チェイスがスコールの養子になってから数ヶ月が経った。
怪我が完治した彼は、筋力トレーニングや運動を繰り返し、自身の肉体強化を図っていた。
更に、オータムと組み手を交わし、今やチェイスは一夏であった時よりも強くなっていた。
そんなある日の事。
チェイスは何時もの筋トレを終えて、フリーダム・スカイのISを試運転する部屋に来ていた。
「やぁチェイス君、お早う」
「お早う御座います」
目的はオータムの専用機を見るため。
前にダメ元で見せてほしいと頼んだ所、快く了解の意を伝えられた為、チェイスは来たのだ。
すると、オータムがハッチの向こう側から姿を現した。
「あれがオータムの……」
「そう、第二世代のIS。アラクネだよ」
「アラクネ……確かに蜘蛛らしい見た目だ」
成る程、とチェイスは感心する。
背中からは8本の独立した装甲脚を兼ね備えており、見た目は完全に女郎蜘蛛に相応しい。
とオータムはチェイスに気付き、笑顔で手を振って来た。
チェイスも苦笑いしながら手を振り返す。
「モテモテだねぇーチェイス君」
「……そんなことないですよ。俺なんかがモテる訳ないでしょう」
端正な顔つきなのにねぇ、と研究員は内心でぼやく。
と、ここでチェイスが調整が終わっていた量産IS、打鉄に少し触れていた。
「……これが、ISか」
だが次の瞬間、驚くべき事がチェイスに起こる。
チェイスが触れている打鉄が突然輝きだし、更に気づけばチェイスに装着されていた。
「な、な、な、何ですとぉぉ!!」
研究員は驚きの余り、腰を抜かしてしまう。
一方のチェイスは呆然としていた。
『何故、俺がISを……?』
あの後、何とかオータムに解除方法を教えてもらい、チェイスは打鉄を元に戻した。
「しっかしビックリだぜ、まさかチェイスがISを動かすなんてよぉ」
「俺が一番驚いているんだが……」
取り敢えずこれからの事をどうするか、スコールの元に向かった。
(当然スコールの耳にも届いている)
「災難ね、チェイス」
「あぁ……」
スコールは労るような笑みでチェイスの頭を撫で、チェイスは溜め息を吐いた。
だがスコールは直ぐ様手を引っ込めて思案顔になる。
「もしかしたらチェイスなら……」
「どうか、したのか……?」
突然の思案顔にチェイスは首を傾げる。
それに内心悶えながら、スコールはチェイスを先導する。
「(あぁっ、可愛いわ……チェイス♪)チェイス、着いてきて」
「スコール……まさか……(今のチェイス、反則過ぎだろ!?あ、下着が……///)」
「(何だ、この寒気は……?)……わかった」
うっすら背中に寒気を感じながらも、チェイスはスコールの後ろを歩く。
オータムはどうやら心当たりがあるようだ。
「チェイス、少し試したい事があるの」
「試したい事……?」
IS調整ルームに着いたスコールは一つの金庫を操作しながら、チェイスに語る。
鍵が電子音と共に解除され、スコールは中にあった物を取り出す。
「これを……」
スコールは取り出したそれをチェイスに手渡した。
「……これは?」
それは銀を基調とした拳銃の様なアイテムだった。
何処かバイクのハンドルを思わせ、所々に紫のラインが走っている。
だが拳銃と呼ぶには、異様に銃口が短い。
「ブレイクガンナー。男性でもISと互角に戦える事が可能な、ISを模して作った戦士に変身させるアイテム……そして、この世界を正す為の力」
「ブレイクガンナー……」
「だけど何故か、男性も私達女性も使えないの。理由は全く不明、だから封印してたの」
「そんなものを何故俺に……?」
男性も女性も使えない代物を何故自分に?チェイスはスコールの真意が読めなかった。
「私の勘が正しいなら、貴方はそれを動かせる……」
「勘、かよ……」
「大丈夫、私の勘は良く当たるの」
「それは本当だぜ、昔からスコールは勘が良いんだ」
少し腑に落ちないが、他ならぬスコールの頼み、チェイスが断る理由はなかった。
ISルームのカタパルトに立つチェイスは傍らにいるスコールの説明を聞いていた。
「起動方法は簡単よ。銃口を貴方の掌に押し付けるだけ」
「それだけで良いのか?」
「ええ」
取り敢えず言われた通りにチェイスはブレイクガンナーを握り、銃口を掌に押し付けた。
すると、何やらヘヴィな音楽が流れた。
「……!?」
「後は掌から離してトリガーを引くの」
「こうか……?」
上にブレイクガンナーを掲げ、トリガーを引いた。
すると、
《Break up……!》
エネルギーで出来たタイヤが現れチェイスを囲むと紫電が放出され、音楽と共にチェイスの姿がみるみる変わっていく。
そして最後に、タイヤがチェイスの体に合体する様に溶け込む。
「やっぱり……!」
スコールは感嘆の声を上げた。
そこには、異形な戦士がいた。
紫を基調とした装甲。
バイクのエンジン部を思わせる頭部。
鈍い光を放つオレンジの複眼。
全体的にバイクのエンジンを思わせるその姿は後に裏社会にとって「死神」と恐れられる事になる。
『……これが、俺なのか?』
自分の体や腕を確認するチェイス。
余りの出来事についていけてない様だ。
「チェイス、貴方にも貴方の取り柄が出来たじゃない」
『取り柄……』
「貴方はそれを身に纏えた。それは他の人には出来ない、それを動かせるのは世界に貴方だけよ!」
スコールはまるで自分の事の様に喜んでいた。
『スコール、所でこれの名前は……?』
「まだないわ。貴方が決めて良いのよ」
『名前……』
チェイスは暫くして顔を上げた。
『この姿での俺の名は、魔進……魔進チェイサー!』
黒き追跡者の誕生であった。
「チェイス、お前……それを動かせたのか!?」
『どうやらそうらしい……』
アラクネを纏いチェイスを待っていたオータムは驚きを隠さず、チェイスに声を掛ける。
『チェイス、気分は大丈夫?』
「大丈夫か?チェイス」
『ああ、問題ない』
軽く体を動かしながら、その性能を試す。
「よっしゃ!なら私がアンタの初陣を飾ってやるよ!」
『お手柔らかに頼むぞ』
オータムはブレードを展開し、チェイスに突っ込む。
チェイスはそれを腰を落とし構え、ブレイクガンナーで受け止める。
「やるじゃねぇか……!」
《break》
「は?」
『むうんっ!』
「あぐっ!」
ブレードの側面で銃口を押し、ブレイクモードに切り替え、ブレードを持った手を上に弾き、胴を殴り付けた。
想像以上の一撃にオータムの口から悲鳴が漏れる。
「なんつー威力だ……。受け続けたらヤバいな……!」
《gun》
『はっ!』
「うおっ!」
次にガンモードに切り替え、オータムに撃ちまくる。
「くそっ!」
それをオータムはサブマシンガンを展開、相殺する。
『そこまでよ』
とここでスコールからストップが掛かる。
『どうかしらオータム、チェイスの実力は?』
「とんでもねーぜ、日頃の成果が表れてるな!」
『お陰で使い方は大体分かった』
チェイスは魔進チェイサーの変身を解除する。
「スコール、後で話がある……」
「?ええ、分かったわ」
この後、チェイスのある発言にスコールはーーー。
IS ~黒き魔進~
チェイサー『逃がさん……』
モブ「何だあのISは!?」
チェイサー『俺の名は、魔進……覚えておけ』
IS ~黒き魔進~ 『魔進 始動』
黒き追跡者はその瞳に何を写す……?