ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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sequence46 Love is......

 

 

 ある日の朝方、雛苺の世界。未だに目を覚まさないジュンを抱きしめながら、雛苺は深い眠りについている。

 時折無意識的に口づけしたり、匂いを嗅いだり、もう変態の領域に踏み込んだ彼女としてはこれがいつも通りであり。今日もそれが続くものだと思い込んでいた。侵入者がやってくるまでは。

 従者として動いてもらっているくんくんのぬいぐるみが雛苺を起こす。本来の雛苺であればこのように従者を使役する能力は持ち合わせてはいないのだが、彼女は今や大人。このくらいなんてことはない。

 

「来たのね、真紅」

 

 真っ先に、赤いドレスを身に纏う姉が思い浮かんだ。だがくんくんが伝えるには、敵は一人ではないらしい。雛苺の脳裏に、あの白いパーカーを着ていた青年と、同じく白い末妹が過ぎる。なるほど、真紅の目的はジュンの奪還だが彼ら外野の狙いは自分の薔薇か。

 雛苺はそっとジュンから離れると、球体関節を鳴らしながら背伸びをする。大きく実った胸が存在を主張するが、それを見せる相手は今も夢の中。あれから一回も目を覚ましていないが、栄養は補給しているので問題ないし、精神体ではなく肉体をnのフィールドへと連れてきたから精神的摩耗もかなり少ないし、補給源も確立している。全ての問題が片付き、解放された時こそ眠りの王子を起こす。そう、決めていた。

 

「戦争の時間ね、真紅」

 

 微笑で告げる。雛苺は傍に置いてある『銃』を手にすると、部屋を後にする。

 

 

 真紅とのりちゃんが堂々と表通りを歩いて行く。雛苺の世界は事前に聞いていたお菓子だらけのメルヘン世界ではなく、やや狭いがパリのような景観が連なる現実的な世界だ。きっと大人化して好みも変わったのだろう。それに雛苺はフランスにいた期間が長かったらしいし、思い入れもあるんだろうか。

 何はともあれ、俺と隆博、そして琉希ちゃんプラスドールズは、煉瓦造りの家屋の屋上からこっそりと二人を監視する。

 

「完全に囮だな」

 

 隆博が鼻で笑った。

 

「いきなり俺たちが出て行っても警戒させるだけだからな」

 

 そう言いながら、俺は手にするライフルの薬室を半分開いて弾が装填されている事を確かめた。

 nのフィールドは意外に便利である。ここは夢の世界にも似ていて、望んだものが出現する特性もあるため、こうして武器も揃えやすいのだ。ただ、各人の世界に現れるものは一定していないために、一々自分の世界から拾ってくる必要があるが。

 

「銃を使う機会が無ければ良いですが」

 

 モノキュラーを覗く琉希ちゃんが、腰のホルスターに格納されている拳銃を撫でつつ言う。彼女の専門はナイフらしいが、拳銃くらいなら海外旅行に行った際に撃ったから扱えるそうだ。俺らなんてそもそもnのフィールド以外で実銃を扱ったことがないが。

 

「望み薄だな。街がドンパチ賑やかになるのは避けられねぇと思うぜ」

 

 皮肉った笑みで隆博が言った。その手には同じくライフル、M4A1。俺と同じものが握られている。

 

「みんな見て、奥の大きな建物から誰か出てくる」

 

 監視に任じていた蒼星石が言うのと同時に、俺と雪華綺晶、そして隆博もライフルのスコープを覗いて確認する。ちなみに、雪華綺晶はローゼンメイデン用の小さなアンティーク双眼鏡。

 見えた。最も奥に位置する、ベルサイユ宮殿みたいな建物の扉が開いた。そこから出てきたのは、ぬいぐるみ数体……恐らく雛苺が使役するものだろう。

 

「チビ苺の奴、あんな力まで身につけやがって、ですぅ」

 

 同じように双眼鏡で覗く翠星石が苛立ったように言う。なるほど、純粋に力を増しただけではなく、ああ言うことまでできるようになってるのか。

 

「およそ200メートル。待て、もう一人誰か出てくる」

 

 ぬいぐるみや人形が列をなす中、大きな……といっても人間くらいの大きさの誰かが宮殿から出てくる。ウェーブのかかった金髪に白い肌、そしてエメラルドのような瞳……そして、ピンクのドレス。

 

「HVTだ、雛苺だ」

 

 俺がそう言うと隆博は口を鳴らした。

 

「マジかよ、あんなエロいお姉さんが雛苺って奴なのか?」

 

 確かに、あの雛苺は俺の知っている雛苺とはかけ離れていた。スタイルは抜群に良いし、顔立ちも良い。それにあの胸……俺、ロリコンちゃうかもしれんな。それにあのドレス、自分で作ったのだろうか。古めかしいドレスではなくゴスロリっぽい今風のものだ。それが余計に彼女の美しさを引き立てている。

 

「マスター、だぁめ♡」

 

 きゅっと、雪華綺晶が寄り添ってくる。いつものように狂気に満ちた暴力ではない。もう、彼女は俺が他の女やドールに流れないと悟ったのだろうか。

 

「私にも薔薇があれば、もっと良い女になってみせますわ」

 

 ゴクリと、生唾を飲む。殺る気が湧いてきた。

 今回の最優先目標は、薔薇の回収である。そのためならば雛苺の排除は良しとしている……いかなる手段を用いても。もちろんこの事はのりちゃんや真紅には話していない。あくまで、この3人とドール内だけでの話。いかなる手段というのは、犠牲も含めて、ということだ。その意味は……わかるな。

 

「それじゃあ俺と琉希ちゃんは行こうか。隆博、必要があれば狙撃しろ」

 

 壁にライフルを委託する隆博に言う。俺と琉希ちゃんは、今回隆博と別行動だ。銃の扱いに慣れていないとはいえ、狙撃されれば混乱するに違いない。それに、さっき皆で他のnのフィールドで試し撃ちしたら意外と当たったし、照準調整もバッチリだ、多分。

 

「ヘッドショットしか狙わねぇから」

 

「当たればいいわ」

 

 ポンっと隆博の肩を叩く。俺は琉希ちゃんとドールズを引き連れ、その場を後にする。目指すは、あの宮殿内。桜田ジュン。彼の存在はこちらにも、そして雛苺にも重要だ。

 

 

 

 

 

 「御機嫌よう真紅とのり。随分と遅かったのね。まさかのりまで来るなんて思ってもみなかったけれど」

 

 畳んだ日傘を手に、雛苺は言った。真紅は狼狽するのりを他所に、表情を変えずに対応する。

 

「ジュンを返しなさい。今なら許してあげるわ」

 

「まだそんな事を言うの?ここはね、私とジュンの愛の住処なの」

 

「あ、愛……」

 

 うっとりと何かを想像している雛苺の言葉に、のりちゃんは更に混乱した。まだ愛だの何だの想像するには、この子は経験が無さすぎる。いや、まぁ俺たちもだけど雪華綺晶とイチャラブしてるからセーフ。

 真紅は呆れたようにため息をついてみせた。

 

「のり、しっかりなさい。貴女が説得するんでしょう」

 

 こそっとのりちゃんに耳打ちすると、若々しい女子高生はハッとした面持ちで我に返り口を開いた。

 

「そ、そうだよ雛苺ちゃん!一緒に帰りましょう?ジュンくんと、またみんなで過ごすの!みんな笑って、またはなまるハンバーグ食べようよ!」

 

 うっ、と雛苺は狼狽た。はなまるハンバーグ……と呟いては首を横に振るという事を繰り返す。どうやら余程はなまるハンバーグってのが好きだったらしい。二郎みたいなもんかな?(ジロリアン)

 

「non、ダメよ。それでも帰らない……でも、そうね。確かにはなまるハンバーグは食べたいわ。あれは、ミシュランに載っているどんな料理よりも美味しいもの」

 

「そ、それなら」

 

「だからね、のり。貴女も一緒にここに住みましょう?何れ貴女もここに呼ぼうと思っていたもの。私、ジュンと巴の次にのりが好き」

 

 まさかのスカウト宣言にのりちゃんは慌てた。まさかこうして引き込まれるとは思いも寄らなかったからだ。

 のりちゃんは、桜田家においては一番雛苺に優しかったと言っても過言ではない。そして姉でもある。姉ならば、ジュンを奪おうとはしない。だからこその勧誘。

 

「ふざけた事を言わないで。のりもジュンも、人間よ。nのフィールドでは長くは持たないの。それくらい、貴女にもわかるでしょう?」

 

 真紅が噛み付く。だが雛苺は嘲笑してみせ、真紅の言葉を否定した。

 

「そんなわかりきった事、私が考慮していないとでも?甘いわね真紅、うにゅーくらい甘いわ」

 

 うにゅーってなんだよ(哲学)ていうかうにゅーっていう赤ちゃん言葉みたいなの似合わないな雛苺……なんか赤ちゃんプレイみたい。今度雪華綺晶とやろう。

 

「nのフィールドが人間から精神力と生命力を奪うならば、補充すればいい」

 

「それは……まさか貴女」

 

 雛苺の高笑いが響く。

 

「そうよ!悔しいけど水銀燈が昔言っていた事は正しかったの!必要なら他の人間を攫って栄養源にすれば良い!」

 

 雪華綺晶もやっていた事だ。人間を攫い、眠らせて養分にする。まさか雛苺がやるとは思わなかったが。

 真紅は震えた。ああ、自分が知っているあの可愛らしくて臆病な雛苺は、死んだのだと。こうも非情な、愛のためにすべてを殺す、化け物になってしまったのだと。

 

「貴女……恥を」

 

「恥を知るのは貴女よ真紅」

 

 真紅の言葉を遮り、雛苺は宣告した。

 

「私は気付いた。本当に欲しいもののためならば手段を選ぶことはしてはいけないの。あの弱い雛苺はもういない……私は、成長して大人になった。本当の意味で雛苺になったのよ」

 

 真紅は言葉に詰まる。愛というものを知らない彼女ではない。だが彼女が知っている愛というのは、もっと明るいものであったはずだ。雛苺の愛は、もはや深淵。光すら届かない、深く、暗い闇。

 そう、闇だ。彼女のは愛ではなく闇。真紅は今度こそ絶望した。

 

「そんな、そんな事をして、ジュンが黙っているとでも」

 

「真実とは、歪んでいるものなのよ。どんな時代でも人間は真実を断捨離し伝えてきた。私もそうするわ。ジュンには伝えない。ジュンは綺麗な部分だけを知っていればいい。そうすれば、幸せになれるのよ」

 

「そんなもの、幸せなもんですか!」

 

 叫んだのはのりちゃんだった。あまりの唐突性と意外性に場が静まり返った。

 

「何も知らない、愛してくれてる人が何を犠牲にしているのかも知らないで愛せるほど人間強くないの!ねぇ雛苺ちゃん、貴女はそれでいいの?このままジュンくんには綺麗な部分だけ見せて、本当の自分を見せられない、そんな悲しいままで、本当にいいの?無理だよ、いつか潰れちゃう!私だってそう!」

 

 怒涛のごとくのりちゃんは声を荒げる。が、次の瞬間には弱々しく、自分んを責め立てるような口調で言った。

 

「私ね、みんなが来る前、本当は限界だった」

 

 涙がこぼれそうになる。

 

「ジュンくんが引きこもりになって、お父さんとお母さんは仕事でいないし、私がなんとかしないとって、空回りして。でも、キツかった。自分の時間を犠牲にしてでもジュンくんのためにって、私には無理だった」

 

 でもね、と。

 

「みんなが来て、ジュンくんが明るくなって。やっと学校へ行こうって頑張り始めて……私嬉しかったんだ、みんなのおかげでジュンくんがやっと立ち直った。なのに、なのに……」

 

 震えるのりちゃん。

 

「雛苺ちゃんは、ジュンくんのためとか言って、一番やっちゃいけない事をしているの!貴女自身にも、ジュンくんにも!」

 

「のり……」

 

 そっと震える手に、手を重ねる真紅。雛苺はその姿を呆然と眺めていた。

 

「じゃあ。じゃあなによ。私がジュンの事が好きで好きでたまらないのに、それを我慢してジュンが元の生活に戻れるようになるのを見てろっていうの?私は敗者のままで真紅の奴隷で、巴や真紅がジュンと愛し合ったとしても私はただの人形でいろっていうの無理よそんなの嫌」

 

 ボソボソっと、だが聞こえる声で雛苺が呟く。変化があったのはここからだった。

 

「そんなのたえられるわけないじゃないッ!!!!!!」

 

 豪、と、真紅とのりちゃんの周りから太い蔦がコンクリートを突き破って伸びる。破片が二人を襲おうとして、真紅がのりちゃんの首ねっこを掴んで退避した。

 

「くっ!雛苺!」

 

 襲いかかる蔦を薔薇の花弁で相殺しようとするも相打ちにもならずに蔦は伸びてくる。真紅とのりちゃんは空中に逃げ、それを蔦も追おうとして……

 

 ヒュンッ!パシィ!

 

 雛苺の頭のすぐ横を何かが通り抜けた。目を見開いてそれが飛んできた方を見てみれば、家屋の屋上に何かいる……隆博だった。

 

「クソ、外した!」

 

「着弾右に30センチ!」

 

 狙撃に失敗して焦る隆博と、それをサポートする蒼星石。雛苺は二人の襲撃者を睨む。だが、幸い真紅とのりちゃんへのターゲティングが外れたことにより、二人はなんとか体勢を取ることができた。攻撃するしかない自分に不甲斐なさを感じながらも、真紅は腹を決める。

 だが、構える真紅に雛苺は大笑いしてみせた。

 

「何がおかしいの!」

 

 尋ねる真紅に雛苺は答える。

 

「あーははっはははは!ははぁ……真紅、やられたわね。貴女達、囮にされたのよ」

 

「そんな……河原さんが?でも、説得して、雛苺ちゃんとジュンくんを取り戻すって」

 

「のり、だめよ人間を信用しちゃ。あんな奴ら、何をするか分からない。特にあの白い男……今なら分かるの。奴は私と同じ。愛のためなら殺しだってするわ」

 

 見抜かれる俺の心なんてどうでもいいが、のりちゃんはショックを受けた。だが真紅は何となくそれを理解はしていたようで、顔をしかめただけ。

 隆博はその間にも狙撃を続ける。

 

「残念、もう弾がどこから来るか分かるもの」

 

 雛苺は日傘を広げて自身を狙撃から覆い隠す。放たれた5.56mm口径の弾丸は日傘にいとも簡単に弾かれた。

 

「防弾かよ!ずりいぞ!」

 

「っ!マスターまずい!」

 

 蒼星石が危険を察知して隆博の手を引く。それと同時に、隆博がいた場所に蔦が突撃してきた。

 驚く隆博。蔦がぶつかった床を見てみれば、無残にもレンガは粉砕されていた。これが人間だったなら……やべぇよやべぇよ、と隆博は困惑する。

 

「クソが!これでもくらえ!」

 

 セレクターを切り替え、連発して蔦へと弾丸を放つ。だが奇妙なことに、蔦の着弾した部分からは血が流れてきた……どうやらあの蔦、植物のようだが肉らしい。触手ってやつだ。

 

「うわきめぇ!」

 

「逃げるよ!」

 

 蒼星石とともに屋根伝いに逃げる隆博。どうやら弾丸は触手にダメージを与えていたらしく、弱ったように触手は逃げていく……が、新たな触手が二人を追う。

 

「精々逃げなさい、興味ないから。さてと、真紅」

 

 逃げていく隆博と蒼星石に目もくれず、雛苺は真紅とのりに向き直る。ぬいぐるみたちも真紅達を前に構えた。

 

「貴女達は逃がさないわ。真紅はジャンクに、のりは死体に。幸せを邪魔する二人には、消えてもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 宮殿内は異様に静かだった。外では何やらどんぱちしているらしいが、ここではそんなものありはしないと言ったように何もない。妨害ぐらいはあると思ったが……

 部屋を一つ一つ回る。扉を開け、特殊部隊さながらに静かに突入することを繰り返している。

 

「マスター、何やら力がこちらから流れていますわ」

 

 不意に背後の雪華綺晶が言った。もしかしたら、力を行使した雛苺にジュンくんがエネルギーを回しているせいで探知したのでは。俺と琉希ちゃんは顔を合わせてそちらへと向かう。

 廊下をしばらく走り、大きな扉へとたどり着く。

 

「いかにも怪しいな……」

 

「何かあるのは間違いないでしょう。力の源はここで間違い無いのですね?」

 

「はい。ここからかなり強力なエネルギーが……複数?」

 

 なぜか首をかしげる雪華綺晶。どうやら何かおかしいらしい。

 

「妙ですね。どう考えてもチビ人間だけでまかなえるエネルギーじゃねぇです」

 

 同じように翠星石も何か思うところがあるらしい。

 

「俺が先に入る。合図したら来てくれ」

 

 扉の横に張り付き、そう言うと琉希ちゃんが頷いた。彼女はドアノブに手をかけ、静かに、そして一気に開ける。同時に俺は中へと突入した。

 右を見る、クリア。左を見る。クリア。かなり大きな部屋だ……最後に部屋の奥を見て、俺は固まった。

 

「What the……」

 

 思わずにわか英語が出るくらいには驚いてしまった。いつまで経ってもクリアと言わない俺を案じて、琉希ちゃん達も中へと侵入する。そして同じように固まった。

 

「え、これ、人間……?」

 

 珍しく驚いたように琉希ちゃんが呟く。

 

「う、な、なんなんですかこれ」

 

「これは……」

 

 それは、大きくて太い蔦。だが、ヤバいのはその蔦に大勢の人間が絡まっているということだ。しかも皆意識がないようでピクリとも動かない。ざっと見ただけで二十人は捕まっているに違いない。

 

「まさかこれで補給してんのか……?」

 

 ふと、雪華綺晶がしていた事を思い出す。自身の存在を維持するために、過去に彼女は人間を推奨に閉じ込めていた。

 

「間違いありません。……嫌な事を思い出させますね」

 

 雪華綺晶の目つきが鋭くなる。

 

「安易に近づかないほうがいいでしょう。この蔦は、多分雛苺の意思で動いているに違いないですから」

 

 確かにその通りだ。俺たちが不用意に近づいて捕まったなんてとんでもないから。それに、言い方は悪いがこいつらはどうでもいい。

 

「助けないんですか?」

 

 翠星石が言う。

 

「ああ。だがまぁ、ここから力を補給してるのは確かだ。破壊する必要はあるだろうな」

 

 そう言って俺は背負っていたリュックを降ろして中身を漁る。出てきたものは、レンガブロックくらいの大きさの粘土のような塊……C4だ。これも隆博の夢の中に落ちていたものだ。

 

「必要に応じて爆破しよう」

 

「ちょ、そんなことしたらこいつら死んじゃいますよ!」

 

「分かってる。起爆は俺がやる」

 

 必要な事だ。やるしかないのだ。自分にそう言い聞かせる必要すらない。

 

「イかれてるです!琉希も止めるです!こいつ人殺しになりますよ!」

 

 そう言われ、琉希ちゃんは困惑していた。俺のやろうとしていることは人道的には悪だ。だが、そうでもしないと雛苺を倒せるか分からないのも事実で。

 

「大丈夫だ。殺すのは俺だ、君は何もしない」

 

 それを察して俺は声をかける。琉希ちゃんは黙った。

 

「マスター、無理しなくてもいいんですよ」

 

 ふと、爆薬に雷管を刺す俺に雪華綺晶が言った。

 

「してないさ。言っただろ、一緒に地獄へ行くって」

 

「……大好き、マスター」

 

 雪華綺晶が頬に唇をつけた。俺は爆薬を蔦へと放り投げる。本当に、この子は愛くるしい。

 

 ふと。

 

 

 そういえば、雪華綺晶のボディはまだ寄せ集めで作ったものだったなぁ。

 

 

 

 雛苺を倒す理由がまた一つ増えた。

 

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