ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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sequence68 歯車

 

 

 週末が終わって毎週のように気怠げな月曜日を迎え、たまたま登校中に柏葉と出会い一緒に門を潜る。そしていつものようにホームルームが始まると、梅岡から柿崎さんの死が告げられた。

 まだ転校してきたばかりでその出自もありクラスでもそこまで馴染んでいなかった彼女が死んだ。クラスメイトが多少なりとも嘆く中、僕は真っ先に後方に座る河原へと視線を向けた。

 

 河原は、今まで見せた事がないくらいの表情を浮かべていた。菊の花が載せられるであろう彼女の席の横で、あいつは怒りと悲しみと絶望と、そして少しばかりの安堵を混じえた、中学生の僕では何とも表現し難い表情を持って彼女の死を聞いていたのだ。

 

 柿崎さんは、一方的な愛を河原に向ける事で有名だった。溢れ出る愛情を河原へ向ける度に、やはりあいつはいつも通り適当にあしらっていた。あいつも彼女が嫌いではなかったらしく、ここ最近体調の悪化という理由で休んでいた彼女を心配する素振りも見せていたのだから、ああいった表情になるのは仕方ないとも思える。

 

 だが、僕にはなぜだか彼女の死が、通常の、よくあると言っては不謹慎だが、ありふれた類のものであるとは思えなかった。その理由が、やはり河原にある。正確に言えば、河原を取り巻くすべて。例えば、ローゼンメイデンとか。

 

 昼休みになって周りの同級生が河原を慰めているが、その頃にはあいつはいつも通り冷静な表情を取り戻していた。それを見て同級生も安心したのか、いつしか慰めはいつも通りの中学生らしい会話へと戻って行く。

 

 でも僕はどうしても聞いておきたかった。僕は河原がトイレに行ったタイミングを見計らい、彼が用を足して廊下を歩いている最中で話しかけたのだ。

 

「なぁ河原、ちょっといいか?」

 

 中学生としてありふれた大きさの背中から話しかければ、振り返る前からその大きさは変化して行く。どんどんと、まるで膨張するようにあいつの背中が大きくなっているような気がした。

 あいつが完全に振り返る頃には、多少なりとも恐怖への耐性がついたはずの僕は完全に萎縮してしまい、河原から声を投げかけられるまで黙り込んでしまっていたのだ。

 

「桜田、おい桜田」

 

「え、ああ。ちょっと話したい事があるんだ」

 

 恐ろしいはずのものにそう切り出せたのは、あいつが僕の名前を呼んだ瞬間にまたその威圧感が消えていたからだろう。

 河原は否定も肯定もせず、ただこっちで話そうとだけ言って僕を空き教室へと招いた。きっとあいつには僕が何を話すか分かっていたんだと思う。

 

「話を聞こう」

 

 まるで渋いスナイパーのように言ってみせる河原に、僕は初っ端から直球をぶつけに行く。それくらいしなければ、僕はあいつから滲み出る負のオーラに飲まれてしまいそうだったからだ。

 

「柿崎さんの事なんだけど……何か知ってるのか?」

 

 そう尋ねると、河原はしばらく口を閉ざした。地雷を踏み抜いたとは思わない。むしろ彼女の死がアリスゲームに関わっているのならば、ここで聞いておかなければならなかった。

 成り行きとはいえ、アリスゲームに参加するマスターとして。そして愛する雛苺を守るため。そのどちらも、目的の内だったのだ。

 

 河原はようやく重い口を開く。僕はあいつのあんな姿を見るのは初めてだった。いつもどこかしら達観したような、少し上からのクールな印象しか持ち合わせていないからだ。

 

 だから、まるで懺悔するようにそう言った時には思わず耳を疑った。

 

 

「俺が殺した」

 

 

 今度は僕が言葉を失った。パクパクと口を開け閉めし、何を言っていいのかわからなくなる。まさかクラスメイトが人殺しになったと誰が思おうか。ましてや、殺めた相手がこれまたクラスメイトだと。

 

「どうして、何があったんだ?」

 

 昔の僕なら非難していたに違いなかった。そうしなかったのは、僕とあいつに多少なりとも共通点があったからだろう。

 

「あいつがそれを望んだんだ。俺は、それに応えたんだ」

 

 何かの感情を必死に押し殺しているのが僕にも分かった。それでいてクールであろうとするのは、やはり水銀燈のためだろう。

 

「それは……僕には、お前を非難する資格は無いけど……お前、なんか無理して無いか?」

 

「……分からない」

 

 分からない。その言葉は、本心からの言葉だった。きっと、今のあいつは必死に今の自分を理解しようとしているに違いない。

 しかし忘れてはならない。僕たちは、中学生なのだ。ただ子供で、自分の事で精一杯な時期の少年に、人を殺したという事実を受け入れるだけのキャパシティは存在しない。それが存在してしまうのは、根っからのサイコパスに違いなかった。

 

「それはやっぱり、アリスゲームが絡んでるのか?」

 

 河原はただ頷いた。そしてこうも言った。

 

「兄貴への襲撃は、めぐの仕業だった」

 

 背筋が凍った。まさか自分達を狙っていたのがクラスメイトだとは思いもしなかったのだ。

 

「そんな……まさか、主途蘭って奴のマスターが柿崎さんだったのか?」

 

 すべての情報を精一杯整理し、尋ねる。

 

「あいつは、あいつの目的は、俺だった」

 

 目の焦点が定らない河原が語り出す。まるで懺悔室で神父に後悔を打ち明けるように。

 

「あいつは俺を手に入れようとした。周りを全部壊して、自分すらも犯して、俺と結ばれようとしたんだ」

 

 僕はその話を聞く事しかできなかった。河原に返す言葉を持ち合わせているほど生きていないのだ。

 

「俺は……水銀燈を守る。そのために殺したんだ。俺だけに愛情を傾けたあの女を、めぐの首を掻き切ったんだ」

 

 河原は俯いて自分の手をマジマジと見た。その光景は、まるで血に染まった手を見て震えているようにも見える。

 

「沢山殺した。あいつが操ってた人間も。十人じゃ効かない、もっと沢山、でもあの時は何とも思わなかった。ただ作業するみたいに、それが当然の事だって、必要なんだって思いながら殺したんだ」

 

 僕が思っていたよりも、河原は真っ当な人間だった。人を殺めた責任に押しつぶされそうな、哀れな罪人だったのだ。

 

「結局は俺も同じだ。自分の目的のためにいっぱい殺して、それを正当化しようとしてた。でも、俺は、俺は」

 

 兄貴のようにはなれないと。狂ったような目で言った。その意味が僕には分からない。理解しようと考えている最中に、部屋の外で物音がしたのだ。

 

 振り返れば、驚いたようにこちらを見ている柏葉が居た。マズイと思った時には河原は動いていた。逃げる柏葉を、サッカークラブで鍛えた脚力をふんだんに用いて追いかけたのだ。

 僕はそれを追う。仮に河原に襲われた時のために、拳銃を隠していたのだ。それをいつでも制服の下から抜けるように手をかけながら、二人を追う。

 

 運動なんて射撃時のトレーニングくらいでしかやっていなかったから、二人が辿り着いた先の屋上に僕が到着した時には息も絶え絶えだった。

 怯えて後ずさる柏葉に、河原は一歩、また一歩と歩み寄って行く。そこに言葉はない。

 

「動くなっ!」

 

 僕は河原の背中に拳銃を向けた。息が切れていようと、5メートルほどしかない距離で外すとは思えない。そんな腕はしていない。これが今の僕の強みの一つでもあった。

 河原は止まると、ゆっくりとこちらに振り返った。その顔には表情が無い。

 

「桜田」

 

「彼女には手を出すなっ!撃つぞっ!」

 

「お前にその覚悟があるか?」

 

 強気でねじ伏せにかかる僕に、河原は冷静に言った。

 

「他人を守るために、人を殺す覚悟がお前にあるのか?」

 

「……あるッ!そのために銃を取ったんだ!」

 

 僕は本気でそう言った。河原は驚きもせず、ただ哀れむような目で僕を見た。まるでお前もいつかこうなるぞと、警告しているようにも見えた。

 しばらくはこの状態が続いた。脳からアドレナリンが湧いているせいで腕は疲れなかった。ただ心拍数はいつもよりも跳ね上がっていたのは分かった。

 

「なら、俺を撃て」

 

 唐突に河原は言った。

 

「柏葉も、お前が守る対象なら撃てるはずだ」

 

 そう言って、こちらへとゆっくり歩み寄る。

 

「動くな!動くな!」

 

「ほら撃て。今撃たないと他人だけじゃなく自分も死ぬぞ」

 

 すぐ近くまで河原は寄ってくる。思わず僕は後ろに下がる。それを河原が見逃すほど甘い訳がない。

 

 河原はありえないスピードで僕の目の前まで来ると、一瞬で拳銃を奪い取った。そして足を払われると僕はその場に転がる。

 痛みを堪えて僕を見下ろす河原に視線を向ければ、あいつは拳銃をこちらに向けていた。

 

「今撃つか、後で撃つか。それだけの違いでしかない。お前はまだ甘過ぎる」

 

 あいつの拳銃を握る人差し指は引き金にはかかっていなかった。

 甘いのはお前も同じだ。

 

「柏葉のことはお前に任せる。だが、彼女が口外しようとしたらその時点で殺す。忘れるな」

 

 拳銃の弾倉を抜き、スライドを後退させると飛び出た弾薬が宙を舞う。それを河原がキャッチした。

 河原は弾の入っていない拳銃を僕に投げ渡すと、同様に弾倉と弾薬を寄越した。僕は急いで立ち上がって、弾倉を拳銃に入れてスライドを引いた。そして立ち去る河原の背中に向ける。

 

 撃つ気はない。だが、何をするか分からないあいつに気を許すほど僕も甘ちゃんじゃなかった。

 河原は立ち止まると、振り返りもせずに言う。

 

「奴ならお前達を殺してたぞ。だが桜田、お前の判断は間違っちゃいない。それでいいんだ」

 

 それだけ言って、河原は去って行く。僕はへたり込む柏葉に駆け寄ると、拳銃をしまって彼女の肩を揺さぶった。

 

「だ、大丈夫か?」

 

 そう問いかけると、彼女は安堵したように溜息を零した。そして疲れたような笑みを向ける。

 

「ありがとう、桜田くん……」

 

 どうにもその、汗が滲んで若干息の上がった笑顔が男子の心を擽る。僕は思わず目をそらす。

 

「あ、ああ……なぁ、河原の事だけど」

 

「言わないわ。彼、あんなに思い詰めてた……」

 

 それ以上柏葉は言わなかった。そのうち5時間目の予鈴が鳴ると、柏葉は思い出したかのように言った。

 

「ね、ねぇ桜田くん」

 

「え?」

 

 なぜか恥ずかしがる柏葉に、僕は首を傾げる。

 

「腰、抜けちゃったみたい」

 

 困ったように笑う彼女に、同様な笑みをむけると僕は彼女を背負った。

 そして、僕は気付くはずも無い。自分もまた、背中の少女に柿崎さん同様の愛を向けられていることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真紅はどうにも気が進まなかった。今から自分がしようとしていることは、なんだか前の自分が決心した事を反故にするような気がして。いや実際にしようとしているのだが、それでも叶えたい願いがあって。

 なんだか懐かしい窓を前に、真紅は躊躇する。つい数ヶ月前まで窓の向こうのベッドの上で読書に励んでいたというのに、それが遠い世界の出来事のようで。

 

「行かないのかい?」

 

 隣にいる仮契約者の黒猫が尋ねてくる。真紅はしどろもどろしながら分かっていると言うと、思い切って窓に手をかけた。

 動かない。鍵が閉まっているわけではない。手が震えて、それ以上動かないのだ。黒猫が溜息を吐くと、彼は真紅の手に肉球を添えてアシストする。

 

 ガラリと開く窓。部屋に流れ込む風に身を任せ、真紅はカーペットに降り立つ。

 

「君の新しい一歩だ。僕がそうであったように、今度は君が自身の望みを叶える番さ」

 

 同性愛者の黒猫はそう言うと背を向ける。

 

「賢太……ありがとう、なのだわ」

 

「あの少年にも同じ事が言えるように祈っているよ」

 

 恩人である黒猫は軽い身のこなしで軒下に消えて行く。真紅はとうとう一人になった。そして落ち着かないといったように狭い部屋の中を行ったり来たりしながら、思い人を待ち焦がれる。

 

 少年が帰ってきたのはそれから数分後のことだった。彼と、その腕に抱えられた真紅の妹が部屋に入った瞬間、真紅はなぜかベッドの上で正座をする。

 

「……え、真紅?」

 

 少年がまるで幽霊を見るような目で彼女を見る。

 

「えー、おほん。お邪魔するのだわ」

 

 真紅は精一杯強がって、震える身体を抑えて言った。次に口を開こうとして、強い衝撃が身体に走った事で止められる。

 彼女の妹が、片腕で突撃と言う名の全力のハグをしてきたからだ。

 

「しんくぅううううううう!!!!!!」

 

 泣きながら必死にしがみつく妹に、最初こそ混乱したが、そのうち真紅は妹の頭を撫でてなだめていた。

 懐かしい日々が、そこにはあった。雛苺は片腕が無いし、ジュンは心なしか少しばかり筋肉質になっているようにも感じたが、それでも彼女が本来帰るべき場所がそこにはあった。

 

「おかえり、真紅」

 

「……ただいま、ジュン」

 

 笑顔で、二人は挨拶を交わす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜、桜田家。あの後のりちゃんにも抱きしめられて泣かれた真紅は心底疲れていたが、どうしても眠気を吹き飛ばしてジュンと雛苺に告げなければならない事があった。

 それは、自分の今の願い。

 

 彼らはジュンの部屋にて面接するように向き合う。この場合、面接官はジュンと雛苺だ。

 

「戻ってきた理由を聞かせてくれるか?」

 

 優しく、あの頃とは別人のように紳士的なジュンが真紅に問う。真紅はありもしない心臓をバクバクさせながら、しかし淑女らしく姿勢を正して言った。

 

「私を……受け入れて欲しくて」

 

 ジュンはこの時、受け入れるとは即答できなかった。彼は雛苺との生活によって知識を得ていた。乙女心という、不安定の塊のような心理を理解しかけていたのだ。

 少年は幼い恋人と顔を合わせようとするが、その恋人は真剣な面持ちで真紅を見つめる。

 

「真紅の言ってることは分かってる。でも聞きたい、それはどう言った意味での受け入れるなんだ?」

 

 彼女から聞かなければならない。それが自分の思っているものだとしても、彼女の口から直接思いを聞かなければならない。それは通過点なのだ。

 

「……愛する人として」

 

 泣きそうになりながらも、真紅は言った。

 

「真紅」

 

 心の成長した、大人になった妹が口を開く。

 

「ヒナ、真紅に謝りたかった。ヒナ……私は奪うような形でジュンと結ばれた。でも私がその決心をする前に、真紅は消えてしまったの。でもね真紅、これだけは譲れない。私は大人に憧れた。憧れて、失敗を重ねた。そうしてようやく気がついたの。大人というのは、なりたくてなりたいんじゃない。いつしかそうなっているものだって」

 

「雛苺……」

 

「私は大人に近づいたと思うの。でもそれは重要じゃない、本当の意味で覚悟が出来たのよ。真紅にはその覚悟がある?大切な人のために、自分という存在を消す事ができる?私はできる。口だけじゃない、今ジュンが死にそうなら、喜んでこの命を捧げるわ」

 

 雛苺が、その手にローザミスティカを捧げる。真紅が本気を出せば、すぐにローザミスティカは手に入れられる。それを分かって、彼女は掲げるのだ。

 

「……私は、失って後悔した」

 

 独白する。

 

「貴女とジュンが結ばれて、逃げ出して、ようやく気がついたの。私がなりたいのはアリスなんかじゃない。ジュンの大切な人、それだけなのだって。だから雛苺、私もジュンのためなら喜んでこの命を捧げるわ。あの水銀燈にだって、自ら捧げてみせる」

 

 両手を広げる。その内にはやはりローザミスティカ。

 

「だからこうも言いたいの。私は大切な人、あなたたちを守るためにも手段は問わない。ジュンの力強さも、雛苺の清廉さも、そしてのりの優しさも私は守りたい」

 

 あの兄弟とは正反対の、潔白さが彼女にはあった。だから、雛苺は受け入れる。

 雛苺は真紅に歩み寄ると、彼女の肩を優しく掴む。そしてそっと、まるで恋人のようにキスしてみせた。

 

「……!」

 

 驚く真紅。手馴れていて、そして優しさに溢れた口付けが彼女の女を掴んだ。

 離れて行く唇。糸を引いた二人同士。

 

「受け入れるわ。私は真紅を、そしてジュンを愛します」

 

 聖母のような笑みでそう言った。ジュンはその二人を抱きしめる。彼はここで、ようやく最後の覚悟を決めてみせた。

 

「僕は……こんな僕だけど、二人を守ってみせる。そして絶対、アリスにしてみせる。だからその時まで、それからも、ずっとそばにいてくれ」

 

 河原の血が黒く染まっているのならば、桜田の血は赤く情熱に染まっている。

 両者の差は、ここにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「俺は弱い人間だ」

 

 ここにも、独白する人間がいた。しかしあの三人と異なるところは、その言葉が空虚に向けてのことだということ。しかし聞いているものはいる。彼が愛してやまない白き純潔の乙女が、彼の頭を優しく包んで聞いていた。

 震える頭を優しく撫で、痛い程にしがみつく腕を迎え入れながら、青年の言葉を聞く。

 

「ずっとずっと、俺は弱かった。最初に会った時から、すべてを終えた時も、そしてまた始まった時も、俺は自分の力の無さに泣き崩れて、それでも止まれなかった」

 

「ええ、ええ」

 

 カウンセラーがPTSDの患者の話を聞くように頷く聖女。

 

「でも、でもそれも終わる。俺は手に入れた、そうだ、今ならできるんだ、今度こそ二人で幸せになってみせる、ふふ、ふふははははは」

 

 暗い室内で不気味に笑い、そして事切れたように眠る青年の頭を優しく撫でる。人々にとって悪魔のような少女でも、彼にとっては紛れも無い聖女なのだ。誰がそれを否定できようか。

 否定すれば、殺すだけ。

 

「眠って、また起きれば忘れますわ。だから今はお眠りなさいなマスター。貴方は私の大切なマスターなのですから」

 

 複数の青年が見える。どれも同じ顔で、白い服は血に染まっていて、でもどこまでいっても弱々しくておどろおどろしくて。

 

 歯車は回る。彼らが思うが思わないが、時はただ過ぎ去って行く。

 

 

 

 

 そして最後の歯車が噛み合った時、アリスは現れる。そのために、青年と人形は生きてきたのだ。

 

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