ひんやりした感覚で目を覚ます。どうやら床にうつ伏せで寝っ転がっているようだ。なんだ、酔っ払って道端で寝てるのか俺は。
指に力を入れ、立ち上がる。確かに頭は痛いが、二日酔いの痛みではない。物理的に殴られたような痛みだ。頭を押さえて周囲を見渡す。
「なんだこりゃ」
それが、この場所を見た感想だった。
なんだかごちゃごちゃした、汚ったない虹色の空。そして辺りに散らばる車や何かの残骸。その中に、ボロボロの銃も転がっている。何が何だか分からない。さっきまで部屋にいたのに、何だってこんな場所にいるんだ俺は。
と、一人困惑している時だった。ガサリと、近くで物音がした。そちらへ振り向いてみれば、緑色のドールが立ってこちらを睨んでいる。
「蒼星石……の2Pカラーか?」
緑服のドール。蒼星石とは違いロングスカートに、茶色のロングヘアー、そして昔のヨーロッパの農家のババァが被ってそうな何かよく分からない日除けの布。そして蒼星石とは左右逆のオッドアイ……だが顔は彼女そっくりのドール。っていうことは、彼女が噂に聞いていた蒼星石の双子の姉、翠星石だろうか。
「キィ〜!!!!!!何がルイージですか!どいつもこいつも最近の若い男は頭が沸いてる奴らばっかりですぅうううう!!!!!!」
何やら具体例を出してキレている翠星石。俺はそんな姿を見て一人大笑いする。
「すげぇ超ヒステリック!蒼星石とはまるで違うな!でもそれがいい、姉妹丼したい(直球)」
ついつい願望が零れ出る。いやぁ、蒼星石も良いけどああいうツンデレっぽい子も良いなぁ。ローゼンメイデンは7体しか存在しないくせに個性が強いらしいから困る。全員と仲良くしたいと思っちゃうアルヨ。
と、そんな人を馬鹿にするような笑いを浮かべていた時、俺の顔の横を何かが高速で駆け抜けた。
「ヒョ」
驚いて声を上げる。次の瞬間、後ろで破裂音。振り返ってそれを確認してみれば、植木鉢が壁にぶち当たって粉々に割れていた。投げたのは翠星石……まったく目で捉えられない投擲、俺でなくても見逃しちゃうね。
「決めたですぅ……お前は殺すですぅ人間!」
独裁国家並みの超スピード死刑判決を下す翠星石。それでもどこか夢見心地な俺はスタイルを崩さない。
「おーっほほっほっほそうやって気に入らない事があればすぐ殺す!だから戦争無くならねぇんだよ!ぶっ殺す!」
豪速球を豪速球で返す。争いに対する虚しさを説いたかと思えば今度は俺が戦争を仕掛ける側になっていた。咄嗟に足元に運よく落ちていたライフルを拾い上げる。ずっしりと重いそのライフルは、現代の紛争を象徴するAKタイプ。恐らくAKMだ。
そしてそれを腰で構え、翠星石に向けた。
「ひっ!?なんでそんなところに銃が!?」
「うるせー!俺は今頭に来てんだァアア!!!!!!」
叫び、引き金を引く。ガチ、という人差し指の感覚……それだけ。
「あ、やべぇ安全装置かかってんじゃんアゼルバイジャン」
右手で安全レバーを中間に入れ、連発にする。なんで使い方わかるんだって?そりゃあ俺がミリオタでAK好きだからだよ!
「オラ喰らえ!」
再度引き金を引く。けたたましい発砲音と共に弾丸が発射されるが、銃なんて適当な腰撃ちで当てられるものじゃない。弾丸は慌てる翠星石の真上を通り過ぎていく。おまけに反動がやばいもんだからどんどん銃口が上に向かっていく。しかも耳栓してないから鼓膜が痛い。
「おっおっおっおっ」
真上に銃口が向くのと弾が切れるのは同時だった。加熱した銃身からは煙が出ていて、ベーコンでも焼けそうだ。今度やってみるか。
と、どうでもいいことを思いつつ、真上から翠星石の方を見る。いない。どこかへ逃げやがった。怖気付いたな性悪ドールめ。
俺はAKを投げ捨てると、今度は近くの車のボンネットに置いてあった軽機関銃、M249を手にする。翠星石にここがどこなのかも聞きたいし、蒼星石がどこにいるのかも聞かなきゃならん。
あぶり出さなきゃ(使命感)
「はぁ、はぁ、はぁ……何なんですかあいつは」
一方、隆弘の狂気から逃れた翠星石は少し離れた車の陰に身を潜めていた。息を切らし、どこかの白パーカー変態ロリコン野郎とはまた違ったヤバイやつを相手にしてしまったことを少し後悔する。
と、そんな彼女の横に誰かが来る。ひ、と短い悲鳴をあげてそちらを見てみれば、そこには見知った顔が。蒼星石だ。
「なんだか凄い音が聞こえたんだけどどうしたの、とうわ!」
そう尋ねる蒼星石に翠星石は飛びつく。
妹の胸を抱きしめる姉は、顔を埋めしばし泣いた。そんな姉の頭を蒼星石は優しく撫でる。
「どうしたの翠星石?」
そう問いかけてみれば、翠星石は顔をあげて言った。
「どうしたもこうしたもねぇですぅ!蒼星石が目覚めたと聞いて来てみれば、もう契約しちまってますし、マスターは頭がイかれてますし、もう最悪ですぅ!」
蒼星石は苦笑いで返す。確かに、マスターは頭がおかしい。だがそれは、彼なりの構って欲しいという願望が出てしまっているだけだ。
「ごめんね翠星石。でも、マスターはそんなに悪い人じゃないよ」
「あのひょろ長メガネに撃たれたですぅ!しかも話が通じないし……あれが良い人間なわけないですぅ!」
「う、撃たれた?あぁ、マスターの夢の中にある鉄砲の事かな?」
頷く翠星石。そう、ここは隆弘の夢の中。蒼星石に会うために住居侵入した翠星石は、そこで隆弘と蒼星石のイチャラブ現場を発見、阻止するために如雨露を彼の頭めがけて投げつけたのだ。
結果、隆弘は昏睡。そして何のイタズラか、如雨露の誤作動で開いてしまった夢の扉に全員が吸い込まれてしまい、今に至る。
「あいつはやべーですぅ!普通なら如雨露が誤作動するなんてありえねーですぅ!完全にあいつの狂気に吸い込まれたですぅ!」
どうにも、そうらしい。だからと言って自分のマスターを悪く言われるのは気に入らない蒼星石。彼女は元来マスターへの忠誠心が高いドールである。
「それ以上マスターのことは悪く言わないでもらえるかな?僕としても、翠星石にそんなことを言って欲しくない」
「蒼星石は騙されてるですぅ!一緒に来るです!翠星石のマスターなら蒼星石のマスターにふさわしいですぅ!」
なおも懇願する翠星石。どうしたものか、と困る蒼星石。一度隆弘を落ち着かせて話をしてみよう、そう考えた時だった。
彼女たちが隠れている車が、少しばかり下に沈んだ。まるで人が乗ったように。
二人が見上げて見ると、そこには眼鏡をかけた悪魔が笑顔を向けていた。
同時に銃口も。
「おお愛しの蒼星石!仲良く談義中に失礼するゾ〜」
「ヒィ!?」
怯える翠星石。蒼星石が隆弘を止めようとした瞬間、翠星石が彼女の腕を引っ張って飛んだ。
刹那、さっきまで翠星石がいた場所に銃弾の嵐が降り注ぐ。この時ばかりは翠星石のヤベー奴という言葉に共感した。そして二人は一目散に空を飛んで逃げ出す。
「いたぞ、いたぞぉおおおおおおおお!!!!!!」
某宇宙人を見つけたグリーンベレーのように叫びながら軽機関銃を発砲して来る隆弘。もはや蒼星石が居ようと御構い無しだった。彼女たちのすぐ側を銃弾が通り過ぎる。
「い、一体マスターに何したのさ!?」
「知らねーですぅ!鉢植えを投げただけですぅ!」
「それが原因だよ!と、とにかく一度逃げよう!話はそれからだよ!」
そうして隆弘の元から逃げ出す二人。隆弘は飛んでいく二人を見て何かを呟いている。
「見ました……何をだ?見たんです!目だけが光っていた……」
一人二役で某映画を再現している。これはヤベー奴ですわ。
頭のおかしい人を書くのは難しいです