新生活が始まって何かと忙しかったものですから手をつけませんでしたが、やっと書けます。
今回はシリアス回になろうかと思います。
それではどうぞ。
僕はノームと契約した。
その契約は、自分の血でノームが用意した契約陣に名前を書くというものだった。
血は自分の指から出した。痛くはあったけど、我慢した。
名前を書いた契約陣は、僕の血に反応して眩く輝いて消えた。
「んー、これで契約完了だよー。これからよろしくねー」
「えっ、これからよろしくって……?」
「あぁ〜、言ってなかったねー。僕たち精霊は、契約をした者と行動を共にするんだよー。まっ、普通の人には見えないんだけどねー」
それって……契約の前に言うことだよね? まぁ、契約した後に言うことじゃないんだけれども……
「ん? ちょっと待って。僕と同行するって事は、ここはどうするの? 君がここから離れたら、この土地の効力が切れてしまうんじゃ……」
「あぁ〜、それも心配ないよー。この土地と僕はリンク、つまりは見えない糸で繋がれているから大丈夫だよー」
ノームはそう言った。
それなら、大丈夫かな。
ノームは他の人には大体見えないらしいし、仮に見えたとしても、どうにもならないと思う。
それに、この土地についても問題はないと思う。
誰かが興味本位にこの島を探検したりして、偶然ここを見つけたとしても、何もならないだろうし……
まぁ遺跡調査で沢山の人は来そうだけど……
契約した後は、ノームの指示に従って歩いて行った。
すると、出口に簡単についてしまった。道は相変わらず暗くはあったけど、そこはノームが照らしてくれた。
実体化した時と、そうでないときに分けられるそうで、今回の場合は丸い形になって照らしてくれた。
出口を出ると、そこはさっき落ちた所の裏側の方だった。
出た時に、丁度榛名さんとも合流して、すごく心配されてた。どこかに怪我がないかもチェックされて、目立った外傷はどこにも無かったんだけど、契約した時に指から血を流したから、それを榛名さんが見た瞬間に、「これはどうしたんですか⁉︎」とか、「痛くないですか⁉︎」って言われた。
でも、普通あの高さから落ちて外傷がこれだけだというのはおかしいって気づくようなものなんだけど……
まぁ、人の感覚はそれぞれだから仕方がないかもしれない。
その後は、薬草を摘みながら帰った。本当は鉱石を見つけるのが主な目的だったんだけど、もう遅い時間帯だし、明美さんに心配させるわけにもいかないから、暗くならないうちに帰った。
帰った時に、明美さんはまだ来ていなかった。
代わりに艤装に宿った精霊達が出迎えてくれて、何となく嬉しい感じがした。
だけど、相変わらず艤装はボロボロのままで、どうしようと思った時、ノームが頭の中で話しかけてきた。
『そう言えば聞くのを忘れていたんだけど〜、何であんなところにいたの? 何か用があって来たんだよね〜?』
(うん、実はここにある艤装を治すための鉱石を探していたんだけど、探している途中で突然できた穴に落ちちゃって……)
『なぁ〜んだ、そんなことだったんだね〜。なら話は簡単だよ〜。その鉄の塊の近くに両手をかざしてみて〜。そしてイメージしてみて〜。今自分にいるものを。ただし、それは僕の能力に限った物しかできないから、そこは気を付けて〜』
僕はノームに言われたようにやってみた。
榛名さんの艤装の近くに両手をかざして、目を閉じてイメージしてみる。自分に今必要なものは、榛名さんの艤装を治すために必要な鉱石。形は決まった形じゃなくても問題はないと思う。
そうして集中する……すると手に何かが集まり始めてきた。
目を開けると黄色い光を放っている……それに気をとられることなく集中すると、段々と形になってきた。
それは眩い光を放った後、そこには立派な鉱石があった。
それを見た皆が驚く。
僕も驚いてはいるんだけど、それ以上に驚いていた。
「安騎尭さん……これは一体どういうことですか……?」
「……」
僕はすぐに答えることができなかった。答えることができなかったのは……化け物扱いされて、榛名さんが僕から離れるのが怖かった所為かもしれない。
「……榛名さん……その事について話したいことがあるんだ。だから、聞いて欲しい」
少し間をおいてやっと組を開くことができた僕は、少しずつ話し始めた。
穴に落ちた後、暗い道を彷徨って広い場所に着いたこと。
そこには、大精霊のノームがいて、この土地が何故こうも豊かなのかということ、そして、この世界の危機と、それを救うために僕が精霊と契約した事。
最後に……僕がもうただの人間ではなくなってしまった事……
榛名さんは最後まで聞いてくれた。聴き終わった後、榛名さんは俯いてしまった、震えていた。
それが数秒続いて、声をかけると、榛名さんは両手でテーブルをバンッと叩いた。
その時に一緒に顔も上げた。
そこには、涙を流しながら顔を赤くしている榛名さんの顔があった。
「どうして……どうしてそんな無茶な事をしたんですか‼︎」
「……」
「貴方は‼︎ 貴方はまだ子供なのに……自分の将来をいくらでも考えれるのに、どうして自分からそれを潰してしまうんですか⁉︎ 世界の危機なんて……安騎尭さんが考えることはこれっぽっちもないはずなのに……そんなの大人に任せれば良いんです‼︎ なのに……なのに……」
榛名さんは涙を流しながら言ってくれた。それは、僕の身を案じて言っていることぐらいわかる。
世界の危機に対して、自分が何かできるなんて思っちゃいない。それこそ大人に任せた方が良いって事も分かる。
でも……それは世界の危機を知っていないと分からない事であって、今の大人がそれに対してどれ程分かっているんだろう?
多分1割も満たないと思う。直ぐに世界が壊れるわけじゃない……でも、そんな遠い未来の話でもない。
こんな状況の中で、僕は何もしないではいられない……
だって僕は、もうこの事に関与してしまったのだから……
「黙ってないで、何か言ったらどうですか⁉︎ これは貴方の未来に関わる話なんですよ‼︎ 何で何も言わないんですか⁉︎」
そう言われて、僕はやっと口を開いた。僕の思いを、どうにかして分かってもらわなくちゃいけないと思った。どう反論されようとも、これは僕が決めた道だから……
「確かに……僕はまだ子供だよ。世界の危機に対して、僕が何かするよりも、大人たちがなんとかした方が早いとかって思ってもいるよ。でも……それについては殆どの人が知らない。いつもと変わらない日常を送っている人は沢山いる。だから僕は自分から動こうって思ったんだ」
「なら、大人の人たちに知らせるてだってあるじゃないですか‼︎ 貴方がやる事なんて「それにね……」っ⁉︎」
「それに……もう約束しちゃったんだ。だから、黙って見過ごすなんてできないよ」
そう言った後、榛名さんはまた俯いて体を震えさせていた。
俯いていても、涙を流しているのは分かった。
だから僕は肩に手を置こうとしたけど、手で弾かれた。
「榛名さん……」
「安騎尭さんの……安騎尭さんのバカ‼︎ もう知らないです‼︎」
そう言って小屋を飛び出してしまった。
僕は、すぐに追いかけることもできずにその場で立ちすくんでいた……
小屋から離れた浜辺……今では陽が落ちて、辺りは暗くなっている。
そこに1人、安騎尭と喧嘩して小屋を飛び出した榛名は重い足取りで歩いていた。
行くあてもなく、ただただ歩いていた。
(私……安騎尭さんになんって酷い事言ったんだろう……安騎尭さんにも考えがあって、それでこんな事になってしまった事は、私も分かっているのに……どうして……)
榛名はさっき安騎尭に言ってしまった事を後悔していた。
自分が何故あんなことを言ってしまったのか……自分でもよく分からずに言ってしまっていた。
ただ分かることは、いつの間にか感情に任せて言ってしまっていたこと……
(私、何で安騎尭さんの事をこんなに心配しているんだろう? この前会ったばかりなのに……どうしてなの?)
そんな事を考えていると、遠くから砲撃音が聞こえた。
それは、海の方から聞こえた。その音がして数秒後、榛名の歩いていた近くで爆発音が聞こえた。
「なっ、なにっ⁉︎」
突然の事で榛名の思考は今の状況に追いついていない。
その間にも砲撃の音は鳴り、次々と着弾していった。
(まさか‼︎ 深海棲艦からの攻撃⁉︎)
そう思い、榛名も攻撃の体制に入るのだが……
(艤装は……安騎尭さんの小屋に置いていったままでしたね……)
そう思うと同時に、深海棲艦の砲撃が榛名に当たっていた。
(さっきの砲撃音は……⁉︎)
僕は砲撃の音を聞いて小屋を飛び出していた。浜辺の方を見ると、東の方で火の手が上がっていた。
「まさかっ‼︎ 榛名さんがあそこに⁉︎」
僕は夢中で走っていた。自分が思った災厄の事態が……起こっていないようにと……
砲撃の音がどんどん近くなっていった。着弾したところも見えてきた。
火の手も直接見えるようになって、その時にも砲撃が絶えず続いていた。
(お願いだから……僕が想像した事が……災厄が起こらないで……‼︎)
僕はそう思いながら走る……そして、やっと50mくらいの所に来たところで悲鳴が聞こえた。
「この声は‼︎」
速度を変えずに近づく。そして僕はそれを見て心臓が止まりそうになった。
自分の災厄の予想が……起こらないで欲しかった事が的中してしまって……言葉が出なくて……
「安騎……尭さん……」
榛名さんはボロボロになりながら、こっちに手を伸ばしていて……笑顔になりながら口を動かしていた。
「安騎尭さん……ごめん……なさい……」
「……っ‼︎」
そのシーンが、スローモーションに見えた。榛名さんに向かう砲弾でさえも、遅く見えて……
(榛名さんが……いなく……なる……?)
「そんなの……」
この間にも段々と榛名と砲弾の距離は縮まっていく。
「そんな事……‼︎」
誰から見ても、どう動いたとしても間に合わない……かに見えていたが……
「そんな事……‼︎ 僕が許さない‼︎ 榛名さんは……僕が守ってみせる‼︎ うぉぉぉっ‼︎」
安騎尭の体が眩いほどの輝きを放ち始め、見えない速度で榛名の元に行き、そして砲弾は爆発した。
榛名はこの時、目の前で何が起こっているのか分からなかった。自分の目と鼻の先にあったはずで、当たるはずだった砲弾は、自分には当たっていない。
自分と砲弾の間に入り込んだ何かによって、ダメージは受けなかった。
入り込んだ何かは、榛名を優しく抱き締めていた。
「安騎尭……さん……?」
榛名がそう言うと、榛名を抱き締めている何かはさらに抱き締めた。
そうしている間、深海棲艦の砲撃は尚も続く。しかし、榛名を守っている者は微動だにしない。
「榛名さんは……僕が守るから……」
「えっ……」
僕は、榛名さんを抱き締めた後、海の方に振り返る。海の彼方からは未だに砲撃が鳴り止まない。でもそんな事はどうでも良かった。
今自分の中にある感情は、怒りでしかない。榛名さんを傷付けた、そして……あの時すぐに追いかけなかった自分への怒りしかなかった。
「僕は……榛名さんを傷付けたお前達を許さない‼︎ こんなに無慈悲な砲弾を放ったお前達を許さない‼︎」
安騎尭は両手をグーにして地面に打ち付ける。すると、そこから刺々しい岩が突き出し、暗闇の海へと向けて連なり出した。
そして、暗闇の海の向こうから鉄が何かに刺さったような音が聞こえたと思うと、それらは爆発して、そこからは一切の砲撃音はなかった。
安騎尭は地面から手を離して、榛名の元へと向かう。そしてもう一度優しく抱き締めた。
「良かった……貴女が無事ていてくれて本当に良かった……」
安騎尭は涙を流しながら抱き締めた。そのために顔はぐしゃぐしゃだったが、そんな事も構わずに泣いた。
榛名は、それをなだめるようにして安騎尭の頭を撫でた。
それから少し経って、安騎尭もだいぶ落ち着いてきた。
榛名が口を開く。
「安騎尭さん……榛名は……安騎尭さんに酷い事を言ってしまいました……ごめんなさい……」
安騎尭は、榛名の謝罪を笑顔で受け止めて、彼女の頭に手をポンッとのせる。
「それだったら……僕も榛名さんに心配をかけちゃったよね。ごめんね」
「なっ、何で安騎尭さんが謝るんですか⁉︎」
「僕は確かに世界の危機を救うために精霊と契約したって言ったけれども……それだけじゃないんだ」
「それだけじゃ……ない?」
「うん。僕が精霊と契約したのは……貴女に傷ついて欲しくなかったから……」
「榛名に傷ついて欲しくない……?」
「世界の危機を救うのは前振りで……本当は自分の我儘で……ほぼそれしか考えなくて契約したんだ……呆れるよね。こんな我儘で契約しちゃうなんて……「そんな事ないです‼︎」榛名さん?」
「そんな事……榛名は思いません‼︎ 榛名は、安騎尭さんがそんな事を思ってくれるだけで嬉しいんです‼︎ 例え安騎尭さんがそう思っていても、榛名は嘲笑ったりなんかしません‼︎ 全力で貴方を肯定します‼︎」
僕は、その言葉に胸をうたれた。自分の事を肯定してくれて、自分の事をこれほどにまで心配してくれて、それが嬉しくて……
「あれっ……? また、涙が……っ⁉︎」
安騎尭は、いつの間にか榛名に抱き締められている形でいた。それも、顔が榛名さんの胸に当たるようにして、頭の後ろの方を優しく撫でられる形で……
「泣きたい時は……泣いてください。榛名が、貴方がいいと言うまでこうしますから……」
僕は……泣いた。大声を上げて泣いた。両親が死んでから、こんなに泣くことがあっただろうか……いや、なかったと思う。
そんな僕を、優しく抱き寄せてくれる榛名さんの事を……この時初めて好きだって分かった……
書き終わりましたが、終盤に差し掛かっては微妙になってしまいました。
バトルを少し書いてみましたが、分かりにくいかなと思っています。
それでは、今回はここで失礼します。