淫夢とローゼンメイデンは偉大、はっきりわかんだね。
Sequence 13 素晴らしきこの生活
「・・・・・・朝か」
早朝、河原家。
窓から差し込む陽の光の眩しさに目が覚める。
今日は土曜日なので学校は休みだが喫茶店でのバイトがあり、二度寝はできない。
いくら叔父さんが金持ちで生活費を支給してくれたり会うたびに小遣いをくれると言っても、それだけではミリオタの財布は悲しいもので、自分で少しは金を集めないとやっていけない。
そもそも、俺の買うミリタリーグッズは全部実物なので、正直それらの金だけでも足りないのが現状だ。
今月はマグプルPTSのマガジンをセットで買ってしまったし、贅沢できない。
それはともかく、今日は10時から5時までバイトだ。時間はそれほど長くないので、楽だと思う。
現在は7時半。
とりあえずリビングに降りて朝飯を食おう。
そう考え、俺はベッドから降りて下の階へと向かう。
と、その前に、ベッドの横にある鞄に目をやる。
中身が空という事は、雪華綺晶はもう起きているという事だろう。
「おはよ~」
そう言って俺はあくび混じりにリビングの扉を開けた。
「あら、おはようございますマスター」
まず出迎えてくれたのは雪華綺晶。
ドレスの上からエプロンを着て、朝食のサンドが乗ったトレーを手にしている。
まるで奥さんみたいだぁ・・・・・・(直喩)などと思いながらも、俺は手を挙げて返事する。
「おはよう。俺今日サッカーだからもう出てくわ」
そう言ったのは慌ただしくユニフォームをバッグに詰める礼。
傍らには雪華綺晶が作ったであろうお弁当もある。
礼は地元のサッカーチームに所属しており、土日は必ずと言っていいほど練習がある。
ちなみに俺も昔はバスケをやっていたが、ひたすら走らされるのがトラウマになり、長い事バスケットボールに触れていないし、今はサバゲーで忙しい。
「あ、そっかぁ。俺も今日バイトだわ」
「知ってる。じゃ、行ってくる」
そう言って礼は玄関に向かっていった。
それを雪華綺晶が手を振って見送る。
「行ってらしゃいませ、弟様」
「いってら~」
うぃ~、と若者らしい声で礼は手を振り、家を後にした。
まぁなんと平和な一日だろうか。これこそ殺伐とした現代社会に必要な時間だ。
親は死んでしまったが元気な弟がいて、妻のような人形が飯を作ってくれるんだから、これほど充実した人生も無い。
そうそう、翠星石の襲撃の後、俺は礼に雪華綺晶のことやローゼンメイデンの事についてすべてを話した。
最初こそ幻覚を見させられてるだの兄貴は頭がおかしいだのと言われたが、雪華綺晶による上目遣い説得によって事無きを得たのだ。
今ではすっかり河原家の一員と化し、朝昼晩と母さんのようにご飯を作ってくれている。
礼も、二人きりだけよりも多い方が安心したんだろう。
俺は朝飯が乗っているテーブルの前の椅子に腰かける。
「お待たせしました」
「おぉ~、ええやん」
そう言って可愛いウェイトレスが置いたのは卵やトマトが乗って鮮やかになったサラダ。
俺と礼だけじゃコンビニやスーパーの惣菜で済ませてしまうからこれはありがたい。
雪華綺晶はわざわざ俺の隣りの椅子によじ登るように座り、予め置いていたサンドイッチを手に取る。
「さぁ、あ~んしてくださいな」
一口サイズのハムサンドをこちらに向ける。
俺はちょっと恥ずかしかったが、言う通りに口を大きく開けた。
なんだこの甘いイベントは・・・・・・たまげたなぁ。
すると、雪華綺晶は俺の口にそっとサンドを乗せてきた。
ふんわりとしたパンが舌に置かれ、俺は咀嚼する。
「うん、おいしい!」
「うふ、ありがとうございます」
いい配分のハムと野菜、そしてスクランブルエッグが味覚を刺激する。
朝からこんなに美味しいものが食べられる。
俺ぇ、しあわせですぅ~(しゃがれ声)
なによりも雪華綺晶の嬉しそうな顔が最高のスパイスと言えるだろう。
こんな事思うこと自体ちょっと自分でも引くが、可愛いんだから仕方ないね(レ)
「やっぱ・・・・・・きらきくんの料理を・・・・・・最高やな」
「まぁ、褒めても私しか出せませんよ?」
「冗談はよしてくれ(タメ口)」
何この子、朝っぱらから盛っているんだろうか。
真っ白なほっぺを紅潮させ、色っぽくこちらを上目遣いで見つめているが、さすがに朝からそんな展開は俺がついていけない。
そもそも、ご飯中にそんなはしたないことをするもんじゃない(コンサバ並感)
とりあえず俺は朝食を食べることに専念する。
これ以上この子のペースに合わせていると話が進まない。
と、そんな感じであしらっている俺に、きらきくんはスープを差し出してきた。
「冗談ですわ、いくらなんでも朝から貴方をお求めにはなりません」
俺はスープを受け取り、
「君、前科あるからね」
と言ってスープを口へ運ぶ。
オニオンスープのようで、玉ねぎの甘さと胡椒のスパイスがいい味わいだ。
ちなみに彼女は1日目の朝、礼が学校へ行った後に俺にキスを迫った。
そんなリア充の真似事なんかできない俺は、ゾンビにかみつかれている主人公並にもがいていたものだ。
情けないなんて言うなよ。よっぽど慣れてる奴でもなきゃ急に対応するなんてことはできない。
ヘタレなんて言おうものならお前ら全員下北沢に強制連行だからな。
朝食を乗り切り、俺はバイトの準備をする。
準備といっても制服をバッグに入れるだけだから1分で済む。
雪華綺晶にはその間、お留守番してもらわなければならん。
「んじゃ、行ってくるから留守番よろしく」
靴を履きながらバッグを持ってくれている雪華綺晶に言う。
「なら行ってきますのちゅーを」
「Negative(拒否)」
それだけ言うと俺は残念そうな顔の雪華綺晶からバッグを預かり、家を後にした。
そんな俺の後ろ姿に手を振る雪華綺晶は、何やら不穏な笑みを浮かべていた事には、当然気が付かなかった訳だ。