ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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投稿先を間違えたので初登校です。


sequence79 それぞれの

 

 

 

 

 

 「だぁれが殺したクックロビン」

 

 少女の歌声が世界に響き渡る。白いドレスを身に纏い、剣を腰に携え。揺れる金髪はツインテール。きらきらと水面に映る夕陽のように、見る者を釘付けにする可憐な少女。奇しくも他人の領域を離れ、人形と人間との狭間で宙ぶらりんの魂を持つ暗殺者。

 琉希はnのフィールドで彷徨いながら、憎い敵の鼻歌を、反射させるように歌う。

 

「あまりその歌は歌わんでくれんか。思い出す」

 

 その少女と魂を共有する、元人形が苦言を示す。彼女達にしか見えない霊体。その名を主途蘭。

 

「あのメガネ人間はちゃんと誘いに乗るでしょうかね、琉希」

 

 その反対には、少女の相棒である夢の庭師。その姉が訝しむような表情で彼女を見つめた。

 

「100パーセントこちらが望む事はしないでしょうね。でも良いの翠星石、あの人には釘を打てた。これで少なくとも、河原郁葉の敵は減らせる」

 

 激情型の、あのメガネの似合う大学生を思い浮かべる。激情型と言う事は、感情で動くと言う事。知ってさえいれば感情は制御しやすい。琉希は笑い、今後のアリスゲームの動向を思い描く。

 

「お主の妹は良いのか?きっと、あの使用人を人質に取ったなんて聞いたら怒るぞ」

 

 妹である香織を思い浮かべる主途蘭。彼女は聡明だ、きっとこの事を伝えずとも琉希の思惑に気づくに違いない。それに能力である透視も相まって、非難されるだろう。だが琉希ちゃんはそんなもの意にも介さずに言った。

 

「あら。香織は元々部外者よ。あの子がこの事に口を挟む権利は無いわ。今は協力してもらってるけど……妹だもの。家族だもの。分かってくれるわ」

 

 はは、ははは、と不気味な笑いと共に琉希は進む。

 

「翠星石よ、我らのマスターは最近イカれてきておるようじゃぞ」

 

「大体お前と末妹達のせいですぅ」

 

 それを言われると弱い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間が経つのは早い。もう二月の中頃になってしまった。俺も来年度からは就活やらで忙しくなりそうで、今まで通り自堕落に雪華綺晶といちゃつけなくなると思うと夜も7時間くらいしか眠れない(快眠)

 だが悩みの種は俺の将来だけではなかった。目下の敵である琉希の動向が掴めない。相変わらず学校は行っているようだが、それ以外はnのフィールドへと入り浸っているようで追跡ができないのだ。礼も最近素っ気ないし、隆博もあまり連絡が取れない。賢太は相変わらず発情している。そろそろ掘られそうで怖い。

 

「なんか狂うな〜」

 

 一人自室で呟く。隆博の事は大体わかっている。大方みっちゃんを人質に取られたのだろう。最近の琉希は手段を選ばなくなってきたからやりそうではあったが。

 

「あら、珍しくお悩みですわ」

 

 そんな俺の元へ雪華綺晶が紅茶を持ってやってくる。すっかり炭酸よりも紅茶を嗜むようになった俺は、感謝を述べると紅茶を手にする。

 

「まぁね。何事も計画通りってのは難しいわ」

 

 ジュンくんにしたって一筋縄ではいかないだろう。あの子は見た目と違って芯が通っているから、こっちがやろうとしている事を教えたら反発するに違いない。槐も主途蘭戦以降元気が無さそうだし、もうあまり協力は期待できないと思って良い。

 だからといってアリスゲームを諦める理由にはならないが。

 

「ちょっと出かけない?なんか退屈だわ」

 

「まぁ。ではドライブにでも行きませんか?行きましょうよ。じゃけん行きましょうね〜(お嬢様)」

 

「語録なんて使っちゃ……ダメだろ!(ブーメラン)」

 

 意外と淫夢にはまっている雪華綺晶を注意する。まぁでも、せっかくだから家の車でちょっと出かけるのも良いかもしれない。初心者マーク付けなきゃならないけども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天気が良いのに寒空の下、みっちゃんは駅前の改札にてある人物を待つ。それは言うまでもなく、彼氏の隆博の事であって。今日は仕事もお休みで、やる事がなかった彼女にとって隆博からの急な呼び出しは願っても無い事でもあった。

 御化粧バッチリ、ソバカスも目立たないようにして香織お嬢様に選んでもらった落ち着いた色の服に身を包み、ウキウキしながら彼を待つ。ちなみにいつもゴスロリばっかり着ている香織ちゃんだが、ああ見えて服のセンスは良いらしい。

 

 数分待って、人混みの中から待ち望んでいた細長いメガネ野郎の姿が見えてくる。黙っていればそこそこ良い顔をしている彼氏に手を振ると、ある異変に気がついた。

 美人が、彼のそばに寄り添うようにいたのだ。それも、ボーイッシュ系でオッドアイの、とびきりの美人だ。ジーンズにフライトジャケットという、着る人を選ぶその服装をあんなにも着こなしているような、そんな美人。

 明らかに二人は密着してみっちゃんに近づいており、そんな姿を見て彼女は愕然とした。

 

「みっちゃん」

 

 隆博が真剣な面持ちで彼女の名前を呼ぶ。

 

「紹介したい人がいるんだ」

 

 続けざまに言われた言葉に、みっちゃんの心は砕けそうになった。

 ああ、新しい人ができたんだ。自分みたいな地味で変な趣味の女よりも、何十倍も綺麗な人を好きになったんだ。そう考えてしまうくらいには、みっちゃんの想像力は豊かだった。

 

「初めまして、みつさん。いや、久しぶり……かな」

 

 だからその女がそんな事を言うのが不思議でたまらない。自分はこんな美人見たら忘れないのにと思いながらも、記憶を辿る。そして。

 

「僕はローゼンメイデン、第4ドール。蒼星石さ。金糸雀の妹で、翠星石の双子の妹でもあるよ」

 

 それを聞いた時には、開いた口が塞がらなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 水銀燈は美人である。それもただの美人ではない。異国系銀髪赤眼美女だ。モデル顔負けのフェイス、すらりと長い手足、どうやっても人間では再現できないプロポーション、ファンタジーの世界から飛び出してきたような髪と瞳。そのどれもが、人々を魅了する。

 もちろんこれは仮初めの姿である。元々人形である彼女は、小学校低学年程度の身長しか持ち得ない。今は槐の薔薇を用いる事で、175センチ以上の高身長美女と化していた。

 

「ねねね、一人で待ってて楽しい?」

 

「ちょっと一緒に……付いてきてもらっても良いですかね?(棒読み)その分ギャラも出すんで(スカウトマン)」

 

 そしてそんな美女が東京の街中に一人でいれば案の定街で声をかけられてしまう事は避けられなくて。今もこうしてホモビのスカウトマンみたいな奴と後々病院で勘違いから発展しそうな奴が彼女の周りに纏わりついていた。

 だが水銀燈はそれらをガン無視して、一人スマートフォンの画面を眺めている。

 

「すいませ〜ん、木ぃノ下ですけど〜(実名報道)、ま〜だ返事もらえないですかね〜?(ホモはせっかち)」

 

 あまりにも無視が酷いので段々と苛立ってくる男達。と、そんな時水銀燈が不意に視線を彼らの後ろへと向けた。不思議に思って後ろを振り返る男達。そこには、中学生くらいの少年が男達を見上げていた。

 

「なんだお前」

 

 男が言った瞬間、少年が何かを振るう。缶ジュースが入る程度の大きさの、ビニール袋。だがそれは凶器となって男達の顔面を激しく打ち付けた。

 

「あああああ痛ぁあああああい!!!!!!」

 

 フィストファックされて痛がるくらいの大声で泣き喚く男達。少年の手に握られたビニール袋には血がこびりついている。ブラックジャックと呼ばれる、簡易的な凶器。袋の中に詰められた石が、男達の顔面を殴打したのだ。

 少年は自身よりも遥かに高い男達を、古武術のような投げ技で、最小限の動きで効率的に投げていく。

 

「ちょっとぉ、遅いんじゃなぁい?」

 

 男達を気にもせず、水銀燈は拗ねた様子で少年……礼に文句を垂れた。

 

「お前が飲みたいって言ったんだろ」

 

 そう言って礼は片手に持った二つのカップの内、一つを彼女に手渡す。タピオカミルクティー。今女性で話題のあの飲み物だった。

 

「ほんっと、東京って嫌ねぇ。変な虫がウヨウヨしてて」

 

 ゲシッと倒れる男達を蹴る水銀燈。

 

「行くぞ、注目を浴びすぎた」

 

 礼がそう言えば、今まさに数人の通行人がスマホでその様子を撮ろうとしていた。袋を遠心力でどこか人のいない方向へとぶん投げ、水銀燈の手をとって逃げるように去っていく。去り際に、しっかりと男達を踏みつけて。

 

 ようやく落ち着けそうな公園で、ミルクティーを飲む二人。一見するとおねショタにしか見えないが、主従関係的には礼が手綱を握っているから怖い。

 

「別に特別美味しくないわね」

 

「もう買ってこねぇぞお前」

 

 相変わらずの掛け合いをしていると、水銀燈が豊満な胸の上にミルクティーのカップを乗っけて、手を使わずに飲み始める。

 

「みへみへ、みるふふぃーひゃれんひ」

 

 ストローを咥えているせいで滑舌がよろしくない水銀燈。そんな彼女を見て、礼のこれまたよろしくない部分が出る。

 

「俺にも飲ませろ」

 

「ほぅら、良いわよぉ?」

 

 そう言って礼が水銀燈のミルクティーを飲む。もちろん胸に乗っかっているものを。

 

「飲みづらいな」

 

「なによ、私の胸に不満があるわけぇ?」

 

 いいや、と言って。礼は彼女の胸を両脇から強引に掴んでカップを安定させる。

 

「んにゃぁ゛っ!!!???」

 

 あまりにも突然の行為に、水銀燈が猫のように叫んだ。その間にも礼はミルクティーを飲む。

 

「うん、これで飲みやすい」

 

 そう言って満足そうに口を離す礼。対して水銀燈は顔を真っ赤にして吠える。

 

「な、なにすんのよ!?」

 

「いちいちうるさい」

 

 このカップルはいつも通り。たまには日常回もいいよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さぁこっちはこっちで楽しいことになっている。隆博とみっちゃん、そして薔薇を使ってお姉さん化している蒼星石を交えた喫茶店での会話。蒼星石の事を隆博から告げられたみっちゃんは、明らかに動揺していた。

 

「ちょ、ちょっと待って隆博くん。じゃあ、君は……私達の、敵ってこと?」

 

「そうだけどそうじゃないんだよ。あれだよあれ、ああっと……サイボーグ忍者っていうか、グレイフォックスっていうか……」

 

「敵でも味方でもないって事さ、みっちゃん」

 

 隆博の分りづらい例えを通訳する蒼星石。みっちゃんはとりあえず隆博の言葉を信じ、質問する。

 

「なんで……今まで隠してたの?蒼星石のこと」

 

 その質問に、隆博は姿勢を正して答える。

 

「タイミングが無かったんだよ。金糸雀が翠星石とつるんでるのは知ってたし、かと言ってこっちの情報も秘匿する必要があったからね……必要以上に巻き込みたく無かったし」

 

「いや、どっちにしろ私もアリスゲームの当事者なんだけど……」

 

 細かいことは気にしてはいけない(至言)隆博は話を変えるべく、最終目標について言及する。

 

「それで、みっちゃん。俺は蒼星石をアリスにしたいと思ってる。そして添い遂げたいとも思ってる」

 

「え……」

 

「もちろんみっちゃんともだ。俺は、ハーレムを築きたいんだ」

 

 馬鹿正直に言い切る。一瞬硬直するみっちゃんだったが、

 

「えっと……それは、まぁ……いいんじゃない?ええ……でもハーレムかぁ。私、結構嫉妬深いから……ね?」

 

 もじもじするみっちゃん。正直かわいいと思う(私見)

 

「蒼星石と同じくらい愛してくれないと……嫌、かな」

 

 その愛くるしい仕草に、隆博はおろか蒼星石も胸を撃たれる。

 

「も、もちろんだ。なぁ蒼星石?」

 

「え?あ、うん!僕も隆博くんと同じくらいみっちゃんを愛するよ!」

 

 ボーイッシュなキメ顔でそう宣言する蒼星石。

 

「やだ、蒼星石イケメン……」

 

 きゅんと乙女心に火がつくみっちゃん。意外と三人ともノリノリみたいでヨカッタネー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シリアスは嫌いだが、そうしないと話が進まないから俺のパートではシリアスで行こうと思う。

 車デート中の俺と雪華綺晶。近くの自然が豊かな公園にやってきた俺たちは、ビニールシートを広げて二人寝転がりながら日光浴を楽しむ。時折横で寝転がる雪華綺晶のおっぱいにタッチしては手を叩かれるというしょうもないセクハラを交え、鳥のさえずりと意外と寒い風に凍えながら、ただ悠々と過ごすのだ。

 

「寒い」

 

「寒いですね」

 

「季節間違ってない?」

 

「完全に間違えましたわ」

 

 だよね?俺ら完全にバカだよ。トイレしたくなってきた。

 

「きらきー、俺トイレ」

 

「はい。私はしばらく凍えてますのでお気になさらず……」

 

「すぐ戻ってくるから(焦り)」

 

 そそくさとその場から立ち去りトイレを目指す俺。そんな俺たちを監視している奴がいた。

 

 

 

 

 目を閉じて眠気と寒さにに耐えながら夫を待つ雪華綺晶。ふと、気配がした。待ち人かと思って目を開けてみれば、怒ったような表情でこちらを見下ろしている美女がいる。

 

「あら。あらあら、これは。翠のお姉様ではありませんか」

 

「なにやってるです末妹。寒くねーですか?」

 

 薔薇によって大人化し、防寒着をばっちり着込んでいる翠星石がそこにはいた。手を出してくる様子は今の所ない。なぜなら人気があるからだ。さすがにここでどんぱちしようとはしないらしい。

 

「ツラ貸せです。ここじゃマズイですから」

 

 そう言って去っていく翠星石。この台詞からしても、戦いに来たことは明白だった。

 仕方ないと面倒に思いながらも、雪華綺晶は白いブラウスを払って立ち上がる。人気のない、森の中へ。癖が強い者同士、ぶつかろうとしていた。

 

 

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