ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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ローゼンメイデン0を読み終わって生きる意味を失ったので初投稿です。


sequence77 ようこそ、真相へ

 

 

 

 クリスマスが終わり、新年を迎えた。テレビは特番や毎年恒例の駅伝だらけでつまらないし、学校も冬休みでサバゲーとトレーニングくらいしかやる事がない。元旦だというのに俺は炬燵に両足を突っ込みながらパクってきた銃火器の整備をして暇を潰していた。

 礼と水銀燈は何やらやる事があるらしく、今は出かけている。まぁやろうとしている事は分かっているし、分かった所であいつらに何が出来るとも思わない。計画を乗っ取るくらいはしてきそうだが、それも最終局面だろう。

 よって、我が家には愛しの雪華綺晶と新年の挨拶にやってきた賢太しかいない。その二人も、俺の両サイドで炬燵の魔力に囚われてぐでっとしながらテレビを見ている。

 

「お前らそんなぐでぐでしてたら溶けちゃうぞ」

 

 ライフルのレシーバーを分解しながら言葉をかける。雪華綺晶はテーブルに頭を突っ伏したままこちらを向いて言う。

 

「年中鉄砲にお熱のマスターに言われたくないですわ〜」

 

 心なしか口調もぐでってる。ほっぺをむにむにしてやりたい衝動に駆られるが、今手にはガンオイルとカーボンのカスが付着しているため触れるような状態じゃなかった。

 ふと、賢太が何か気になったのか俺の作業する姿を見て口を開いた。

 

「ねぇ、最近随分メンテナンスしてるけど、何かあったの?」

 

 その問いに俺は不敵に笑って答えた。

 

「これから起こるのさ」

 

「これから?」

 

 それ以上は答えない。俺はそのまま必要な部分にオイルを塗ると、また結合を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 年末年始という事もあり、この微妙な賑わいの街の神社にも人がわんさかやってきていた。普段は隣町や東京で買い物してるような奴らでさえ、神様の御利益を求めて来る始末だ、神様かわいそう。

 俺……この場では隆博さんは、みつさんと二人きりで初詣にきているわけで。本当ならうちのかわい子ちゃんも連れてきたかったのだが、今現在の薔薇の貸し出しが桜田くんなので連れてこれなかった。

 

「すごい人だね」

 

 着物姿のみつさんが言う。対していつもの私服である俺は彼女の手をぎゅっと握りながら頷いた。

 

「どいつもこいつも神様なんて信じてないヤツばっかりですよ」

 

「隆博くん意外と毒舌だよね」

 

 長くネットを彷徨ってたらしょうがないね。ちなみに今彼女との関係は恋人同士。クリスマスに告白し、晴れて相思相愛になったのだ……正直手を握ってるだけで勃起してしまうのは私だけでしょうか?(不健全)

 ようやく俺たちの番になり、目の前にでっかい賽銭箱と鈴がついた縄がやって来る。俺とみつさんは礼儀なんて知らないので、適当に数百円ぶち込んで鈴を鳴らして礼をした。蒼星石がアリスになりますように、みつさんと結婚できますように、実は金持ちの血族で遺産が急に転がり込んできますように、良い企業に就職できますように……ありったけの夢を掻き集めてお祈りする。

 お祈りが終われば、俺とみつさんは今年の運勢を占う事にした。くじの売店にて、俺達はそれぞれくじを購入して中身を確かめる……中吉か、ふむふむ。恋人、もう来てる。金運、無駄遣いするな。健康、死の危険あり……なるほど、アリスゲームが今年も活発らしい。

 

「わっ!凶だぁ〜……」

 

 と、隣でみつさんが項垂れている。俺は笑いながらぎゅっと彼女を横から抱きしめてくじを確認した。

 

「ちょ、隆博くん!?」

 

「なになに……総合的に悪し、絶望する事がある……破っちゃおうか?」

 

 あったまきた(ヒゲクマ)俺の恋人にこんな事言う神様は死んで、どうぞ。だがみつさんは慌てて俺を止める。

 

「ダメダメ!こういうのは結んでおけば多少良くなるから!……あとね、隆博くん」

 

 と、みつさんが急に顔を赤らめてしおらしくなる。

 

「その……当たってる、かな」

 

 当たってる……?あっ(察し)良く見れば俺のいきり立つ股間が彼女の腰に当たっている。俺はそそっと彼女から離れて気まずそうに謝った。

 

「すみません(小声)」

 

「いや、いいんだよ!えっとね、その……」

 

 もじもじし出すみつさん。すると彼女は俺にそっと近寄って耳打ちしてきた。

 

「夜、楽しみにしててねっ」

 

 言うや否や、彼女は大量のおみくじが結んである木へと顔を真っ赤にして走っていく。あそこまで真っ赤な顔は郁葉がFPSでぼろ負けした挙句煽られて以来だったが、俺の心はそれどころじゃなく。

 

「……ヌッ!」

 

 ほぼ逝きかけました(ICR)

 

 

 

 

 

 

 おみくじも結び終わり、俺たちは境内の屋台でたこ焼きを買って二人で食べる。一袋は蒼星石と後で食べよう。

 二人でベンチに座ってこうやって食べてると、やっぱり俺たちカップルなんだなぁと実感できた。アツアツのたこ焼きを頬張るみつさんも可愛い。ていうかうまいラーメン屋の屋台はないのだろうか。

 

「あつ、熱い、アツゥイ!」

 

 見惚れながら食べたせいでたこ焼きの熱さを忘れていた。俺はみつさんが慌てて渡してきたジュースを飲む。

 

「もう、がっつきすぎ」

 

 そんな俺を見て笑うみつさんは大人っぽい、エロいっ!

 

「夜もいっぱいがっついちゃうんで」

 

 いつものノリで思わず下ネタをぶち込んでしまったが、案の定耐性が無いみつさんは顔を真っ赤にした。

 

「よ、夜って……!もう、本当に隆博くんって恋愛経験ないのかなぁ?」

 

「ないです」

 

 蒼星石はノーカン。

 

 たこ焼きを食べ終え、俺たちは用済みになった神社から去ろうとする。この後は一度解散し着替え、夜に合流して一緒にディナーと洒落込む。その後は……おほ^〜。

 

「じゃあ隆博くん、また後でね」

 

「うん、メールしますね」

 

 と、そこまでは良かった。だがどういうわけかみっちゃんはもじもじして何かをしようとしている。俺が困惑して待っていると、彼女は目を閉じ、口を窄めて何かを待っていた。

 

 ファッ!?

 

「え、あ、みつさん?」

 

 彼女は何も言わない。俺も男だ、腹を決めろ。

 そっと、彼女の肩を押さえて俺も期待に応える。ちゅっと、口先が触れ合った。柔らかい。しばらくそれを堪能すると、彼女は離れる。ディープでダークな奴はまだ彼女には早かったか。まぁ遅かれ早かれ後でもっと激しい事するんですけどね初見さん。

 

「わ、私、ファーストキスだからっ!じゃっ!」

 

 それだけ言うと彼女は全力ダッシュで去っていく。俺はしばらく惚けたまま彼女を見送った。そしてみつさんの姿が消えると、満面の笑みでタバコを取り出し、喫煙所に向かう。キスの味とニコチンで気分は最高だった。

 

 

 あの子を見るまでは。

 

 

「随分高校生みたいな事してますね」

 

 喫煙所から出てきた俺を、最早主途蘭と化した琉希ちゃんが待ち構えていた。血の気が引いて、咄嗟にズボンの内側に隠していた拳銃に手をかける……が、人目のある場所で出せるわけもなく。

 

「ここで騒ぎは起こさない方が賢明だと思いますが。私も争いに来たのではありませんので」

 

「あ?」

 

 睨みを利かせる。だが彼女は気にもせず、ドレスのような衣装を翻して歩き出す。

 

「お話をしましょう。今後の我々にとって重要なお話です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 nのフィールドには、様々な場所がある。9秒前の白というガラクタ置き場のようなエアポケット、その根底にある無意識の海……一概にnのフィールドと言っても、それは物事の一面でしかない。

 そして元旦から忙しなく動いている礼と水銀燈、そしてなぜか一緒にいる蒼星石が用がある場所は。記憶の濁流と呼ばれる、無意識の海内にある、かなり深いゾーンであった。

 

「気をつけなさぁい?あんたなんて私がいなくちゃ1分も持たないで飲み込まれちゃうから」

 

 まるで自分の存在を誇張するかのように言う水銀燈の頭を引っ叩くと、礼は彼女の手を握って濁りきった世界を歩く。先頭には、庭師であり夢の道先案内人である蒼星石が何かを探すように歩いていた。

 

「本当にここで間違い無いんだな」

 

 礼の問いかけに蒼星石は頷く。彼女の手には庭師の鋏が握られ、それを指示棒のように使いずっと先にある光を指した。

 

「多分、あれが彼の記憶の奥底だよ」

 

 彼。それが礼の兄であることは想像に難くなかった。だからこそ、礼は細心の注意を払って進まなければならない。あんな毎日を自由気ままに過ごすような人間が、このアリスゲームにおいては一番危険で厄介なのだから。奴に比べたら琉希など取るに足らない存在であることは確かだ。

 

「ねぇ、すごい罠がありそうで行きたくないんだけど」

 

 手を繋ぐ水銀燈が言う。

 

「どの道奴には勘付かれてる。なら行くしかあるまい。行けるうちにな」

 

 空いた右手でいつもの拳銃を取り出す。堅牢な作りの拳銃には、拡張弾倉とライト、そしてサイレンサーが取り付けられており、彼の本気の度合いが見て取れた。

 光を目指して彼らは進む。濁った世界の背景には、様々な記憶が映り込む。そのどれもが、兄である河原 郁葉のもの。ここは河原 郁葉の世界と繋がる、通路のようなものだ。それもただの世界ではなく、その深淵。本人すらも気づいていないような、深い奥底。

 礼は知らなければならない。兄が何を隠し、何を手にしているのかを。

 

「ここから先が……郁葉くんの夢と記憶の際奥、深淵だよ」

 

 光を越えれば、そこは絶対的な闇。動じないはずの礼の身体が、寒さで震える。そんなマスターを、水銀燈は自身の翼で覆った。

 

「ここは……何?こんなの記憶じゃない、これは、呪い?」

 

 覆って、その異様さに水銀燈は困惑する。その禍々しさに、あらゆる夢と記憶を覗いてきた蒼星石ですら戦慄した。

 もはやここは、単なる記憶の保管場所ではない。河原 郁葉という得体の知れない存在が抱え込む闇そのもの。空気は冷たく、鋭く、呪いのような薄気味悪さを孕み、侵入者を追い払おうとしている。

 

「……大丈夫だ、水銀燈」

 

 翼で彼を隠す水銀燈を押し退け、礼は前へ進む。同時に警戒を厳にした。こんなはずではない。あの男は、こんな生易しく自身に侵入を許すほど甘くない。この呪いのような空気も、暗さも、どれもが本来の奴ではない。

 その考えは正しい。ある程度進むと、一気に空気が変わる。先程までの人を拒むようなものから、暖かい春の陽気のような物へと変貌した。それが不気味で堪らない。何も直接的な攻撃が無いのだから。

 

「ここは……彼の記憶の奥底?」

 

 蒼星石が首を傾げる。だが礼とそのドールは知っている。ここは、そう。彼らの親が眠る、霊園だ。夏に来た、あの場所だ。

 

「あいつの考えていることが何も分からないな」

 

 鼻で笑って礼は進む。そして、親の墓前へと来ると、その墓石を観察した。

 

 観察して、驚いた。驚きすぎて、墓石に張り付いた。

 

「ちょっと礼?どうしたのよ」

 

 そんな冷静なマスターの動揺ぶりを、動揺で表現する水銀燈。

 

「名前が違う……これは、先祖の墓?いつの記憶だ?」

 

 礼はそのまま走る。それを追いかけるドール達。礼は霊園のポストに投函されている新聞を掴み取る。

 

「……去年の夏?そんな馬鹿な」

 

 新聞に書かれていた年月日は、去年の夏。墓参りに来た時と変わらない。その頃にはもう既に親は死んでいる。つまりこの記憶では、彼らの両親は死んでいない事になる。

 

「記憶が改竄されてるの?」

 

「いや、記憶は記憶。無形の、不変のものだ。それを変えることはできない……僕たち庭師がいない限り」

 

 すると突然記憶が飛んだ。唐突な浮遊感とともに、場所が変わる。礼はすぐさま拳銃を構えて水銀燈を守るように移動すると、周辺を確認した。

 

「……家だ、俺の」

 

 河原家。夏の河原家がそこにあった。駐車場には親の車が止まっている。そんなはずはない。親が死んだ時、あれは売り払ったはずだった。

 礼は半ば放心状態で駐車場へと向かう。

 

「礼!」

 

 彼の背中を追いかけるドールズ。礼は父親のワゴン車を食い入るように見ていた。

 

「ねぇ、ちょっと!」

 

 水銀燈が話しかけるも礼は動揺した様子で動かない。すると彼は玄関へと向かい、扉を勢いよく開けて靴も脱がずにリビングへと向かう。

 

 

 

 

 親父が、いた。Tシャツにパンツ姿で、クーラーに当たりながらゲームをしている。教育委員会に有害指定を受けるようなゲームで、スポーツカーを乗りこなし、時々キッズ達に攻撃されてキレる父親が、そこにはいた。

 

「あ、ああ、ああああ」

 

 ボロボロと礼の瞳から涙が零れ落ちる。トントンと、後ろのキッチンから懐かしいリズムの音が響いた。

 

 母親が、昼飯を作っていた。そんなに美味くないのに、どうしてか忘れられないあの味を作る母親が、そこにはいた。

 

「礼……」

 

 膝をついて崩れ落ちるように涙する礼に寄り添う。その二人を、蒼星石はただ見ている事しか出来なかった。

 

「行ってきまーす」

 

 玄関から声がして見てみれば、今のような鋭さの欠片もない礼が、エナメルバッグと体育服装で出かけるところで。

 

「気をつけてね〜」

 

 気の抜けるような母親の声が響き。

 

「何時頃帰ってくんの?」

 

「夕方」

 

 父と子の何でもないような会話がして。

 

 礼は、人殺しになった子供は、耐えられなかった。思わず父親に抱きつこうとして、すり抜ける。

 ここは記憶。無形の、過去の思い出。存在はしない、そう、映画のようなもの。彼らは干渉できない。

 

 

 

 

「懐かしいだろ。平和だったんだ、あの頃は」

 

 

 

 ソファから聞き知った声がして、礼はすぐさまそちらに銃を向けて水銀燈を守る。そこにはやはり、彼の兄が鎮座していた。

 郁葉は銃を向けられても動じず、ソファに座りながら父親を指差す。

 

「何年GTAやってんだよ。笑っちゃうよな、アプデ来なくてもずっとやってんだから」

 

 ケラケラと、力無く笑う兄を睨む。

 

「礼。ここに来るって事は、予想が付いてるんだな」

 

「黙れクソ兄貴、こんなもん見せやがって、殺してやる」

 

 郁葉は立ち上がると、テーブルの上に置かれたジュースが入ったコップを手にする。そしてそれを逆さまにした。

 

 溢れない。礼が周りを見てみれば、時が止まっていた。

 

「いい記憶だろう。これは「俺」の記憶だ」

 

「何が記憶だ、この頃にはもうお父さんとお母さんは死んでただろッ!」

 

「いいや。生きてた……生きてたんだ」

 

 郁葉はコップから手を離すと、礼に向き直る。

 

「礼。時間がないからよく聞いておけ、一度しか言わない」

 

「なに……?」

 

 言っている意味が分からなかった。だが、蒼星石は何かに気がついたようで。

 

「君は、僕の知る郁葉くんじゃないね?」

 

 兄はただ頷いた。そして、弟に向けて告白する。

 

「俺は、無数に存在する河原郁葉のうちの一人だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な事言うなよッ!」

 

 俺は激昂していた。人目のない場所で、琉希ちゃんに言われた事を受け入れられなかった。銃を抜いて彼女に向け、血走った目で訴える。

 

「貴方がみつとどういう関係になろうが関係ありません。ただこれだけは言っておきます。あの男に味方するようであれば、みつは殺します」

 

 冷酷に、彼女はそう言い切った。俺は今にも引き金を引いてしまいたい気持ちでいっぱいだった。そうさせなかったのは、ここが街中だという事があったから。

 

「彼女はこちら側です。私はもうアリスゲームに興味はありません。ただ翠星石の安全と、リリィさんの仇が取れればそれで結構なので」

 

「だから友達を売れって!?」

 

「いいえ。手を引いていただければ。蒼星石には干渉はしませんし、貴方に実害は無い。みつとも幸せになれますよ」

 

 何も言えなかった。俺は人生で最も重大な決断を迫られている。考えて考えて、それでも友達と恋人達を天秤にかけても答えが出せなくて。

 銃を下ろした。

 

「……時間をくれ」

 

 その返答に、琉希ちゃんは笑った。

 

「ええ。焦らずとも、時間はありますから」

 

 まるで俺がこの後どう決断するかわかっているような笑みが、酷く煩わしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 礼は兄の話をすべて聞いて、時間が経っても悩んだ。目の前にいる兄の話が本当ならば、礼と敵になる方の兄はとんでもない存在である事になる。そして、自分達が行なっているアリスゲームに救いが無い事も理解してしまった。

 水銀燈と蒼星石は目を見開いて、聞いてしまった現実を必死に否定しようとする。

 

「そんな、嘘よ。私たちが、私たちが、アリスになれないなんて」

 

 思わず水銀燈は笑ってしまった。だが目の前にいる兄は、悲しそうな、それでいて決意したような顔で言う。

 

「俺が証人だ。結局アリスゲームを勝ち抜いても、雪華綺晶はアリスにならなかった。そもそも、ローゼンには無理だったんだ。至高の少女を生み出すと言うことは。だからこんな、アリスゲームなんてお遊びでお茶を濁した」

 

 動揺したのは水銀燈だけでは無い。

 

「それじゃあ、お父様は……僕たちに嘘をついていたの?」

 

「……そうだ。あのクソ野郎は、お前達に言い出すことができなかったんだ。お前達は全員、人形のままってな」

 

 礼は水銀燈を見た。そして思い描いた理想の未来をぶち壊された憤怒を必死に抑えた。まだ希望は潰えていない。

 

「今の……俺が知る兄貴がやろうとしていることは、確証があるのか?」

 

「琉希ちゃんの事か。あれが一番可能性が高い。だがまだその時では無いな」

 

「と、言うと?」

 

「まだ魂が完全に同化していないんだ。だから今身体を乗っ取ろうとしても失敗するだろう……礼。お前もやるつもりか」

 

 礼は答えない。ただ、その決意に満ちた暗い顔を見れば理解できた。

 

「奴が完全なローザミスティカを持っているから、姉妹同士で争わなくても済む……」

 

 一人呟く。

 

「ああ。「今の俺」は、ローザミスティカを更に集めてより魂の質を高めたいんだろうな」

 

 すると、目の前の兄が懐から何かを取り出した。拳銃だ。それも、古びた……今の兄が使っているものと同じ。

 

「これをやる」

 

 礼がそれを受け取る。

 

「違う世界でアリスゲームに勝ったとき、ローザミスティカを変質させて作ったんだ」

 

 さらっととんでもない事を言う兄に、礼は心底怒りを覚えた。

 

「気持ちは分かる。だが、これが必要だ。……俺の身体に、こいつは効く。俺の再生力も、ローザミスティカを取り込んだ事によって得たものだからな」

 

 生理的な嫌悪感を覚えつつも、利用できるものはすべて利用する。礼は拳銃を懐にしまう。

 その時だった。目の前の兄が、天井を見上げる。正確には、その先の空。

 

「時間だ。流石に長居させすぎたな。おい、そいつを持ってる事はバレるなよ」

 

「なんで自分を殺させるような事を?」

 

 その質問に、兄は笑った。

 

「俺増えすぎだろ。そろそろ全部消えなきゃな」

 

 

 

 

 

 

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