まどマギ×ブラボss書いてたら遅れたゾ
薔薇が散る。
真っ赤な花弁が咲き乱れ、白い花弁が吹き荒れる。この嵐に身を置こうとするような人間はいないだろう。花弁はナイフのようにコンクリートの壁を切り裂き、美しさに比例するように殺意を高めているのだから。
まぁ良いのだ。どうせそれもすぐに終わる。愛しき白薔薇の娘は姉には勝てないだろう。確固たる信念を持ち、自らの愛のためにまっすぐであろうとする乙女。対するは歪んだ愛と、狂気に取り憑かれてしまった白薔薇の末妹なのだから……勝敗は見えている。
世界とは、物語とは、清く正しい方が勝つと相場が決まっているのだ。
だがそれで良いはずもない。それでは物語としては三流も良いところだ。
養殖クッキー☆がそうであったように、毎回しょうもない百合ネタで引っ張ったTISクッキー☆は死んでしまった。クッキー☆原理主義者とかいう頭のおかしい連中が持て囃すから、成長できないから死んだのだ。結果、待っていたのは声優の個人情報ガン堀り。
ならばぶち壊さなければならない。百合ものに男を出すほど壊してはいけないが、少なくともストーリーの展開はぶっ飛んでいなければならないだろう。
あの変態人形師が書いたストーリーを、俺が書き換えるのだ。
五対一。それがどんなに無謀であるかは雪華綺晶が一番分かっていた。
彼女にはかつてのように溢れんばかりの力は無い。力の供給源である青年はおらず、対峙する姉達と贋作は原作もビックリな武闘派揃い。的確な判断と攻撃を持って雪華綺晶を攻めてくるのだから。
雪華綺晶はビルの屋上に叩きつけられてもなお、足を震わせて立ち上がると空中の姉達を睨みつけた。
姉達は、当然のように槐の薔薇によって大人の身体を手に入れている。出力も高ければ、美しさでも成熟されていて敵いもしないのだ。
それでも雪華綺晶は諦めない。いつか、自分の王子様が目覚める時まで自分が戦い続けるのだと決意して。彼女もまた、一途であるだけなのだ。
「勝負有りね、雪華綺晶」
真紅はステッキの切っ先を彼女に向けると宣言した。雪華綺晶は鬼の形相でそんな姉を睨みつけると、しかし強がるのだ。
「まだ、ですわ。お姉様」
「もうやめるです!お前はとっくに……!」
合流した翠星石が語りかけるも、隣にいる主途蘭が手で制止した。
「貴様には散々痛めつけられたからのぅ!この儂が引導を渡してやろう!」
若干空気が読めない武闘派亜種が叫ぶ。
「主途蘭、これはローゼンメイデンの問題だ。ちょっと黙っててくれるかな」
「いいや黙らんさ。我が友を散々追っかけ回してくれたしの。個人的にも、奴は憎い」
それぞれが、それぞれの主張をする。真紅はまだこちらに牙を向ける末妹を見下ろし、少し悩んだ。やはり自分達の未来のためには彼女を葬る他ないのだろうか。
と、そんな時。琉希を逃した金糸雀が、息を切らしてやってきたのだ。彼女は両者に割って入ると、両手を広げて言う。
「待って!待ってかしら!雪華綺晶も一旦ストップかしら!」
そんな、少しばかり事情がありそうな様子に皆が顔を見合わせた。
「いいでしょう……お姉様。一体この負け犬ドールを押さえつけて、何をしようと言うの?」
自嘲気味に雪華綺晶が笑う。金糸雀は焦ったような、そんな目で彼女達を見ると言う。
「まだ、一人足りないかしら。私達ローゼンメイデンは7人。今、この場にローゼンメイデンは6人しかいないかしら」
「まぁ、儂はローゼンメイデンではないからの」
ケロッと言って主途蘭は少しばかり後退する。どうやらローゼンメイデンが揃うということが重要らしい。
「黒薔薇のお姉様なら来ませんわ。だって、先に一人でアリスになってしまわれましたもの……ふふ、おかしいですわよね、あれだけいがみ合っていた兄弟で、最後の手段は同じなんて……ふふ、くひひ、笑えます」
「なんですって……?」
真紅がその真意について尋ねようとして。薔薇の花弁の中に、黒い翼が混じる。
優雅に舞う一人の少女。漆黒の厨二病とも言える見た目の翼を靡かせ、空を舞うその姿はある種神々しい。
長女、水銀燈。彼女はドールズの上を飛んでいる。その姿を見て……真紅達は気がついてしまった。
「水銀燈……その身体!」
真紅が驚いたように言うと、水銀燈は彼女達よりも少しばかり高いビルの上に降り立って、その柵に腰掛けた。
長く美しい銀髪がさらりと風に揺られる。その姿は、どこからどう見ても至高の少女。当の本人はどこか達観したような笑みで全員を見下ろすと言う。
「はぁ〜い、負け犬の皆さん」
『あ゛ぁ!?』
雪華綺晶と金糸雀を除く全員が無駄にドスを効かせた声で唸った。
「ごめんなさいね。私、先にアリスになっちゃった」
にっこりと笑う無邪気で悪意しか無い矛盾した少女はそう宣言する。確かに、今の彼女は完璧そのものだろう。関節に継ぎ目はなく、肌も本物の肉体。瞳はガラスではなく、眼球。ぺろっと舌を出してみれば、唾液は本当に分泌されているのだから。
真紅はすぐさま絆パンチしたい衝動を抑えながらも、冷静に。
「あら……そう。それはよかったじゃ無い水銀燈。でも残念ね、私もいずれ正攻法でアリスに到達するわ。ジュンの力でね。貴女みたいに邪な方法ではなくてね」
「なぁ〜に真紅ぅ?嫉妬しちゃったぁ?それもそうよねぇ、だってあれだけ敵意を抱いていた私が先にアリスになっちゃったんだからぁ!ごめんなさいね、みんなも!」
煽り散らす姉を見て、金糸雀は首を横に振った。どうしてまぁ彼女達は仲が悪いんだろうか。
「水銀燈ちょっと黙ってるかしら!昔の事バラしちゃうわよ!」
「……なによ、ちょっとした冗談じゃない」
すみませへぇ〜ん、木ノ下ですけど〜、まぁ〜だその昔の事の発表時間かかりそうですかね〜?(水銀党員)
まぁそんなことはどうでもいい。とにかく、これでローゼンメイデンは全員揃った。そして、アリスも出現した。ならばこの後起こることと言えば。
光が、降りてきた。
眩い光に皆が目を眩ませる。その光から現れるのは━━神?GO?それとも。
「やあ、愛しい娘達。久しぶりだね」
GO IS DUST(異教徒)現れたのは変態糞人形師、ローゼンだった。
皆が昔、あれだけ待ち焦がれていた愛しのお父様。しかし今では娘を放ったらかしにしてアリスゲームという厄介事を生んだ大戦犯。しかし本能なのだろう、彼を見たローゼンメイデン達はその姿に、異様な愛情を向けたくなってしまう……はずなのに。
「あら、誰かと思えば娘に戦いを強いた創造主様ではありませんか。これはおめでたいですわ」
雪華綺晶が、冷めた口調で言ってみせた。そのお陰で、他のドールズも我に帰る。そうなのだ。今、彼女達には帰るべき場所も人もいる。それらを置いてなどいけない。
「雪華綺晶、君には再教育しなくちゃいけないね(意味深)……まぁ良い。それよりも水銀燈、よくぞアリスに到達したね」
その人形師の顔は。なにも無い。空洞。異様な光景だった。それでも、彼女達には当たり前の事で、彼は紛れもなくローゼンなのだ。
ただ一人、主途蘭だけがその異様さに嫌悪感を示す。
「あらお父様……私の事なんて忘れているかと思っていました」
反抗期の娘みたいな事を言う水銀燈。
「まさか。私は待っていただけさ。君のようなアリスをね……さぁ水銀燈。約束だ、君は私と共に薔薇園に来る権利がある」
「ふぅ〜ん」
まるで興味が無いように言い放つ水銀燈。そして、結構な問題発言をする。
「オプーナ貰えるよりいらないわね、その権利」
拒絶。クソゲー以下と言われたローゼンは絶句した。水銀燈はこちらを見ずに、ずっと毛先を弄る。
「トレビア〜ン!これぞ娘あるある、思春期に父親に真っ向から歯向かう奴ですな!」
唐突に、うさぎは現れた。両手を広げ、その後わざとらしく拍手してみせる道化はまさしくラプラスの魔。彼は変えることのない表情のまま、ただ宣告する。
「親愛なるローゼンよ、貴方は拒絶されてしまいました。さて、貴方はこれからどうするおつもりで?情けない格好恥ずかしくないの?(棒読み)」
プルプルと震えるローゼン。
「決まっている……」
怒りに震えた人形師は、ただラプラスに命じる。
「水銀燈以外、彼女達を破棄しろ。彼女は無理矢理でも連れて行く」
まるで悪の親玉みたいな事を言い出すローゼンに、ラプラスの魔は溜息を見せて告げた。
「だ、そうですが。如何なさいますか同志」
刹那、娘達を指差していたローゼンの指先が消しとんだ。次いで、発砲音。.30口径の弾丸は綺麗に美青年だった彼の指を削ぎ落としたのだ。
驚いて、それからローゼンは蹲った。空中で蹲るとは不思議なものだが……とにかく、そうなったのだから仕方ない。
そして、狙撃手は姿を現す。いつの間にか雪華綺晶の横にいた「彼」は、しゃがんでグローブ越しの手で汚れてしまった雪華綺晶の頭を優しく撫でると言うのだ。
「子供を愛せない親は死ぬしかないな」
雪華綺晶は唖然とした表情で狙撃手の顔を見上げた。そして、勝手に溢れてくる涙をそのまま流して言うのだ。
「もぅ、来るのが遅いです」
狙撃手の青年……俺はにひひっと笑うと、ただ謝る。謝って、彼女を抱き上げた。
「ちょっと道が混んでまして〜(ホモは嘘つき)」
そして頬を彼女の顔に擦り付ける。愛しさで溢れた少女に。俺だけを愛して、待っていてくれた少女に。
淫夢の語録しか出てこないのはいつも通りの俺である証でもあった。