「お待たせ~、二人とも」
「遅いっすよ、先輩!」
とある映画館の前、チェイスは無言で目の前の二人のやり取りを見ていた。
IS学園の二年生、フォルテ・サファイアと、三年生のダリル・ケイシー、チェイスにとっては先輩にあたる二人だ。
「ゴメンね、ミューゼル君。待たせちゃって」
「気にしてはいない…」
ダリルは謝罪するが、チェイスは大して気にしないので普通に返した。
その様子にダリルは少しホッと溜め息を吐いた。
「どうした…?」
「いや、嫌われちゃったらどうしようかな~って思っちゃって」
「ミューゼル君はそんな事で人嫌いになったりしないっすよ。ね?」
「あ、あぁ………それは兎も角、そろそろ上映時間だろう?」
「ハッ!急ぎましょ!!」
「ち、ちょっと!?早すぎっすよ~!」
「ふ……」
「?どうしたんすか、ミューゼル君」
小さく笑ったチェイスにフォルテが首をかしげて尋ねる。
「いや、何でもない……」
そんなフォルテに何でもないと答え、チェイスも走り出した。
今日見る映画は、題材が小説のラブストーリーだ。
年上の女性教師と近所付き合いの長い男子生徒の話で、チェイスも何度か原作を読んだ事がある為、知っている。
男子生徒は子供のころからその女性の事が好きだったが、女性の方はモテていた為に中々自分の想いを伝えられないでいた。
一方の女性も、その男子の事が気になっていたが、教師である為に告白出来ずにいた。
そして最後の章、卒業式の終わりに告白、目出度く結ばれると言ったハッピーエンドに終わる。
これを読んでいたオータムがすごく泣いていた為、読んでみた所、チェイス自身もハマってしまったのだ。
先日に二人にこの映画を見に行かないか?と誘われたときは密かに喜びを感じたりした。
そして座席はチェイスを挟んでフォルテとダリルが座るという、弾に殴られそうな構図だった。
チェイス自身あまり意識してはいないが。
『……居づらい』
とは言っても居心地は悪ったが。
何て事を考えてる内に上映が始まった。
「……」
内容は知っていた為、チェイスが懸念していた演技の方も杞憂に終わった。
それ程に、俳優達の熱演が光っていたのだ。
『悪くないな………』
穏やかな気持ちで見ていると、ラストシーンの最中。
『…っ!』
突然両腕を握られチェイスは肩をビクつかせた。
両隣を見ると、ダリルとフォルテが泣きながらチェイスの両手を握っていた。
『…こういう時は』
チェイスは二人の両手を優しく握り返した。
二人の手が少しビクッとなったが、直ぐに大人しくなった。
スクリーンの二人は校舎をバックにキスをした。
女尊男卑の連中が見たら騒ぐのは確実だが、そうではない人にとっては名作だと頷ける。
そしてスタッフロールが流れ、映画は終了した。
「久しぶりに映画で泣いたわ~」
「報われてよかったっすよ……ぐすっ」
「まだ泣いてるのか」
昼食の為に訪れたファミレスでの待ち時間、3人はさっきの映画の感想を語り合っていた。
「それにしても……」
「驚いたっすよ…」
「?」
「「ミューゼル君が手を握ってくれたことが!」」
「大声で言うな……!」
息を合わせてそう言う二人に、恥ずかしそうに顔を逸らす。
そんなチェイスを見て、二人はさらに微笑みを深くする。
「ほんっとミューゼル君って」
「可愛いっすねぇ~」
「うるさい……!」
と言ってる内に料理が運ばれて来た為、3人は食事に没頭することに。
だが途中でフォルテがチェイスの料理を勝手に食べたり、ダリルがチェイスにパスタを食べさせたりしたのは余談である。
「今日は楽しかった~!」
そして、レゾナンスで買い物を楽しんでいると、あっという間に夕暮れになり、3人はIS学園に帰ることに。
モノレールではしゃぐ二人を尻目に、チェイスは眠っていた。
「ミューゼル君、寝ちゃったっすよ」
「…こうして見ると、年下なんだなぁって実感するね」
「そうっすね…」
愛おしげにチェイスの頭を撫でながら、二人はチェイスの両頬にキスをする。
「今度は起きてる時に……ね?」
「ミューゼル君の唇……楽しみ♪」
そんな事が呟かれていたのは、チェイスは知らなかった。
IS ~黒き魔進~
真耶「行きますよ、ミューゼル君!」
チェイス「ちぃ…!」
IS ~黒き魔進~ 『訓練』
真耶「私、君の事が…!」