ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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sequence31 放課後恋愛タイム

 

 

「礼のやつ遅いな〜」

 

 

膝の上に雪華綺晶を抱きかかえながら俺は呟く。

手元にあるゲームのコントローラーを忙しなく動かしながらそんな風に心配するのはダメ兄貴である証拠だなぁなんて考えちゃう。

 

 

「黒薔薇のお姉様もどこかへ行ってしまいましたし、ね」

 

 

座る俺の膝にスッポリと収まる雪華綺晶がそう漏らす。

そういや水銀燈のやつもどっか行っちゃったな。

せっかく夕飯作ったのに勿体無い。

 

現在午後7時。

クラブがない今日ならば帰って来ていてもおかしくないが、今回ばかりは違うようだ。

まぁ理由は知ってるんだけども。そう、礼は桜田ジュンの家に調査に行っているようだった。一時間前にメールが来たのだ。

でもそれならそうと、夕飯はいるのかいらないのかぐらい書いとけっての。

 

 

「あーまた死んだ。ゲームも飽きたしなぁ」

 

 

Killed in actionという表示がテレビに映る。

ゲーム内で死んだ事をきっかけに、俺はそのまま電源を切った。

そして雪華綺晶を胸に抱えると、カーペットの上に寝る。

 

 

「あらら、マスター。御夕飯はまだですわ。寝るには早いのでは?」

 

 

クスクスと笑う雪華綺晶。

本当はわかってるくせに。

 

 

「いいや。最近雪華綺晶とあんまり遊んでないから遊ぼうかなって」

 

「あら、お優しいこと。ドールは遊ばれなくなったら死んでしまいますから」

 

 

ピトッと、雪華綺晶の小さな手が俺のほっぺに触れる。

人間のそれと変わりないそれは、女の子経験が少ない俺にとってはもう本物と変わらないようなものだ。

 

 

「んちゅ」

 

 

珍しく俺から雪華綺晶に唇をつける。

もちろん王道を往く、マウストゥーマウスだ。

 

雪華綺晶はその時だけ目を瞑って、

 

 

「うふ、甘えん坊なマスター。これじゃあどっちが兄か分かりませんわ」

 

「きらきーに甘えられるんなら弟でいいや」

 

「あらあら」

 

 

久々の甘々展開にすっかりハマる俺たち。

あぁ^〜たまらねぇぜ。

 

 

と、その時。

 

携帯が鳴る。

 

 

「Fuck」

 

「Damn it」

 

 

突然の横槍に二人して悪態をつく。

どうしてそんなところまで似ちゃったのかしらこの子は。

渋々俺は雪華綺晶をころん、と側に寝かし、起き上がって携帯を取る。

画面に表示されている名前は礼だった。

 

 

「あい」

 

 

やる気のない返事で応答する。

 

 

『俺今日飯いらないから』

 

「は?」

 

『じゃ』

 

 

それだけの会話で切れる電話。

俺も切れずにはいられない。

 

 

「おいコラァ!出ろ!携帯持ってんのか!(錯乱)」

 

 

某893のように切れるが、スピーカーからは応答がない。

あのさぁ……お前の食う時間はあんねん。でもな、俺が今この瞬間イチャイチャする時間はもう無いねん。分かる?この罪の重さ。

どうしてくれんねんこれ。

 

イライラしながら携帯を置く。

ため息まじりに、

 

 

「今日礼飯いらないって……」

 

 

寝転がっていた雪華綺晶の方を向いて絶句した。

 

 

「あら、それなら続きが出来ますわ」

 

「え、なにそれは」

 

 

なぜか雪華綺晶の服がはだけている。

なんだこれは……たまげたなぁ。

 

 

「さぁさ、マスター。この小さなママに甘えてくださいな……きゃっ!」

 

「あーもうおしっこ(意味深)出ちゃいそう!!!!!!」

 

 

雪華綺晶が言い終える前に飛びつく俺。

どうやら電話のおかげでもっと素晴らしい事ができそうです(小声)

ついでに人としての何かを失うでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなえっちいやり取りの数十分前、桜田家。

桜田ジュンと対面するように、礼はテーブルを挟んで座り、紅茶を啜っていた。

相変わらず気まずい雰囲気が流れているが、礼は気にしない。

 

 

「……うまい紅茶だ。バカ兄貴が入れるのより数倍美味い」

 

「……どうも」

 

 

紅茶を褒めると桜田がぶっきらぼうに返す。

カップの中の紅茶が無くなると、礼はソーサーの上にそれを乗せた。

 

 

「聞きたい事がある」

 

 

単刀直入に言う。

 

 

「こっちもだ」

 

 

桜田は、そんな礼に内心恐れを抱きながらも強気で返した。

 

 

「そっちからどうぞ、桜田」

 

「なら……お前がうちに来た理由を知りたい」

 

 

礼はしばし無言を貫く。

そして、

 

 

「桜田がマスターになったって聞いて。どんなもんか見に来た」

 

「……誰から聞いたんだよ」

 

「知り合いだ。それ以上は教えられん」

 

「ぐっ……」

 

 

本人は隠していたつもりなのだろう、桜田は情報源を隠された事に対してイラつく。

 

 

「こっちが聞く番だな。お前、アリスゲームをする気はあるのか?」

 

 

その質問に、桜田は難を示す。

 

 

「……分からないよ、そんな事」

 

「……そうか。そうだよな」

 

 

ある程度理解したように、礼は頷いた。

そりゃそうだ。きっと桜田も、いきなりこんなことに巻き込まれたのだろうから。

 

そんな二人を、ベッドの上に座って見届ける者たちがいる。

柏葉、真紅、雛苺の3人だ。

 

柏葉と雛苺は不安げに、真紅は落ち着いた様子で紅茶を啜りながら。

聞くところによると、雛苺は元々柏葉のドールだったようだ。真紅に負け、情けをかけられ倒されずに隷下に入る事で今もこうして動いているとのこと。

 

 

「そういうお前はどうなんだよ」

 

 

桜田が尋ねる。

 

 

「やる気だよ」

 

 

即答だった。

桜田が驚く。同時に敵意を露わにした。

だが礼は動じず、

 

 

「いつか全てのドールを倒して、あいつをアリスにする。そのためなら桜田、お前も殺す」

 

 

今度こそ桜田は明確に恐れた。

 

 

「で、でも、お前の兄ちゃんもマスターなんだろ!?」

 

「あぁ。あれは……戦わずに済むならそれに越したことはないけど」

 

 

でも。

そこから先の言葉は言わない。

 

 

「……お前は宣戦布告に来たのかしら、人間」

 

 

不意に、真紅が言った。

 

 

「いや。真意を確かめに来た」

 

「そんなことを言うお前を私が逃すとでも?」

 

 

淡々と、真紅は言う。

この場で殺すと言っているようなものだ。

 

 

「さぁ。でもただで死ぬ気は無いよ。その時はこいつと柏葉を殺す」

 

「できるとでも?」

 

「できるね」

 

「……」

 

 

緊張感が高まる。

正直言って、礼にそんな力はない。

しかし、それでもこの場を制するくらいの説得力があるのは確かだった。

それは、礼の灯りのない瞳から来るものなのか。

 

 

「……見たところ、お前は水銀燈のマスターのようだけれど。どうしてそんな眼をしてまであの娘を擁護するのか是非聞きたいところね」

 

 

真紅からの問い。

彼女の青い瞳は、礼の指輪を見ている。

 

 

「好きだからだ」

 

「……は?」

 

 

礼の解答に思わず真紅のみならず桜田までも口を出した。

 

 

「お前好きって……相手は人形だぞ?」

 

「知ってるし、それをどうこう言われる筋合いはねぇ」

 

 

堂々と言う。

唐突な告白に柏葉は顔を赤くする。

まるで少女漫画だと思ってしまった。

 

 

「私が言うのもなんだけど……物好きな人間もいたものね」

 

「自覚はある。好きになっちまったものは仕方ない」

 

 

はえ〜と雛苺が何か感心している。

 

 

「その……河原君。どんな所に惚れたの?その、水銀燈ってドールに」

 

 

興味津々と言わんばかりに柏葉が聞いてくる。

 

 

「ポンコツだけど強気で健気な所」

 

 

プッ、と真紅が吹く。

耐えきれないのか、そのまま笑い出す。

 

 

「あっははははは、はぁ、はぁ、失礼。……お前、中々あの娘のことを見てるのね」

 

「じゃなきゃミーディアムになんてならない」

 

 

真紅の口元が緩む。

 

 

「だ、そうよ。出て来てあげたら?」

 

 

と、急に真紅が誰かを呼ぶ。

向く方向は、窓ガラス。

 

もしやと思い、礼は立ち上がってカーテンと窓を無断で開けた。

しかし誰もいない。

左右を確認する。

 

ベランダを見渡すと、いた。

体育座りで真っ黒い羽に身を隠した人形が。

 

 

「……ついて来てたのか」

 

 

礼が話しかけるが水銀燈は何も言わず、顔さえ見せない。

ただうずくまってプルプルと震えている。

不審に思い、礼は水銀燈を抱き上げようとするが、激しく抵抗する。

だが思ったよりも力のないそれは、礼でも簡単にねじ伏せられる。

 

羽の間に手を突っ込み、無理やり羽をどける。

それでも手で顔を隠す水銀燈。

そのまま脇で抱え、ベッドの上に無造作に放り投げる。

 

ドサっとベッドの上に仰向けで顔を隠す水銀燈。

ささっと柏葉と雛苺、そして真紅が離れる。

 

そんな水銀燈に、礼は跨る。

彼女の手を掴むと、それを強引に引き剥がした。

 

 

「〜〜!!!!!!」

 

 

水銀燈の色白な顔が真っ赤だった。

目に少し涙を浮かべ、何か踏ん張るような表情。

でもなんだか笑顔を隠しているようにも見える。

 

 

「……乙女心がわからないわね、人間」

 

 

真紅がちょっとばかしアドバイスをすると。

水銀燈の真意に気付いた礼も顔を真っ赤にして両手で顔を隠した。

 

 

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