MUV-LUV ALTERNATIVE 救世主になれる男   作:フリスタ

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今回はちょっと長いです




05

Side マサキ

 

俺はやっと整備兵チームと合流し、戦術機の整備、新武装の研究開発、XM3の導入に入っていた。篁中尉は基本的に俺と一緒に行動している。この前も道に迷いそうなところを助けてあげた。意外と方向音痴なんだな。

 

「(気づかれニャイ様に改竄するのはやめニャさい)」

「(見てるこっちが恥ずかしいニャ)」

「なんだとぉ~こうしてやるこうしてやる~うりうり~」

 

「海堂中佐。ネコと戯れてないで……この状況はまずいのでは?」

 

篁中尉は俺に対して口添えをしてくる。『まずい』という内容はシンプルだ。俺の見た目、つまり容姿がアレで【中佐】という階級から、周りの目というものが軍人ではない状態ということらしい。しかし、俺はあえて反論した。

 

「大丈夫でしょ? 唯依姫も気軽に呼んで良いよ?」

 

「その『唯依姫』も……はぁ」

 

俺は篁中尉の事を唯依姫(ゆいひめ)と呼んでいる。これも直らないものか? と唯依姫は額に手を添える。

まぁ俺からの視点だと、整備班はまじめに仕事をしている。というか、過去のデータを見る限り、今までのやり方と比較すると効率は上がっているように見て取れる。

 

「……でも、確かに『マサキちゃん』と呼ばれるのは……腹に据えかねるな」

 

俺はメガホンを取り、声を上げた。

 

『一旦作業中断。全体集合!』

 

ザッ! と、一斉に集まる技術開発チームと整備チーム。一声かければ軍隊のように集まってくる。その行動力は大したものだ。衛士と比べても遜色ないだろう。しかし、目は何というか……やはり軍人とは違う。どこかユルい。ゆるキャラでも目の前にいるかのような目だ。

 

『俺のことは好きに呼んでいいと言ったが、訂正する。次に『マサキちゃん』と呼んだやつはこの基地から追い出すから覚悟しろ』

 

「「「「「えぇ~!」」」」」

 

声を上げるのは、女性が多いが、男も若干名いるようだ。何コイツら。

 

「貴様ら! 上官だぞ! 口を慎め!!」

 

シーン……。

唯依姫の一括でみな軍人の目に切り替わる。

そんな目も出来るんじゃねーか。くそっこれもあのアホ女神のせいで……。

 

『呼び方は『主任・チーフ・店長・団長・会長・部長』の中から好きに呼んで構わない。名前を頭に付ける事は許す。さて、話は変わるが、これから新型OS【XM3】のテストを行う』

 

ざわっ。と、ざわめきが広がる。「ついにか」 「やっぱ主任は天才だよ」 「見たい見たい!」 様々な声がところかしこで起こるが、唯依姫がまた一括して納める。

 

『これで成功なら更に忙しくなるぞ? 気を引き締めてかかれよ』

 

「「「「「はいっ!!」」」」」

 

 

 

演習場には2機の戦術機。管制塔には技術開発班・整備班が詰め掛けていた。

 

俺はXM3搭載型【撃震】に乗り、唯依姫は通常の【不知火】に乗り込んだ。撃震はハッキリ言って重い機体だ。火力などで言うならもちろん不知火や吹雪に劣ることはない。しかし、偉人さんの名言どおり【当たらなければどうということはない】。センサーの感度、反応速度、重さによるブーストの効き。どれを取っても、不知火に数段劣る。それほどまでに不知火は早い。撃震が小学生の全力疾走なら、不知火はオリンピック選手だ。まぁこれは誇張しすぎかもしれないが、撃震が不知火に勝てる見込みは薄い。というか、ないに等しい。

 

『では準備はよろしいですね? カウント開始します。3…2…1…スタート!』

 

XM3のテストの内容は2点。

一つは機動力、精密性を測るための仮想敵(アグレッサー)の撃墜を含めたタイムアタックだ。これは俺だけの方で行う。俺は山あり谷ありのコースを出来る限り早く進み、仮想敵も落としていく。

 

「事前データより早いっ!?」

「アレ本当に撃震?」

「吹雪以上じゃないか?」

「主任の腕に寄るところも大きいだろうな」

「あの重そうな見た目で細やかな機動をするのね」

 

管制塔の連中は各々で、この撃震を評価していた。

 

ビーッ!

『第一段階終了。海堂中佐、機体に異常はありますか?』

 

「問題ない。すぐにでも次を始めても大丈夫だ」

 

2つ目のテストは通常タイプの不知火との模擬戦だ。当然、模擬(ペイント)弾を使用しているので、壊れはしないが、システムにより状況は詳しく分かる。脚部にペイントが掠る程度でも実際にそうなった場合の負荷がかかるようになっている。

 

そして、ビーッ! と、2回目の開始の合図が鳴り響く。不知火はまず俺の射線上から外れるように距離を詰めてくる。定石通りだ。火力がある相手に真正面から突っ込む馬鹿は新任衛士でもそうそうお目にかかれない。自分の機動力を活かし、距離を詰め、ヒットアンドアウェイの戦法が取れる相手なら、それが一番確実だ。しかし、『その戦法が取れる相手なら』の話だ。実際、先ほど同様にXM3を搭載したこの撃震は吹雪ぐらいまでの機動力を見せていた。まぁそれでも『吹雪ぐらい』だ。不知火に比べれば劣る。唯依姫は撃震の驚きの速さに慣れ始めたのか、徐々に詰めてくる。俺の砲撃は当たらない。そして―――。

 

 

 

 

 

『―――じょ、状況終了。お疲れ様でした……』

 

「惜しかったな……」 

「何言ってんのよ? 大したものよ」 

「主任以外が乗ってたらこうは行かなかっただろうよ」 

「あぁ、でも惜しかった」

 

戦術機のペイント弾に塗りつくされた光景を見て、管制塔のスタッフも整備兵も技術開発チームも息を飲んだようだ。

 

「ふぅ……よくやったな」

 

俺は撃震から降りて、胸部ユニットを撫でる様にそう呟いた。

コイツはよくやった。あそこまでやれれば十分だ。俺は純粋にそう思った。

 

「中佐!」

 

唯依姫が駆け寄ってくる。

 

「あんな装備は聞いてません!」

 

そして、怒っていた。

 

結果は引き分けだ。唯依姫の不知火が一気に距離を詰めて突撃砲を放とうとした瞬間。通常はただの肩・腕・脚パーツのはずの部分がその姿を変化させた。各部位の蓋が開かれたそこには、マイクロミサイルがギッシリ詰め込まれていた。

 

『なっ!?』

 

俺はその驚きの声を聞いて、ニヤリと笑みを浮かべた。一斉に放たれる模擬弾のマイクロミサイル。不知火の突撃砲も火を噴いた。相打ちに終わるが、不知火は元の色は何か分からないほどにペイント弾を全身に浴びていた。

 

 

 

「いや~楽しかった~」

 

「不謹慎です! 全く……」

 

『海堂正樹中佐、香月副指令がお呼びです。副指令執務室までお願いします。繰り返します……』

 

「今度は何をやったんですか?」

 

唯依姫は俺をジト目で見てくる。身に覚えがありすぎてどれで呼ばれてるのか分からん。

 

「……人聞きの悪い。さて何だろう?」

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 香月夕呼

 

私は数日前の白銀との会話を思い出していた。

 

「ラプラスの悪魔はもう存在しないわ」

 

「ラプ……? どういうことですか?」

 

量子力学の理の内にある限り、何人にも未来を予測できない。それが例え神や悪魔と呼ばれる存在しても。未来は不確定なもの。そういうことだ。

 

「あとはあなたが思うとおりに頑張ってみなさい」

 

私はそう言って、白銀を送り出した。

まぁつまり『自分の力で未来を勝ち取る他ない』ということだ。私自身も含めて。

 

 

白銀タケルはこの世界が2回目だという。

 

「11月11日ねぇ……」

 

白銀が言っていることは本当のことだろう。社のリーディング能力でそれは確認済みだ。そして、その白銀が1回目とは違うことをしようとしている。もちろん聞く限り1回目のまま進むと私も終わりなので協力をしている。白銀が言い出したのは、前回の世界の話だと、11月11日にBETAが佐渡島からやって来て、新潟に現れるということらしい。

 

とりあえず、A-01部隊には出てもらうことにして、更に越中と下越新潟地域の帝国軍に10日付で防衛基準体制2を出しておいた。これで抑えられるといいのだが、これ以上派遣するとなると変に勘ぐられてしまう。BETAの予測不可能な行動を予測している行為に等しいのだから。何故、新潟に部隊を派遣したのか? BETAが現れなかった場合も後の処理が面倒だ。

 

白銀が少し先の未来を体験していて、覚えているというなら、彼自身がラプラスの悪魔に成り得るのだろうか。いや、それこそ立証なんて出来ない。しかし、もう一人この世界を知っている男がいる。

 

「ピアティフ。海堂を呼んで」

 

『かしこまりました』

 

 

しばらくして、篁に連れてこられる形の海堂がやってきた。コイツは……いい加減ココまでの道のりぐらい覚えられないのだろうか? なぜ最近来たばかりの中尉が覚えられて、海堂は未だに覚えられないのだろうか。

 

「呼び出して悪いわね。海堂、アンタは……。篁中尉、外して貰えるかしら?」

 

「はっ 失礼しました」

 

篁は部屋を後にした。これで二人きりだ。

 

「明後日、11日なんだけど。何か知ってる? 11月11日」

 

「11月11日……。あ、BETAですか?」

 

「本当に知ってるのね。アンタのソレは何? サイバスターに使われている魔法か何か?」

 

その言葉に海堂は考え始めたようで、手のひらを拳の底で打った。何かを閃いた様だ。

 

「……古い閃き方ね」

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マサキ

 

「11月11日……。あ、BETAですか?」

 

「本当に知ってるのね。アンタのソレは何? サイバスターに使われている魔法か何か?」

 

俺は何故知っているかの理由を考え始めた。今後のためにも何か良い言い訳はないものだろうか? そして、夕呼先生の言葉を反芻して……『サイバスターに使われている魔法か何か?』その言葉に俺はピンッときた。頭に電球ピコーンッのマークを浮かべて手を打つ。

 

「……古い閃き方ね」

 

あ、知ってるんですね?

俺がピンッと来たのはサイバスターに搭載されている【ラプラス・コンピュータ】の存在だ。これは、ラプラスの悪魔の名を冠するコンピューターであり、ラプラス変換理論が応用されている。機体や兵器の制御のみならず、使う者の魔力次第で因果律を計算し尽くし、ある程度の未来予測を行うことも可能となっているものだ。素晴らしい言い訳! 素晴らしいコンピュータじゃないか! これで俺がこの世界を知っていても不思議ではない! 説明の手間が省けるってモンだ。

 

「……というわけです」

 

「何でソレを早く言わないの!!」

 

怒られたであります。

 

「ふぅ、確かにソレがあれば90番格納庫を知っていたり、戦術機の操縦方法、兵器開発とかも出来ると言えるかしら……それは完全なものなの?」

 

「この世界で言うところの予言や占いですからね。まぁそれよりは遥かに信憑性は高いと思いますが?」

 

「そう、なら あくまでも予言で留めていた方が良さそうね」

 

信じると、外れたときに痛い目にあうからな。それが良いだろう。

 

「それで? 11日が何です?」

 

「アンタ行きなさいよ」

 

あ、やっぱり? ですよね~。遂にサイバスターを使っていい時が……いや、そんな甘くはないか。

 

「戦術機で?」

 

「当然よ。サイバスターは駄目。代わりにアンタ用の不知火が届いてるわ。元々予備で取り寄せていたものが来たから新品よ……シート以外は」

 

あ、新品シートのビニール破るの好きでしたね。

 

「じゃあXM3の実験も兼ねて行きますよ。試したい兵装もありますしね」

 

「期待してるわよ」

 

「お任せあれ」

 

「あ、それと」

 

「はい?」

 

「新潟から帰ってきた頃にまた紹介するのがいるはずだから」

 

「はぁ……了解しました」

 

 

 

俺はそのまま格納庫に来た。

 

「明日までに仕上げるんですか?」

 

「そりゃあそうだ。明後日には新潟にいなくちゃいけないんだから。まぁ簡単なもんだよ。XM3キットを載せて、俺のパターンを入れてあげて、再起動してる間に開発してある武装に換装するだけなんだから」

 

XM3キットはOSとCPUのセットのことだ。まぁ他にも細かい基盤やら変える必要はあるが、そこまで時間はかからない。時間がかかるとしたら兵装のほうだ。

 

「明後日は私も同行します」

 

「唯依姫も?」

 

「補佐官ですから」

 

「別に良いけど今回はテストだから、データ収集をお願いしますよ」

 

「かしこまりました」

 

俺はその日は徹夜でOSの換装。テスト用の兵装を装備させて眠りに就いた。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11月11日 

新潟―――日本海沿岸。

 

ここだけで見るとかなりの戦術機が広がっている。海上には巡視船に潜水艦も何隻か構えている。

 

『大尉。BETAは本当に来るのでしょうか?』

 

『さぁな、しかし副指令の言葉だ。我々は信じるしかあるまい』

 

若い女性の声が通信で飛び交っていた。彼女たちはA-01部隊。香月夕呼の直属のエリートであり、特殊任務部隊であった。衛士としての腕は今の白銀タケル以上の者もいる。

 

『それと、あの【不知火】のテストって、何も実戦でテストする必要ないんじゃないですか?』

 

『聞いてるの? 馬鹿みたいなタンク積んで動けないとか止めてよね?』

 

彼女たちのモニター上の視線の先には不知火を太らせたような戦術機があった。ヘッドパーツを見れば間違いなく不知火であろうその機体の両肩にはミサイルポッドかと思われる装備があり、背中には大きめのタンクが背負われている。そのタンクから伸びるケーブルは、右手に持つ砲身の長めのライフルに繋がっている様に見える。タンクのケーブルは左手側にも伸びており、そこには戦術機の手の平から少しはみ出す位の筒状のモノが見え、左手の甲を覆うように特殊なカバーみたいなものが付いている。更に脚部も2周りほども分厚くなっている。

 

『副指令から聞いているが、期待できそうにないな。助けてやれんぞ?』

 

対BETA戦において、衛士が望むのは機動力だ。もちろん火力も必要だが、BETAの攻撃を回避できなければ火力も持ち腐れてしまう。彼女たちから見て『その不知火』はソレに見えた。新兵器だか知らないが、客観的に見てバランスの悪そうな機体なのである。最高峰の機動力を持つ不知火の機動力を殺した不知火。火力アップするだけなら、撃震で十分な気がしてならない。なぜわざわざ機動力のある機体の特性を捨てるのか?

 

しかし、その不知火に乗る衛士は鼻を鳴らして一言だけ答えた。

 

『テストデータ取り終わったら助けてやるよ』

 

『『『なっ!?』』』

 

驚きは2点に対してだ。子供の声ということと、彼女たちが軽く見られてるということだ。

 

ドォンッ!!

 

海上で巡視船が燃え上がり、沈んでいく。

 

『来たぞっ! 全機出撃!!』

 

『了解!』

 

A-01部隊。伊隅(いすみ)戦乙女隊(ヴァルキリーズ)は声を揃えて出撃していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マサキ

 

「唯依姫。データ転送確認を頼んだ」

 

『転送確認。感度良好です。お気をつけて中佐』

 

近くの基地管制塔から唯依姫は返答する。ここでの戦闘データ。兵装の効果は全てデータバックアップされる。つまり、俺のやることは、戦うだけである。

 

「了解。目標は6割かな」

 

俺の言う6割とは、テストの成果とかではなく、BETAを相手する……殺す数のことだ。帝国軍にA-01部隊。夕呼先生の声で動く以上、いずれもエリート集団だ。その中で、俺は6割を喰らい尽くそうとしていた。

 

鈍重に見える不知火が戦場に躍り出ると視界にはBETAの群れがいた。これほどとは正直思っていなかったが、俺は冷静だった。レーダーに補足できる数を確実に振り切っている。目の前に広がるBETAの海だ。

 

「まずはコイツから」

 

俺は砲身の長いライフルを構えた。しかし、これは普通のライフルではない。背負っているエネルギータンクからエネルギーが供給され放てるビームライフルだ。俺は冷却装置が正常稼動していることを確認しつつトリガーを引いた。

 

光の道が出来る。十戒のように、ライフルの射線上に道が出来上がった。BETAは融解するようにその体を死体へと変えていく。そのままの体勢でライフルを右に向けていくと道は更に広がっていく。一発あたり約5秒間斉射出来る効果は十分のようだ。事実、 BETAの中で最大の防御力を誇ると言われる突撃 (デストロイヤー)級の硬い装甲殻すらも余裕で溶けているほどだ。

 

『何アレ!?』 

『……電磁投射砲、いや、レーザーなのか?』 

『BETAが……溶けてる?』

『凄い』 

『……アレなら機動力も必要ないか』

 

シュゥゥゥゥゥゥ……。

砲身からは冷却による煙が上がる。これは使える。後はエネルギー効率の見直し、小型化を進めれば良いだけだ。

 

空いた道にBETAの群れは雪崩込み侵攻を続ける。俺は次に両肩、両脚のユニットを開いた。唯依姫とXM3のテストに使用した物と同じ、マイクロミサイルだ。今回は当然 実弾の上に破壊力はお墨付きだ。放たれた数百発のマイクロミサイルは容赦なく要撃(グラップラー)級。戦車(タンク)級の死骸を重ねていく。しかし、突撃級の装甲殻に当たったものに関しては、イマイチの印象を受けた。

 

「改良の余地ありっと、お次は……」

 

俺は両肩と、両脚部の装備をパージして重りを外す、迫ってくるBETAをビームライフルで再度薙ぎ払いながら、左手の筒状のモノにエネルギーを蓄えると背中のエネルギータンクを外した。ビームライフルもエネルギータンクを外してから3発は撃てるようになっている。

 

『何故タンクを外す? 燃料切れか?』

 

通信はA-01部隊の隊長である、伊隅みちる大尉からだった。

通信とともに、伊隅大尉の乗る不知火が俺に隣接してきた。

 

「テストだからね~。エネルギータンクを外してもデータ通りに撃てるのかの確認」

 

『貴重な兵器をテストだからと言って外すのか!?』

 

「『期待できそうにない』んでしょ? こっちは気にせずどーぞー」

 

『っ! 全機兵装自由!! 喰らい尽くせ!!』

 

『了解!』

 

よしよし、俺は左手の筒を一度 腰に取り付けて、ライフルの砲身を左手で換えた。

そして、BETAの上を飛び、撃ち放った。ソレは先ほどまで一直線に放たれる光ではなく、円を描くように散る様に放たれた。砲身を換装し、切り替えのスイッチを入れるとショットガンタイプになる仕組みだ。

 

「うん、やっぱりこっちの方が好きかな~」

 

『中佐、好みで武装を選ばないでください』

 

唯依姫にそう言われるが、個人的にはビームショットライフルの方が好きだ。

ビームライフルも悪くはないけど……あ、ビーム砲もば良いな。 ゼロ距離で撃ったりとか。 あぁやりたくなってきた。 造りてぇなぁ、でもXG-70があるしな……いや、別にあれにこだわる必要もないのか。今は両天秤で考えるとして……

 

「(また良からぬ事考えてるニャ)」

「(ほっときニャさいって)」

 

光線(レーザー)級確認! 中佐!』

 

「来たっ!」

 

光線級は俊敏だが防御力は大したことはない。有効射程距離は30㎞。決して味方誤射はしない特性を持っている。照射インターバルは約12秒。主にレーザー属種と呼ばれる。コイツと更に強力な重光線級により、制空権はBETAに握られていると言っていい。サイバスターなら余裕だが、戦術機だと空を飛べば速攻であの世行きだ。

 

俺はレーザー照射のラインに残り、照射を受けた。

 

『レーザー属種がいるのに何で射線から退かないのよ!』

『所詮は口だけだったか……まだ若かったろうに』

 

OPEN回線でそんな声が聞こえてくるが、俺は死んでないし、不知火も無事だ。これがXM3に換装した結果出来るようになった自動防御プログラム。左手の甲にあるオプティカルシールドだ。一時的にビームシールドを張って、レーザーを弾く効果がある。欠点は、そこまで高い防御力ではないため、真正面からだとほぼ無意味なこと。必ず斜めなどから受ける必要がある。これは使えるな。

 

 

『なっ!? レーザーが……!?』 『嘘、生きてるの!?』

 

バシュッン!

左手の甲の光が消えた。レーザーを弾き切ったのである。同時にライフルモードで光線級を薙ぎ払った。

 

「唯依姫。残敵は?」

 

『現状、BETAの数は残り100を切っています。先ほど仰っていた6割も達成しています』

 

俺は最後のライフルを撃ち放ちライフルとタンクをまとめて置いた。

 

「じゃあ、最後にA-01の面倒を見るかな」

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『残りのBETAの数は100を切ったそうだ。最後まで気を抜くな!』

 

『了解!』

 

『言ってるそばから高原突っ込みすぎだ!』

『あのバカ!』

 

『あ……』

 

高原の横から装甲殻をもつ突撃級が突っ込んできていた。

 

ブォンッ!

一振りの光の剣によりBETAの血が舞い散る。

その一振りは装甲殻をバターのように切り開いた。

 

『データ取り終わったから助けにきたぜ?』

 

その不知火は戦闘開始前には重装備だった不知火だった。だが今はもう違う、その姿は高機動をよしとする装備内容だった。

 

『あ、ありがとうございます!』

 

『礼はいらん。手伝ってやるって言っただろ? さて、夕呼先生の直属部隊の力、見せてもらおうか?』

 

『全機、聞こえたな? テストパイロットに7割近くも手柄を取られているんだ。押し戻すぞ!』

 

『了解!』

 

『無茶すんな……よっと!』

 

『なんて機動性能だ……』

『本当に同じ不知火なの?』

『もしかして副指令が言っていた最新OSの実験機?』

 

そう、彼女たちには常に最新情報が入るようになっている。まだOSの内容は聞いていないが、その内にでも最新OSが優先的に導入されること。かなりの腕を持つ者が指導にあたってくれること。まだ『これの事かもしれない』という確信まで届かないモノが目の前にあった。アクロバティックな機動。正確な射撃、斬撃。どれ一つを取っても超一級品の腕前だ。普通、アレだけの動きをしようものなら操縦者の体はすぐに疲弊してボロボロになってしまうだろう。しかし、その動きは最初から最後まで崩れることはなかった。彼女たちが9人でBETAを相手にし、10体撃破すると、あの機体は20体を軽く撃破している。

 

『化け物か……』

 

 

 

『周囲にBETAの反応なし。状況終了とし、以後は帝国軍に引き継ぐものとする』

 

『了解。じゃあな~』

 

『待て!』

 

伊隅の静止も聞かずに、その不知火は行ってしまった。

 

 

◇ ◇ ◇ 

 

 

「帰ったらまた紹介する人がいるんだってさ」

 

「また? またとは?」

 

「あぁ、唯依姫の時も同じように言われたんだ。夕呼先生に」

 

マサキはトレーラーの中で唯依と話しこんでいた。

香月夕呼に横浜基地から送り出される前に言われた一言についてだ。

 

「でも補佐官ならもう唯依姫がいるしね?」

 

「は、はい。そうですよね……///」

 

マサキはシロとクロと遊んでいて見逃しているが、篁の目は嬉々としてマサキを見つめていた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「クリスカ、あれ?」

 

「そう見えてきたね。あれが横浜基地」

 

車の後部座席で国連軍のジャケットを着た2人は、社霞と同じ色の髪をした少女と女性だ。少女の名前はイーニャ・シェスチナ。イーニャは熊のぬいぐるみを大事そうに抱えている。女性はクリスカ・ビャーチェノワ。二人とも階級は少尉だ。名前からして、ソ連軍、ロシア軍あたりから来たと推察できる。

 

知る人は彼女たちの事をこう呼ぶ。

 

紅の姉妹(スカーレット・ツイン)

 

 

 

 

 

そして、その数十分前。

 

 

 

「ここが日本の横浜基地かぁ」

 

褐色の肌をした少女が車から降りて、基地を見渡した。

更に後ろから車から出てきた女性は色白で綺麗なブロンドを輝かせている。

 

「なぁステラ、ここでテストパイロットって必要なのか? 別に世界各地の戦術機が集まってるわけじゃないしよ」

 

口が悪いのは褐色肌のタリサ・マナンダル少尉。それを何も言わずに基地に目を向けるのは、ブロンドのステラ・ブレーメル少尉だ。彼女たちが横浜基地に来た理由。それはタリサが零したとおり、テストパイロットとしての着任であった。

 

 

 

横浜基地にまた新たな風が吹き込もうとしていた。

 

 

 

 

 




感想などは随時受付中です。


この作品は過去に投稿していたモノをある程度修正して投稿していますが、どれぐらい前に書いたんだろうと、ふとワードの更新日時を見ると「あの頃私は若かった」なんて本が書けそうな年月だった。人生は長いですね。
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