ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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タイトルもひどけりゃ内容も酷い


sequence57 お朕朕ランド

 

 

 

 胸騒ぎがしていた。いつも通りの生活を送り、こうして大学から帰って蒼星石に迎えられる素晴らしい日々。天気はRUさんがプハーッてしそうなくらい良いし、特段トラブルを抱えている訳でもない。

 しかしなぜだか分からないが、胸騒ぎがする。同時に、墓場まで持っていくと決めていた秘密がこういう時に限って頭を過るのだ。表情には出さないようにしているが自分の事だ、きっともう態度にそれが表れて蒼星石にも気づかれているだろう。時折彼女はちょっぴり不安げな表情でこちらを覗く。

 スマホを手にする。数少ない履歴を開き、その中の一つを凝視した。数分そうして、俺はタバコを手にベランダへ向かう。蒼星石はいつものように洗い物をしてくれているから問題ないだろう。

 淫夢厨、と表示された履歴をタップする。するとプルル、という音と共にコール音が鳴り出す。

 

『はい新宿調教センター』

 

 電話からした声を聞いてからスマホを耳に当てる。

 

「すいませ〜ん、木ィノ下ですけど〜、例の化け物の件、まぁだ動きはありませんかね〜?」

 

 語録には語録を。すると電話の声はやや上機嫌で言葉を返した。

 

『あ、そうだ(唐突)例のバケモン、どうやら接触するみたいっすよ。やっちゃいますか?やっちゃいましょうよ〜!』

 

 俺としては聞きたくない答えが返ってくる。少しだけ考えてから返答した。

 

「んにゃぴ、今は静観が一番ですよね。あいつも雪華綺晶がいるし、タカキも頑張ってるし!」

 

『タカキは休め』

 

 定型文が返ってくる。それはどうでもいい。だが、事態は己が思っている以上に芳しくない。今はアリスゲームの事と謎の襲撃者で忙しいというのに。

 ため息を電話先に聞かれないようにしつつ、俺は口を開く。

 

「後藤さぁん?(ねっとり)後藤さんが調べてた……例の襲撃者。結局検討はついたんですかぁ?」

 

 ノンケ向けビデオでよく目にするあのイケメン男優を真似ながら尋ねる。

 

『道が混んでましてぇ〜』

 

 つまりはまだ分からないと。嘘をつけ、このクッソ汚い本格的うさぎめ。こいつは信用は出来ない。野獣先輩新説シリーズよりもあてにならない。いやあれはうそっぱちもいいところだが。

 俺は表立って対立はしないように言葉を返すことにする。今のところ、こいつは役に立つ情報源だ。

 

「嘘つけ絶対知ってるゾ」

 

『ファッ!?いきなり嘘つき呼ばわりとか頭に来ますよ!あのさぁ……前にも言ったけど、あの襲撃はアリスゲームとは直接関係ないって』

 

「それ一番言われてるから」

 

「最後語録取られちゃったよ(現ちゃん)」

 

 イマイチ要領を得ないが、まぁ俺や琉希、そして桜田家に被害がないということは関係していないのだろう。きっと、河原家の問題に違いない。あいつは知らないところで敵作りそうだからな。

 と、考えているところでクソうさぎが何か言い出す。

 

『もう電話切っていいですかね……?今野獣先輩ローゼン説の動画作ってて忙しいんですけど』

 

「お前が作ってたのか(困惑)」

 

 意外なところに動画投稿者がいたもんだ。今度検索してみよう、どうせロクでもないガバガバアナルグラムで強引に終わらすんだろうから。

 電話を切ってタバコを咥える。火をつけて一服。夜空を見上げながら一人黄昏るが……しばらくしてスマホのアルバムを開いた。数秒操作して出てきた写真。それは若かりし自分と郁葉、そしてもう一人、ごく普通の少年が写った思い出。

 

「賢太くぅん、あんま調子こいてっと殺すぞ(ピネガキ)」

 

 殺さないでくれ〜という声が聞こえるはずもなく、独り言は空に消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地元の駅で下車し、いきなりキスしてきた少女と二人で歩く。礼には友達と飯行くから帰りが遅くなるとメールしておいたから大丈夫だろう、多分。さすがに雪華綺晶に今の状況を教える気にはなれない。多分出会い頭また殺意満々でこの子に攻撃するだろうし。

 少女に連れられ最寄りの喫茶店に入る。バイト先でも良かったが、マスターに見られるのは色々不味い。雪華綺晶にコーヒーと紅茶の指南をしているらしいから、ちょっとした拍子にバラす可能性がある。そうなったら、怖いでしょう……(城之内)

 

「さ、僕の奢りだ。好きなの頼んで」

 

 ワクワクしたような笑みで対面に座る少女。うーむ、ボーイッシュ属性は蒼星石と被るが、ちょっとスレた感じがなんかこう、良い(クソザコ語彙力)

 俺はお言葉に甘えてカフェオレを頼む。あんまり苦いのは好きじゃない。すると彼女も同じものを頼んだ……その表情は慈愛に満ちている。ていうか、なんか若干怖い。なんでだろう。

 

「さっきはビビってお誘いに乗っちまったが……話してくれるんだよな?」

 

 あくまで警戒心を抱きながらそう尋ねると、少女は笑顔のまま頷いた。

 

「そのために君に会いにきたんだからね。どこから始めようかな……」

 

 悩むそぶりを見せて考え出す少女。なんだかその仕草が様になっている。どうやら何から喋ったら良いか分からないようなので、仕方無しに助け舟を出す。この子意外にもアホなんだろうか。

 

「えっと、じゃあまず身長、体重、年齢を教えてくれるかな」

 

「身長が165センチ、体重が45キロ、20歳……ふふ、何このインタビュー?これから僕君にいたずらされちゃうのかな?」

 

 によによしながらそう言う彼女。ノリノリで答えているあたり元ネタは知ってるっぽいな。クソ、いたずらとか想像しちゃうだろ!良い加減にしろ!

 

「まぁいいや……じゃあ本題な。お前は一体なんなんだ?なんで俺を助けた?」

 

 すると少女は笑みを浮かべながらも真面目な表情で答える。

 

「うん。じゃあまず僕が何者なのか、からだね」

 

 そう言って彼女は両手を机の上に乗せる。

 

「ねぇ、手……出して?」

 

 物欲しそうに言ってくる。俺は一瞬どうするか迷ったが、左手だけテーブルの上に乗せる。もう片方はいつでも銃が抜けるように机の下。

 ゆっくりと彼女の両手が俺の左手を包み込む。さすったりくすぐったり、なんだか恋人にするように……なんだこれすげぇ恥ずかしいんだけど。雪華綺晶に今度やってもらおう。

 

「他の女の子の事考えるのは感心しないなぁ」

 

「え?あ、はい」

 

 素が出てしまう。しょうがないさ。

 

「ふふ、別にいいけどね。さて、あらためまして郁葉。僕は……賢太。そう言えば分かるかな?」

 

 頭が真っ白になった。人間というものはあり得ない状況に陥るとそうなりやすい。理解を超えた現象が起きてしまうとフリーズしてしまうのだ。そんなはずないという否定と、そうであったならという期待が混じる。

 恐る恐る口を開く。

 

「……死んだはずだ」

 

「うん。高校の時にね。ごめんね、あの時は。いきなりあんなこと言っちゃって」

 

 そう言う彼女……いや彼は切ない笑顔を見せる。なるほど、だからか。だからこうして手を握ってきたし、抱きついてもきたのか。え、ていうか俺男とキスしたの?

 色々な現実を処理していると賢太が言った。

 

「郁葉のキス、ご馳走さま」

 

 語尾にハートマークが見える。

 

「どうして生きてる?そもそも、なんだその姿は?あの猫は?」

 

 警戒心を捨てて質問を投げかける。

 

「まず、どうして生きてるのか……それは僕にも分からない」

 

「死体を見た……確かに死んでたし、葬式もしただろ?」

 

「うん……どういうわけか、死んですぐに僕は復活した。そして鏡を見て、自分がもうすでに僕の知る御門 賢太でないことも理解したよ。今の戸籍は、まぁ、その、色々あって買ったものだよ。わざわざ改名までしたんだよ?」

 

「あの化け猫モードは?」

 

「生き返ってから、気がつけばああいう力が備わってたんだ。僕自身、自分の身体の事がわからないんだよね」

 

 自身の異常性、と言うことについては俺にも心当たりがあった。それは俺の異常な回復力だ。雪華綺晶曰く、尋常ならざる生命力。もしかしたら、そういった超常的なものかもしれない。

 

「俺を助けたのは……やっぱり?」

 

「……胸騒ぎがして、あそこへ行ったらたまたま。大切な人が危険な目に遭ってたら誰だってああするよ」

 

 確かに俺も雪華綺晶が危険な目にあってたら問答無用で助けるだろう。結果的に人を殺すことになったとしても、それはそれでいい。要は守れるか否か。

 

「……まだ、俺のこと、あれなの?好きなの?」

 

 そわそわとしながら尋ねる。賢太は恥ずかしそうに頷いた……ヤバイ、男とわかってるのにクッソ可愛い。勃ってきた。手を握られてるのも関係してるに違いない。この野郎、マニキュアなんてしやがって!握らせるぞ!(意味深)

 冗談はさておき、俺はちょっと複雑な気持ちになる。当時高校生だった俺は賢太に告白された。根っからの淫夢かつレスリング厨だった俺はそっちのネタかと思って振ってしまったのだ……語録で。結果的に本気の告白を冗談で振られた賢太は、クラスメイトにそのことを理由にイジメられて自殺……したはずだったのだが。

 

「……そんなに見つめられると恥ずかしいな」

 

 男の娘になって帰ってきた。これはもしかすると……もしかするかもしれませんよ?(クソムリエ)

 

「一つ、聞きたいことがある」

 

「なんでも聞いて?」

 

 ん?今なんでもって……いや、いやいや語録は封印しろ。まじめに話そう。

 

「ローゼンメイデンって知ってるか?」

 

「うん。生きた人形。人形師ローゼンの悲願のために戦う乙女……真紅からはそう聞いてる。あ、真紅っていうのは」

 

「いや、そいつは知り合いだ。もういい」

 

 なるほど。真紅が家出したってのは聞いてたが、まさか賢太の家にいるとはな。しかしここまで聞いてもまだ疑問がある。

 

「お前はその……契約はしてないようだけど……アリスゲームをするつもりはあるのか?」

 

 賢太は首を勢いよく横に振った。どうやら俺と敵対するつもりは無いらしい。それはよかった、あんなに強い猫と戦うのは至難の技だろうから。

 

「それで……俺と接触した理由は?」

 

「その……真紅に焚きつけられて。想いを、もう一回伝えたくて」

 

「悪いが、俺にはもう……」

 

「知ってる。雪華綺晶ちゃん、だっけ?すごく仲が良さそうだった。公園でデートしてるの見たよ」

 

 ヤベェ見られてた。まぁいいや、あれだけイチャついた光景を見ればきっと賢太も諦めて……

 

「でも!僕は諦めきれない!2番でいいから郁葉のそばにいたいんだ!」

 

 唐突に叫ぶ賢太。周りがざわつく。おまけにカフェオレを持ってきたウェイトレスも困惑している。ヤバイ、めっちゃ目立ってるよこれ。

 

「あ、ちょっと一回落ち着いて」

 

「郁葉、僕を愛人にして!身も心も君に捧げるよ!だから!ね!」

 

「賢太くん!頼むから黙ってくれ!君は色々病気なんだ!病室へ戻ろう!」

 

 周りから最低、という声が。今の俺は美人をたぶらかす最低男らしい。いやちょっと待ってくれ、こいつは男だし俺は一途だ。多分。いや男ならノーカンかな?俺結構男の娘ものの同人誌好きだったりするし。いやだってさ、どっからどう見ても美少女にしか見えない子にアレが付いてたら逆に興奮しない?するんだよねェ!やっちゃって、いいんだよねェ!

 

「賢太、分かった。一回落ち着こう」

 

「う、うん」

 

 周りのざわめきをようやく理解した賢太は顔を真っ赤にして俯く。クソ、男なのに可愛いなこいつ……

 とりあえずお互いカフェオレを飲み、一呼吸。人間の興味なんてすぐに冷めるようで、もう周りの客は俺たちの事なんて気にかけていない。俺は頃合いを見計らって口を開く。

 

「その、だね。お前の気持ちはよぉく分かった。俺もまぁ、男の娘は嫌いじゃないからさ……でも、あれなんだ。俺の嫁さん怖いし、それに……決めたんだ」

 

 真剣に、真っ直ぐに。

 

「俺は雪華綺晶をアリスにして添い遂げる。人形や人間は関係ない。それでもお前は俺についてくるのか?多分……いや絶対、お前は一番になれない。それでもついてくる意思はあるか?命を俺に捧げる事ができるか?」

 

 賢太はしばらく黙り、同じく真剣な面持ちで言葉を返す。かつてそうであったように、誠実で真面目な賢太がそこにいた。

 

「僕は僕のために、君に忠を尽くすつもりでいる。たとえ捨て駒にされようとも、君が命じるままに生きるつもりだ」

 

 思わずため息が溢れた。こいつは忠だのなんだの真面目すぎる。俺みたいな極悪ロリコン犯罪者相手に尽くすことなんてないのに。もっと利己的に動いてもいいのに。

 俺はレシートを手にすると、左手で賢太の手を握って立ち上がる。

 

「じゃあ、ホテル行こっか(ねっとり)」

 

 ダダ漏れの下心。ここまで突き抜けてこそ人間なのだ。賢太は満面の笑みで、

 

「もう漏れそう(せっかち)」

 

 お互い同意の元、夜の街へと消えていく。結局帰ったのは朝……講義が昼からで良かったが、それ以上に問題があった。それは……雪華綺晶の魔の手からは逃れられない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の街、お城のようなホテルの屋上にてうさぎは焦ったようにスマホを耳へと押し付けている。その動きは珍しく落ち着きが無い。数回のコール音が鳴り響く。ほんの数秒だが、今は一分一秒でも惜しいくらいだ。

 想定外とはまさにこの事だろう。まさかあの正統派である真紅が賢太の性事情を知ってもなお嫌悪するどころか応援するとは。しかも化け物と評されていた御門 賢太は河原 郁葉の手中に落ちた。彼からしてみればこれはアリスゲームどころの騒ぎではないのだ。

 ようやく電話のスピーカーから声が響く。どうやら寝起きのようだったが、うさぎには関係ない。

 

「あ、もしもし!ローゼンさんですか?ちょっと野獣の淫夢本編が発掘された時以上にヤバイことになってるんですが」

 

 ちぐはぐな語録でそう伝えれば、電話の主は疑問形で尋ねてくる。

 

「あのさぁ……情けない情報量恥ずかしくないの?あの化けモンがとうとう変態ロリコン大学生に接触しちゃったんだって!しかも満更でもない感じでイチャつきはじめてホテルで盛りあってるし……ドウスレバエエ?(関西おばさん)」

 

 ファッ!?という驚きの声がスピーカーから響く。同時に雪華綺晶は?嫁じゃなかったのか、という困惑の質問が。それに対しうさぎは、

 

「どうやら化け猫男の娘は愛人にするみたいっすよ。はえ〜すっごい背徳的」

 

 ため息混じりにそう告げる。電話の声は言葉を失った。単純に自分の娘をそっちのけでしこたま盛り合う変態ホモ野郎に対して失望したのではない。これから先に起こりうる混乱について、予測してしまったのだ。

 うさぎもホモガキではあるがバカではない。故に電話の声の考えも分かっていた。

 

「後藤さぁん……大人の世界って、怖いですよねぇ〜?あのロリコンマスターが力をつけ過ぎて本当に最後まで辿り着いたら……死ゾ(無慈悲)」

 

 息を呑む音が聞こえる。あの万能の天才が恐れている。それだけでうさぎの胃が痛くなる。

 

「まぁ……まだ手札はあるってはっきりわかんだね。最終的にはなんとかするからさ、大丈夫だって安心しろよ〜(無責任)」

 

 そう言って無理矢理電話を切る。とは言ったものの、迂闊に打って出れない。本来うさぎは審判であり傍観者のようなもので、直接は干渉してはならないのだ。

 ルールを犯すという事は、自身の存在意義の否定に他ならない。うさぎは心底疲れたようにぬわぁああああんと叫んだ。

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