チェイサーは現在、銀の福音と交戦していた。
福音は背中の両翼のウイングスラスターの砲門全てから光弾、更には背後の電極らしき物から高電圧を無差別に放った。
光弾にはさして驚かないが、チェイサーを驚かせたのは、
『どう言う事だ…こんな機能があるとは聞いてないぞ……!』
そう、背中の電極だ。
旅館で見た銀の福音に、こんな装備は見受けられなかったのだ。
だが、現在進行形で福音は本来ないはずの装備で、此方を攻め立てる。
光弾をブレイクガンナーで打ち消しつつ懐に潜り込もうとしても、福音は高電圧をその身に纏っている。
その為、直接干渉の攻撃を行えないのだ。
『あの電気に触れれば、恐らくこの姿と言えど唯では済みそうにない……っ!』
《Tune chaser bat!》
チェイサーはウィングスナイパーでの遠距離攻撃に打って出る。
紫紺の矢を連続で放つが、全て砲門から放たれる光弾で相殺されてしまう。
『ちぃ……!』
お返しとばかりに、福音は電撃をチェイサーに向ける。
すると先ほどまで細い線状だった電気は束ねられ、極太のレーザー砲となって襲い掛かる。
『っ!』
《Tune chaser turtle!》
不味いと判断したチェイサーは即座にバイラルコアをチェンジ。
亀の甲羅を模した盾、シェルディフェンダーを構え衝撃から身を守った。
『ぐぅ…………!!』
なんとかやり過ごすも、福音は次の攻撃態勢に移っていた。
『la……♪』
甲高いナノボイスと共に光弾が放たれようとした。
『それ以上はやらせないっ!』
《メロンエナジースカッシュ!》
何処からともなくオレンジ色の斬撃が放たれ、福音の攻撃を中断させる。
『助っ人に来たよ、チェイス!』
その人物は、チェイサーがよく知る人物の声だった。
『…カイト?』
『僕だけじゃないよ』
斬月・真が来た道を振り返ると、
『待たせたな、チェイス!』
『お楽しみは、これからだもんな!』
『一緒にひとっ走り付き合うよ、チェイス!』
『兄さん……少しは緊張感持ってくださいよ。相手は軍用ISなんですよ』
マントを着けた黄色の鎧の戦士、全体白一色でスカーフを靡かせる戦士、体にタイヤを着け赤を基調とした戦士、スーツ全体がピンク色で、どこか桃を思わせる戦士が駆けつけた。
マントの戦士を見たチェイサーは何かの電波を受信し、
『……バナナ?』
『バロンだっ!!寧ろレモンだよ!!』
そう尋ねるが、大声で否定される。
チェイサーはその声に驚きを漏らす。
『まさか……弾!?』
『おう!』
『そっちの白い戦士は…数馬か!?』
『ご明察だぜ、チェイス』
弾と数馬改めバロンとマッハはしてやったりとにやりとした。
『お前たちは、優と百合か……?』
『正解!』
『オータムさんとスコールさんに言われて来ました!』
優と百合ーー此方はドライブとマリカは力強く頷く。
『そうか……ありがとう』
チェイサーは斬月・真たちに礼を言う。
『君が素直にお礼を言うなんて珍しいな~。でも、礼はこのISを止めてからで!』
斬月・真はソニックアローを構える。
『ふっ……そうだな』
《Tune chaser shark!》
チェイサーは少し笑みを零すと、新たなバイラルコアを使う。
すると、荒々しいホオジロザメを連想させる手甲が装着される。
『おお、カッコいい』
『そんなもの後で沢山言え…………行くぞ!!』
『『『『『おうっ!!!!』』』』』
『あのISに仕込んだウイルス、良い感じに馴染んでますね……』
それを遠くから、緑色の脳の意匠が伺える謎の異形が監視していた。
『そりゃ!』
『はぁっ!』
バロンと斬月・真が同時に矢を放つと、福音はウイングスラスターからの砲撃で掻き消してしまう。
『まだまだ!』
《タイヤコウカーン!スピンミキサー!》
ドライブはシフトカーを入れ替え、ミキサー車を思わせるスピンミキサーにチェンジ。
タイヤを高速回転させ、セメントをぶつける。
すると、福音の動きが僅かながらに鈍る。
『今だ、百合!』
『はい!』
《ピーチエナジ~スカッシュ!》
マリカがその隙を突いて、攻撃を仕掛ける。
『まだまだ続くぜ~!』
《ゼンリン!》
マッハが怯んでる福音にバイクを思わせる銃、ゼンリンシューターをぶつける。
咄嗟に福音は電気を纏い対処しようとするも、
『二度もやらせんっ!』
背後からチェイサーがトゥースバンカーから高圧水流を放ち、電極を破壊する。
『数馬!』
『ああ!』
ゼンリンシューターを力いっぱいにぶつけ、福音をブッ飛ばす。
《change hammer!》
チェイサーはブレイクガンナーの引き金を引くと、トゥースバンカーの形態が変わっていく。
変形が完了すると、今度はシュモクザメを連想するハンマーになっていた。
『はぁ!』
チェイサーは飛ばされてきた福音を殴りつける。
すると、急に全員の頭に謎の声が響く。
『マスターを……傷つける奴等は、許さない!!』
『!?』
『何だ、今の声は…!?』
その声に戸惑ってる間に、斬月・真たちの後方から、攻撃が飛んできた。
『うわ!』
『あぶねっ!』
『誰だ急に!』
バロンが叫ぶ中、チェイサーは舌打ちした。
そして、その者は姿を現した。
『何故貴様がここにいる…………
篠ノ之』
チェイサーの言葉通り、それは紅椿を纏った箒だった。
「一夏、そいつ等が首謀者か!?」
チェイサーの質問を無視し、箒は今にも飛び掛らん勢いでバロン達を睨む。
すると、千冬から通信が入った。
『ミューゼル、其方に篠ノ之はいるか?』
『どう言う事だ…?』
『すまん。少し目を離したら勝手に飛び出して行ったんだ』
『それはアンタの管理不届きだろ、完全に』
『………』
痛いところを突かれ、千冬は押し黙る。
チェイサーは時間の無駄と言わんばかりに通信を切る。
『貴様、その行動の意味を分かってるのか……?』
「…何のことだ?」
意味が分からない、と言った様子で聞き返す箒にチェイサーは頭痛を覚えた。
『貴様は本当の馬鹿だな……!』
「馬鹿だとっ!?」
馬鹿と言われた箒はチェイサーを睨むが、チェイサーはそれを無視し福音に向かっていく。
「無視するなァァ!!!」
その態度に激昂した箒は、あろう事かチェイサーを攻撃しようと刃を向けるが、
『!何してんだ!?』
咄嗟にバロンが羽交い絞めにする。
「離せ!」
『離したらまたチェイスを攻撃するだろ!チェイス、皆!この子は俺が抑えとく!速く福音を!!』
『頼むぞ、弾!』
箒をバロンに託し、チェイサー達は福音を攻撃する。
『LAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!』
すると怒り狂ったのか、福音は光弾を全方位に向けて放つ。
『な、何だ!?』
『もしかして………』
『苦しんでる……はっ!』
ドライブの目に突如映ったのは、船。
『何で船がここに!?』
『この辺りの海域は封鎖されてる筈です!』
『密漁船か………だとしてもっ!』
ドライブ、マッハ、マリカの三人は密漁船を庇い、攻撃を受ける。
『がああ!』
『くう!』
『ぐおぉ!』
『数馬!百合!優!……!』
マッハ達を心配するあまり、自身に攻撃が向かってきているのに気づくのが、遅れてしまう。
チェイサーは咄嗟に防御体制を取るが、
『どけ、チェイス!ぐあああああ!!』
『っ、弾!!』
バロンがギリギリのタイミングでチェイサーを突き飛ばし、福音の攻撃から身を守った。
『チェイス、俺たちに構うなっ!パイロットの人を、福音を助けろ!!!』
バロンの叫びに、
『……あぁ!!』
力強く答え、福音に向かおうとするチェイサーに、
「ふん、犯罪者を庇うからこんな目に合うのだ…!所詮はこの程度の実力なのだな!」
箒が恨めしそうに吐き捨てると、チェイサーは動きを止めた。
この女は何を言っている。
犯罪者を庇うからこんな目に合う?
俺の友を、貴様より確実に強い弾達を、この程度呼ばわり?
冗談ではないっ!!!!
『篠ノ之ぉぉぉぉ!!!!!!』
「がはぁぁぁ!!!!!!!!」
激情に身を任せ、チェイサーは箒を近くの孤島にブッ飛ばした。
『所詮貴様は、力を持つに値しない………!!』
気絶した箒に吐き捨て、チェイサーは改めて福音と対峙する。
攻撃を凌ぎ切ったバロン、マッハ、斬月・真、ドライブ、マリカがチェイサーの隣に並び立つ。
『弾、数馬、カイト、優、百合……行けるか?』
『『『『『もちコース!!』』』』』
なんとも気の抜ける返事だが、気合を入れなおし、福音と再び交戦を開始した。
IS ~黒き魔進~
チェイサー『これで、チェックメイトだ!!』
優「君に人の命を見捨てる資格なんてある訳ない!」
束「あれは……ISじゃない…!?」
IS ~黒き魔進~ 『決着』
黒き追跡者はその瞳に何を写す……?