ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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 今週からリアルが忙しくなるので更新頻度が落ちます。


Sequence 09 斧と如雨露

 

 

 

 

 「捉えたッ!」

 

 

叫びながら、俺は空中で斧を一直線に振り下ろす。

重力の補正が入った重い一撃は、人間も人形も食らえばタダでは済まない。

頭に当たれば頭蓋骨ごと脳がカチ割れ、腕に当たれば一本は「もらう」ことが出来るだろう。

 

察知されたのは少し驚いたが、今の翠星石の状況では回避するには遅すぎる。

可愛い、それもまるで生きているような人形を叩き壊すのは心苦しいが、やらなければこちらがやられるのだ。

 

 

「ひぃっ!?」

 

 

翠星石はまるでホラー映画のドッキリシーンでも見せられたかのような表情でこちらを見た。

そして、せめてもの抵抗として、如雨露で身体を護ろうとする。

 

無駄ではない。

見た所、鉄製のその農具は、非常に頑丈そうに見えるため、仮に渾身の一撃が如雨露に当たったとしても彼女を倒すことは困難に近い。おそらく、ダメージの殆どをあの如雨露にとられるはずだ。

 

 

だが、いくら頑丈でも衝撃は殺せない。

得体の知れない人形だろうと、60kgオーバーの人間が高さ10メートルから追突してきたらしばらくは動けなくなるだろう。

そういった打算が俺にはあった。

 

 

 

だから。

 

 

ガンッ!!!

 

 

「ファッ!?」

 

 

俺の斧による攻撃がいとも簡単に弾かれた(パリィ)時には恐怖を覚えた。

そしてもっと恐怖せざるを得なかったのは、強い衝撃が伝わったはずの彼女どころか、如雨露まで傷一つなかった事だ。

余計な事は言わず、ヤバい、とその一言に尽きる。

 

本来ならば叩き切った後に彼女の身体をクッションにして着地する予定だった。

もちろんそんな事すれば俺の身体は無事では済まない事は容易に想像できるが、俺の怪我の治りは人より早いから何とかなる自身があった。

 

 

でも、それも今となってはどうでもいいことである。

何せ、人形製クッションプランが潰された挙句、弾かれた時の衝撃で俺はバランスを崩してしまっているのだから。

 

股の間が、ジェットコースターに乗っている時のような感覚を覚える。

キュン、とかヒュン、とかそんな感じの擬音で表わされる事が多いが、実際は音にすら表わせないものだ。

 

 

「きらきィ!!!!!!」

 

 

『マスターっ!』

 

 

咄嗟に指輪めがけて勝手につけた雪華綺晶のあだ名を叫ぶ。

すると、襲撃時に使った水晶の塔から俺の腰へと、先ほど俺を拘束していたツタが絡みついた。

まるでバンジージャンプのロープのようにツタは俺を引き上げようとしたが、どうやら肝心の引き上げる力と強度が足りないらしい。

落下速度が思っていたより減速しなかったし、ツタがぶち切れそうな音を発している。

 

わずか1秒足らず、地面まで3メートルの所でツタは千切れてしまった。

 

 

「ぐおぉお!」

 

 

マヌケな声を出して俺は地面へと着地する。

その際、足をそろえてつま先から接地、そして横から背中へ回転するように脛、太もも、背中、最後に肩という順番で転がり、衝撃を分散させた。

これは五点着地法といい、5メートル程度の高さからなら無傷で着地できるというもの・・・・・・だが、普通に痛い。

そりゃあただのちょっとネジの緩んだサバゲーマーが見様見真似の技を完璧に実践できる訳ないだろ!いい加減にしろ!

 

だが、コツは掴んだ。次は無傷で・・・・・・いや、次なんてなくていいから(良心)

 

 

痛てて、っと言い腰を押さえながら立ち上がる。

本当なら今すぐ逃げなければまずいのだが、痛いものは痛い。

とある動画で自称小学二年生がおじさんに虐待という名のプレイを、仕事で受けていた時も、本人があまりにも痛いと思ったときには小学生らしからぬ声で泣き叫んで撮影を止めようとしたぐらいだ。

俺が逃げるよりもまず腰を押さえているのだって、許される(超理論)

 

ちなみに、その動画では自称小学生よりも虐待をするおじさんを応援する声の方が圧倒的に多いことは非常にどうでもいいことである。

 

 

 

「あ、あぶねーです・・・・・・あともうちょいで翠星石の身体がカチ割られてたところですぅ・・・・・・」

 

 

一方、翠星石は直前の出来事を思い出して恐怖していた。

そのために、真下にいる俺に意識が向いていない。

 

逃げるなら今がチャンスだろう。

 

 

俺は足音を発てないように翠星石の進行方向へと逃げながら、指輪に小声で話しかける。

 

 

「雪華綺晶、メインプランは駄目だ、プランBだ」

 

 

『・・・・・・プランBなんて決めたかしら?』

 

 

恐らく指輪の向こうでは雪華綺晶が可愛く首を傾げているのだろう。

雪華綺晶が首を傾げるのも無理はない、なぜならそんなもの決めていないからだ。

 

 

「俺が囮になって奴を誘導するから君は・・・・・・」

 

 

「あ、どさくさに紛れて逃げようとするなですぅ!」

 

 

どうやら我に返った翠星石に見つかったようだ。

俺は全力で走り、息を荒げながら通達する。

 

 

「とにかく隙が出来たらとっておきをぶち込んでやれ!アウト!」

 

 

交信を終了し、俺は目の前の水晶の迷宮に入り込む。

これなら相手も安々とは追跡できまい。そうして混乱したところを雪華綺晶に攻撃してもらおう、そうしよう。

 

しかしここで一つ問題が。

それは俺もこの迷宮の地図を持っていないという事だ。

 

そもそも雪華綺晶もこんな複雑な迷路のマップを把握しているのだろうか。

 

 

だが、今はとにかく奴を迷わせることを目的に走る。

上手くいきさえすれば、今度こそ終わる。

 

そうだ勝てる、勝ってやる。

敵は全員倒す。殺してやる。

 

 

 

俺の心の奥底に灯る鈍い火が、気付かぬうちにゆらりと燃える。

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