IS ~黒き魔進~   作:ふくちか

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近所の映画館のドライブ公開日が15日と言う珍事



???「これが……絶望だ」


『想い』

 

ハートロイミュードは千冬の体を貫いた腕を引き抜き、そして千冬は力なく倒れ伏す。

 

 

『ーーーーーーーーーッ!!!!』

 

声にならない悲鳴を上げながら、チェイサーは倒れ伏した千冬に駆け寄る。

 

「うっ………………」

『…しっかりしろっ!』

《Tune!mad doctor!》

 

マッドドクターで千冬の治療を試みるチェイサーだが、千冬の出血は止まらない。

 

『無駄だ………仮に助かったとしても、臓器を潰した。碌な生き方は出来ん……それに、この世界を歪めた元凶を助けて何になる?』

『………』

 

ハートロイミュードの言葉を無視して、チェイサーは千冬の治療を続ける。

 

 

『ひゃぁっはぁーーーーーー!!!』

『ぐぁぁ!』

『がぁっ!?』

 

その場に現れた乱入者――――ソードロイミュードはしがみ付いて来たドライブTWとマッハを薙ぎ払いながら現れた。

 

『……フン!』

『きゃあぁ!!』

『うぁぁ!!』

『がはっ…!』

 

更に立て続けに現れたイカロスロイミュードとバロン、斬月・真、マリカ。

彼らは地面を転がりながら変身が解除される。

 

『……皆っ!』

『そんな屑を助けて何になるんだよぉっ!!』

『ぐぁっ……!!』

 

不意打ち気味に襲い掛かって来たソードロイミュードの一撃を諸に受け、チェイサーは千冬から引き剥がされる。

 

更にソードロイミュードはあろう事か、瀕死の千冬の頭を踏みつける。

 

「うぅ………!」

『貴様…………その足を退けろッ!!』

『へん、やなこった。此奴のせいで俺達は地獄を味わったんだよ……こんな女、死んでも悲しむ奴なんざいねぇよ!』

『…ソード、その足を退けろ』

 

だがその下劣な立ち振る舞いに我慢できなくなったのか、ハートロイミュードはソードに命令を下した。

 

『あぁ?……アンタだって此奴が憎いんだろ?なのに何で止めんだよ?』

『……二度は言わんぞ』

『ちっ、ホラよ』

 

舌打ちしつつもソードは足蹴にして千冬を開放する。

 

 

這いながらも千冬を助けようとしたチェイサーだったが、

 

 

 

 

「…………………い、一、夏」

 

掠れ掠れの声で弟の名を呼ぶ千冬を見た瞬間、突如として激しい頭痛に苛まれた。

 

『ぐ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』

「ち、チェイス……!?」

 

痛みと共にチェイサーの頭に流れ込んできたのは、数々の心無い罵倒の声だった。

 

 

 

 

 

――――何だ、あの世界最強の弟なのにこの程度かよ

 

 

 

――――何でこれ位の事が出来ないの?千冬様の弟でしょ?

 

 

 

――――お前の様な出来損ないが、姉貴みたいに強くなれる訳ねーよ!

 

 

 

――――ねぇ、何で生きてるの?貴方が生きてたら千冬様の面汚しなんだけど。

 

 

 

 

 

『何、だ………これは…!?これは、俺の………記憶、なのか?』

 

 

自問自答を繰り返すチェイサーの前に、一人の少年が立っていた。

 

 

その子供は、チェイスとそっくりな顔をしていた。

 

『お前は…………』

 

まさか…と、呟く前に少年は消え、チェイサーの目の前にはある光景が広がっていた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『一夏、向こうの柱まで競争だ!』

『待ってよー千冬ねえ!』

 

中学生ほどの背丈の女の子と、まだ背の低い男の子が、仲睦まじく駆けっこをしていた。

 

『はぁ、はぁ……千冬ねえ速いよー!』

『ふふっ、そんな弱音ばかり吐いててもダメだぞ。お前も何時かは大人になるんだからな』

『大人、かぁ………俺、おっきくなったら千冬ねえみたいなカッコよくて強い人になる!それで困ってる人達を助けていくんだ!』

『一夏………嬉しい事言ってくれるじゃないか!よしっ、今日の夕飯はコロッケだ!』

『やたーっ!!』

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

『…………………千冬、姉』

 

痛みが治まったチェイサーは、自然とその名を呟いた。

その声は間違いなく、織斑一夏その者だった。

 

「…ミュー、ゼル」

『…………俺は、如何やら本当にアンタの姉だったらしいな』

 

千冬を抱き起しながらそう言ったチェイサーに、千冬は自然と涙を零した。

 

「ほん、とうに…一夏、なのか?」

『…あぁ』

「……ごめん、なさい。お前の、痛みに、苦しみに、気づいてやれ、なくて…………」

 

掠れ掠れの声で千冬はチェイサーに謝罪した。

 

「そして…………この、世界を、歪めてしまって…私は、死んでも償えない事を、してしまった…」

『…その話は、アンタの傷が治ってから聞く。今は……ゆっくりお休み、千冬姉』

「いち、か………」

 

チェイサーは千冬を優しく寝かすと、駆け寄ってきたドライブTWとマッハに千冬を任せた。

 

『チェイス…お前、記憶が』

『……姉を、頼む』

『…………分かった』

《タイヤコウカーン!マッドドクター!》

 

チェイサーから返却されたマッドドクターを受け取り、ドライブTWDは千冬の治療に専念する事に。

 

 

 

千冬を託したチェイサーは手負いのハートロイミュード、イカロスロイミュード、ソードロイミュード、そして後からやって来たブレンロイミュードの前に立ちはだかった。

 

『チェイス・ミューゼル………』

『確かに俺の姉は、この世界を歪め、多数の人の未来を、友の家族の命を奪ったテロリストだ………』

『ハッ!何を今更……』

『だがそれでも』

 

ソードロイミュードの台詞を無視し、チェイサーは言葉を紡ぐ。

 

 

 

『俺は嘗て、この姉の背中に憧れ、追い求めた…………俺にとって、唯一の肉親だ』

 

 

 

『この先、姉が動けなくなるのなら………姉の、身内の罪は、俺も背負う』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『織斑千冬が、篠ノ之束が犯した過ちは――――俺が償うッ!!!』

 

 

 

そう力強く断言したチェイサーは、懐から今朝スコールから貰った“ソレ”を取り出した。

 

 

「!あ、あれは……」

『マッハドライバー!?』

 

それを見て一番驚いたのはマッハ。

そう、チェイサーの手には、マッハの起動ツールたるマッハドライバーが握られていた。

 

「もしかして………!」

 

カイトの言葉が続くより速く、チェイサーは腰にマッハドライバーを宛がう。

ハーネスが展開されると、チェイサーの腰回りの装甲もなくなった。

 

『ッ!うぉっ!?』

 

チェイサーがマッハドライバーを身につけた瞬間、黒い何かがソードロイミュードを襲った。

辛うじて躱したソードロイミュードがチェイサーを振り返ると、それはチェイサーの手に収まっていた。

 

『…………………………』

《シグナルバイク!》

 

シグナルライディングパネルに先程の黒い何か――――シグナルチェイサーを装填。

 

 

 

 

『例え悪人でも更生する権利がある…………だが、それを革命と言いその余地すら奪う貴様等を、俺は決して許さん!!変身!!!』

《ライダー!チェイサー!》

 

シグナルライディングパネルを倒すと、紫のエネルギーフィールドが形成。

包み込まれたかと思うと、魔進チェイサーの装甲が一瞬にしてパージされた。

 

『ぬぁっ!?』

『うわっ!?……チェイス、なのか?』

 

 

白銀を基調としたスーツを纏うその姿は、魔進チェイサーの面影は有るものの、まるで印象が違って見える。

 

 

よりヒロイック然としたその姿に、その場の全員が見惚れていた。

 

 

 

唯一人を除いては。

 

 

『見てくれが変わっただけじゃねーかぁぁ!!!』

 

ソードロイミュードだけは相変わらず好戦的な態度で飛び掛かった。

が、着地する寸前に、チェイサーに喉仏を掴まれ、苦しむ羽目に。

 

『が、ぁっ……!』

『このパワー……デッドヒート以上のパワーだな』

『ぐへぇ!!』

 

ソードロイミュードを地面に投げ飛ばし、改めて対峙すると、スコールから通信が入った。

 

『チェイス、聞こえる?』

『母さん……実は』

『それは後で聞くわ………今貴方が纏うライドスーツは、魔進チェイサーの発展型にして最終形態――――チェイサーVersion2。まぁ名称はチェイサーV2で構わないわ』

『軽いな、オイ……』

『それと、新しく武装も追加してあるわ。存分に振るいなさい!』

 

通信を終えると、チェイサーはデータ領域からその武装を呼び出す。

 

 

『…………奇抜すぎだろ』

 

それは歩行者用の信号機が取り付けられた大振りの斧で、見た目のインパクトの大きさにチェイサーも困惑した。

 

「スコールさんって、やっぱ独特のセンス持ってんなぁ……」

「ある意味、凄いです…」

「まぁ、車のドアの銃とか、ハンドルの剣とかだもんなぁ」

 

これには仲間たちも苦笑いを禁じ得ない。

 

『そんなふざけた武器で俺に挑もうってかぁ……ッ!』

 

大口を叩ききる前に、ソードロイミュードはシンゴウアックスにより切り裂かれていた。

 

『むぅんっ!!』

『ぐはぁ!!』

 

シンゴウアックスの一撃は凄まじく、ロイミュードボディでは比較的最新型の性能を誇るソードロイミュードですら手も足も出ずに追いつめられる。

 

『終わりの時だ………』

《ヒッサツ!》

 

頭部分のシグナルライディングパネルにシグナルチェイサーを装填し、持ち手のシンゴウプッシュボタンを押すチェイサー。

そしてそのまま斬りかかろうと振りかぶった瞬間、

 

 

 

 

《マッテローヨ!》

『………………は?』

 

信号ランプが赤に光ったかと思うと、いきなり待てと言われ、チェイサーは困惑する。

 

『……これは、待てば良いの、か?』

《マッテローヨ!マッテローヨ!》

『………』

 

赤ランプと睨めっこしながらそう呟くチェイサーにシステム音声が鳴り響き、チェイサーは突っ込むのを止めたと言わんばかりにシンゴウアックスを立てる。

 

「アッハッハッハッハ!!」

「すっげぇー!スコールさんのセンスマジスゲェ!!」

「フフッ…!」

『これは、流石に………なぁ?』

『イヤー、脱帽だわ』

 

呑気に笑う仲間を見て、

 

『笑うなッ!!!』

『ふざけてんじゃねぇ!!!』

『貴様は交通ルールをまもれぇ!!』

《gun》

『ぐああああ!!』

 

怒声を上げ、更には空気を読まずに特攻してきたソードロイミュードにブレイクガンナーの射撃を浴びせる。

 

 

《イッテイーヨ!》

 

その間にエネルギーチャージが終わったのか、ランプが緑に輝くと、チェイサーはシンゴウアックスを掲げ、今度こそ必殺技を発動する。

 

『でやぁぁぁぁっ!!!』

《フルスロットル!》

『グァァァァァァァッ!!!!!』

 

断末魔を上げ爆発するソードロイミュードに構わず、チェイサーは今度はシンゴウアックスをハートロイミュード目掛けて投げ飛ばした。

 

『ッ!!』

『ハート!』

 

そうはさせまいと、ブレンロイミュードが電撃でシンゴウアックスを弾く。が、

 

 

『その片腕も、貰って行く!!』

 

チェイサーは脳波信号でシンゴウアックスを自身の方へ引き寄せると、隙間を縫うようにして接近し、ハートロイミュードのもう片腕を切断した。

 

『ぐぅ……!!見事だな、チェイス・ミューゼル………』

『おらぁっ!』

『ぬぅ!』

 

もう一撃はイカロスロイミュードの突風に阻まれてしまい、後ずさる。

 

『だが、これで当初の目的は果たした……。ブリュンヒルデを失ったこの世界は、最早丸裸も同然。この場の戦いは、お前たちの勝ちだ………!イカロス!』

『っしゃぁ!!』

『っ!』

 

イカロスロイミュードは羽ファンネルの弾幕でチェイサーを足止める。

 

『待て!!』

 

だが、煙の先に、ハートロイミュード達はいなかった。

 

 

 

『………………………』

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『チェイス・ミューゼル……』

 

撤退したハートロイミュードは、心にある感情が湧き上がるのを感じた。

 

 

 

『奴ならば………』

 

 

 

 

それは――――喜びだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





IS ~黒き魔進~

優「芳しくないみたい……織斑先生」

チェイス「すまなかった……カイト」

箒「姉さんの過ちは、私が背負うさ……お前が全部背負う必要はない」

IS ~黒き魔進~ 『事後処理』

黒き追跡者はその瞳に何を写す……?




チェイスが殺すのは更生の余地が無いほどの外道な悪人だけです。それ以外では殺したりはしません。

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