明を始める。

 

『お集まり頂きありがとうございます。昨夜はよく眠れたでしょうか? では早速、新型OS【XM3】のデモンストレーションをご覧に入れましょう』

 

「待ってくれ、タカムラ中尉。カイドウ中佐は来られないのか?」

 

『はい、残念ながら急な出向により、このデモンストレーションには参加できなくなりました。中佐自身も残念がっておりましたが、ご不明点などは私の方からご説明させていただきます』

 

「引篭もりよ」

「やっぱりそうなんでしょうか?」

 

 少し不穏当な発言が聞こえるが、私はあえて触れずに説明を始めた。

 

『では、まず始めに旧型OSによるデータをご覧ください』

 

 画面の脇に演習場内でのタイムアタックなどのデータが羅列される。

 

『こちらのデータは既にご存知かと思われます。このデータと比較してデータ検証を行ってまいります。ではタイムアタックから参りましょう。画面脇に映されたデータと、これからそれを大きく上回る新型OSの性能差を確認して頂きたいと思います。伊隅大尉、始めてください』

『了解した。行くぞ早瀬』

『了解ぃ』

 

 伊隅大尉はいつも通り落ち着いているようだが、早瀬中尉が少しばかり感情が前に出ている。ストームバンガードとしては良い傾向だが……いや、指摘する必要もないか。副司令も今回は出せるならいつも以上の力を発揮するように言っていた。問題はないか。

 

 仮想的を撃ち落しながら、高速機動で2機の吹雪は演習場を駆け巡る。射撃・格闘戦・機動力。あらゆる点においてXM3は旧型OSの上を行く。その差は歴然だ。

 

「早いっ!」

「撃ち漏らしとか以前に、ほとんどがど真ん中(ピンポイント)!」

「……見直さなければならないか、新型OS」

 

 ざわめきの色は分かりやすい変化を見せていた。始まるまでの色とは明らかに違う。吹雪の機動性能はそれほどまでに見るものを変化させていた。

 

 私は機体の動きを画面で確認しながら説明を続ける。

 

『ご覧頂いている通り、新型OS【XM3】の性能は従来のものを遥かに凌ぐものとなっております。海堂中佐いわく、衛士の腕によって更に向上していくOS。とのことです。デメリットを挙げるとすれば、慣れるまでの調整です。モニタリングされているテストパイロットや横浜基地のエースパイロット達ですらしばらく時間が掛かりました』

 

「性能差から察するに30%ほど向上しているが、すぐには扱いきれないと?」

 

『XM3に換装した機体に乗っていただいて、別物の機体と考えていただいたとしても、慣れるまで時間を要するでしょう。―――タイムアタックが終了しましたね。では伊隅大尉、模擬戦闘に移って下さい』

『了解した』

 

『―――今回は6対6の市街地戦を想定し……』

 

<ビービ-ビ-!!>

 

 レッドアラート。

 突如、演習内容に無い警報が鳴り響く。

 

「何だ!?」

 

『確認します。伊隅大尉、何事ですか?』

『正体不明機だ! くぅっ! 早い!!』

 

 正体不明機? あの機体かと一瞬画像データの機体を思い浮かべる。しかし、中佐は今この基地にいない。モニターにやっとその機体が映し出される。

 

『……し、不知火?』

 

 その機体は確かに不知火……いや、不知火に見える。

 しかし、一回り大きい? 各部も微妙に違う。色は国連軍仕様の青でも、帝国軍仕様の黒でもない、赤と白を基本とし、少しばかり青も使ったトリコロールカラーという派手なカラーリングだ。隠密行動には全く向かず、良い的になりそうな派手さがある機体だ。

 

 しかし、おかしい。

 識別コードがUNKNOWNの機体がここまで基地に接近しておきながら、何故警報が今の今まで鳴らなかったか……。それは―――。

 

『こちら横浜基地A-01部隊 部隊長の伊隅大尉だ。所属不明機に問う、こちらは演習中だ。所属を明かし、停止行動を取れ。貴殿の機体は横浜基地のエリアに侵犯している』

 

 私が考える間もなく、伊隅大尉はマニュアル通りのコンタクトを試みる。しかし、所属不明機からの応答は無く、嘲笑うかのように突撃砲を伊隅大尉の吹雪に向け打ち放った。

 

『大尉!』

『当たっていない! 全機! 所属不明機を基地に寄せ付けるな! 格闘戦で仕留めろ!』

 

『『『『『了解!!』』』』』

 

 待機していた残りのA-01部隊も参戦する。弾は全て模擬弾のため、近接戦闘しか止める術がない。

 

 

『早いっ! 囲んでも捕まらないなんて!』

『新型OSを搭載しているんだぞ!? それよりも早く動けるなんて……』

 

 正体不明機は伊隅ヴァルキリーズの攻撃をかわしながら、少しずつこの基地に向かってきている。馬鹿な、どんな出力を持っているというんだ。

 

 

 

 

「ふむ……篁中尉、私達も出よう。行くぞターシャ」

「了解です中佐」

 

『お、お待ちください! ラトロワ中佐!』

 

「何の問題もない。今日から私達もこの基地の人間だ。そうだろう?」

 

「私も行くわね。近接戦闘なら分があるでしょうし」

 

『ツイ中尉まで! ……お願いします』

 

 仕方がない。デモンストレーション中のため、演習場にいる機体は模擬弾しか搭載されていない。私は敬礼をして、格納庫に向かうラトロワ中佐達を見送った。実弾のライフルも用意してあるが、渡すに渡せない距離だ。

 

「中佐がいないときに……」

 

 私はヘッドセットを外し、ラトロワ中佐達に続こうとしたが、余裕の笑みを浮かべた魔女を前に足を止めた。

 

「あら、派手にやってるかしら?」

 

「香月副司令!? あの機体を知っているのですか!?」

 

「まぁ見てなさい」

 

 副司令は机の上に置いた私のヘッドセットを渡してきた。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マサキ

 

「いい? 模擬弾の前に最初の数発だけ実弾にしときなさい。もちろん威嚇射撃よ? アンタの腕なら外せるでしょ? 後は回避行動を取り続けながらゆっくりと基地に向かってきなさい。そうすればお堅いソ連軍の中佐殿は参戦してくるわ。そこにペイント弾を浴びせて、全機フルボッコ。って感じよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 フルボッコって言葉は俺が前に教えたが……味方をフルボッコしてどうするんですか……。さて、仕方ないけど、コレ命令なのよね。

 

 俺は強化装備に身を包み、シートの中の機体に乗り込んでいた。

 

『もう予定ポイントに到着してるわよね? 準備は?』

 

 夕呼先生が秘匿回線を使ってきた。

 

「もうちょっとですよ~。前田~シート外して~」

「かしこまりました」

 

 少しおかしな整備兵の前田さん。常に敬語。好きに呼んでいいよって言った時も『お嬢様』と言ってきた変な人。今では呼び方は「おじょ……委員長。この資料にある―――」とワザとらしく言い間違いする。唯依姫の前では普通の整備兵さん。俺の前では変な整備兵さん。

 でも優秀。凄く優秀。この人、他の整備の人の3倍以上の働きをする分身してるようにも思えてしまう変な人。時には俺以上に寝てない時もあるらしい。でもいつも元気な変な人。

 今回も内緒の行動だから他の整備担当の人たちには内密に夕呼先生と合わせて3人で機体の搬送や、計画を練った。

 

 そんな前田がシートを外すと視界は良好。本日は晴天なり。

 

『あら、良いじゃない派手な色ね』

 

 俺は不知火弐型にまで改修されてない機体に乗っていた。一応デモンストレーションカラーという事にしておいて、赤と白のカラーリングとなっているが、個人的な好みで青も入れた。トリコロールカラーって良いよね。

 

「さて、準備完了。前田~戻って良いよ~」

「かしこまりました」

 

 これから前田は機体を運んできたトレーラーを運転し、少し遠回りで横浜基地へ向かう。もちろん仕事してた名目で近くの基地にお届け物もある。さらば前田。君の事は忘れない。とか言って爆発しないかなぁこのトレーラー。

 

「なにか?」

「いんや、さぁ行った行った」

 

 笑顔でこちらを見つめてくる前田。……勘の鋭い男だ。俺は動き出したトレーラを尻目に秘匿回線の通話を続けた。

 

「……さて、そっちはどうです?」

 

『こっちも始めたみたいね。私もそろそろタカムラのところに向かうわ』

 

 回線を切って俺は時計を確認する。

 

「デモスタートか。うん時間通り。さてのんびり行くか」

 

 とは言ってもハッキリ言ってコイツはまだ出来損ないの機体だ。推進剤の使用効率は悪いし、重量は重い。まぁそれでも今ある普通の不知火よりは早く動けるのだが、燃費が悪すぎる。コレは急いで改良していかないといけないな。

 

 一応、クリスカとかも手伝ってくれていた機体なので、バレない様に更に手を加えており、カラーリングも派手にした機体だ。見ただけでは「似てるけど違う」と言った認識に落ち着くだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『止まれーっ!!』

 

「おっと、みんなXM3に慣れてきてるんじゃないか?」

 

 OPEN回線で入ってくる声に苦笑いと高揚感を覚えつつ俺は攻撃を避け続ける。

 

『何なんだよお前はーっ!!』

 

 タリサの声を聞きながら俺はヒラヒラと避ける。たまに威嚇射撃をしながら当てないように、そして相手の攻撃に当たらないようにと、横浜基地へと向かっていく。

 

『止まりなさいってーのよっ! くっ! 馬鹿にしてるの!?』

 

 突撃前衛の速瀬中尉も怒って俺の機体を追い続ける。

 

「あ~やっぱり怒ってるよな~。はぁ~、許してくれるかな……」

 

<ピピッ>

 

 横浜基地のマーキングが出てくる。

 

「あ、もう横浜基地に着いちまうな……ラトロワ中佐達は本当に出てくるのかな? お?」

 

 

 

<ビービー!>

 

 MAPに横浜基地の識別コードの3機が表示される。

 

「ロックオンされた? ……チェルミナートルが2機。ラトロワ中佐にターシャか……後ろには殲撃もいるな。夕呼先生の言うとおりになったけど……。逃げて消えてしまいたい」

 

 ラトロワ中佐が乗るのは一人乗りのチェルミナートル。Su-37M2だ。型番違いでクリスカとイーニァが乗るチェルミナートルとの見た目による違いはほとんどない。

 

『所属を明かし、武装を解除せよ。それ以上近づけば撃ち落すぞ?』

 

 ロックオンは外れない。マジだよあの人。

 まぁ、こっちも止まる気は無いんですけどね~。

 

『それが答えか。撃て』

『了解! 識別信号味方機へ、射線上の方は乱数回避してください!』

 

 ドンッ!

 

 ターシャの砲撃が俺の機体の頭一個分ほど左側を通り過ぎていく。

 

『な、避けた!?』

 

『任せなさい! 接近戦なら負けたことがないわよ!!』

 

 イーフェイの乗る戦術機、殲撃(ジャンジ)がブーストで急速接近してくる。俺はそれをペイント弾で脚部を撃ち、腕を撃ち、背後に回り、背面ユニットを撃った。

 

『ちっ……これが、実弾だったらとでも言いたいのっ!? ……って何!? 動かない!? 何で!? ペイント弾でしょーっ!?』

 

 それは、【JIVES(ジャイブス)】の効果だ。

 

 JIVES:統合仮想情報演習システム。 戦術機の実機の各種センサーとデータリンクを利用した仮想訓練プログラム。砲弾消費による重量変化や着弾や破片による損害判定及び損害箇所など、あらゆる戦闘における物理現象をシミュレート可能。また、BETAの外見や行動パターンなども精緻に再現することができ、現在、衛士訓練プログラムとして最も有益なシステム。

 そのため、ペイント弾であっても致命的損傷と判定されれば、特殊なパスコードを入力しないと再起動はかけられないのだ。その辺の設定はこの演習に参加する機体、するであろう機体に組み込んでいたため問題は無い。

 

『背後がガラ空きだね!』

 

 後ろから宗像中尉は長刀で切りつけてくるが、俺は読んでいる。最小限の動きでかわし、ペイント弾を管制ユニットに浴びせる。

 

「……へへへ、少し楽しくなってきたかも」

「怒られるのはマサキだけだから気にしニャいでいいニャ」

 

 薄情猫め……まぁこうなったからには楽しむか。俺は操縦桿を握る手に少し力を込めて、機体を高速反転させてA-01部隊とタリサとステラ。クリスカ・イーニァのチェルミナートルを先にペイント弾の餌食にすることにした。

 

「どっちにしろ、これは試さないといけないからな」

 

 それは網膜によるロックオンだ。元々戦術機にもあるシステムだが、それをXM3によって更に反応を向上させたのと、新型ミサイルポッドとリンクするかの実験も兼ねているのだ。悲しいけどこれ、実験なのよね!

 

 俺は瞳を動かし戦術機を捕捉していく。その間に肩に装備されていたミサイルランチャーは蓋を開かせている。

 

『これはっ!? 各機散開!』

 

「流石は伊隅大尉、良い反応だ。でも機体動作がまだ遅い!」

 

 

 ドドドドドドドドドドッ!!

 

『キャアッ!!』

『うおっ!』

『避けきれない!!』

 

 ん? イーニァとクリスカのチェルミナートルが見当たらない、マーカーは生きてる。目の前にいるはずのマーカーだが、そこにはおらず、消去法で上かと見上げればモーターブレードで切りかかってきていた。俺は65式近接戦闘短刀を腕部から引き抜き、それを受け止めた。

 

「更に上行く良い反応だ!」

 

『うぅ~!』

『イーニァ大丈夫?』

 

 この二人は複座型だとやはり凄腕だ。

 もちろん他のみんなも凄腕だが、一歩先を行くような感じだ。

 

「でも、ここまでだな」

 

 俺は肩部から小型ミサイルを撃ち、ペイント塗れにする。ちなみにこのペイント弾は特殊な液体で出来ている。浴びると特殊な電磁波を流すため、戦術機の機能が停止までは行かないが、一時的に動作は困難になる。ちなみにパイロットには影響は無いのでご安心を。

 JIVESの管理下にあるフィールドだが、それ以外も試さなきゃいけないことは多い。悲しいけどこれも実験なのよね!

 

 

『12機が全滅だと!? 貴様……何者だ!!』

 

 通りすがりの仮面ラ……なんて通じるわけ無いか。うん。

 っていうか、13機だよ。イーフェイをカウント外にしないであげてください。ラトロワ中佐の機体が飛んでくる。ターシャも追随するように突撃砲を構えて接近してくる。

 

「試したい武装はもうないよな……じゃあ、後はブースターの確認だけだな」

 

 俺は出力を最大まで上げて、接近してくる機体よりも倍以上速い速度で接近した。フルブーストによる加速度。掛かるGが強化装備だけじゃ心許無い……身体壊れるな。これは機体側でGキャンセラーを大幅補正するしかないな。

 

『ラトロワ中佐!』

 

 ほう、こちらもいい反応だ。流石は10代半ばで大尉になるナスターシャだ。支援砲撃が巧い。この腕ならまず外す事は無いだろう。俺以外が相手ならの話だけど。

 

 俺はラトロワ中佐のモータブレードをかわして、関節部にペイント弾を一発放ち、すぐさま突撃砲を構えるナスターシャを止める事にした。

 

『くっ!! うぁっ!!』

 

 五体大満足に突撃砲によるペイント弾を浴びたチェルミナートルはその場に膝を着くようにバランスを崩した。

 

『ターシャ!』

 

『―――――もっと派手にやりなさいって言ったはずよ?』

 

 夕呼先生の声がスピーカーから流れてくる。

 え~、一人で全機落としてる時点で派手でしょうが……。

 

『今のは誰だ!!』

 

 ラトロワ中佐の怒りの矛先が夕呼先生に向くが、戦術機のデュアルアイは俺を見放さないままだ。

 

「マサキあれをやれば?」

「あれニャら派手だニャ。知らニャいけどね」

 

「お前らまで……えぇいっ もうどうにでもなれっ!」

 

 俺は残った一機、ラトロワ中佐へ急接近し、急停止し、即座に上空を取る。そして全ての弾薬によるロックオンをした。かわせない。動けない。動いても無駄。ここからなら半径100メートルが俺の攻撃の届く距離。

 

「これ~から~撃ちまくりますので~怒らないでください~♪ なんちって」

「聞こえてニャいのに」

「行けるニャ! マサキ!」

 

 クロはまだしもシロは今更ながらノッて来たようだ。ニャんニャーずハイってやつか。

 

「聞いたことニャいわ……」

 

 シロに呆れられた。

 

 

 

『なにっ!!』

 

 

 

 さ~て兵装は俺の大好きなマイクロミサイルだ。開かれた肩と脚部から赤い弾頭がギッシリと覗いていた。更にはバックパックが開かれ腰辺りから前に伸びてきたガトリング2門。両手にはマシンガン。全てがペイント弾とは言えド派手に染まるぜ?

 

「全弾発射ーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

『今の武装は中佐の好きな……じゃあまさか……中佐!?』

 

 あ、バレた。その通りです。

 

『はい、そこまで~。アンタ達、恥ずかしくないの? 相手はたった1機よ?』

 

 夕呼先生のOPEN回線が全機に行き渡る。

 いやいや、アンタがフルボッコにしろって言ったんじゃん。

 

『博士はご存知なのですか!?』

『誰なんですか!?』

『あの機体は!?』

『うぇ~ん! 動けませ~ん!』

 

『負け犬がうるさいわね~。JIVES解除するから再起動して、とりあえず基地に戻りなさい』

 

 全機、JIVES管制から解除され、通常機動し、基地へと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 俺が最後に基地に着くと、俺の機体は囲まれていた。

 

 完璧怒られるだろ、コレ。

 俺は渋々、機体から降りて強化装備を身に着けた姿を晒した。

 

「「「「マサキ!?」」」」

 

「え? マサキって、OS説明してくれてた子!?」

「中佐ーっ!?」

「……祷子、私の頬を抓ってくれない?」

「自分でやって下さい美冴さん」

 

「紹介が遅れたかな。俺は横浜基地所属の海堂正樹中佐だ。いきなりの演習参戦で混乱させてしまったかと思う、すまない」

 

 A-01部隊・ラトロワ中佐・ナスターシャ大尉・イーフェイ中尉の機体に向かって頭を下げた。

 

「昨日の整備士の娘じゃないのよ! 海堂正樹……中佐は男でしょ!?」

 

「見た目がどうであれ、生物学上ソイツは男よ。間違いなくね」

 

 戸籍上は女にしたくせに。

 

「嘘だと言ってーっ!!」

「どうしたの多恵!?」

 

「どうしたもこうしたも、興奮して眠れなくなるでしょっ!!」

「……」

 

「放っておけ涼宮」

「了解」

 

 少しノイズ混じりに声が聞こえた気がするが、とりあえず無視だ。

 

「海堂中佐!」

 

 イーフェイが突然声を上げる。

 

「何かな中尉?」

 

「昨日はスミマセンでした! 勝手な想像で中佐を見下してしまい……」

 

「気にしなくていい。それから『マサキ』って呼んでもらえると助かる。A-01部隊の皆さんもね」

 

「りょ、了解! じゃ、じゃあ!」

 

「ん?」

 

「マサキの嫁にしてもらえる!?」

 

「「「「駄目だ!!」」」」 「ダメーッ!!」

 

「うおっ!」

 

 俺じゃない人たちが答えた。

 

「私からも良いか? その機体は何だ?」

 

「あぁ、これは不知火の改修機ですよ。まだ出来損ないですけどね」

 

「それで出来損ないか……昨日の非礼を詫びさせてくれ、これからよろしく頼む」

 

 お、認めてもらえたようだ。

 俺はラトロワ中佐と握手を交わして、唯依姫にデータを渡した。

 

「先ほどの機体のデータですか?」

「うん、そう。推進剤の消費が激しいからかなりの改修が必要だね」

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ラトロワ

 

「私より少し年上のはずなのに中佐。しかもあの衛士としての腕前に技術力」

 

 ターシャの声に私は頷いて答える。

 

「横浜基地は極東の魔女だけではなかったな」

 

 XM3の機動性能は良く分かった。さらにそれを軽く超える腕前の開発者。

 

「ふっ……愚かだったのは私だったか? まったく恐ろしい国だな」

 

 マサキは整備服に着替えてきて早速チェルミナートルと殲撃にXM3を搭載している。その周りには整備兵だけではなく、白と黒の猫。先ほどのテストパイロット達も参加している。人望が厚い……というよりもアレは……。

 

「タカムラ中尉」

 

「はっ、何でしょうラトロワ中佐」

 

「彼のことは名前で呼んだほうが良いのではないか? 周りの猫共に盗られてしまうぞ?」

 

「……お、お心遣い感謝します中佐殿」

 

 やはり軍人一筋か、恋愛には弱いな。

 彼とこの中尉なら良い関係になるかと思うんだがな。

 私はマサキと握手した感触を確かめながら着替えに戻った。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side A-01部隊

 

「海堂中佐! これまでの非礼を何とお詫びしたら……」

 

「あぁ、別に階級なんて良いですよ。都合のいい時だけに利用しますから。それ以外ならフレンドリーに行きましょう? そんな事よりも伊隅大尉、ここの兵装なんですけど……」

 

「あ、はい」

 

 伊隅大尉が謝罪をしているその光景を遠目に見守る部隊員たちがいる。怒られた場合を想定して一応隠れて待機している。

 

「許された?」

「みたいですね……というよりも気にしてない様ですけど」

「マサキ……呼び捨てって言うのもむず痒いわね」

「でも、『マサキちゃん』って呼ぼうとすると、怒られるから気をつけてね、みんな」

 

「同い年で中佐で凄腕で天才かぁ~」

「あはは、あれには驚いたね~」

「今でも信じられないわよ。あれ? 多恵は?」

「あれ、さっきまでいたのに……あっ! あそこ!」

「あの子の行動力には驚かされてばかりね……」

「本人は考えてやってないでしょうけどね」

 

「えへへへへ~。シロちゃんとクロちゃんって言うんですか~」

「あぁ、マサキの飼い猫なんだ」

 

 タリサ・マナンダル少尉と一緒になって白猫と黒猫を可愛がる築地多恵がそこにいた。和みながら会話を弾ませる姿に部隊員達は隠れているのが馬鹿らしくなり溜息をついた。

 

「和んでるし馴染んでるんですけど……」

「わ、私も撫でさせてもらおうかな……」

「あ、私も行くよ!」

 

 こうして、A-01部隊とテストパイロットたちも親睦を深めて行った。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マサキ

 

「さて、外装パーツの取り付けだけだな」

 

 コツコツコツ……

 

「もう出来たの? ホネ」

 

 夕呼先生がやってくる。

 ここは90番格納庫だ。流石にこの機体だけは表立って造ることは出来ないので、秘密裏に進めている。

 

「ホネは出来ましたよ。あとは肉付けだけですね」

 

「なんか美術品みたいね~」

 

 美術品か……まぁコイツが完成すれば人類の勝利は目前だろう。

 

「あ、そうそう。シュールな面白いニュースがあるんだけど聞く?」

 

「シュール? 何ですか?」

 

「この前ハイヴ落としたわよね? あれ、専門家の間だとBETA同士の潰し合いの可能性も考えてるらしいわよ」

 

「はぁ? BETAって潰しあうんですか?」

 

「まさか」

 

 夕呼先生は鼻で笑いながら答えた。

 

「でも、それだけ信じられない出来事だったのよ。どこの国も軍を動かしてないのに落とされたハイヴ。未確認の空飛ぶ銀色の戦術機。でも戦術機1機でハイヴを落とせるか? 答えはNOよ」

 

「まぁアイツはしばらく使えませんから」

 

 俺は少し離れた場所に静止しているサイバスターを見ながら言う。いや、違うな。サイバスターじゃなく俺が駄目なんだ。精神不安定。今日もデモンストレーションに強襲する形で参加したけど、気分転換にはなったし、楽しかった。夕呼先生に感謝である。

 

「あら、トラブル?」

 

「―――ん、まぁそんなとこです。本当の切り札になっちゃいました」

 

「その様子ならアレが使えなくても問題なさそうね」

 

 サイバスターが使えない俺でも俺には利用価値があるからこそ柔らかい口調なのだろう。それでも何とかしないとな。

 

「そういえば、このホネはワンオフの機体なの? 製造ラインの話を聞いてないんだけど?」

 

「えぇ、ワンオフです。この世界で最高の衛士に乗ってもらいますよ」

 

「あら、自分専用ってことね」

 

 ―――違いますよ。

 俺はそう声に出すことなく否定せずに作業を続けた。

 夕呼先生は踵を返して帰ろうとするが、思い出したように立ち止まり口を開いた。

 

「あ、もう一つ聞くの忘れてたわ。明後日、珠瀬事務次官がこの基地に来るんだけど、HSSTが落ちてくるって白銀がうるさいのよ。アレって本当?」

 

「あー、忘れてた。本当ですよ。落ちてきます、この基地目掛けて……あ~それ、止めないで貰えます?」

 

「あら? 白銀には止めるように釘を刺されてるんだけど?」

 

「釘を刺されて止まるような人でしたっけ?」

 

「ふふふ、言うようになったじゃない。でも何、不発に終わるの? それともまた何かの試験でもするのかしら?」

 

「えぇ、利用させてもらいますよ。確実に防ぐんで無視していただいて構いません」

 

 そうか明後日か、明日までにレンズを利用して……。

 

「じゃあ私は行くわね……って聞こえてないわね」

 

「こうニャると徹夜確定ニャ」

「止まらニャいわね」

 

「あら、あなた達の声、久しぶりに聞いたわね」

 

「「博士お疲れ様ニャ」」

 

「猫から労いの言葉を貰うなんてね~。じゃあ行くわね」

 

 

 

 そして、俺は地上の格納庫に上がり、格納庫の一角だけ照明は消えずに作業は続けられていった。

 

「お嬢様、紅茶でございます」

 

 ……前田が現れた。お嬢様じゃねーっつーの。

 

「それから、こちら階級を暴露した時の皆様の表情でございます」

 

「おぉ~よく撮れてるねぇ…ふふ、ラトロワさんってこんな顔するんだ。へぇ驚いた顔って面白いんだなぁ………あれ?」

 

 ……コイツ、遠回りして横浜基地に帰ってきたよな? 誰が撮ったのこの写真。このアングルの豊富さ……。

 

 まぁ悪い奴じゃない。

 

 ……でも変な人。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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