MUV-LUV ALTERNATIVE 救世主になれる男   作:フリスタ

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……加筆しまくってた。15000文字近くです。
読むの疲れちゃうね……ごめんなさい。




08

 

 

 

 

Side マサキ

 

「よし……シロ、クロ。行くぞ」

 

「久しぶりに喋る気がするニャ」

「みんニャの前だと、はニャせニャイからね」

 

 すまんな。いつか説明できれば良いんだけどな。でも猫が喋りますとか、異世界から来ました。とか言ったら、頭おかしい扱いされるか、大事になりそうで面倒くさい。俺はシロとクロを撫でて部屋を後にしたが、すぐに引き返してくる。

 

「おっと忘れてた。これは置いて行かないと」

 

 念の為に書置きを一枚残しておく。これで大丈夫だ。

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな……相棒」

 

 そこには封印指定された俺のサイバスターが、封印指定された時のままの輝きで俺を出迎えてくれていた。俺はサイバスターに乗り込み、不可視・ジャミング機能を起動させて、エレベーターで外へ出た。

 

「さて……煌武院悠陽殿下の下へ馳せ参じますかね」

 

 俺はこの世界に来た教訓を活かし、MAP機能を起動させ、進路を帝都へと向けた。コレさえあれば迷いませんとも。えっへん。

 

 

 

 

 

 

 

 帝都付近の演習場に灯りがある。

 

「こんな時間に演習をしているのか……帝都守備連隊ってのは、熱心だな……」

 

 まぁ熱心すぎてクーデターなんか起こしてしまうのだろう。

 

(……軽く遊んでやるか。)

 

 俺はそう思って、不可視モードとジャミングを解除する。

 

 

『―――なっ 所属不明機だと!? いつの間にこんな距離まで接近を許した!?』

 

 今の今までだよ。

 俺は念を込めて【精神コマンド】の集中をかけ、ディスカッターで目の前に展開されている数十機の不知火や吹雪を薙ぎ払って行く。集中の効果か相手が遅く見える。相手によるライフルの弾道が見て取れる。もちろんサイバスターの機体性能で十分いける。しかし、それに輪をかけて遅く感じる。遅い遅い! 貧弱虚弱ぅーっ!

 

『グッ、早いっ!! 一発も当たらないなんて!』

『下がっていろ! どこの所属か知らんが……この先へは進ませんぞ!』

 

「お? その声は……沙霧大尉か?」

 

『子供!? 私の事を何故知っている! 名を名乗れ!!』

 

 これは大当たりを引いたな。クーデターの首謀者が目の前にいるとは……。

 

「クーデター起こすの止めるなら、名乗ってやろう」

 

『っ……何の話だ!』

 

 ふふふ、そうだよな、反応できないよな。反応しようものなら、OPEN回線で演習に参加している全軍に「私、クーデター起こそうとしてますから。はい」と言ってしまうようなものだ。

 

 しかし、通常のOSの不知火でよくここまで動けるものだ。軽く振り下ろしたとは言え、ディスカッターの一撃目を受けやがった。正直言って流石としか言いようがない。俺は少しだけスラスターの出力を上げて沙霧大尉の不知火を強引に押すように倒した。

 

「その程度で帝都守備第1戦術機甲連隊にいられるんだな……クーデターも諦めろ」

 

『貴様っ! 待てっ!!』

 

 待ちません。時間は有限であり、俺には成すべき事がある!

 俺は再びジャミングなどをONにして、ラプラス・コンピュータの指し示す方へ……悠陽の下へ向かった。ラプラス・コンピュータからは軽いタッチで描かれた建物に大きめの矢印が『悠陽、ココ』と指し示している。ちなみに後ろから飛んでくる弾丸なんぞ一発も当たらない。今の俺は風だ! 何人も風を捕らえることなど出来ん!!

 

「久しぶりにノってるニャ」

「開発も面白そうだけどニャ」

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 政威大将軍 煌武院(こうぶいん) 悠陽(ゆうひ)

 

 カタンッ

 

「あ」

 

「誰ですか!?」

 

 あの日の夜、私は少し眠れずにいた。

 そんなところに物音と漏れた声が静寂の部屋に響き渡った。窓からの侵入者だ。生まれて初めての経験。物取りや誘拐などが真っ先に頭に浮かぶが……。

 

「……子供?」

 

「あ、夜分遅くにすみませんね。海堂正樹と申します。悠陽様。少しお話をよろしいでしょうか?」

 

 一見とても害があるようには見えない。しかしながら、戸からではなく窓からの侵入者だ。私はとりあえず問題があれば説得を、駄目な場合で尚且つ手に負えない場合は真耶(まや)さんを呼ぼうと思った。

 

「……このような夜更けにお話ですか?」

 

「あ~すみません。あ、敬語も上手く使えないのでお許しください」

 

「構いません」

 

 私は微笑んでしまっただろう。自分でも分かる。なんと正直で可愛らしい女の子でしょう。

 

「俺は横浜基地所属の中佐です。あ、信じられないでしょうから、これ階級章です。あ、あと最近多いので先に言っておきますけど、男です」

 

 確かに目の前の少女(?)が着ているのは国連軍の上着だ。階級章も中佐のもの。この子は……。え? オトコ? 男?

 

 コンコン

「殿下、物音がしましたが、まだ起きていらっしゃるのですか?」

 

「っ! コチラへ」

「は? いや、それはちょっと……」

 

 私は掛け布団を開き、中に入るようにマサキに言うが、困惑の表情を浮かべている。私はその手を取って引き入れた。

 

「早く」

「ちょっ……」

 

 ガチャ

「殿下?」

 

「ごめんなさい真耶さん。少し眠れなかったので、本を読んでいました」

 

「左様でございますか、失礼いたしました。お休みなさいませ」

 

 パタン

 

「……苦しかったですか? いきなり布団の中へ引き込んでしまって」

 

 良い匂いが布団に微かに残る。香水などではない……気にならない程度の香りだが、気になれば引き込まれるような香りだ。

 

 

「あ、いや、大丈夫ですけど。っと、はぇ?」

 

 布団から出てしまいそうになるマサキを手で静止させ、私はそのまま話しをするように言った。不思議と離したくない方だったのです。

 

「はぁ、悠陽様が良いと言うなら良いですけど。あ、今更ですけど『殿下』って呼んだほうが良いんですかね?」

 

「構いません。名前で呼んでください」

 

 ……私は何を言っているのでしょうか。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マサキ

 

 悠陽は随分と物腰が柔らかい気がするが……とりあえず布団から出て話さないか? 話さないか。そうか。何故、二人で同じ布団に入って話さなければいかんのだ。悠陽は名前で呼ぶことも許し、俺は悠陽様で呼んでいくことにした。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて。まずは報告です。御剣冥夜が総合戦闘技術評価演習に合格したので、近日中に衛士になります」

 

「っ ……冥夜をご存知なのですか。あの者は元気でやっていますか?」

 

「えぇ、俺はそこまで接することはないですから遠巻きにしか見てませんけどね。えっと……ご心中お察しします」

 

「無理に敬語を使う必要はありません。私と冥夜の事をご存知なのですね」

 

 まぁ大体は知ってる。血の繋がった双子ではあるけど、古より煌武院家って家には、『双子は世を分ける忌児』と言う事で、悠陽は『煌武院』で政威大将軍。冥夜は『御剣』で国連軍の衛士になろうとする身だ。偉い人たちの家柄ってのは分からないものだ。姉妹仲良く暮らせないのだから。

 

「あ、そうそう。悠陽様にお願いが……」

 

「マサキ。『様』もいりません」

 

 何言ってんだこの政威大将軍。この国で一番偉い人を呼び捨てにしろと?

 

「えっと……悠陽?」

 

「ふふふ、はい」

 

 やっちまった。まぁその偉い人の要望だし? 聞けることは聞きますよ。

 

「話を戻します。お願いがありまして、近々、クーデターが起こるかと思われますので、首謀者を説得して欲しいのです」

 

「説得ですか。何故クーデターが起こるのですか?」

 

 俺は説明した。今の現状で言うと、目の前の悠陽には権力的なものは無いに等しい。この国の象徴だということで、国民からの信頼などは厚いが、国連軍を動かすような権力は無いのだ。

 そんな中、榊の親父さんがこの国の首相をやってるワケだが、クーデターの人間からすれば悠陽、つまり殿下の考えと、榊首相のやっていることが全く違うと怒っているわけだ。『殿下の御心を蔑ろにして!』と、さっきの沙霧大尉達は怒っているのだ。そこで……

 

「では、その者達が榊首相を暗殺し、私の政威大将軍としての全権限を戻そうというのですか」

 

「そうです。まぁ悠陽様……悠陽に権力が戻るのはそれはそれで良いと思うけど、やり方が強引過ぎるし、人類同士、日本人同士で殺し合うなんてアホじゃないかと思うわけですよ」

 

 俺は『様付け』にした瞬間、ジト目で見られた気がして、呼び捨てに訂正して話を続けた。本気だこの人。

 

「クーデターの首謀者をマサキは知っているのですね?」

 

「えぇ、帝都守備第1戦術機甲連隊の沙霧尚哉大尉です。止めていただけますか?」

 

「なるほど……そういった話が出てきても不思議ではないでしょう。ですがマサキ、逆に質問をします。あなたはどこでそういった情報を手に入れて来たというのですか?」

 

 悠陽は少し考えてから質問を返してきた。まぁ当然信じられない点が多いわな。見た目子供の国連軍中佐が単身、政威大将軍の寝室に夜中に侵入しこんな話をしても……夢にも見ないだろう。

 流石は政威大将軍と言ったところだろうか。見抜く力と言うのは半端なものじゃない。これがタリサとかイーニァなら俺の言葉を信じてすぐにクーデターを止めようとするのではないだろうか。

 

「ん~、じゃあここで種明かしです。シロ、クロ」

 

 俺はシロとクロを窓から呼び出す。シロとクロはピョンっと跳ねるように窓から室内へと入ってきた。

 

「ネコ……ですか? ルナとアルテミス……」

 

「違います。月のマークなんて無いでしょう。えっと、俺はこの世界の人間じゃありません。証拠として3点。まず1点目、先ほどここに来るまでに【帝都守備連隊】と軽く交戦しました。転ばす程度で倒してきましたけどね。後ほど確認してみてください。2点目にその時に使用したのは戦術機ではなく俺の世界に(ゲームで)存在した機体です。今も外にありますけど、見ます?」

 

 俺は不可視モードだけ解除してその姿を見せた。

 

「……っ。た、確かに戦術機とは異なるようですね」

 

 俺はまた不可視モードにしてサイバスターを見えなくした。

 

「そして、最後にこのシロとクロ、喋ります」

 

「は?」

 

「こんばんニャ」

「政威大将軍殿下こんばんニャ」

 

「まぁ、このような物が今では売っているのですね」

 

「違います。抱いてやってください」

 

「……温かい。生きているのですね……では本当に」

 

 俺の目をジッと見据えて悠陽は聞いてくる。

 

「えぇ。じゃあ、また来ますね。意味無いかもしれませんけど、コレを置いていきます」

 

 俺はドッグタグを首から外して悠陽に渡す。

 

「死ぬつもりですか?」

 

「まさか、また会う時に返してもらいますよ。じゃあ、行くぞクロ、シロ」

 

 俺は窓から飛び降りて、サイバスターに乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 さて、こんなに早く終わるとは思ってなかった。

 

「マサキ、世界各地を周った方が良いニャ」

 

「何でだ?」

 

「サイバスターが日本のモノだと分かったら香月副司令が面倒ごとに巻き込まれるニャ」

 

 なるほど、世界各地で目撃情報が出ればどこの所属課全く分からない正体不明機で罷り通るか。強引だけど。よし、その案採用! 俺はとりあえず北アメリカと南アメリカとオーストラリアとアフリカ大陸をジャミングや不可視モードを解除しながら飛び回った。

 

「……ついでに近くでデータを取るか。絶対怒られるから手土産用意しないと」

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 唯依

 

 コンコン

 

 ノックをしても部屋の主からの返事がない。起きていて既に整備などをしているかと思えば、まだ今日は見ていないと整備兵たちは口を揃えて言う。

 

 では技術開発室かと思えば、そこでも同じ返答が帰ってくる。

 

「また迷子かしら」

 

 その結論は探し始めた段階で出ているのだが、日々進歩すると信じ、結論は毎回急がずにいる。そして、毎回同じ結論に至るワケだが。また、迷子ですか……。

 

 しかし、この日は見つからなかった。こんな事は初めてのことだ。

 

「中尉~。マサキ知らないか?」

 

 タリサ・マナンダル少尉は強化装備を身に着けて駆け寄ってくる。

 どうやらXM3の機動についての質問があるらしいのだが、中佐は目下見つかっていない。

 

「中尉、マサキを知りませんか?」

 

 ステラ・ブレーメル中尉も強化装備を身に着けている。どうやらマナンダル少尉と模擬戦闘訓練をしているらしい。知っていたら傍を離れないのだが……。

 

「タカムラ中尉。マサキを知らないか? 不知火の改良型を造るだとかで呼ばれていたのだが予定が変更されたらしく、いつにするのか聞いていないんだが」

 

 クリスカ・ビャーチェノワ少尉は国連軍のジャケットでノートパソコンを小脇に抱え中佐を探しているようだ。

 

「唯依! マサキをどこにやったの!?」

 

 イーニァ・シェスチナ少尉はいきなり言い掛かりを付けてきた。流石にそれはないだろう。

 

「ミサエが言ってた! 男は女の胸が好きだから、胸の大きな人に盗られるって!」

 

 美冴? 宗像美冴中尉のことだろうか。どういう経緯でそんな説明をこの子にしたのだろう。

 

「マサキを返して!」

 

「ちょっ、イーニァ! 離しなさい! んっ、駄目だってば!」

 

 イーニァは私の胸を鷲掴みにしている。私は何とか誤解を解いて中佐探しを続けた。宗像中尉には後でキツく言わないといけない。

 

「あら、篁中尉。どうしたのですか?」

 

 ピアティフ中尉は書類を抱えて途方に暮れ掛けていた私に声をかけてくれた。

 

「中佐ですか? 昨日の夜から基地を出ていると聞いていますが」

 

 え……私、何も聞いて……。

 

「私も香月副指令から聞いただけなのですが、3日ほどいないとの事で、置手紙をしていくとの事でしたが?」

 

 そんな物は今のところ見かけていない。

 さまよった挙句、中佐の部屋の前に戻る。鍵は掛かっておらず、部屋に入ると机の上に書置きがあった。

 

「何で私宛の手紙を自分の部屋に置いていくんですか……全く」

 

 

『唯依姫へ、日々の業務お疲れ様です。

 

昨日までの南の島は楽しかったかな?

 

さて、突然ですが少し遠くに出かけます。

 

2~3日で帰って来る予定ですが、その間のことはお願いします。

 

追伸:お土産買ってきます。何がいいかな?』

 

 

 手紙で聞いても答えられないじゃないですか……もう。

 

「私は中佐さえいれば、それだけで……」

「香月副司令? 誰が言いましたそんな事」

 

 いつの間にか香月副司令が室内に入ってきていた。

 

「いや~篁中尉が入るの見えたから、海堂のベッドの匂いでも嗅いでるのかな~なんて思って見守りに来たんだけどね。あ、なんなら今やってもらっても構わないわよ?」

 

「しません! 見守りにって悪趣味ですよ副司令」

 

 研究が行き詰っているのだろうか。それとも息抜き程度でやっているのだろうか。カラカラと笑う目の前の魔女と呼ばれる天才の思考や行動は読めない。

 

「でも、そろそろ中尉も階級じゃなくて名前で呼べば? 鈍感男も流石に誰かの物になっちゃうわよ?」

 

「何の話ですか!」

 

 決まっている。中佐のことだ。

 はぁ、階級が下だったら楽だったのかも知れない……無いもの強請りか。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マサキ

 

「行くぜ! コスモノヴァ!!」

 

 ズンッ! ドッゴォォォォォォンッ!!

 

 ハイヴの地上構造物であるモニュメントをコスモノヴァで消し去った。

 コスモノヴァの威力がどれほどのモノなのかの確認だったが、モニュメントを吹き飛ばす程度はそこまでの労力ではない事が分かった。まぁこれでも力はセーブして撃っているから本気(精神コマンド使用時)でかました時がどうなるかは大体想像がついた。これの本気を地上で使っちゃ拙い。

 

「マサキ! BETAが溢れ出して来るニャ!」

「気持ち悪いニャ」

 

「今日は色々とデータを取りに来たんだ。我慢しろ。数は?」

 

「反応3万。更に深部ではカウントオーバーしてるニャ」

 

 ドドドドドドドドドドドッ!!

 

 来た! 突撃級に要撃級、戦車級も大量にうじゃうじゃいやがる。

 俺はサイバスターをBETAに囲まれるようにど真ん中に移動して、ディスカッターを構えて必殺の広範囲型兵器を使用した。

 

「いっけぇー!! サイフラーッシュ!! どうだ!」

 

「一気に1万以上を消し飛ばしたニャ!」

 

 精神コマンド使わず1万か……。

 

「それにエネルギーも残弾数も回復していくニャ!」

 

 不良女神の言っていたアレか。BETAを倒すとポイントが溜まり、損傷箇所の回復・エネルギー回復に自動的に回るって言うやつか。マジで永久機関だな。

 

「しっかり記録取ってくれよ?」

 

 俺は【集中】を掛けて、重光線級の下からのレーザー雨を高速で回避していく。

 

「クロ! シロ!」

 

「ネコ使いが荒いニャ……」

 

 クロとシロのハイファミリアが無制限に敵BETA群を撃ち抜いていく。その間に俺はカロリックミサイルを乱発し、ディスカッターで要塞級を切り裂いて行く。倒しても倒しても湧き上がるように地中から姿を現すBETA群。しかし、こちらも兵器を使っても使っても回復するという仕組みだ。俺の体力に問題は全く無い。それでもBETAは突撃を繰り返す。目の前にいる異物(サイバスター)を壊すことしか命令は受けていないかのように。

 

 俺はもう一発かました。

 

「いっけぇっ!! サイフラーッシュ!!」

 

 広範囲に亘りBETAの死骸が地上を埋めていく。

 

「地上BETAの反応消えたニャ」

「マサキの言ってた通り、突撃級の装甲殻は一部使えそうな成分が含まれてるニャ」

 

 突撃級の装甲殻は非常に硬いということから、戦術機に使えないかと思ったわけだ。しかし、単純に流用しただけでは重過ぎて使うことは困難を極める。そこで、軽くて装甲が硬い部位は無いかとデータを取り始めたわけだ。他にもレーザー属種の目の様なレンズの部位。アレも興味深いので調査を進めて行きたいところだ。

 

 俺はそんな事を考えつつ、ハイヴ内へと進んでいった。データを取りながらとりあえずBETAに構わず端から端まで飛び回り、反応炉を

 

 しかし、集中が切れた瞬間だった。ふと襲ってきたその集中が切れた感覚に引っ張られる様に操縦ミスをした。ハイヴ内にいるBETAは地上にいる時と同じように空を飛ぶなんて事はない。しかし、上を見ればBETAがいる。空は飛べなくとも接地出来る場所があるならばそこを伝ってくる事は出来る。

 

 俺は降ってくるBETAへの対応に遅れ、戦車(タンク)級の雨に飲み込まれた。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ 横浜基地 ≫

 

「はぁ!? ハイヴ攻めをしてる!? どこの国よ!?」

 

「それが……どこの国も、国連も出撃はしていないとの事で……」

 

 極東の魔女はそれを聞いてはっとした。すぐに90番格納庫のデータを手元のキーボードをたたき画面に映すが、そこに封印指定しているものが消えていた。何故気付かなかったのか。

 

「あの馬鹿……」

 

「副司令?」

 

「……今は良いわ。他に何か情報とか画像とかは無いの?」

 

「ハイヴの方は無いそうですが……。ほぼ同時刻にこれが、各国地域で目撃されているらしい戦術機です」

 

 画像は少し荒れてはいるが、香月夕呼はソレを見たことがあった。

 本来であれば現在も90番ハンガーにあるはずの機体。それはまさしくサイバスターだった。しかし、それはそうだとパソコン画面に映る90番ハンガーの空っぽの映像が裏付ける。

 

「どこの国の戦術機でしょうか……ハイヴ攻略と関係があるのでしょうか?」

 

「はぁ……戦術機1機でハイヴを落とせると思う?」

 

「え、いえ……1機なら8分持てば英雄ですね」

 

 そう、戦術機1機だけという話であれば、落とす以前の問題で生き残れるはずがないのだ。補給も無く、1機だけ? そんなもの【死の8分間】すらもどんな腕を持っていようとも乗り越えられないだろう。

 

 ハイヴを落とす? 全世界の軍を動かしても絶対に落とせるとは言えない。それほどまでにBETAの巣。ハイヴとは広く、深い。その上、BETAは数十、数百万といるだろう。

 

 それを画像に映されている戦術機。もとい、サイバスターは1機でハイヴ内を進んでいるわけだが、それを知らない香月夕呼は間違いなく海堂正樹の仕業と考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マサキ

 

 ―――1日経って俺は戻ってきた。

 

 コンコン

 

「ただいま戻りました~」

 

 俺は悠陽の部屋へと窓から侵入した。

 

 ヒュッ

 

「おっと……」

 

 頭一個分をお辞儀するように高速で蹴り出された足を回避した。

 

「何者だ貴様! ここをどこか知っての行いか!」

 

 悠陽専属のメイド……というのはオルタネイティブではなく、タケルの元々の世界での設定だ。まぁ今のタケルは知らないかもしれないけどな。

 

「真耶さん! いけません!」

 

「殿下! お下がりください! 子供の姿でここまで気づかれずに進入し、あまつさえ私めの蹴りも避けた者にございます!」

 

「下がりないさい真耶さん。これは上意です」

 

「……はっ」

 

 月詠 真耶さん。月詠中尉のお姉さんだ。見た目はメガネを掛けてるか掛けてないかの違い。月詠中尉が裸眼。目の前の悠陽様お付の真耶さんがメガネ。髪を下ろしたこの人は好きかな。

 

「マサキ、失礼しました」

 

「大丈夫、大丈夫。ドッグタグ返してもらいに来たよ」

 

「貴様! 殿下にそのような口の聞き方を……!!」

 

「真耶さん」

 

「くっ……失礼しました」

 

 おー、睨まれてるよ俺。

 俺は悠陽からドッグタグを受け取り、首から下げる。

 

「時にマサキ。誤報か否か確認中の情報ですが、先ほど【エキバストゥズハイヴ】が落ちたようです。いえ、そんな事は信じがたいのですが……それに各国で正体不明機も目撃されているようですが……タイミングが良すぎる気がしませんか?」

 

「あれ、やったら駄目でした?」

 

 俺の返答に二人は驚きの表情を隠せないようだ。それもそうか、見知らぬ機体でハイヴを1日で落としてきた……子供。

 

「色々データは取れたんで、戻ってまた缶詰ですよ」

 

「……貴様の目的は何だ?」

 

「あ、先にご挨拶しておきましょうか。初めまして、横浜基地所属、海堂正樹中佐です」

 

「子供で中佐だと?」

 

 俺は悠陽に説明したようにクロとシロを呼んで説明した。

 異世界人でサイバスターに乗っていて、階級とかは夕呼先生から貰ったこと。

 

「……」

 

 何か真耶さんの目が輝いてる。シロとクロから視線を外さない。

 

「真耶さん?」

 

「っ! こほんっ そういえば、海堂正樹という者……貴様のデータは突然出てきたな……もう一人も、確か白銀武」

 

「あぁ、やっぱり城内省のデータベースとかに出るんですね」

 

「理解しがたいが、確かに納得しなければならないのかもしれないな。しかし、その言葉遣いは何とかならぬのか? 近い将来、洗練された女性になりそうに見受けられる。今のうちに直しておいたほうがよいと思うが?」

 

「必要ないですよ。俺、男ですもん」

 

「何? データベースには女と記載があったが」

 

「夕呼先生がワザとやりました」

 

「証拠がないではないか」

 

「あぁ……ちょっと失礼」

 

 俺は真耶さんの手を取り、俺の胸に押し当てた。

 

「無いでしょ?」

 

「真耶さんズルイです! ……私もよろしいでしょうか?」

 

 何この政威大将軍。

 

「は、恥じらいというものは無いのか!?」

 

 真耶さんは真っ赤になって俺の胸から手を離す。恥じらいも何も……そっちの将軍にも言いなさいよ。

 

「男ですからねぇ。……流石に下は勘弁してもらいたいですけど」

 

「結構だ!!」

 

「マサキ。コレをお願いできますか?」

 

 渡されたのは書状。手紙とか簡単なものではなく、書状だ。難しいことが長々と書いてありそうなため読まないが、政威大将軍の印が押されている。

 

「昨日お話しいただいた件です。お願いできますか?」

 

「了解しました。少しの間だけ不知火をお借りできますか?」

 

「真耶さん」

 

「かしこまりました……また戻ってくるのだな?」

 

 そりゃあ、不知火返しに戻るけど……何で確認した?

 

「月詠さんは中尉ですか? 妹さんいましたよね? そっちは中尉だったと思うんですが」

 

「む? あぁ、従妹だ。従妹の真那の階級は中尉だな。私は少し前に大尉になった」

 

 俺は「それは、おめでとうございます」と伝え、ふと、分かりやすいなと思った。

 

「あ、そうそう もう一つだけ。悠陽」

 

「はい」

 

「悠陽に政治的権限を戻すように出来るか?」

 

「私だけでは難しいでしょう。ですが……」

 

「榊首相に働きかけよう。現状から言って色よい返事は頂けるはずだ。元々、そういう話も出ていたからな。政治は政治家に続けてもらい、最終的権限は悠陽殿下にあられるようにな」

 

「それは好都合。じゃあまた行ってきますよ~」

 

 

 

 

 

 不知火の中で、俺は軽い吐き気に襲われていた。

 

 サイバスターとの乗り心地の違いで乗り物酔いなんて単純な理由じゃなかった。それで酔うと言うならXM3などのテスト段階で何回も吐いているはずだ。

 

 

 吐き気の原因はハイヴ内のBETAだ。あの時、俺は集中が切れた瞬間に戦車級にまとわりつかれた。一瞬焦ったが、サイフラッシュで吹き飛ばそうとした時に俺の目はソレを捉えて―――。

 

 サイバスターがわずかにダメージをもらっていた。喰われていたのだ。しかし、不幸中の幸いと言うべきか、サイバスターの改造はMAXだ。1匹に齧られてもダメージは1%以下だ。数百匹に齧られてやっと1%ぐらいだろうかという程度のダメージ。

 

 しかし、俺はモニターを覆い尽くす戦車級の姿に戦慄を覚えた。サイバスターの中が棺桶の中だと思った。もう一度齧ろうとする戦車級の口を見て、―――俺は笑った。

 

 ―――(こえ)ぇ……。

 

 表情はかたく、目から光は消え、口元だけに笑みを浮かべ、その内心は恐怖が支配していた。

 

 音が聞こえた。小さくカチカチカチカチ……と音が聞こえた。

 

 恐怖から自分で鳴らしている歯と歯が鳴らしている顎の震えだった。

 

 次にシロとクロが大声で俺を呼んでいるのが聞こえた。

 

「大丈夫ニャマサキ!!」

「落ち着いてマサキ!!」

 

 言われるがままにした。

 

 取りつかれても、齧られてもダメージなんてほとんどない大丈夫だと。

 

 目を閉じて深呼吸をしろと。

 

 サイフラッシュを使えと。

 

 込める魔力(プラーナ)も、敵の数も、範囲も、何も気にしないでサイフラッシュを呼吸をするように思い描くだけで良いと言われ、俺は項垂れたまま頭の中で(消えろ(サイフラッシュ)!!)と何度か唱える。

 

 もう大丈夫と、もう大丈夫だと何度か言われる。

 

 ハイライトが消えた眼を開くと、ハイヴ内とだけ分かる状態が映っていた。

 

 暗い暗いBETAの巣。それを薄らと緑色に照らすのは、サイバスターのスラスターから出る光の粒子だ。

 

 サイバスターは敵を倒した事により回復しきっていた。俺はBETAの反応が襲ってくるまでの間、膝を抱えて震えた。

 

 数分だったと思われる。BETAは再び群れをなして襲ってきた。正面からカウントオーバーの数が、地面からも近寄ってくるであろう震源が感知される。俺は精神コマンドの気迫を重ね掛け、マイナスになっていた気力を一気にMAXまで持って行く。

 

 ―――殺す。それしか頭に浮かばなかった。

 

 今度は触れさせる事もなく一匹残らず殺して進み、しばらくして反応炉を破壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ーィン、ガシャン。

 

 俺は借りてきた不知火から降りて敷地を歩く。

 

「マサキ歩かにゃいほうが良いニャ」

「オイラもそう思うニャ、近くの人に聞いた方が……」

 

「なんでだよ? 歩かないと見つけられないだろ?」

「「方向音痴だから」」

 

「ぐっ、この猫どもめ……し、しかしたまには貴様らの意見も聞いてやろうではないか。なぜなら俺は寛大な心を持っているからな」

「寛大ニャ心は知らニャいけど、方向音痴の感性も持ってるんだけどね」

 

 いつもの会話だ。それがありがたかった。おれは考えすぎないように歩みを進めた。

 

 

 

「……すまないが沙霧尚哉大尉はどちらかな?」

 

「は? ……失礼しました! こちらです!」

 

 階級章見てから反応するの止めてくれないかな……無理だよな。

 少し歩くと車があり、それに乗せてもらいここの基地の宿舎へと向かってもらった。

 

 

「国連軍の中佐殿が私に何用ですか?」

 

 沙霧は俺の姿を一瞥すると、怪訝そうな顔を浮かべながら質問してきた。

 

「昨日の件が堪えているのかな? 沙霧大尉?」

 

「その声は、昨日の!? 貴殿は一体どういうおつもりか!? あの戦術機は一体……!!」

 

「まぁ落ち着けや大尉。殿下からの手紙を預かってきた」

 

「殿下から!?」

 

 ―――数分後。

 

「確かに殿下からの書状だ。しかし……」

 

「クーデター止めろって書いてあんだろ? わざわざ書いて貰ったんだから言うとおりにしろよ」

 

「書いてもらった? 海堂殿は殿下とどのような関係なのだ!?」

 

 俺の名前は書状に書いてあったらしい。

 

「昨日会ったばかりで、名前で呼び捨てにする仲だ。んなことはどうでもいいから。どうすんだよ? クーデター起こすなら、俺は手加減なしで止めるぞ?」

 

「雪は降らねばならない……」

 

 そう、沙霧を代表とするクーデターグループは自分達を【雪】と称する。汚れきった大地に雪となり降り積もり、陽が昇れば溶けて汚れを洗い流す。つまり、榊首相などの政治権限により、悠陽の考え方を汚したものを暗殺し、権限を悠陽に戻す。そして、自分達は処罰されるというのだ。汚れは今の政治。雪は沙霧達。陽は悠陽殿下。というわけだ。

 

「随分身勝手な言い分だな。殿下のため~とか言って、結局のところ悠陽を困らせてるじゃねーか」

 

「しかし! そうでもせねばこの国は……!」

 

「それにな、お前のところにアメリカのやつも入ってるんだ。利用されてオシマイだ」

 

「なっ!? 嘘を申されるな! 我が同士は全て志を一つとし……!」

 

「他人の心なんて誰にも分からない。違うか?」

 

「……それでも。あの国賊共は消さねば……」

 

「頭の固い奴だな~。近いうちに悠陽に権限が戻る話になってるんだが?」

 

「それは本当なのですか!?」

 

「悠陽は政治に関わらないが、最終権限は持つ。今より良くなるはずだ。安心したか?」

 

「……しかし、それでも今までしてきた事に対する……」

 

「はぁ~、面倒くさいなお前。BETA滅ぼした後に考えろよ。今年中に地球から消す予定からさ~」

 

「何を言っているのですか?」

 

「聞いてないか? さっきカザフスタンにある【エキバストゥズハイヴ】が落ちたのを」

 

「聞いてはいますが、誤報の可能性が……」

 

「ねえよ。ちゃんと反応路を潰してきたんだから」

 

「……海堂中佐……あなたは一体」

 

「今は控えろ、その血は人類のために流せ。生き残ったら日本のために流せ。多分書状にもそう書いてあるだろう」

 

「……はい」

 

 ふぅ、説得って俺には向いてないんだな。よくわかったよ。

 

 

 

 

 

 

 コンコン

 

「ただいま戻りました~」

 

 俺は窓から3度目の侵入を成功させた。

 不知火を返して、じゃあまた会う時があれば、と分かれようとしたら……。

 

「斯衛に入らぬか?」

 

 真耶さん。どーしちゃったのよアンタいきなり。

 悠陽も何か言ってやんな!

 

「私も賛成です。マサキいかがですか? 私のそばで守っていただけないでしょうか?」

 

 あるぇ~。

 味方がいない。

 しかし、帝国軍からの引抜き(ヘッドハンティング)とは誰もが喰い付く内容だ。でもね―――。

 

「謹んで……お断りします!」

 

「何故だ!」

 

「横浜基地に仕事も残ってますので失礼しま~す」

 

 俺は窓から飛び降りてサイバスターで基地へと向かった。横浜基地でのんびりやるさ。……今は、今は落ち着く時間が欲しい。

 

 俺の手にはまた震えが来ていた。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 煌武院悠陽・月詠真耶

 

「行ってしまいましたね」

「えぇ……まさか断るとは……あ、消えた」

 

 窓際で不可視モードになったであろうサイバスターを二人は見送っていた。

 

「私に魅力がなかったからでしょうか?」

「それは有り得ません殿下」

 

「次に来たら……真耶さん」

「はい。鎖と手錠を用意しておきます」

 

 二人の表情は本気の笑顔だった。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マサキ

 

 さて、サイバスターの調子が微妙に悪いのは何でだろうか……?

 さっきからスラスターの調子がおかしく、出力が上がらない。

 クロとシロは口を揃えて分からないと言う。

 

『あ、それはね。あんたの調子が悪いからよ』

 

 突如、女神の説明コーナーが始まった。

 

『精神的にまいってるのよあんた』

「別にもう何でもない。……サイバスターはいつまでこの状態なんだ?」

 

『あんたが大丈夫になるまででしょうね。ちゃんと休みなさいね。それにサイバスターに乗る必要性は今は無いでしょう』

 

「まぁ……データの取り出しだけ出来ればしばらくは……」

 

 それだけ言ってフレイヤの声は消えた。

 

 俺は自分自身に対して溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪横浜基地≫

 

「マサキ! どこ行ってたんだよ! 模擬戦やろうぜ!」

「XM3の機動で質問がありまして」

「マサキ、不知火を改修する話をしたいのだが……」

「マサキ! どこの女のところ行ってたの!?」

 

「何だ何だ?」

 

「みんな中佐がいないから心配して待ってたんですよ」

 

「「「「心配してたのは中尉(唯依)だけ(でしょ?)(だろ?)」」」」

 

「海堂ぉ~? 私に話すことあるわよねぇ?」

 

 え? 夕呼先生に? 無いよ? 出かけるって事前に言ってあったじゃん。

 

「あ、いたっ、いだだだだだっ!!」

 

 俺は耳を引っ張られて執務室へ連行されていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ハイヴを落としたのはアンタね!?」

 

「Yeah~!」

 

 スパーンッ!

 

「サイバスターも持ち出したわよね!?」

 

「of course!」

 

 スパーンッ!

 

「ハァハァ……まぁいいわ。それなりのモノ持って帰ってきたんでしょうね?」

 

「落としたハイヴ内のデータ完全版と~。BETAの死骸を戦術機へ流用する案ですね」

 

「ハイヴ内の完全版!? 過去の『ヴォールク・データ』も目じゃないわ!!」

 

「隅々まで飛びましたからね~。フェイズ5までのハイヴ攻略の助けになるでしょうね」

 

「よくやったわ! で? BETAの死骸がどうのってのは?」

 

「レーザー属種のレンズと突撃級の殻の一部が使えるかな~って思いまして、少し切り取って持ち帰ってきました。最高の衛士には最高の機体に乗ってもらいたいですからね」

 

「白銀のこと? 買い被りじゃないの? 衛士としての腕はアンタの方が上でしょう?」

 

「ん~どうでしょうか。もしそうだとしても、俺の中ではタケルが世界最高の衛士ですから。まぁ完全にワンオフの機体でブラックボックス扱い予定ですね」

 

「まぁBETAまでも素材に使われちゃあね……」

 

 コンコン

 

「どうぞぉ」

 

「失礼します。資料をお持ちしました。海堂中佐お帰りなさい」

 

「や、ども~」

 

 俺は敬礼してくるピアティフさんに軽い敬礼を返してみせた。ピアティフさんニコリと笑みを浮かべて「では」と、それだけで去って行ってしまう。

 

「ふ~ん。海堂……こいつ等の事知ってる?」

 

 

 夕呼先生が見ていた資料は俺に渡される。俺が見せられた資料には、ソビエト連邦陸軍のフィカーツィア・ラトロワ中佐と、ナスターシャ・イヴァノワ大尉。統一中華戦線軍の(ツイ) 亦菲(イーフェイ)中尉の顔写真付きのモノだった。他にも技術者とかもいるみたいだけど、そっちは見た事も聞いた事もない人達だ。

 しかし、衛士に関しては知ってるも何もまたかよと思ってしまう。TEキャラ3人だ。まぁ、流石にこの基地に来るとかはないだろう。来てももうやる事がない。いや、あると言えばあるけど、今いる人材で何とかなるのだから、他の人材不足の国連軍基地に回した方が良いに来たっている。合同訓練とかなら分かるが、今度は何だと言うのか。

 

 

「一応、パイロットだけは分かりますね」

 

「この基地に配属されるわ。そろそろ来るわよ」

 

「何で!?」

 

「ソ連はシェスチナとビャーチェノワに機体を届けに来るみたいね。まぁそれは名目上の事で、実際は前のところで眼の上のたんこぶだったってことみたいね。どこの国もやる事は同じね」

 

 あぁ二人で乗る戦術機。複座型の戦術機ね。そして、人間社会だとどこの世界に行っても気に食わない人間だとかは眼の届かないところに追いやりたい気持ちは変わらないと言う事らしい。その人が正しくても、有用でも、気に食わなければ近くには置いておきたくないか……。人類の存亡が関わっていても変わらないのが人の感情か。仕方ないと言えば仕方ない事なのかもしれない。まぁ今回は優秀すぎる衛士なわけだし、こっちにしてもありがたい事だからいいが、第三者から見ればくだらないことだよな。

 

 ……だからって、何でこの基地なんだよ。女神の仕業かこれ。

 

「統一中華戦線の方はこの基地でテストパイロットをさせろ。とのことよXM3の成果ね」

 

「まぁこっちでは情報は漏れないようにしますよ。流してもいいようになったら言ってください」

 

「よろしく頼むわ……さて、で? 何があったの?」

 

「何があったって? さっき話したまんまですけど?」

 

 俺の言葉に夕呼先生は軽く溜息を吐くように呆れて見せた。

 

「(マサキ、話した方がいいニャ)」

 

 クロが俺にそう言った。俺は少し考えて、話すことにした。

 

 

「その……ハイヴ内で、BETAと戦った時に……怖くなりました」

 

 茶化すでもなく、夕呼先生は聞き続ける姿勢をとる。

 

「いやぁパニックでしたよ。前に海岸沿いでBETAと戦いましたけど、群れに覆われた事はなかったですからね」

 

 笑いながら話しても夕呼先生は笑わない。先生は立ちあがり、つまらなそうに口を開いた。

 

「私は科学者よ。慰めの言葉なんて持ち合わせてないわ」

 

 そりゃそうだ。そんな言葉は別に期待してない。何とかするのは結局俺だ。声に出して言った分は楽になったところもあるだろうからそこは感謝だ。そう思っていたら、夕呼先生は言葉を続けた。

 

「……ただ、科学者として副司令として言うとしたら、あんたは絶対必要な存在なのよ。……おかえりなさい」

 

 最後には笑みを浮かべる夕呼先生の姿に俺は小さく「ありがとうございます」とだけ答え俯いた。頭を下げたからだろう。心臓よりも下に来た頭は血が昇り、俺の顔をめちゃくちゃ熱くしていた。

 

「(よかったニャ、マサキ)」

「(うっせ……ありがとよ)」

 

 それから、取ってきたデータや、帝国軍に行ったことなどを包み隠さず話した。

 

 

 

 そして、細かな報告を続ける内に俺は気づく。

 

 ……あれ、何か忘れてないか俺。

 

「……あっ! 唯依姫へのお土産忘れた!」

 

「あら、それなら抱きつけば良いじゃない?」

 

 何を言ってるんだ。怒られるだけじゃないか。

 

Side out

 

 

 

 

 




感想などは随時受付中です。




◆暴れん坊将軍! 冥夜の姉の悠陽。タケルが冥夜持って行くなら、悠陽はマサキに付けておこう。先に会ったもん勝ちです。オマケで真耶さんも付けときます。


◆月詠 真耶(まや)さん。文字が似ていてアレだから真那(まな)さんと差別化を図るために、階級も差別化されてます。


◆ルナとアルテミス。黒い方がルナ。白い方がアルテミス。あっちは両方とも女の子だっけ? 両方とも額に三日月のマークがある。


◆サイバスター持ち出し事件! 結果として、マサキはBETAに対する恐怖を覚え、全力全壊で操縦する事が出来なくなりました。と言う設定です。気力MAXなら何とかなるけど、根本の恐怖心は消えてません。


◆唯依姫へのおみやげ。 結局なにも用意せず、夕呼先生の指示も無視です。何を貰えるんだろうという軽いウキウキワクワク感が唯依姫にはありますが、イーニァがマサキに「オミヤゲは?」と聞いた時に「あー……(スッ)突撃級の殻だぞぉ~……」と言って逃げるイーニァを追いかけ回し始めたのを見て、「あ、忘れたなコイツ」と、溜息を吐いて諦めた。という裏設定。長くなりすぎだと思い排除。

今回は割と無駄にシリアス入れてみた。無駄に入れてみた。




では、また。
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