MUV-LUV ALTERNATIVE 救世主になれる男   作:フリスタ

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BETAがいる大混乱の世界の中に小さな平和を築きあげる横浜基地。

そんなある日、僕らの基地に大量爆薬搭載型のHSSTが降ってくる!

まぁ落ち着け諸君。のんびり撃ち落とそうじゃないか。


ゆる~く連載再開!

……そんな事はない。気分次第だ。




11

Side マサキ

 

「くへへへ……スゥ…スゥ…」

 

「だらしニャい顔で寝てるニャ」

「まぁ昨日の今日で、ほとんど完成させてる時点でおかしいニャ」

 

コツコツコツ……。

 

「あら、シロちゃんにクロちゃん?」

 

「「にゃ~」」

 

「どうして格納庫に……あっ、まったく中佐は……起きてください。風邪をひきますよ?」

 

「んん~。朝ごパン~?」

 

「朝食はもう少し先ですが、今日はパンじゃないですよ」

 

「(ポリポリ)……唯依姫?」

 

 起きると頭はボーっとしていて視界もボヤケており、傍らのパソコンはスリープモードになっている。確か、HSST撃墜用に不知火を改良していて……。あ、ちなみに、なぜ不知火で改良しているかというと、性能という点もあるが、大きく占めているのはフォルムだ。ヘッドパーツを改良するのに一番楽だったのが不知火だからだ。

 

「おはようございます。こんな所で寝ないで部屋で寝てください。あぁクマも出来て……しっかり寝ないと……」

 

「あぁ、眠い(コテン)」

 

「ここで寝ないでくださいってば」

 

 唯依姫は再び倒れ眠ろうとする俺を自然と抱きとめた。

 

「にゃあ(急接近だニャ)」 

「にゃにゃ(いい感じニャ)」

 

「ん~、温か~い、良い匂~い……スゥ」

 

「ちょっ 中佐っ!?」

 

「く~……zzz」

 

「(あ、駄目ニャ。寝不足ニャ)」 

「(マサキ、空気ちゃんと読まニャきゃ)」

 

「まったく……本当に困りますよ」

 

「(……大丈夫みたいだニャ)」

「(困ってニャい顔してるニャ)」

 

 

 起きるとそこはPXで、俺の目の前には湯気が立ち、いい香りを立ち昇らせる朝食があった。

 

「寝起きで食べられ……」

「残すんじゃないよ?」

 

 おばちゃん……分りました。今日もがんばります。今日も一日がんばるぞい。ですが、そろそろ特盛りを大盛りぐらいに変えては頂けないでしょうか? あ、そうですか。すみません。

 

「中佐、お身体に障りますから、無理な徹夜は避けてください。私も手伝いますから」

「あ、唯依姫おは~」

 

「……聞いてます?」

 

 他の整備兵とかクリスカとかに指示出すのは問題ないが、唯依姫には指示出しするのが……何ていうか、難しい? ように感じる。何でだろうな?

 

 しかし、眠い。何かスキッとする事でも無いものか……。

 

「ん? アレは……」

 

 俺は二人組の立って視線を投げつけている衛士を見つけた。投げられている視線の先はタケル達がいる席だ。タケルもいたんだな。つーか、このイベントってまだ終わってなかったのか。どうも記憶が曖昧だが。

 

「まぁいいか。憂さ晴らしして目を覚まそう」

「中佐?」

 

「あぁ少しトイレに行ってくる」

 

 あ、先に動いちゃったよタケルの奴。俺はフォローするために席を立った。

 

「あ、マサキ。隣の席いいか?」

 

「あぁ、好きにしてくれ。今は少し外すがな」

 

「あ、主任。格納庫にある不知火の改修機なんですけど……」

「あ、店長~OSの設定で質問があるんですけど~」

 

 お前ら今はどけ。イベントに遅れてしまう。俺はもう眠気が覚めた事も忘れてイベント会場に足を運んだ。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side タケル

 

「ねぇ、あの正規兵の人たち、さっきからこっち見てない?」

 

 美琴が目で訴える先には二人組の正規兵がいる。

 

(あぁ、前回の世界でも武御雷のことで冥夜に絡んできた奴か)

 

「見てるだけだろ……ほっとけよ」

「でも……ほら、なんか目つきが」

 

 たまも頷いて不信感を抱いているようだ。

 

(ほっといたら、同じことの繰り返しか……)

 

「悪ぃちょっと便所行ってくる」

 

 俺が立ち上がり、正規兵の近くに行くと呼びとめられた。やっぱりだ。興味本位と俺たち207小隊が優遇処置されていることに嫉妬してるくだらない奴らだ。人類はそんなことしている場合じゃないのに。

 

「―――お前らの隊はあそこにいるので全部か?」

 

「はい総員で6名であります少尉殿」

 

「だったらハンガーにある特別機……帝国斯衛軍の新型は誰のだ? お前らの誰か用だと聞いたが?」

 

「―――少尉私の機体です」

 

 冥夜の声が後ろから聞こえてくる。

 

「あ! お前いつの間に!(あーもう、これがイヤだから席を立ったのによ……)」

「少尉。あの機体が何かご迷惑を?」

 

「お前の名は?」

 

「……御剣冥夜訓練兵です」

 

「ん? ……あれ……お前の顔どこかで……?」

「あぁ……どうなってる? なんで武御雷(あんなモン)がここにあるんだ?」

 

「……」

 

 冥夜は視線を伏せて答えられずにいる。

 

「黙ってちゃわかんねェだろう? 訓練兵」

 

「恐れながら少尉殿」

 

「何だ?」

 

「それは少尉殿の個人的な興味からの質問でしょうか?」

 

「……あ?」

「あれのためにハンガー一つ占拠されてるんだ。整備兵もあの特別機の点検を行っている。その事情を知る権利があたしたちにないとでも?」

 

「聞けばお前らずいぶんとワケありの特別待遇らしいじゃねぇか。そこんところもきっちり説明してもらいらいたいもんだな?」

 

 こいつら……!

 俺は自然と握り拳を作っていた。こんな奴らがいるから人類は……。

 

「それは武御雷やその搭乗衛士のことを調べろ……という任務を受けているということですか?」

 

「お前がそれを気にする必要があるのか? いいから訓練兵は聞かれたことを答えてりゃいいんだよ」

 

「……少尉殿にはもっとほかにやるべきことがあるかと考えますが?」

「よせタケル!」

 

「……なんだと?」

 

「少なくとも訓練兵相手にイキがることよりも優先すべきことが……」

 

 バキィ!

 

「タケル!?」

 

 突然の騒ぎに他の207小隊の面々も立ち上がる。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マサキ

 

「あ、もう殴られた。殴る前に止めたかったんだけどな~」

 

 俺は独り言を愚痴りながら整備兵たちの会話から解放されて、タケルのもとへやってきた。もう一発殴られようとする瞬間。俺は少尉の足を引っ掛けて転ばせた。

 

「マサキ?」

 

「よ、タケルおは~、で? 転がってる少尉殿は何をしているのかな?」

 

「何だお前は! 整備兵が口を出すな!」

 

 あぁそういえば整備服でしたな。まぁ基本的にこれしか着てないけど。まぁ今はそんなことよりも。

 

「(パシーンッ!)この軟弱者!」

 

 こいつの顔見てたらやりたくなる。ついやっちゃったんだ。

 俺は立ち上がった少尉を平手で撃ち抜いた。

 

「貴様! 少尉に手を挙げたな!」

 

 そう言いながら少尉(軟弱者)は俺に殴りかかってくる。

 それを俺は絡め捕り、そのまま自然な力の流れで組み伏せた。

 

 ガキィッ!!

 

「あだだだだだだだっ!!!」

 

「マサキ! 拙いわよ! 正規兵に手を出すなんて!」

 

 俺は委員長に言われながらも関節技を外さない。

 

「―――騒々しいな」

 

 やってきたのは月詠さんと3バカ。

 

「て、帝国斯衛軍!?」

 

「マサキ? 何遊んでんだ?」

「店長?」 「主任?」 「会長?」

「何をしてるんですか? トイレに行くのではなかったのですか?」

「昨日の今日で楽しませてくれるな、マサキ」

「少尉如きが私の未来の旦那様に何羨ましいことさせてるのよ!」

 

 更に唯依姫やタリサ達もやってくる。オールスターだな。

 

「篁中尉!? ツイ中尉!? ラトロワ中佐も!?」

 

「ほう、唯依姫もイーフェイもラトロワ中佐も知ってるのか軟弱者」

 

「何なんだよ! お前は!」

 

「少尉、中佐を『お前』呼ばわりか?」

 

 その場にいるほとんどの者が冷たい視線を軟弱者コンビに浴びせている。マサキって呼ぶのは許しているから問題ないが、何も知らない奴が好き勝手に呼んでいい人物ではない。そう断じているかのような視線だ。

 

「「「「「……中佐?」」」」」

 

 207小隊の面々と、軟弱者コンビは呆けている。

 

「さて、少尉。武御雷を『あんなモノ』と愚弄し、その搭乗者を探すとは、誰に頼まれた? ……月詠中尉、帝国軍では武御雷を愚弄した者はどのように処分する?」

 

 俺は初めて使ったであろう軍人らしい口調で月詠さんに聞いた。

 

「武御雷の愚弄は我ら斯衛軍を愚弄するも同義。ひいては将軍殿下を冒涜する行為であります。更に今回の件に関しては武御雷の機体情報の漏洩の可能性もありえます故、全てを洗い出した上で処刑になるかと思われます」

 

「だそうだ。少尉、誰に頼まれた?」

 

「お、俺たちは……」

 

 お、抵抗する力が抜けてきたかな。ここいらで勘弁してやるか。

 

「興味を持つのはいいがな、苛立ちを覚えて八つ当たりするのは違うぞ少尉? こんなことで無駄な力を使うな。その力はBETA相手に奮ってほしいものだな。……さて、月詠中尉もういいでしょうか?」

 

「ありがとうございます海堂中佐。国連軍とはいえ日本人だろう。今後は国連軍の名を落とすようなことは避けるべきだな少尉」

 

「「す、すみませんでした!」」

 

 軟弱者コンビは腰が抜けて逃げるようにヘコヘコと去っていく。

 

「け、敬れ……!」

 

 委員長が敬礼をしようとするが俺は止める。

 

「敬礼はいらんよ。邪魔したな」

 

「で、ですが。私たちは今まで散々呼び捨てにしてしまって……」

「中佐だったなんて知らずに……」

「整備まで……」

「今の吹雪すっごく乗りやすいです」

「なんとお礼、お詫びを申し上げればいいのか……」

 

「おう、大事に乗ってやってくれ。今まで通りにマサキって気軽に呼んでくれ」

 

「よくやったよマサキ。これも食べな!」

 

「いや、アレだけでじゅうぶ……いただきます」

 

 京塚のおばちゃんから更に大盛りのオカズが手渡され、断ることもできず俺はがんばって食べることになった。どうしてこうなった。

 

「マサキ、食べさせてあげるわ。はい、アーン」

「っ! これも美味しいぞマサキ。アーン」

「合成宇治茶もありますよ!」

「イーニァのもーっ!」

 

「イーフェイとかいったな、後から来て図々しいんだよ」

「上官に向かってそんな口聞いていいと思ってるの?」

「食事中だぞ貴様ら。マサキこれも食べるといい」

「「ずるいです中佐!」」

 

「……食べるのを手伝ってくれ」

 

 そんなありふれた空気に包まれたPXでのひと時。素敵やん?

 

 

 

 

 

「うっぷ……ふぅ。さて、仕上げるか」

「何をすればいいんですか?」

 

 唯依姫は散らばった書類を整えながら聞いてくる。シロとクロも手伝うように紙を咥えては所定の位置へと運んで行く。この猫の動きは不思議に思われないのだろうか?

 

「ん~じゃあ、テストするからデータ取りお願いできるかな?」

「了解しました」

 

 最終調整をして、問題なければそれで完成だ。まぁ、兵装は見直さなければならないが、今回はこれだけでいいだろう。

 

 とは言っても、持っているライフルは随分と砲身が太い。これは、夕呼先生から試作1200㎜超水平線砲の資料を見せてもらい、コンパクト化して持ち運び可能なものとして、更に改良を加えたものだ。

 

通常の超水平線砲だと、極超長距離からハイヴを直接砲撃するという概念で試作された対BETA兵器だ。通常圧力で激発された砲弾の通過に伴って、砲身内に多数配列された薬室が順次点火し砲弾を極超音速まで加速させる。発射後は、砲弾内の砲弾のコンピューターが入力データに伴い、砲弾側面の火薬パレットを制御爆発させ、2度の弾道補正によって遥か彼方の目標を狙撃する。タケルの1回目のこの世界だと、これでHSST(再突入型駆逐艦)を衛星データリンク間接照準(TYPE 94 SBS SYSTEM)によって撃破した。

 これもハイヴ攻略に向けてかなり有効な兵器といえる。ぬふふふふ……っと。いかんいかん。

 しかし、装弾数は5発だが3発以降は砲身がもたないため、前線運用が疑問視されお蔵入りとなったライフルだ。しかし、この面も俺の改良により強化されている。距離は少し短くなったがそれでも10発以上撃っても砲身はもつようになったし、10発の連装弾薬にしたし後方支援としてかなり有効だろう。

 

「随分と軽装ですね。ライフル以外は盾もなく……頭部パーツが変わっているようですが」

「まぁ今回はスナイパー性能の実験テストだから。一応、内部のOSとかを射撃に特化したような感じにはしたんだけどね。更に遠くまで見えるように『強化型モノアイ』にしてあるんだ」

 

「なるほど」

 

 俺は強化装備を着て、不知火に乗り込む。JIVESにリンクさせ、演習場に出る。

 

『ではデータリンク開始。状況開始します―――。ってこれ何ですか!?』

 

 唯依姫は驚きの声を上げる。

 

「どうかした?」

 

『想定されている状況が……。HSSTが落ちてくるって、どういうことですか?』

 

「まぁまぁ、それぐらいシビアにしといた方がいいデータ取れると思ってね。まぁ状況としては、夕呼先生や、明日来る予定の珠瀬事務次官が邪魔と感じる某国の陰謀により、横浜基地一体を吹き飛ばす爆弾が積まれたHSSTを落とされる……ってところだ」

 

『唐突な設定にしては随分と具体的ですね。……はぁ、わかりました。では落下始まります』

 

 落下のデータが送られてくる。実際に想定して見てみると遠いな、でかいな、早いな。これをたまは撃ち落としたんだよな。流石射撃の名手。まぁ出来ないとも思わないけどな。

 

 俺は構えて射撃をする。

 

 キュゴンッ!

 あら、外したか。

 

『……目標健在。中佐、ビームにより砲身が過熱しないように気を付けてください』

 

 冷却装置は正常に動作。もう少し冷却を高めに設定するか。

 

「こんなもんでいいかな……。うし、2発目行くぞ」

 

『どうぞ』

 

 キュゴンッ!

 

『……目標に着弾。砲身は大丈夫です』

 

「了解。もう一機落としてくれるか? 試したいものがある」

 

『了解しました。……落下スタート』

 

 俺は砲身に、一見蓋のように見えるパーツを組み込む。

 

 俺は再度構えてトリガーを引く。

 

 キュィィィ……ン。バシューーーンッ!!

 

『……も、目標着弾。中佐、今のは?』

 

「名付けて『八岐大蛇(ヤマタノオロチ)』だ。射撃に自信のない奴でもほぼ確実に当たるぞ」

 

 実際の空にはそんなビームなんて放たれていない。そのため、そのライフルの性能、特性を確認したのはJIVESを操作している唯依姫だけであった。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side タケル

 

「『珠瀬1日限定分隊長』計画を発動せよ!」

 

 何て言ったのが昨日のこと。そして、今俺たちの目の前にはたまの親父さん。珠瀬事務次官がいる。

 

 

「ではここから先は、珠瀬訓練兵がご案内差し上げます。珠瀬訓練兵!」

 

「あ! は、はいっ! どうぞこちらへ!」

 

 まりもちゃんはたまの1日分隊長の事を蔭ながら了承してくれたようだ。ありがとう。

 

 たまは少し緊張で硬そうだが、親父さんを事務次官として見つめている。たまの親父さんも事務次官らしい顔してそれを受けているように見えるが、それも一瞬だけだった。顔は緩み切り、親バカな顔で対応を受ける。

 

「うんうん、頼もしいなあ……でもパパは甘えてもらえないの、ちょぉっと寂しいぞぉ……」

 

 パパ相変わらずかよ。

 

「ででででは、こ、こちらへ!」

 

「うむ……パパ、今日はたまの小隊長っぷり、いっぱい見せてもらうぞぉ」

 

 パパ、分隊長です。

 

 

「こ、こちらが兵舎です! け、敬礼!」

 

「「お待ちしておりましたっ!」」

 

 委員長と彩峰は敬礼をして事務次官を迎える。彩峰……やめろよ? フリとかじゃなくてやるなよ? 本当にやるな―――。

 

「……あんたもたま……」

 

 ―――バカ! 言いやがった……!

 

「たまパパ……ひげ……」

 

 まだ言うか!

 

「し、私語を慎め~~~っ!」

 

「その凛とした姿。いいじゃないか、たま~~~」

 

 この親父は……。

 

「ん? 君はさっきまで一緒にいた……」

「榊千鶴訓練兵です! 分隊長には毎日、ご迷惑をおかけしております」

 

「うんうん、知っているよ。父上に似て、物分かりが悪くて融通が利かないらしいねぇ」

「……」

 

 元はと言えば、たまが親父さんに出している手紙が原因なんだよな~。親父さんも手紙の内容を大袈裟に言っているんだろうけど。やっぱりこうなるのか。

 

「ん? 君は……」

「はい! 鎧衣美琴訓練兵です!」

 

「ほほぉ……君か、たまより(胸が)平坦な鎧衣君とは」

「……ボクは……ボクは……ひどいよ~、気にしてるのに~~~~っ!」

 

 美琴は猛ダッシュでその場から逃げだした。かける言葉が見つからない。

 

「ん? 君は……」

「御剣冥夜訓練兵です!」

 

「そうですか、あなたが……」

「……? 私には何もないのですか?」

 

「……死活問題ですので」

「……そうですか」

 

 そりゃそうだ。相手は将軍家縁の者だもんなぁ……。たまは脅えきっている。どれほど手紙で書かれたのかと、小隊メンバーはたまに視線を集中させている。だが、安心しろたま。ここでみんなの怒りは俺に向く。

 

「……白銀武君だね。先ほどから見ていたが、うむ、なかなかの好青年だ。顔も悪くない。性格もいいと聞いている。おまけに座学、兵科共に成績優秀、冷静で頼りがいがあるという。今のご時世で、君ほどの男はそうそう居まい」

 

 なんか褒めちぎってねぇか? 前の世界よりエスカレートしていると思うのは……気のせい?

 

「君ならば……うむ、よかろう。たまをよろしく頼むよ。傍で支えてやって欲しい。今までも、そしてこれからもね。いやはや楽しみだ……わははははは。いや、そろそろわしも、孫の顔が見たいかな、ま、ご、の、か、お、が、な! わははははは……」

 

「「「「(―――孫!?)」」」」

 

 おいおい! 一気に飛躍してるじゃねーか!

 

 ガシッ!!

「―――お?」

 

「……ちょっと、いい?」

「いやッ、後にしてくれ」

 

 ガシッ!!

「んお?」

 

「タケル、そなたに話がある。なに、時間はとらせん……よいな?」

 

「き、君たち! 事務次官の前であるぞッ!?」

 

 その怒りで震えた手を離せ!!

 ひょいっ!

「え?」

「もう、離さない」

 

「よし彩峰、そのまま連れ出すのだ」

 

 おぉぉっ!? 担がれてる!?

 

「おお、歓迎のパフォーマンスかね?」

 

 どの目で見て、どの口が言うんだそれを!

 

「全速力!!」

 

 ちょ、おい……!

 

 ―――俺は死んだ。スイーツ。教えてもらったけど、スイーツって何だマサキ?

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マサキ

 

 俺は少し離れたの演習場にある高台に待機していた。

 

『海堂、聞こえる?』

 

「感度良好。オーバー」

 

『警報はギリギリまで鳴らさないでおいてあげるわ。確実に落しなさい』

 

「ラジャー」

 

 俺は念には念を入れて砲身を【大蛇(オロチ)】から【八岐大蛇(ヤマタノオロチ)】に変更していた。命中率は飛躍的に上がる。まぁ……単純に精神コマンド使えばいいんだけどさ。精神コマンド使ったら他の人が使う時のデータとのズレが出過ぎるだろうからそれはやめておく。

 

 大蛇は主砲の1発だけの超長距離ビームライフルだ。それに対してヤマタノオロチはその主砲の砲身に蓋のような特殊なアタッチメントを取り付けて、少し威力の落ちた主砲とその周りを八角形を描くように並走して放射される合計9発からなるビームライフルだ。

 

 そして、真っ直ぐ放射されるのは主砲のみで、他の8発は幾何学的な動きで放射される雷のような砲撃だ。真っ直ぐ移動しない8匹の蛇。正にヤマタノオロチ。冷却やエネルギー供給などが正常に行われるのであれば最大連続放射時間は20秒。前線にこの機体がいればかなり楽に戦域を維持できるだろう。まぁ、BETAの素材が使われているから製造ラインに乗ることはない。この機体だけでも造れたのが不思議なくらいだ。

 

『来たわよ。データ送ったわ』

 

 それを聞いて俺は不知火のヘッドパーツを稼働させ、デュアルアイは目隠しされるようにモノアイになる。

 

「受け取りました~。リンク完了。冷却装置正常。エネルギー問題なし。目標、HSST……確認。あ、夕呼先生~」

 

『何? まさかトラブル!?』

 

「あ、いえいえ。放射してる時の写真を記録して後でください。こっちでも勿論撮るんですけど、別アングルからも―――」

 

 絶対カッコいいはずだ!

 

『まじめにやりなさい!』

 

 ……怒られた。

 

 俺は引き金を引き、ビームライフルを撃ち放つ。ビームは主砲を胴体とするかのように8発の不規則な大蛇が並走していく。一瞬、空が真っ赤に染まった。HSSTに当たったのだろう。その衝撃は少し遅れて響き渡った。

 

『……目標消滅。御苦労さま。興味が湧く兵器だったわ。後で報告書の提出ね』

 

「……写真は?」

 

『まったく……用意させておくわ』

 

「ひゃっほーい!!」

 

 戻ると唯依姫が怒って待っていた。別のスケジュールを入れていたはずなのに何故ここにいる?

 

「本当にHSSTが落ちてくるなら言ってください!」

「ちょ、何で知ってるの!?」

 

「香月博士から聞きました!」

「……何で話すかな~?」

 

「あんた達は隠し事ない方がいいんじゃないの? 先のことだろうけど、今から隠し事してるようじゃ、将来うまくいかないでしょう?」

「博士! もうっ!」

 

 夕呼先生はカラカラと笑って、唯依姫は赤くなって夕呼先生に言い寄っている。俺たちは? 将来? どういうことだろう?

 

「にゃー(鈍感にゃ)」

「にゃにゃ(オイラでも分かるニャ)」

 

「どういうことだよ?」

 

「にゃ~(自分で考えろニャ)」

「にゃ~(そうニャ)」

 

 その日の空での出来事は、BETAの光線級に何かが撃墜されたとか、そんな話で持ちきりになった。そんな他の大部分の人とは違うベクトルで、俺の疑問は晴れずにいた。しかし……。

 

「あ、そうそうピアティフ」

「はい、海堂中佐。ご要望の写真です」

 

「キターーーー! ありがとうピアティフさん!」

 

 俺はピアティフさんに抱きついて封筒に入った様々な角度から撮られた様々なサイズの写真を机に広げる。その写真の効果により、疑問は吹っ飛んで、俺は写真に興奮していた。

 

「カックィーッ!! 見ろよシロ、クロ! このモノアイとか! このビームの放射の流れとか! く~たまらん! 夜だともっときれいだろうなこれ! あ、この角度もイイ!」

 

「「(……駄目ニャこいつ、早くニャんとかしニャきゃ)」」

 

 その部屋には頭を抱える白衣の副司令。そして顔を赤らめる中尉が2人、呆れた顔を浮かべる白と黒の2匹の猫がいたようだ。

 

Side out

 

 

 

 

 

 ―――その者達は恐怖に襲われていた。

 

 カザフスタンのハイヴにも一枚噛んでいるどころか、全て魔女の仕業なのではないかと思えるほどの恐怖がその者達を襲っていた。

 魔女は今まで知識だけでやり合っていたのだと。攻撃の手段を得た魔女がどう動くと言うのか。言うなれば、じゃんけんでグーは絶対に出せなかった者に勝つのは容易かった。それが、グーを出せるだけでなく、馬鹿らしいとも言える禁じ手『ピストル』まで使えるようになったとしたらどうだ? 笑えない。遊びではないのだ。ここから先勝者が得るのは勝利というモノだけではない。奪われるのは命だけではないのだ。そして、ここから先、勝つことは非常に難しく、最終手段を使うしかなくなった。

 

 そして、HSSTを撃ち落とされた事に対してこう溢した。

 

『―――魔女はいつの間にか最強の杖を手に入れている……ならば』と。

 

 その国で革命を起こさせるのに失敗した。しかし、まだ種火は残っている。ならばそこに火薬を放り込むしかない。全て爆散させれば何とか最後の勝ちは見える。最後に勝てばそれが彼らの勝利だった。どうせ人類はBETAに勝てないのだ。ならば出来る限り自分の命を可愛がる事だけに集中する。

 

 そうすることで自分達の首に縄を掛けている事にも気付かないほどに盲目となる。BETAに勝てないならば眼の前の人間に勝てばいい。その人間が魔女であっても、最強の杖を手に入れていたとしてもそれに勝てば終わりだ。最後のそれに勝てばそれでいい。

 

 ―――勝てれば。

 

 ―――それで終わりだ。

 

 沈んでいた表情から汗が吹き出し、最後には狂笑が深く浮かんでは沈んで行った。

 

 

 

 

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