ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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sequence37 君の名は(劇遅)

 

「もう散々ですぅ、帰りたいですぅ!」

 

翠星石が不満を漏らす。

 

「元はと言えば君がマスターを昏睡させなければよかったんじゃないか」

 

「ええいうるさいですぅ!昏睡するのは遠野だけで十分ですぅ!」

 

「あらお姉様、いけない知識を身につけてしまったようですね」

 

一人俺だけが階段を警戒する中、ローゼンメイデン達がガールズトークをしている。内容は汚いが……ていうか雪華綺晶、自分の得意な分野の言葉が出て来た瞬間目を輝かせるのはやめなさい、ホモガキと一緒だぞ。

隆博がこの建物に入って来たことは知っている。だからこうして待ち構えているのだが……一向にくる気配がない。

 

「どうするですか!あの眼鏡人間、なんか取り憑かれてるみたいだし……」

 

「そういえば雪華綺晶。君、妹はいないよね?」

 

唐突な質問に雪華綺晶は首をかしげる。

 

「あら嫌ですわお姉様。ローゼンメイデンは7体。これ以上増えてしまったら後付け設定なんて言われてしまいますわよ」

 

「うーん、じゃああれはいったい……」

 

頭を抱える蒼星石。では彼女達が見た隆博に取り付いていたドールとは。

その時だった。突如としてけたたましい爆音と衝撃が建物に響いた。何かが爆発したようだった。すっ転んで頭を打ちながらもドールズの状態を確認する。

 

「みんな大丈夫か!?」

 

3人は転びながらも無事なようだ。

 

「きぃいいい!一体なんなんですかぁ!?」

 

相変わらずな翠星石。いったい何が起きたんだ。

 

 

 

 

外では隆博が、なにかの装置を空高く掲げて呪文を唱えていた。爆弾の起爆装置だ。

 

「アッ◯ーアクバル、アッ◯ーアクバル」

 

某テロリスト達のように言葉を唱える隆博は見ていてヤバイ。ふと、彼に取り付く紫色のドールが背後に姿を現し、爆発した建物の一階部分を唖然とした様子で眺めていた。

 

「……やはりヤバイ」

 

ボソっと呟くドール。どうやら隆博がここまでしでかすのは想定外だったようだ。

 

 

どうやら爆発により建物が倒壊しつつあるようだった。急に建物が揺れ出し、悲鳴をあげている。このままでは倒壊に巻き込まれてペシャンコになってしまう。夢の中での死は現実に直結するらしいので、つまりヤバイ。

 

「まずいですよ!」

 

俺が慌てるように言うと、雪華綺晶は窓枠から身を乗り出す。

 

「マスター、階段を降りてる暇はありませんわ。飛びましょう」

 

「え、ここ3階なんですけどそれは」

 

俺の疑問を聞き入れず、雪華綺晶は三階から飛び降りた。いや君達ドールズはある程度飛べるからいいけど俺人間だからね。良くて骨折するわそんなん。

何か喚いている翠星石を抱えて蒼星石が飛び出す。どうやら俺も飛ぶしかないらしい。

 

「あーもうおしっこ出ちゃいそう!」

 

某小学生(大嘘)のように叫びながら、俺も助走をつけて一気に窓から飛び出す。気分は合衆国エージェントのイケメン。玉がヒュンと引き締まり、宙に放り出される。なんとか五点着地をしようと試みるが、やったことないので半ば失敗、足首を痛めて地面に転がりまくる。

 

「あー痛い痛い!痛いんだよォ!!!!!!」

 

ブチ切れながら痛みに悶えていると、雪華綺晶が駆け寄って来た。

 

「落下が痛いのは分かってんだよオイオラァ!YO!……であってますよね?」

 

「こんな時に無理やり覚えたての語録使わなくていいから(良心)」

 

ちょっと彼女にはネットを控えてもらったほうがいいだろうか。

と、そんなこんなしているうちに建物が崩れていく。幸いにもこちらに倒れては来ず、垂直に地面に埋まるように倒壊した。その様子を俺たち四人は唖然として見ている。

 

「アッ◯ーアクバール!アッ◯ーアクバァアアアル!!!!!!」

 

と、すぐ近くでそんな雄叫びが響いた。見てみれば、隆博が空に向かって機関銃を掃射しながら某国のテロリストのように歓声を上げていた。なにやってんだあいつ……

しかし俺たちのことはそっちのけで、今は建物の崩壊を喜んでいるようだ。

 

「……あれ、雪華綺晶?」

 

「私はここですわマスター」

 

「知ってる。いや、隆博の後ろにきらきー似のドールが……」

 

言葉の通り、隆博の後ろにドールがいる。紫のドレスを着た、雪華綺晶に良く似たそっくりさん。かわいい。

 

「マスター?浮気はダメですよ」

 

「あいつよりもきらきーのがよっぽど怖いわ」

 

心を平然と見透かしてくるこの子が怖い。

よくそのドールを見てみれば、口を開けて建物の崩壊を唖然として見ている。きっと、隆博を操ったのはあのドールなんだろうが、予想以上に隆博がぶっ飛んだ事をするもんだから驚いたんだろう。おっちょこちょいっぽいななんか。

 

「このやろー!捕まえたですよ!」

 

と、いつのまにか翠星石と蒼星石がその紫のドールを捕獲し出した。

 

「な、なにあなたたち」

 

「もう抵抗しても無駄ですよ!」

 

「二人に勝てるわけないじゃないか!」

 

暴れる紫のドールを押さえ込む双子。まるで某スマブラみたいだぁ(直喩)

 

「あ、あなたたち二人に負けるわけ……ない」

 

「大人しくしろですぅ」

 

「可愛いドレスじゃないか、ええ?」

 

なんだか押さえつけるってより弄っているようにも見える。あら^〜いいですわゾ〜。雪華綺晶、冗談だからね。ぎゅっと指を折れるくらいまで握らないでください。

 

「何やってんだお前ら〜俺も仲間に入れてくれよ〜」

 

「な、なんですかこの眼鏡人間!?」

 

唐突に、テロリストごっこをやめた隆博がスマブラに乱入する。一際でっかい人間がドールに絡みつく……エロい!(異常性壁者)

 

「あら、帰ったら弟様と黒バラのお姉様も混ぜてああいうプレイもいいですね」

 

「兄として断固反対します」

 

この子はどこでこんなにエロくなってしまったんだろうか。

 

 

 

 

 

数分して、ようやく暴れるのをやめた紫のドール。今は翠星石の蔦でがんじがらめにされている。それがなんていうか、下品なんですけど……エロくて……勃起、しちゃいましてね(殺人鬼)

ともあれ、隆博もようやく正常に戻って今はドールの尋問中。俺と隆博はナウい息子のイキリが治らないので前屈みでそれを眺めている。

 

「やい雪華綺晶のぱっちもん!お前は一体なんなんですぅ!」

 

翠星石が詰め寄る。

 

「……パッチもんじゃ、ない」

 

ボソっと呟く紫のドール。

 

「クーデレっぽいよねあの子」

 

「縛られて尋問されるクーデレドールとかすごいすき」

 

下心丸出しの大学生がコソコソと性癖を話し合う。

 

「質問を変えよう。君の名前は?」

 

蒼星石が冷静に対処するが、紫のドールは黙ったまま。

 

「悪い子はおしおきだど〜」

 

そんなドールに、雪華綺晶は腹パンをお見舞いする。だから無理に語録使うなって言ってんじゃねぇかよ(棒読み)ていうかやることエグいな雪華綺晶。すんげぇ興奮する(リョナラー)

とうとう尋問に屈したのか、ようやく紫のドールは涙ながらに口を開いた。

 

「私は、ローゼンメイデン第七ドール……薔薇水晶」

 

「嘘つくんじゃねぇです」

 

「うぐっ……!」

 

翠星石が蔦の締め付けを強くする。おほ^〜。

 

「私が第七ドール、雪華綺晶ですわ。目の前でよくもまぁ嘘がつけますわね」

 

ニヤッと悪い笑みを浮かべる雪華綺晶を睨む薔薇水晶。これどっからどうみてもこっちが悪者なんですがそれは……

 

「非じょ〜に反抗的な態度、素晴らしい」

 

と、雪華綺晶がなぜか賞賛を送る。あのさぁ……

 

「あなたには死んでもらいます」

 

まるでヒゲクマの調教師のような事を言いながら、雪華綺晶は真っ白な水晶の剣を取り出す。お、滅多に使われないレア武器だ。

それを紫のドールの残っているもう片方の目に近付ける。ガタガタと震えだすドール。ビッグボスかな?

 

「ひ、ひぃいい」

 

情けない声を上げる紫のドール。ボロボロと涙が溢れている。また勃ってきちゃったよ、ヤバイヤバイ……

 

「次はマスターですから、お覚悟を」

 

「ひえーwwww(KNKR)」

 

そんなに怒らなくてもいいじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

地面にへたり込んで泣きじゃくる紫のドール。一応腕だけは拘束してあるが、あの様子じゃもう攻撃して来ないだろう。むしろしてきたらビビるわ、メンタル強スギィ!

 

「ローゼンの弟子ねぇ」

 

疲れたように俺は呟く。鬼気迫る尋問の結果、どうやら彼女はローゼンの弟子が作ったドールであり、姿が雪華綺晶と似ているのは彼女をモチーフにしたからだそう。なるほど、どうりで似ているわけだ。

ちなみに、今回の騒動を引き起こした理由としては、自分がローゼンメイデンよりも強いという事を示したくてやったんだとか。彼女のマスターである弟子も、俺たちには干渉するなと言っていたらしい。

 

「うええええおとうさまぁああ」

 

「おいこの子どうすんだよ」

 

泣きじゃくる薔薇水晶を指差して聞いてくる隆博。

 

「なんで俺に聞くんだよ」

 

「お前専門だろ。郁葉、なんとかしろ(丸投げ)」

 

この野郎、散々人の事殺そうとしておきながらあーでもねぇこうでもねぇ言いやがって。俺はため息をつきつつ、彼女の前まで行ってしゃがむ。

 

「ひっ!」

 

咄嗟に彼女は目を閉じて身体を強張らせるが、俺は優しく頭を撫でてあげた。そんな俺の行動に、薔薇水晶は涙を流しながらも不思議そうに俺を見つめる。やめろ、可愛いだろそういうのは。後ろで異音を出してる雪華綺晶に殺される。

 

「薔薇水晶、酷いことして悪かったな。可愛い顔してるんだから泣くな」

 

「かわ、いい?」

 

「そうだぞ。せっかくお父様に造ってもらったんだ、美人が台無しだぞ」

 

「……美人、私」

 

「そうだ。ほら笑顔笑顔」

 

むにむにっと両手で薔薇水晶の小さいほっぺを解す。すると、少しだけ彼女の顔が柔らかくなる。

酷いことをされたなら、上げるに限る。警察の取り調べでも、厳しい刑事が取り調べしてから優しい刑事がやるとすぐに犯人は口を割るもんだ。

 

「ええ……口説き始めたんですがそれは」

 

「マスター……お仕置き確定ね(ビームおばさん)」

 

後ろからとんでもない言葉が聞こえるが、今は無視。俺震えてるけど。

 

「ありがとう……」

 

薔薇水晶がにっこりと笑顔を向ける。ちょろい(人間の屑)

 

「蒼星石、泣くと美人が台無しだぞ」

 

「え、なんで今それ僕に言うの?」

 

「いや郁葉が今薔薇水晶のことこれで落としてたから」

 

「マスターって結構バカだよね」

 

「アーナキソ」

 

それは全面的に同意する。お前はバカだ。

 

 

 

 

 

 

結局、あの後吐かせるだけ吐かせた後に薔薇水晶は解放した。どうやらこの前行った人形屋が彼女のお父様らしい。隆博と話し、今度襲撃するということに決定した。今は自宅に戻り、眠れない午前二時をどうしようかと悩んでいる。

ベッドに寝っ転がっても頭が冴えて眠れない。足のダメージが現実世界でも反映されなくてよかった。

 

「あー眠れねぇ」

 

スマホをポチりながら呟く。

 

「マスター?」

 

ふと、雪華綺晶が俺の腹の上に乗っかかってきた。

 

「お、どうしました(稲荷男)」

 

「マスター、忘れてません?」

 

「なんのこったよ(すっとぼけ)」

 

ニタリと、彼女の笑顔が凶悪なものになる。ペロリと舌舐めずりするきらきーの顔と言ったらエロいエロい。あぁ、勃っちゃった……(ひで)

 

「ふふふ……お仕置き、しましょ♡」

 

「いかん、いかん危ない危ない危ない……(レ)」

 

ぐい、と雪華綺晶がナウい息子を掴み上げる。俺は声にならない叫びをあげた。当然ながら、雪華綺晶はやめてくれない。

 

「ふふ、そんな反応されると、いたずら心に火がつきますわ(サイコパス)」

 

「あぁ〜許し亭ゆるして〜!」

 

「だぁめ♡」

 

真夜中。彼女の心に着いた火は消えることを知らない。結局俺は大学に行けなかった。あーもうめちゃくちゃだよ(出席)

 


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