次の日の昼、悠斗は待ち合わせのラーメン屋についた
中に入ると先に来ていた迅が来ているのを見つけて悠斗はその席に座る
「注文は?」
「トンコツ」
「しょうゆで」
店員の言葉に悠斗と迅はすでに決めていた種類を答える
「それで一体何の用だ?」
店員が離れたのを確認して悠斗が迅に問いかける
「随分急に来たな」
「お前がラーメン屋に誘うときは何か企んでる時だけだ。それにお前相手に気を使う必要なんてねぇだろ」
「相変わらず俺には厳しいな」
悠斗の言葉を聞いて迅は笑いながら答える
「へい、お待ち」
そうしていると店員がラーメンを持ってきた
「人型の近界民をうちで保護してるのは聞いてるか?」
「ああ。昨日忍田さんから聞いた。そいつが黒トリガー持ちってのもな」
「実はその近界民を狙って城戸さん一派の遠征部隊が攻めてきそうなんだ」
「それで俺に加勢してくれと?」
「惜しい」
自分の予想が外れて悠斗はあら?とつぶやく
「お前には忍田さんへの橋渡しになってほしいんだ。忍田さんたちが仲間になってくれたら確実にあいつを守れるからな」
「なるほどな。正式に忍田さんの協力を得てから遠征部隊との戦いで俺が参戦すれば……」
「違う」
迅がバッサリと返すと、悠斗はあ、そう、とつまらなさそうに呟く
「お前が手伝ってくれるのは心強いけど、それだとお前個人でこっちについたと思われるからな。忍田さんが味方をしてくれているっていうのを示したいんだ」
割とまじめな話をしながらラーメンをすする迅
悠斗もとりあえずラーメンをすすった後、口を開く
「わかった、忍田さんには連絡つけてやる。明日でもいいか?」
「おお。サンキュー」
そのあと二人は軽くしゃべりながら食事を続けた
――――――
悠斗は迅と別れた後、忍田さんに連絡をつけてから今日の晩飯を買いにスーパーに寄っていた
(今日は簡単に炒飯でも作るか)
「あら、赤嶺君じゃない」
「こんにちは、赤嶺先輩」
悠斗が夕食を考えていると、A級6位の加古望と黒江双葉が声をかけてきた
「おう、加古と双葉じゃねぇか」
悠斗も二人に挨拶を返す
「赤嶺君、晩御飯の材料を買ってるみたいだけど何作るつもりなの?」
「ああ、簡単に炒飯を……」
悠斗はそこまで言ってからしまったと心の中で思う
「ならちょうどいいわ。これから新作炒飯を作ろうと思ってるから試食してくれないかしら?もちろん材料費はおごるわよ」
女性から手料理をふるまうという独り身男性から恨みを買うような誘いを受けた悠斗だったが、冷や汗が止まらない
なぜなら加古の作る炒飯は少々独創的過ぎなのである
今まで彼女はボーダー隊員に四回ほど炒飯をふるまったことがある
その全てで全員が倒れたのである
まず堤がチョコミント炒飯、太刀川がいくらカスタード炒飯、そして再び堤が蜂蜜ししゃも炒飯というとんでもないものを出したのだ
そして四回目はいちごジャム鯖炒飯というふざけて作り出したとしか思えないものを悠斗が食したのである
そんなこともあり悠斗はこの加古の誘いを断ろうと決意する
「いや、さすがに金を出してもらうのも悪いし今日のところは遠慮しておく」
「気にしなくてもいいわよ。元々多めに作って双葉のほかに誰かに試食してもらうつもりだったから」
断ることに失敗した悠斗がまた口を開こうとしたが、その前に今まで黙っていた双葉が悠斗の袖をつかんで悠斗の顔を見上げながら口を開く
「あの、そんなに私たちと食事するのは嫌ですか?」
「そういうわけじゃ……。わかった、ご馳走になろう」
半ばあきらめながら悠斗がそういうと、双葉の表情はパァと明るくなる
(まあ、食材を買うときに多少誘導すれば被害は少なくて済むか)
悠斗がそう思ったがそうは問屋がおろさなかった
「それなら赤嶺君は先に家に帰って待ってて頂戴。ここからなら本部に帰るより近いし」
「い、いや、女性に荷物を持たせるのは男としてあれだから買い物に付き合うよ」
加古の言葉を聞いて悠斗は焦りながら反論する
「別に大丈夫よ。ごはん炊いてもらわないといけないし。それにバイクで来てるんでしょ?私たちは車で来てるから荷物のこと心配いらないわよ」
「はい。それに私も荷物持ちを頑張りますから安心してください」
そういうことではないのだあ、そこまで言われると悠斗は何も言えなくなった
そして過去にいわれた通り先に家に帰って加古たちが来るのを待った
そしてその日の夜、『サーモンカスタード炒飯』によって一人が犠牲になった