チェイスは穏やかな顔で散歩をしていた。
初めて会った時は激しい頭痛に襲われたものだが、今では痛みをまったく感じない。
あるのは懐かしい友に会えた様な心地良さだった。
『こういうのも、悪くないな……』
ふとチェイスの目に、あるものが止まった。
それはIS、打鉄だった。
どうやら展示用らしい。
チェイスは直ぐに元来た道を引き返そうとした。
理由は分からないが、何やら嫌な予感がしたからだ。
だがそんなチェイスを仕組まれたと言っても良い様な出来事が襲い掛かった。
先ずはいきなり足元を魚を口に咥えたどら猫が通り過ぎた。
それに驚き足を退かした所に、向こうから大きい足音が聞こえてきた。
「こらーーーー!!!待ちなさい、この泥棒猫!!!!」
凄まじいパーマをかけたおばちゃんが物凄い形相で走ってきたのだ。
そのあまりの気迫にチェイスはたじろいでしまう。
だがたじろいだ方向が不味かった。
よりにもよってISが展示してある方に僅かだが、肩が触れてしまう。
その瞬間、打鉄は眩しく輝く。
気付けばチェイスはISを纏っていた。
チェイス自身は驚いてはいないが、駆け寄ってきた職員は驚きの声を上げる。
「君!大丈夫……って男がISを起動させてる!?」
「こ、これってIS委員会に報告しないと駄目だよね!?」
周りが騒然となる中、チェイスは内心溜め息をつく。
『どうしてこうなった……』
チェイスが世の不条理を嘆く中、空は相変わらずの晴天だった。
「これは隠し通せないわね…」
「すまん……」
溜め息をつくスコールにチェイスは頭を下げる。
「謝らなくても良いわ、何れはぼろが出ても可笑しくなかったもの」
「そう言ってもらえると助かる…」
面目ないと縮こまるチェイスの後ろから、オータムが声を上げる。
「けどどうすんだ?滅茶苦茶表騒がしいぜ」
フリーダム・スカイの表にはマスコミが大量に集まっていた。
「……もうあれしかないわね」
「まさか、スコール……」
「かなり不本意だけど、ね」
苦虫を噛み潰した表情でスコールはチェイスに、
「チェイス、IS学園に入学しなさい」
そう告げた。
チェイスは冷静にスコールの心情を察したのか多くは語らず、
「………あぁ」
短い返答で、肯定の意を伝えた。
「チェイス、本当に良いの?」
「寧ろIS学園の方が少しは安全だ…」
「へ?」
良く分かっていない様子のカイトにスコールは詳しく説明した。
「IS学園に入学すれば、あらゆる国家は干渉できないわ。つまり誘拐や人体実験の心配がないの」
「成る程…」
「家じゃ守りきれる保障もないからね。…不本意だけど、チェイスをIS学園に入学させる他ないわ」
スコールは心配そうにチェイスに近寄り、抱き締めた。
オータムもガシガシとチェイスの頭を撫でる。
「何かあったら必ず言ってね、チェイス。私たちは何時でも貴方の味方よ」
「でもたまには顔を見せろよ!」
「あぁ……俺は、幸せ者だよ」
気持ちよさそうに目を細めるチェイス。
『何だろう…スコールさんとオータムさんの後ろで龍と虎が睨み合ってるような……』
カイトは人知れず、冷や汗を流していた。
部屋に戻ったチェイスは必要なものを鞄に詰めて、準備をしていた。
「やぁ、チェイス。お邪魔するよ」
「カイトか…」
大体準備が終わった所で、カイトが訪問してきた。
「どう?準備は」
「大体終わった」
「そっか」
「カイト、頼みがある」
「…珍しいな、君が頼みごとなんてさ」
珍しくチェイスが自分に頼みごとを頼んできたため、カイトは目を丸くしながらチェイスの言葉を待つ。
「弾と数馬の事、守ってやってくれ……」
「………安心しなよ、君の友達は僕の友達だからさ」
コツンと拳を合わせる。
「感謝する……」
「良いよ、じゃお休み」
「あぁ……」
カイトが去りチェイスは眠るため目を瞑った。
チェイスの寝顔には、不安が一切なかった。
IS ~黒き魔進~
山田真耶「これから宜しくお願い致しますね!」
織斑千冬「違う、お前は一夏だ…!」
チェイス「どいつもこいつも……」
IS ~黒き魔進~ 『入学』
黒き追跡者はその瞳に何を写す……?