ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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sequence81 求める身体

 

 雪華綺晶はヤバイドールであることは皆さんお分かりだと思う。こことは異なる世界線では契約者の素質のある人間達を拉致監禁し、平野店長もびっくりな苗床状態にした挙句に大人になったジュンくんを手に入れるために奮闘した。それこそ一時はローゼンメイデン全員を閉じ込めてしまうほどに。

 なんで俺がその世界線を知っているのかは置いておいて、この世界線でも基本的にヤバさは変わらない。今でこそ俺と言う依存先がいるから落ち着いているが、それと離れる事になるということは彼女からすればとんでもない不安と恐怖、そして怒りであり。

 それをもたらす翠星石は、絶対に排除しなければならない存在なのだ。

 

「あぶねです!」

 

 素早い斬撃をステップで間一髪回避する翠星石。しかし白薔薇が手にする剣には何か冷気のようなものが纏わりつき……

 

「ふふ」

 

 雪華綺晶の笑みと共に、冷気が翠星石へとホーミングし出す。触れたらヤバイと思って後方に下がれば、冷気は地面に吸い込まれ。

 地面から水晶の塊が、槍のようになって飛び出てきた。意外にも抜群の戦闘センスを持つ翠星石はそれらを如雨露で打ち伏せる。

 

「魔法攻撃みたいな事しやがって、ですぅ!」

 

 水晶を割って翠星石は飛び出す。そして縦回転しながら勢い良く雪華綺晶へと如雨露を振り下ろした。

 お互いの獲物がぶつかり合い、火花が散る。もうそこには古き良きアリスゲームは存在しない。ただ泥臭い殺し合いがあるのみ。

 

「待ってましたよ、この時をォ!」

 

 鍔迫り合いの最中、翠星石は雄叫びをあげると左手の散弾銃をゼロ距離で雪華綺晶に向ける。その威圧感に雪華綺晶は少しだけ笑みを歪めた。

 

 

 

 

「おまたせ」

 

 

 

 

 その声が聞こえるのと、翠星石の散弾銃が吹き飛ぶのは同時だった。突然の発砲音と共に、翠星石の散弾銃が撃ち落とされる。突然の事に距離を取って音の発信源を見てみれば、雪華綺晶のマスターであるこの俺が、琉希に追っかけられながら全力疾走で彼女に拳銃を向けていた。

 

「マスター!」

 

 嬉しそうに微笑む雪華綺晶の側へ駆け寄ると、彼女を守るように立ちはだかる。それを見ていた翠星石は、同じく合流した琉希と顔を歪めて舌打ちしてみせた。ガラ悪いなこいつら。

 

「分断しようとするまでは良かったな。だが肝心な所洗い忘れてるゾ」

 

 不敵に笑って敵対者に指摘する。

 

「雪華綺晶は賢い子だ。自分が襲われれば、同時に俺が襲撃されてるってこともわかるのさ。ならスマートな彼女なら相手に悟られないように、戦いながら俺の方向へ向かう事くらい楽勝なんだよ」

 

 両手を広げて言い切る。琉希は少しばかり悔しそうな表情を見せたが、それもすぐに強がりの笑みへと変わる。

 

「そうですか。しかしここは現実世界、時を止めたりするような小細工は通用しません」

 

 ほう、なるほどね。俺が時間の波を操る条件を向こうは知っているのか。

 

「そうかい。まぁ話は変わりますけど」

 

 強引に話を切り替える。

 

「翠星石、お前今のマスターは誰だ?」

 

 その発言に、二人とも固まる。

 

「琉希ちゃん、君指輪してないね。それにその身体、もう人間をやめちまってるからローゼンメイデンとも契約できないだろ。なら翠星石のマスターは誰だ?妹の香織ちゃんか?みっちゃんは金糸雀だけのマスターだしな」

 

 無言ということは図星のようだった。

 

「薔薇を用いて戦えば……ローゼンメイデンの固有能力を使用する場合では、生命力の消費は尋常じゃない。だからお前らは俺たちを分断して各個撃破しようとした。そっちのがお前らにとってはやりやすいからな。そしてこの場には雪華綺晶の水晶の残骸しか落ちていないということは、翠星石ちゃん?君ほとんど肉弾戦で頑張ってたんじゃないかね?その証拠に、ほら。ソードオフの水平二連のショットガン。琉希ちゃんの妹は病弱だって聞いたから、生命力は使いたくなかったのかな?」

 

 二人にとっての弱点を羅列する。これは推測ではなく、しっかりと調査した上での結論でもあった。だから彼女達には反論する余地はないのだ。

 俺はため息混じりに首を横に降る。

 

「よくないなぁ。力を使うのに必要なものを消費するでもなく、俺たちを倒そうだなんて。よくないなぁ!」

 

 ケタケタと笑って煽る。俺の横では雪華綺晶がなぜか拍手している。俺の言葉責めに感心しているんだろうが……いや今そういうのいらないよ?可愛いけどさぁ。

 琉希ちゃんは深呼吸すると剣をこちらに向ける。

 

「だからどうだと言うんです?いくらこちらの手の内を知ろうとも、あなた方に私達を倒せると?」

 

 強がるなぁ。そもそも倒せないから分断してきたんだろうに。俺は彼女を鼻で笑うと、

 

「そうだなぁ。散々引っ掻き回されたんだ、そろそろ見せてやってもいいだろう」

 

 そう言って、俺は手を空に伸ばす。そして異空間から見覚えのある一振りの剣を取り出した。それを見て、二人の表情が変わる。

 水銀燈の剣。装飾の施された、あの剣が俺の手元にある。大きさを変え、人間が持っても違和感のないサイズへと変更されたそれは、しかし確かに長女が持つ剣であって。

 

「……やはり貴方は化け物ね」

 

 俺を化け物と、この事象を理解した彼女は言う。

 

「いいや、どこまでも欲望に忠実な人間さ。ほれほれ」

 

「やん、ちょっとマスター……」

 

 欲望に忠実に、雪華綺晶の尻を触る。言葉ではそう言ってるけど雪華綺晶も結構、ノリノリじゃん。

 どうやらそれが生理的に受け付けないらしく、琉希ちゃんと翠星石は獲物を構えた。同時に俺も、左手にとある武器を構える。

 

「姉がいるんだ、なら妹も呼ばなきゃな」

 

 庭師の鋏。翠星石が持つ庭師の如雨露と対を成す一振りの鋏は、確かに彼女が良く知るものだが、金色の刃の先端には黒く汚れた血が付いている。

 

「お前……殺すです」

 

「やってみな!さぁお二人さん、俺の隠し手を拝めるんだ、泣いて喜べ!」

 

 低い姿勢で二人と対峙する。雪華綺晶は付き人のようにお辞儀をすると、一歩引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 指輪が熱い。締め付けられるような痛みを伴ったその熱は、指だけではない。身体の内側、生命そのものを燃やすような、そんな痛みをもたらしていた。

 香織ちゃんは指輪の嵌った左手を胸に押し当ててその痛みに抗うも、生命を薪に力を燃やすという行為には慣れていない。いや、人間ではその痛みに抗えるはずはないのだ。人間の枠を超えてしまった青年でない限り、その痛みは魂を蝕んでいく。

 

「お姉、ちゃん。翠星、石」

 

 顔を歪め、蹲る。姉と人形が戦っているのだと理解するのに時間はかからなかった。元は自分から始めた戦いに姉を巻き込み、そしていつしかその姉の戦いに自分が巻き込まれるなど誰が予想するだろうか。

 香織ちゃんは少女だ。ただの少女。人を辞め、人形との中間にいる姉とは違う。彼女は苦しむ。魂を燃やされる痛みと、終わりのない戦いへと繰り出す姉に哀れみを抱きながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから言ったじゃないか。こんなものは良くないと。二人は勝負になると思っていたらしいが、相手が悪すぎだろう。雪華綺晶はともかく、俺が敵なんだ。生半可な覚悟と手段で勝てる相手じゃないんだよ。

 ボロボロになって這い蹲る二人の元へ、俺は優雅に歩み寄る。まるで戦いなどしていないと言わんばかりに。

 右手には真紅のステッキ、左手には蒼星石の鋏。水銀燈の剣は亜空間というか、nのフィールドに仕舞ってある。

 

「よく頑張ったがそれまでだな。相手にならない」

 

 立ち上がろうとする琉希ちゃんに言い放つと、彼女は折れた剣をこちらに投げつけた。

 

「はいローズテイル」

 

 ステッキから薔薇の花弁を放出すると、剣は簡単に失速して地面へと投げ出された。

 

「この、クソ野郎……!」

 

「クソですか?好きになりましたか?(じゅんぺい)」

 

 俺はどこまでもふざけて言うと、琉希ちゃんを空中へ蹴り飛ばす。ボールのように舞う彼女を、俺は飛んでキャッチしてみせる。

 

「りゅ、き……!」

 

 スィドリームを呼び出して俺を攻撃しようとする翠星石。

 

「お姉様、手出しは無用ですわ」

 

 そんな姉を、雪華綺晶は白い蔦で搦めとる。勝負はあっという間に決してしまった。俺は後ろから抱きつくように抱える少女の耳元で囁やく。

 

「ああ……良い身体だ」

 

 心の底から少女は嫌悪したに違いない。弱い悲鳴を出しながら、左手の暗器で俺の腹を刺してくる。しかしそれすらも、俺にとってはどうでもいい。刃が抜かれた場所から血が出ようが、俺は笑みを絶やさなかった。もう傷は塞がっている。たった数秒だが、俺の身体はもう昔とは比べ物にならないくらいに変化していた。いや、元に戻ったと言うべきか。

 

「この身体が必要なんだ……雪華綺晶のために、君が必要なんだよ。んべろぉ」

 

 耳を舐める。とんでもない変態がいたもんだが、実際待ちわびていた時が迫ると人間こうなるんやなって。ていうか構図がちょっと課長こわれると被る気がする。

 

「やだぁ、やめて……」

 

 俺の性癖に突き刺さる声色で琉希ちゃんは言った。やめて?やめねーよ(ホワイトマンの敵)

 

「でも今はその時じゃない……まだ足りないんだ。完全に、アリスになったらまた迎えに来るよ、くひ、くひゃひゃ」

 

 欲望が魂の器からこぼれ落ちるのを感じた。もうすぐだ、もうすぐ成就する。俺達の悲願が、もうすぐに。

 

 

 

 

 

「スィドリームっ!」

 

 

 

 

 その叫び声と巨大な蔦が俺を襲ったのは同時だった。目の前の少女に気を取られていた俺は、少女ごと蔦に弾き飛ばされる。

 地面をバウンドする少女に、自力で白い蔦を取り除いた翠星石は言った。

 

「逃げてッ!」

 

 ボロボロの人形がそう言うと、マスターである少女は非常に困惑しながら逃げ出す。そこに先ほどまでの暗殺者らしさはない。ただの、錯乱した少女がいるだけだ。

 俺はぶつけた頭を押さえながら立ち上がると、逃げていく琉希ちゃんを見送る。今はそれでいい。今手元にいても、使い道はないから。それよりも。

 

「マスター、大丈夫ですか?」

 

「思いっきり頭ぶつけた。おい三女ォ!」

 

 立っているのがやっとな翠星石を呼ぶ。

 

「お前は別だッ!雪華綺晶のために今、ここで死ねッ!」

 

 叫んで、俺は庭師の鋏を片手に飛びかかる。10メートルの距離を一っ飛びし、その刃先を朦朧としながら立ち尽くす翠星石の胸に突き刺す。

 突き刺して、そのまま押し倒した。ぶらんと、力の無い手足が操り人形のようにだらしなく地に落ちる。

 

「りゅう、き……」

 

 オッドアイの瞳から光が消える。俺は翠星石が突き刺さったままの鋏を持ち上げ、思い切り払った。

 刃から落ちた翠星石の亡骸が、雪華綺晶の足元へ。雪華綺晶は姉の身体のそばへしゃがみ込むと、そっと優しく開きっぱなしの瞳を閉じた。

 

「お姉様の愛は本物でしたね。その愛、私が貰い受けますわ」

 

 聖女のような慈悲に満ちた笑みでそう言うと、突然姉の体を貪る。貪り尽くして、俺はワクワクしながら彼女の元へと駆け寄った。

 

 

「ああマスター……この身体、やっぱりローゼンメイデンね」

 

 

 両手を広げながら天を仰ぎ、陽の光を浴びる彼女は聖女そのもので。俺は思わずその腰回りに抱きつく。

 

「潤むわ……」

 

 主途蘭のボディとは訳が違う。正真正銘のローゼンメイデンのボディ。雪華綺晶は進化したのだ。

 

「でもマスター。あなたさっき琉希さんの事ベロベロ舐めてませんでした?」

 

「え、いやあれは、ちょっと興奮して……」

 

 先ほどの変態行為を責められる。だがそれも今だけだ。どのみちあの子の身体は俺たちのものだ。




性癖出過ぎ
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