艦隊これくしょん 〜諦めない心〜   作:橆諳髃

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6話 地の精霊

「………………うぅ……」

 

視界がぼやける。それに、あたりが暗いせいもあってよく見えない。

 

僕は……どうしてここに……?

 

何故か身体中も痛かった。しかしながら、重症というわけでもなく、体は動かせそうだった。

 

(そういえば……榛名さんと艤装の素材を採りに行ってて、野山の奥まで来て、それで……)

 

だんだんと思い出してきた……

 

僕は野山の奥にある崖の方まで行って、それで急に足元が割れて落ちてしまったんだ……

 

上を見上げると、少し明かりが見えた。

 

結構な高さから落ちてしまったようで、それでも重症にならなかったのは幸運だと思った。

 

「榛名さんは……この辺りにはいないようだね……一緒に落ちなくて良かった」

 

自分よりも他人の事を心配する安騎尭。体の痛みも少し引いたのか、どうにか立ち上がれた。

 

あたりを見回す。明かりは、上から射す陽の光しか無く、暗かった。

 

暗がりを手探りしながら歩くと、壁のようなものがあった。

 

安騎尭はその壁に沿って歩いていく。

 

暗がりでどこに向かっているのかはわからなかったが、安騎尭は進むしかなかった。

 

進んで行くと、急に壁の感触が変わった。

 

さっきまでザラザラとしていた感触が、まるで煉瓦を触っているかのような感触になる。

 

(全部の壁が変わったわけじゃない……ここから感触が変わってる。進んで良いか迷うけど、今はそれどころじゃないよね)

 

未だに自分がどこに進んでいるのかわからなかったが、それでも安騎尭には進むしか選択が無かった。

 

そのまま進んで行くと、視界が少し明るくなる。

 

暗闇に視界が慣れたのか、それとも奥の方が明るいのか、ともかく進んでいった。

 

どれくらい壁に沿って歩いたのか?

 

安騎尭は頭の片隅で思いながら進む。

 

すると、曲がり角が見えた。今まで真っ直ぐな道しかなかったが、曲がり角を曲がった方から明かりが見える。

 

安騎尭はそこに夢中で走りに行った。

 

曲がり角を曲がる。

 

安騎尭は唖然とした。

 

そこは広間になっており、そこから先には道は無い。

 

だが、そこはさっきの道とは比べ物にならないほど明るく、中央には祭壇らしきものがあった。

 

何も考えずに祭壇に歩を進める。4段ほどしかない階段に足を踏み入れると、祭壇が光りだした。

 

魔法陣みたいなものが浮かび上がり、黄色い光があたりを照らす。それはどんどん強くなっていき、目を開けられなくなった。

 

安騎尭は目を塞ぎ、腕で光を遮るように顔の前へと持っていく。

 

しばらくして手をどかして目を開けると、そこには何かが浮いていた。

 

それは、地球儀のようなものでその上に犬? のようなのが乗っていた。

 

安騎尭は出る言葉が無く固まっていた。

 

「こんな所に人間が来るなんて珍しいなぁ〜」

「へっ?」

 

突然の事に変な声を出してしまった。

 

目の前に動物のようなものが出てきて、それにいきなり話してきたところでやっと我に帰った。

 

「あ、あの……あなたは……?」

「ん? 僕のことかい? 僕はノームだよ」

「ノーム……? ノームって……まさか大地の精霊と言われるあの⁈」

「んー、だいたいそんな感じであってるかな〜」

 

驚いた……まさか精霊がこの世界にいるなんて……

 

確かに妖精がいる時点で驚きだけど……

 

(ノームって、結構知られている妖精だよね……そんな存在がこんなに近くにいるなんて……)

 

「そういえばー、君の名前は何て言うのー?」

「あっ、そうでした。僕は脩鴑安騎尭っていいます。なんていうか、その……」

「あー、そんなにかしこまらなくて良いんだよー」

「は、はぁ……じゃぁ、ここはどこなんですか?」

「ここー? ここは、僕が守る土地だよー」

「守る……土地?」

「うん、そうだよー」

 

僕は前々から思っていた。この土地は希少な薬草が多い。他のところでも見られる薬草もあるらしいけれども、ここの比ではないと聞いたことがある。

 

(この土地にこんなにも薬草が多いのは、土壌がとても良いからで、その土壌がいいのはここにいるノームのおかげで……鉱石がたまたま見つかったのも、ここがノームが守っている土地だから……)

 

これで納得がいった。

 

僕が住んでいる町は、規模は小さいけど、それでも薬草で有名になったこと。

 

それも全部ノームの恩恵のおかげだったんだって初めて知って、逆に、このことが世間に知れ渡ったら、探索する人たちで溢れて、やがてこの山が荒らされるかもしれない……

 

(これは……誰にもしゃべらないでおこう……)

 

その方がいいと思った。

 

「でもここ最近は安定しないんだよなー」

「安定しない?」

「うん、確かー……少し前からマナが安定しないんだよー」

「マナ? それって何?」

「マナは、この世界を構成しているものの一部だよー。それは当然、普通の人には見えないんだよー。僕たち精霊も、マナが沢山結集してできているんだよー」

 

マナについて初めて知った。この世界の一部をマナが支えていて、僕たちはそれを知らずに生きている。

 

僕たちからすれば、知らないことが当然で、精霊たちから見れば、マナが世界の一部を支えていることが普通だった。

 

(ん……? ちょっと待って……マナは普通の人には見えないって言ってたよね……このノームもマナが結集してできているって言ってた。なら……)

 

「何で僕は君が見えるの?」

「あー、確かにー」

 

これも、あの夢を見たせいなのかな? でもあの人はちゃんと人の形をしていたし……

 

「そういえば、君からマクスウェルの力が少し感じ取れるよー」

「マクスウェル……?」

「うん、僕たち精霊の主だよー」

「それって、髪が長くて白い?」

「そうだよー。でも、何で君がそんなことを知っているのー?」

 

僕は最近になって見始めた夢の事について話した。そしたら驚いた顔? をしていた。

 

「マクスウェルの夢を見たんだねー……なら、マクスウェルが言ってたことは本当だったんだね……」

「えっ?」

「マクスウェルが言ってたんだ。自分の目の前に小さな人間がいるんだって。その子は、笑顔で立っていて、それで今の現状を話したら、その子は、顔を変えずに『自分が何年かかってでもそれを成し遂げる』って。もしかして……君のことじゃないかなー?」

「ぼっ、僕⁉︎ でも僕、夢の中でそんなことを言った覚えはないし……」

 

そう、覚えがない……どことなく無責任だとは思う。申し訳ないことだけど、僕にはその力がない……

 

「そうかー……でもこのままじゃいずれ世界は滅んでしまうよー」

 

世界が滅びると言われても、スケールがでかすぎて実感がわかない。

 

(世界が滅びるなら……榛名さんも死んでしまうのかな……)

 

そう思った時、想像してしまった。榛名さんが、倒れて動かない場面を。

 

例え呼びかけても、返事をしてくれない、反応してくれない、体も……冷たくて……

 

「っ‼︎」

 

想像しただけで、恐怖を感じてしまった……

 

想像した自分を殴りたくなった。

 

(そんな未来は……嫌だ‼︎ 力が無いからって、最初から諦めたら何もできないじゃないか‼︎ 僕は……諦めたくない‼︎)

 

「ノーム‼︎ どうしたら僕は強くなれるかな⁉︎」

「んー、いきなりどうしたー?」

「僕には、大切な人がいるんだ‼︎ 町の皆もそうだけど、僕には、それ以上に守りたいって思える人がいるんだ。だから、その人の為に力がいるんだ‼︎」

「ふ〜ん、そうなんだ。まぁ話はわかったよ。君が言うように、強くなれる方法はあるよー。それはねー、僕たち精霊と契約をすることかなー。そうしたら、僕たちの力も使えるしー。ただ、それには代償が必要なんだよー」

「代償?」

「うん、代償だよー。それはねー……」

「……っ‼︎」

 

僕はそれを聞いて何も言えなかった。その代償が、自分の運命を大きく変えるものだったから……

 

でも、僕は契約した。

 

例え自分がどうなろうとも、この手で大切な人を守れるなら。

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