勢いとノリで書いていく小説になりますので、生温い目で見守っていただけるとありがたいです。
Sequence 01 プロローグ
深い深い闇の中、声が聞こえる。
――容体は?
男の声だ。40代から50代といったところだろうか。
声の主を確かめようと、目を開こうとするが、どうにも自分の身体が自分のものではないように動かない。そんでもって目もあけられない。
おまけに身体の感覚がない。
だが、容体というワードから察するに、恐らく医療関係者なのだろうか。
――意識がありません、危険な状態です。
次に聞こえてきたのは女性の声だ。割と若く大きいので、先ほどの男の声よりもはっきりと聞こえるのが分かる。きっと、この女の人は男のアシスタントかなにかだ。
そこでふと、疑問を抱く。
おかしいな、俺はいったい、今何をしているんだろう?
おかしいな、俺は今、医療ドラマなんて見てなかったはずだ。
おかしいな、家族で久しぶりに夜飯を食いに行くはずだったのに。
と、急に身体の感覚が戻ってきた。
やっと動けるようになる、と。
そう思ったのも束の間、全身に味わった事のないような激痛が響き渡る。
ショックのあまり身体が打ち上げられたマグロのように、ビタンビタン、と意思とは関係なく暴れ回った。
「ぐぁあああああいっでぇええええええええああああッ!!!!!!」
トイレで腹痛に喘ぐ時よりも大きな声が響く。
俺の声であることは間違いない。
「意識が!」
「河原さん聞こえますかー!?私の声分かりますかー!?」
叫ぶ俺に向かって男が声をかける。
しかし、今の激痛に苛まれる俺にとってその声は届いていないも同然であり、俺は男の声とは無関係に叫ぶ。
ふと、激痛の中で気付いたことがある。
それは、俺が何かの上に横たわっていることだ。おまけに、その何かは男と女性に押されて、俺ごと移動している。
医療関連の器具で真っ先にこの条件に引っかかるのは、病院のストレッチャー。
緊急搬送されてきた怪我人や病人を運ぶための道具である。
なんだ、なんで俺こんなもんに寝てんだ?いやまぁ、こんだけ痛いなら病院行きにもなるだろうけどさ……
俺はほんのわずかに痛みを耐えながら、動かせるようになった目を開く。
目に眩い光が入り込んでくる。
あまりのまぶしさに一瞬目がくらんでしまうものの、目の前で真剣な表情でこちらを覗き込んでいるおっさんと目が合った。
え、なにこれは。そんな見つめなくていいから(良心)
と、いつもなら冗談交じりに言っていたであろうが、痛すぎてそんな余裕はない。
しかしいったいなんで俺がこんな目に……別に悪いことなんてしてない。
ちょっとばかし小さい女の子に興味のある至って健全な大学生だ。
ホモでもないのでキリストの神様的に見ても問題ないでしょ。
なんだか冴えはじめてきた頭がいろいろくだらないことを考え出す。
その時、感覚が戻った身体が、痛み以外のものも検知した。
ぐちょり。
なぜか、わき腹が濡れている。
春だからって脇汗はこんなにかかないし、夏でもそこまで酷くない。
そもそも脇の持病は抱えていないから、こんな感覚今まで味わったことない。
非常に不快だ。
俺は頭を少し起こしてわき腹を見る。
真っ赤だ。
いつも着ているお気に入りのまっ白いパーカー。
そのわき腹部分が、赤く染まっている。
え、血?誰の?
あ、俺かぁ!
「そりゃいてぇえええよおぉぉぉおおおおおおおおおッ!!!!!!」
「河原さん落ち着いてください!もう大丈夫ですからね!」
女性……ナースが暴れる俺を押さえつける。
よりによって今割と痛い腕を押さえるので余計暴れてしまう。
そこまで来て、ようやく思い出す。
そうだ、家族と飯に行く途中、車が何かにぶつかって事故ったんだ。
痛む全身に鞭打って、どうにか冷静にナースに話しかける。
「お、父さんは?母さんは?どうなったんですか!?弟もいましたよね?ここまでボロクソ怪我してるのは俺だけですか?あぁぁいてえええぇ……」
俺の質問に、ナースはおっさんの医者と目を合わせる。
その表情は、誰がどう見ても深刻であり……つまり。
そういう事だろう。
俺は痛みも忘れて黙り込む。
顔から血の気が引いていくのはいつ以来だろうか。
こんなことって、あるのか。
溢れそうになる感情を抑えきれず、俺は「痛み」をかき消すように叫ぶ。
「ジジィ!!!!!!お母さん!!!!!!礼ぃいい!!!!!!どこだ!どこにいるんだぁあああ!!!!!!おいテメェら知ってんだろ!!!!!!今すぐ会わせろ!!!!!!放せコラ!放せよオイ!!!!!!」
「落ち着いて!大丈夫ですから!」
「認めねぇぞ!!!ちくしょぉおおおおお!!!!!!」
――――――――――
夜の病院をストレッチャーが駆ける。暴れる男を押さえながら。
この日、俺は一瞬ですべてを失った。
手元に残ったのは、辛うじて生き残った弟と、空っぽになった家。
そんな、どうしようもなく残酷な運命というヤツを恨む俺が、彼女に気に入られたのは、もしかしたら必然ってヤツだったのかもしれない。
プロジェクト・アリス、序章はいかがでしたでしょうか。
比較的オーソドックスな文章だったかと思います。
今回登場した主人公はいくはっ!