MUV-LUV ALTERNATIVE 救世主になれる男 作:フリスタ
あれだね。善悪相殺って感じの村正思い出しちゃうね。村正以上に感動する事は無いだろうなと思ってしまうのは私だけだろうか。
Side マサキ
ここは90番格納庫の割と奥にあたる格納スペース。
サイバスターは割と手前に置いてあるのだが、タケル専用機はこの奥にて制作中だ。
俺達整備チームは制作したパーツ・武装を取り付けて行く作業中だ。
「主任、本当にこれだけの重量であってますか?」
「あぁ、間違ってない。それで強度は十分なんだ」
「随分軽いですねBETAの一部と聞きましたが……分かりました。ここは……?」
「背面ユニットは外部パーツを外した時にしか使わない。外部パーツ自体が武装であり、ブースターでもあるから大丈夫だ」
「了解しました」
目の前の機体はブラックボックスのオンパレードだ。骨格はBETAの素材を混入させ、武装のビーム兵器も光線級のレンズを必要としたし、内部のエンジン部分なんて誰に聞かれても答えられないような代物だ。使ってます。
「あ、おい! 何で複座型の管制ユニット持ってきてるんだ!」
「あぁ、良いんだ。これは複座型で良いんだ。というかアレは3人乗りだ」
「は? 3人……ですか?」
疑問も当然だ。複座型ですら珍しいのに、3人乗りなんて聞いた事がない。しかし、それほどまでに複雑な機構を持つ兵装がある。普通に戦うなら1人乗りでも大丈夫だが。BETAと全開で戦うなら3人だ。少し窮屈そうに見えるが、基本的に操縦するのは1人だから問題はない。俺としては全てのBETAを消すつもりでいるからいらないのだが、夕呼先生の風当たりとかも考えればBETAの思考を読み取る必要があるわけだ。大人の事情って面倒くさいものだ。
「海堂中佐はいらっしゃいますか?」
「ここにいるぞーっ!」
俺は手のひらを広げ、高らかに突き上げて、呼んだ奴の目の前に現れた。
「ってピアティフ中尉じゃないですか。どうかしました?」
「お久しぶりですね中佐。香月副司令がお呼びです」
何用でっしゃろ?
Side out
Side 夕呼
通信が入る。ここに直接という事はよほどの事だろう。
『香月副司令。帝国斯衛軍が、海堂中佐を呼び出しに応じさせるようにと……』
これは海堂には伝えていないことだが、何度か断ってきた事だ。
突如現れた18歳の中佐、同時期に目撃された所属不明機(サイバスター)、少ししてからまた各国で目撃され、同じ時間帯でBETAの巣であるハイヴが一つ落ちた。海堂と関係はありませんと言えるのも限界かもしれない。
「また月詠大尉かしら?」
月詠大尉とはいっても、恐らくは殿下直々の呼び出し。まったく、海堂が余計な事をしなければ……。
『えぇ、しかし今回は大将も絡んでいるようでして』
「は?」
―――帝国斯衛軍の大将?
Side out
Side マサキ
俺はピアティフ中尉に案内してもらい夕呼先生の執務室に来ていた。ピアティフ中尉は部屋を後にして、今この部屋は二人と二匹だけになっていた。
「海堂、今アンタが作っているモノについても聞かなきゃいけないんだけど?」
今作っているモノ? タケル専用機だろうか?
「えっと……あったあった。コレをどうぞ」
「これは?」
俺は何枚か持ってきていた資料を選別して渡し、読めばわかると促す。
「サイバスターみたいに永久に飛びはしないのね……(ペラ)……なるほど……これは、この前の新潟の奴ね?」
「えぇ、それの改良型です」
「そう……この外部パーツは使い捨てなのね?」
「そうですね。撃ち終わったらただの重りなので、パージすればOKです」
「ビームライフルね~。これだけでも戦局は有利になるわね」
「ライフルは結構な数作るんで、それで楽になるでしょうね。装備する戦術機はタンク積まなきゃならないでしょうけど」
「ふーん、じゃあなんでこの機体はタンクなしなの? 内骨格だからと言ってエネルギーの供給は同じようなもんでしょう? これも使い捨て?」
「別のエネルギー供給のラインがあるんですよ。これはまだ試作段階なのでお伝えできませんけどね」
「ふ~ん……」
この反応はかなりえぐい割合でバレてるな。見て見ぬふりしてくれるという反応に違いはないが、目は合わせられない。泳げ! 俺のスイミングアイ!
「そ、まぁ良いわ。それよりもアンタ何をしたの?」
「は?」
夕呼先生は目を細めて俺を見やる。
どれがバレた!? あれか!? それともアレか!?
「帝国の大将からのお呼び出しだそうよ?」
「は? 大将?」
何それ? 聞いたことないイベントなんだけど。
「では、中佐よろしいですか?」
「唯依姫も行くんだね」
『よろしいですか?』
「あぁ、出してくれ」
俺は運転席からのスピーカーに答えて車両を出してもらった。運転手? 前田だ。間違いなく、前田だ。
俺は不知火・弐型改をトレーラーに積んでもらい、帝国軍へと向かう事になった。
内容は、悠陽が斯衛軍のトップである紅蓮大将・神野中将というお偉い方々に口添えをして、俺との模擬戦をするとのことだ。俺が勝ったら出来る限りのバックアップ。俺が負けたら俺の身柄は国連軍横浜基地から帝国斯衛軍、殿下直属部隊への配属となるらしい……。
「って、アホか」
「どうかしました?」
俺は唯依姫に軽く内容を話した。
「は? 紅蓮大将と神野中将と月詠大尉と沙霧大尉を相手にするんですか!? 何でですか!?」
「最初は一人ずつって話だったんだけどね、模擬戦は疲れるだろうって、2~3日掛けて1対1でやるとか言い出したからね。そんな時間ねーっつーの。了解は貰ってないけど、まとめて相手して、すぐに帰るよ」
「……負けたら中佐は帝国斯衛軍なんですよね?」
「そうだけど、負けるかな?」
唯依姫は口元に手を当て、「中佐なら……でも紅蓮大将に神野中将って……他の二人でさえも日本を誇る腕前の衛士だし……」とか言ってる。でも、XM3もまだ流してないし多分大丈夫だと思うんだけどな……。XM3+ブーストパーツこれだけでも動きで勝てるし。
まぁ折角用意してきた機体だ。この世界の現在トップクラスの衛士がどれほど持つのかも見ものか。俺はトレーラーに乗っかっている不知火・弐型改を想像しながら頬杖をついていた。忙しい時に呼び出しやがって。……あぁイライラする。
指定された厚木基地に到着する。
俺は早速 強化装備に着替えて、不知火のシステムチェックに入った。トレーラーから不知火を切り離し、兵装の最終確認をする。
『お待ちしておりました海堂中佐』
すでに
「お久しぶりです月詠大尉」
『本当に子供だとはな、衛士として沙霧が負けたと聞いたが?』
『紅蓮大将、嘘偽りではございません。私は海堂中佐に大敗しました』
『さて、こちらは準備が整っているが、どうかなお若いの?』
『中佐、管制はお任せください』
「あぁ、頼んだ。さて、いっちょ行きますかぁ」
俺は唯依姫に返事をして、目の前に広がる4機を見つめて言った。
「始める前に確認させてほしいんですけど、俺が勝ったらバックアップをしてくれる……」
『はい。その代わり、中佐が負けた場合は、その腕を帝国軍にいただきたく思います。どうか殿下のお傍に……』
「負けた場合はそれでも構いません。ですが、条件が一つ―――」
『何でしょう?』
俺はデータから装備などを見比べ、問題なさそうだと判断した。なので、俺の予定通りの対応を取らせようとした。相手の都合は知ったことではない。俺だってそんなに暇ではないのだ。
「―――全員まとめて相手します。この条件が飲めないなら帰ります」
『かっかっかっ!……何を言っているのか、分かっているのか?』
『恐れながら中将殿、ありがたい進言かと存じます』
『私も同意見です。私や沙霧大尉では結果は見えております』
『ほほう、不知火1機に4機がかりで『ありがたい』と……』
「先に言わせてもらいましょうか紅蓮大将、神野中将……でしたっけ? あ~、ちょっと言葉崩させてもらいますが……あんたらの実力は知らないが、俺が乗っている機体が不知火でよかったな」
『中佐!?』
『……くかかかかかかっ!! 面白い!!』
『ワシらにその様な口を聴く者がおるとはな、殿下からも真剣におぬしを捕らえるようにとキツく言われておるからな、手加減はせぬぞ』
それでいい。
『……そ、それでは、JIVESによるデータリンクを開始します。準備はよろしいですか?』
『応っ!!』
『問題ない』
『……参ります』
『行きます』
JIVESが設定したフィールドがモニターに反映される。全機に掛るコマンドポスト役の声に目の前の4機はすぐさま応答した。
「海堂マサキ。行くぞ」
『……中佐、御武運を』
『では、状況開始!』
Side out
Side 篁 唯依
JIVESの設定が進みフィールドが出来上がっていく中、今回の演習―――中佐の身柄を拘束する圧力。そう言えなくもない演習―――が始まろうとしていた。フィールドが設定完了次第、各機のモニターに反映され、この演習は始まるだろう
『先に言わせてもらいましょうか紅蓮大将、神野中将……でしたっけ? あ~、ちょっと言葉崩させてもらいますが……あんたらの実力は知らないが、俺が乗っている機体が不知火でよかったな』
「中佐!?」
私は中佐の乗る真っ白な不知火の背を見つめ、何て事を言うのだと思った。紅蓮大将と神野中将と言えば、日本帝国軍の双璧とも言うべき存在。その衛士としての腕前は……あ、でも中佐も化け物か。
『……くかかかかかかっ!! 面白い!!』
『ワシらにその様な口を聴く者がおるとはな、殿下からも真剣におぬしを捕らえるようにとキツく言われておるからな、手加減はせぬぞ』
どうやら本気の勝負になったようだ。1対1で進むはずだった話はいつの間にか1対4へ。負ければ中佐は帝国軍に行ってしまう。だが、何故かそうはならない気がした。中佐が負けるところを想像できない自分がいた。
「それでは、JIVESによるデータリンクを開始します。準備はよろしいですか? ―――――。では、状況開始!」
もしかすると、中佐と一緒に仕事ができなくなるかもしれないのに、私の心は撃ち震えていた。
Side out
Side マサキ
この不知火は、不知火の改修機で【不知火・弐型】だ。更に武装も改良を加えて、俺好みにしてあるので【改】としている。紅蓮大将や神野中将には悪いが、試したい動き、兵装があるので良い機会だ。極上の実験台になってもらおう。
さて、自分より多く敵がいる場合の対処法はいくつかある。一人ずつしか戦えないような狭いエリアに誘導して戦う。素早い動きで撹乱し出来る限り早く各個撃破する。隙が出来るのを耐えて待つ。等など。しかし、
「(そんなの性に合わないから、やっぱりコレなんだけどね……まぁすぐに終わってもつまらないからな……だから)避けろ!!」
俺はいつものようにマイクロミサイルを肩と脚から放出していく。今までランチャーが、装填出来るのが1層だったのが、3重装填まで可能となったため、ミサイルはこのパーツ内に脚に25発×3層で計75発が左右合わせて4ヶ所。脚部だけで合計300発のマイクロミサイルを搭載している。肩も同じように25発を3層と、胸部にも20発を2層搭載しているため、それぞれ左右合わせて、230発。上下合わせて530発ものマイクロミサイルを搭載している。脚部のランチャーに関しては、発射口の調節も180度稼働できるため、後ろへも撃つ事が出来る。
さて、気になるのは重量だが、ランチャーもブースターが付いているため問題はない。通常の不知火と比較すると多少遅くなるわけだが、そこはXM3もあるので気にしないでほしい。
「「(誰に解説してるのかニャ)」」
『ぬっ! いきなり全弾発射とは!』
『これさえ凌げば近接戦闘しかないだろうに……衛士の腕前を見誤ったのではないか? 月詠、沙霧』
全弾? んなわけないだろう。全弾発射したとしたら、それはそれで面白い事になるがな。
『くっ! 何て数だ避けきれない!』
『沙霧大尉、左脚部に被弾。続行可能』
『月詠大尉、左腕部に被弾。続行可能』
紅蓮大将と神野中将は長刀と薙刀でミサイルを切り払い、ビルの残骸などを利用して巧く回避していく。流石は大将と中将といったところだろうか。
「なら、これはどうかな?」
俺は長刀を装備し、一気に距離を詰める。
『かかかっ! ワシに接近戦を挑むか! 若造!!」
神野中将の薙刀と俺の長刀がぶつかり合う。しかし、それも一瞬の事だった。
『何!? くっ!』
神野中将は距離を逆噴射で取る。薙刀だった物は、ただの棒になっていた。
『神野の薙刀が……どういう事だ?』
「演習中だけど説明しましょう。俺のこの長刀は高周波ブレードとなっています。その程度の物なら簡単に切れますよ。刃こぼれもしないで基本的には延々と切刻む事が出来ます。それが突撃級の殻でもね」
俺は言葉と同時に拳をグーのまま神野中将の瑞鶴に向ける。
『更に挑発とはな……』
「いいえ、これで終わりです」
拳の甲の部分が開き、ガトリングガンが現れる。神野中将の驚きの声とともに銃声を鳴らすガトリングは管制ユニットを的確に捉えていた。
『神野中将、管制ユニットに被弾。致命的損傷、大破』
俺はまだ残弾数も残っているアーマーパーツをパージした。更に長刀も地上に突き刺して、短刀のみを装備する。これは標準的なダガーのため、高周波などの機能はない。
『馬鹿にしておるのか?』
『流石にそれは無謀といえるのではないですか?』
「試してみればわかる。新型OSとこの機体なら余裕だ。行くぜ、【オーバーブースト】」
俺の乗る不知火・弐型改の背中が開かれる。そこにはブースターが取り付けられているが、随分と小型なものだ。しかし、その出力は通常のブースターの数倍の出力を持って突進する。
『なんと!?』
驚きながらもとっさの判断で突撃砲を俺に向けて放ってくる。突撃砲の雨が前から降ってくる。しかし、それは俺がいた場所に降っていく。撃った瞬間に俺はすでに相手の懐だ。
「遅い!」
俺は短刀で紅蓮大将を落とす。
月詠大尉とメガネ沙霧も後回しにしたが、危なげなく落とした。
距離を取ろうとしても、詰めようとしても結果は同じ、このスピードについてこれるとしたらサイバスターと……。
『……参った。まさかこれほどの腕前に開発力とは……正直予想以上であった』
何て、大破扱いされた紅蓮大将が言ってくる。
唯依姫は「車を回してくる」と言って、前田と一緒に不知火を積んだり、カバー掛けたりしている。基本的にすべて前田がやっているが。俺はというと着替え終わって、帰る準備万端な状態。さ、帰って問題点を改修して、量産計画の報告書を作らないと。って感じだ。
「もう帰られるのですか?」
メガネ沙霧が車両待ちの俺をなんとなしに声をかけてきた。っと、その奥から大将殿に中将殿。更に月詠大尉がやってきた。……嫌な予感がする。もうトレーラーの中で待ってよう。
「こんなに小さい衛士だったとは……」
「負けはしたが、なかなかどうして、帝国に欲しいな」
「ははは、諦めてください大将殿。じゃあ悠陽によろしく」
「いえ中佐殿、自分でお伝えください」
ゾクッ!
俺は月詠大尉の声を聞いた瞬間に背後の気配を感じ、振り向くと悠陽が箱を手に待ち構えていた。
「マサキ、お久しぶりですね」
「あ、うん。ひ、久しぶり……なんか変なオーラ出てない?」
何とも形容しがたい笑顔だ。笑顔だけどなんか……黒い?
「これを受け取っていただきたくお持ちしました」
「何これ?」
夕陽は箱を開ける。その中には【カギ付きの首輪】が入っていた。
「……じゃあお疲れっした~」
ガシッ
「受け取っていただけますね?」
「受け取れるか! 何で首輪だ! んなもん貰って喜ぶとしたらあそこのメガネぐらいだろう!」
俺は沙霧を指さして怒鳴る。アイツなら殿下~殿下~って喜ぶだろうよ!
「では仕方ありません。真耶さん!」
「はっ!」
ジャラッ!
どこから出したその鎖と手錠は!?
俺は無言でトレーラーにダッシュし、
「逃げるよ唯依姫!!」
「は、はい! 中佐お手を!」
「前田出して!!」
「かしこまりました」
「……っ! 逃がしてはなりません! これは上意です!」
「「「「はっ!」」」」
何で全員で追ってくる!? もっとスピード出せ!!
Side out
Side 煌武院 悠陽
「申し訳ありません。逃しました」
「……構いません。冗談はさておき真耶さん、マサキがいれば我が国にも光は見えるでしょうか?」
「恐らくは」
私はその答えが返ってくるだろうと、分かっていながらも心を満たしていた。
紅蓮大将・神野中将を手玉にとり、4対1であっさりと勝ち逃げされてしまった。マサキ、あなたがいれば、我が国……この世界は救われるのでしょうか。
「殿下、海堂マサキを国連軍から引き抜きますか?」
「ふふふ、紅蓮大将。人の恋路は邪魔してはなりません」
「は?」
「殿下、アレは篁の家の者でございます」
「そうでしたか……正妻でなくとも私は構わないのですが」
しかし、トレーラーに飛び乗る際のあの二人の姿には何故か見惚れてしまいました。
「ところで、沙霧大尉のソレは外せないのですか?」
「申し訳ありません。直ちに」
真耶さんは鎖と手錠で縛られた沙霧大尉の拘束を解いていった。どうやら捕え間違えたらしい。
Side out
揺れるトレーラーの中にはマサキと唯依と猫2匹しかいない。前田は運転席だ。
「先ほどの不知火は全軍に配備されるのでしょうか?」
「ははは、無理無理。結構好き勝手やっちゃってるからね~予算がないだろうね、A-01部隊に回せればいいなってぐらいにしか考えてないよ。武装ぐらいならどうとでもなりそうだけどね」
「さっきのアーマードパーツはかニャり有効ニャ武器だニャ」
「
「いや、でも数的にも厳しいかな……クリスカとイーニァが乗るチェルミナートルでしょ、タリサにステラ、イーフェイ、ラトロワ中佐にターシャか……A-01部隊はそのままでも良いか」
「独立部隊を申請すると?」
独立部隊か、それも良いかもしれないな。マサキはそんな妄想ともいえるべき事を考えながらシロとクロを撫でていた。
―――突如鳴り響く警報。
「何があった!?」
「ロックオンされていますね。退避を」
前田は冷静にそう言い放つ。
「すぐにトレーラーを止めて降りるぞ!」
「あ、当たりますね」
「は?」
ドゴンッ!!
トレーラーは縦に激しく揺れた。
唯依と共にドアを開けて外に飛び出す。マサキは唯依の頭を抱えるように道路脇の土に塗れながら転がった。地面が柔らかくて助かった。マサキは起き上がり状況を確認する。
前田は恐らく即死だったのだろう。トレーラーの全面はペシャンコに押し潰されている。トレーラーに乗っている不知火・弐型改は炎に包まれている。いつ爆発してもおかしくはないかもしれない。早くこの場から離れなければいけない。
ブーストジャンプの音が鳴り響いている。空には目で追う限り、黒い不知火がブーストで跳躍していた。黒い不知火には烈士のマーキングが施されていた。あれは、帝都守備連隊。
「クーデター……!? バカな! 沙霧大尉はいないだろ……!」
「中佐! ご無事ですか!? 今はここから離れなくては……!」
マサキは混乱しながらも唯依に手を引かれるようにトレーラーから一歩でも遠くへと離れていく。
ドガァンッ!!
ドッ!
「ガっ!」
「「マサキ!?」」
「中佐!? ……血が……。止まらない……どうしたら……中佐、中佐ーッ!」
マサキは後頭部に爆発の勢いで飛来してきた岩みたいなものを受けて、倒れた。
「落ち着いてください」
―――前田。
海堂マサキのことをたまに『お嬢様』とか呼んじゃう整備兵の前田だ。即死かと思いきや生きていたようだ。
「さぁ、徒歩になってしまいましたが。なんとか帰りましょう横浜基地へ。まずは水と救急キットを探しましょう。私は水を―――」
前田はマサキを担ぎ、どこからか引っ張りだしてきたシートの上に寝かせ、近くにあるであろう川の流れる音を頼りに歩き出した。
冷静になればマサキは気を失ってるだけで無事に見えたので、仕方なく唯依も救急キットを探し始めた。