合宿の2日目。
今日は丸一日ISの各種装備試験運用とデータ取りに追われる。
特に専用機持ち達は大変な作業なのだ。
「篠ノ之、お前はちょっとこっちに来い」
「はい」
千冬に呼ばれ、箒は向かう。
「お前には今日から専用――」
「ちーちゃ〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」
ずどどどど……!
千冬の声を遮り、何者かが砂煙を上げながら無茶苦茶な速度で此方に走ってきた。
臨海学校に乱入してきたのは、IS開発者である稀代の天才・篠ノ之束。
「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、ハグしよう! 愛を確かめ――ぶへっ」
千冬に飛びかかった束をアイアンクローでキャッチする。
もちろん手加減なしで容赦なく。
「ぐぬぬぬ……相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」
束はアイアンクローから抜け出し、箒の方を向く。
「やあ!」
「……どうも」
二人のやり取りについていけない生徒達はポカーンとしていた。(案の定チェイスだけは無視していたが)
「束、自己紹介をしろ。困っているだろ」
「えー?じゃあ、私が天才の篠ノ之束さんだよー。終わりー!それはともかく、上をご覧あれ!」
束が直上を指すと、金属の塊が落下してきた。
「じゃじゃーん! これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」
金属の塊が開き、中から真紅の装甲に身を包んだIS『紅椿』が現れる。
チェイスは直ぐ様、魔進チェイサーのハイパーセンサーを気付かれぬ様に展開し、紅椿のスペックを確認した。
『データからして、恐らく既存のISではないな……。第3世代とは明らかに違うみたいだが……所詮はこの程度か…』
内心落胆するチェイスを余所に、箒はさっそく紅椿に乗り、束の元で最終調整を行う。
「って言うか篠ノ之博士の身内だからって専用機が貰えるの?」
「篠ノ之さん狡くない?」
とボソリと陰口を叩いた生徒に反応した束が、
「おやおや、有史以来人間が平等だった事は一度もないよ?凡人君」
と言った途端、その生徒は黙り込む。
その様子に満足そうな表情を浮かべた束に、
「この世界にその不平等をもたらしたのは、紛れもない貴様だがな……」
チェイスが束を睨みながら、そう呟いた。
「っ……!」
その視線に耐えられないのか、束はチェイスから視線を反らす。
「たっ、た、大変です! お、おお、織斑先生っ!」
すると真耶が何やら慌てた様子で来ると、千冬と何か話をする。
途端、千冬の目付きが鋭くなる。
「全員注目! 現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機すること。以上だ!」
千冬の一声に女子達はざわめき立つが、千冬の一喝によって静まる。
「専用機持ち達は全員集合だ!篠ノ之、お前も来い!」
「はい!」
自信満々で返事をする箒に、チェイスは内心苛立つ。
『コイツ、浮かれてるな……。厄介な奴に厄介な物を渡してくれたな、あの天災は……!』
直ぐ様旅館の一番奥の宴会用の大座敷で専用機持ち達と教師陣が集められた。証明を落とした薄暗い室内に大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいる。
「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『
その言葉を皮切りに、全員が福音に対する意見を出し合う。
「イヤッホー! ここは私の出番だね!」
急に声が聞こえた為、全員が上を見上げると、天井から束の首が逆さに生えていた。
「束、ここは部外者は立ち入り禁止だぞ」
「まーまーちーちゃん!ここは断然!紅椿の出番なんだよ!!」
「何?」
千冬が疑問の声を上げると、束が作り上げた第四世代型ISの『展開装甲』と呼ばれる能力にセシリア達は唖然とする。
「展開装甲のスピードがあれば直ぐに福音に近づけるよ~!」
「でも篠ノ之さん一人では……。同行者は、一撃で福音を落とせる程の力を持った人じゃないと……」
シャルロットの言葉が終わると、全員の視線がチェイスに集中した。
当のチェイスは目を瞑って、話を聞いていただけ。
「ミューゼル、出来るか……」
「出来ん事はない…………だが」
「行くのは俺一人で十分だ……」
「なっ!」
片目を開けてそう告げたチェイスに千冬達は驚きを隠せない。
そしてそれ以上にその返事に納得出来ない者がいた。
「何故だ一夏!私では不服だと言うのか!?」
そう、箒だ。
「そう言っている…。もっと解りやすく言えば……足手まといだ」
「何っ!?」
噛みつく箒にチェイスは冷めた目線で言葉を紡いだ。
「ならば貴様は今から人を殺せと言われて殺せるか……?与えれた拳銃で人の頭を撃ち抜けるか……?貴様は一生、その力や罪と向き合う覚悟があるのか?」
「……!」
「……まともに実戦経験のない貴様をこの作戦に投入する事自体可笑しな話だ。貴様と組まされるよりは、オルコットや凰、デュノアか更識との方がある程度の連携は取れる。ろくに力を持つ意味を考えない、与えれた専用機を新しい玩具の様に扱おうとする、そんな生半可な覚悟な貴様に今この場で戦う資格はない……!」
そこで言葉を切ると、チェイスは砂浜に向かって行った。
「この作戦は俺一人で行く……増援は無用だ」
最後に千冬にそう吐き捨てた。
「変身……」
《Break up!》
ブレイクガンナーを起動し、魔進チェイサーへと変身した。
《Tune chaser bat!》
即座にバイラルコアを装填、すると背中に蝙蝠の翼が生えた。
『これが、ISのスラスターに当たる物か、オータムに感謝だな……』
『チェイス、聞こえる?』
すると突然、スコールから通信が入った。
『どうした……』
『福音のパイロット……ナタルを、助けてあげて!』
悲痛な叫びに、チェイサーは言葉を失った。
この様なスコールは、見たことがなかったからだ。
『知り合い、か?』
『IS学園の同期、と言った方が良いかしらね。彼女は福音を我が子の様に愛していたから……そんなナタルがISを暴走させるハズガないの!』
『まさか……外部から』
『ええ。恐らく……篠ノ之束か、或いは……』
『奴ら……亡国機業』
スコールは通信越しに頷いた。
『取り敢えずは、万全な状態で。相手は腐っても軍用IS、気を付けてね』
『あぁ、行ってくるよ。……母さん』
『…………うん』
通信を切り、飛び立とうとすると、背中から声が掛けられた。
「ミューゼル君……」
『山田、教諭……』
「生徒の君に任せて、本当にごめんなさい!」
『……アンタのせいではない。それに謝らせるなら、政府だ』
「………頑張って、下さいね!」
真耶、スコールの声援を胸に秘め、チェイサーは黒い旋風となり、
海上で福音と激突した。
IS ~黒き魔進~
ブレン「あのISに仕込ませたウイルス……上手く馴染んでますね」
チェイサー『お前達は……?』
???『フルスロットル過ぎるだろー!!』
IS ~黒き魔進~ 『戦士 集結』
黒き追跡者はその瞳に何を写す……?