ある日の昼下がり。
俺と雪華綺晶、そして弟の礼と水銀燈が互いにペアになってテーブルを仕切りに対面していた。
雪華綺晶以外のメンバーが不貞腐れたような表情をしており、時折目を合わせたかと思えば睨みあったり舌打ちしたりする。
そんな仲、頬杖をつく礼の薬指には黒い宝石が飾られた指輪が嵌められていた。
そう、なんと礼はあの場で、あのまま水銀燈と契約してしまったのだ。
反対する俺や琉希ちゃん、それどころか水銀燈を無視し、彼女の薬指にキスをしてしまった。
その後琉希ちゃんとひと悶着あったのだが、今はこうして無事家で一家団欒(大嘘)している。
「……チッ」
っと、水銀燈が舌打ちした。
どうやら舌打ちした相手は礼らしく、本人もそれをしっかりと聞いてしまっていた。
礼はぎろりとそっぽ向く水銀燈を睨む。
そして思い切り彼女の背中に生えている羽を掴むと、一気に揉んだ。
それはそれは豪快な揉みっぷりだった。
「んぎひぃいいッ!!?」
ビクゥ、と変態ビデオでも見ているかのような反応をする水銀燈に俺と雪華綺晶も驚く。
いや、一番驚くべきところはそこではなくて、礼がこんな不良少年……いや、調教師のようになってしまったことなのだが。
「いや、やぁ、ごめんなさぁい!!!!!!」
しばらく揉んでいると、水銀燈が息を切らして礼に謝罪をする。
あぁ^~普段強がってる娘が調教されてるシーンがたまらねぇぜ。
……いやいかんいかん、礼がこうなってしまったのは俺のせいでもある。
ここは兄としてビシッと言ってやらなくては。
俺が咳払いすると、礼の興味は水銀燈から俺へと移った。
何でこの人こんな目力あるんですかね……
「おい礼、レディには優しくしてやらないとモテないぞ」
「ガタガタうるせぇんだよクソ兄貴てめぇの100倍モテるわボケ」
「なんだぁこの野郎ッ!?やんのかバカ野郎!」
「やれよ変態ッ!やってみろッ!!!」
「やってやろうやないかッ!!!!!!」
唐突に始まる迫真の兄弟喧嘩。
煽り耐性のない俺も問題だが、初っ端から喧嘩を仕掛けてくる礼サイドにも問題がある。
しばらく言い争っていると、俺の隣にいる雪華綺晶がプルプルと震え出した。
当然俺はそれに気付かず、礼と罵倒の限りを尽くしていると……
「あぁああああああああああもうッ!!!!!!うるさいです!!!!!!」
怒鳴る男二人に負けないくらいの声量で言った。
静かな不思議ちゃんキャラの雪華綺晶が突発的に怒りだしたので、俺たち兄弟はおろか水銀燈までまだ息を切らしながら驚いた顔で末妹を見ている。
なんだろう、生理かな?(クソ童貞)
「さっきから聞いていれば、やれぶち殺すだの、やれもぎ取るだの……」
「そんなこと一言もいっていないんですがそれは……」
「黙りなさいマスター」
人形によってお口チャックの刑に処される大学生。
「そもそも弟様!いくらマスターがお姉様との契約を認めないと言っても、あなたにも問題はあるのですよ!」
「は?」
何言ってんだこいつ、とばかりの顔で雪華綺晶を見る礼。
「あなたが黒薔薇のお姉様に捕まった時、マスターは真っ先に助けに向かったんですよ?結果がどうあれ、貴方はマスターに感謝すべきです」
「そうだよ(便乗)」
「マスターもです!」
「ファッ!?」
便乗していたら俺まで注意を受けた。
「貴方も弟様の事をおちょくってばかりいるからこうなるんです。だからマスターにはお仕置きです」
ドンッと重く鈍い音が響き、俺は倒れた。
雪華綺晶が俺に腹パンしたのだ。
うっ、とリアルで短い悲鳴をあげて机に伏すマスター。
主従関係が最近あやふやになっている気がするんですがそれは大丈夫なんですかね?