「安騎尭、近海に深海棲艦の艦隊を複数確認しました」
榛名からそう報告を受ける俺は、腕を組んで思案する。まぁ、まずは敵艦隊の構成からだな……
「榛名、敵艦隊の構成は分かるか?」
「確認したところ、軽巡1、駆逐3の構成です」
「ふむ……よし、早速迎撃部隊を編成するか」
俺は迎撃部隊の人選をすると、館内放送で呼び出した。
「4人とも、よく来てくれた。まずは礼を言う」
「……」
俺は来てくれた4人に礼を言った。しかし反応は予想した通りだった。4人のうちの2人は俺を睨み、後の2人はその2人の後ろに隠れて怯えた目をして俺を見ていた。
この4人は、俺が着任した時にあの場にいなかった4人だ。ここに着任した以上は、艦娘のことぐらい把握しとかないとな。
しかしながら俺はこの4人が来ないのではと思ったが、予想外に来てくれた。
「俺が君達を呼んだのは、鎮守府近海に出現した深海棲艦を撃墜して欲しいからだ。まぁ、やりたくなかったならやりたくないと言って構わない」
「……正直言えば、私はもう提督なんて信用できないわ。だから命令も聞きたくないのが本音よ。でも、私はレディだから貴方に1回だけチャンスをあげるわ。貴方が私達を従えるほどの実力を持っているかどうかを見極めて、こちらの振り方を決めさせてもらうわ。良いわよね、3人とも」
「私はそれで構わない。後の2人がどうか分からないけど……」
口を開いたのは暁型駆逐艦の姉2人で、暁と響は出撃しても良いと言う。後の2人は、全提督が不当な扱いをした為に提督に対して危機感を示していた。なので未だに暁と響の後ろに隠れている。
「……わかった。なら俺もそれ相応の信頼たる覚悟を示そう」
俺はこの深海棲艦撃滅の任である事を思いついた。4人に不当な扱いをしない、それでいて彼女たちを守る手段……それは……
「今回の鎮守府近海の深海棲艦撃滅の任……俺も前線に出よう……」
「「「「っ⁉︎」」」」
それを言われた4人は驚きの余り言葉が出なかった。
今深海棲艦に対抗できるのは艦娘の彼女らだけだ。それなのに人間の身である彼に何ができるのか? その疑問が4人の頭の上を回っていた。
「よし、決まったなら早速出撃する。榛名は俺がいない間鎮守府を頼む」
「わかりました。提督、気をつけてくださいね」
「あぁ、無事に帰ってくる」
俺はそう言うと、4人を伴って鎮守府近海へと向かった。
鎮守府を出て数分、暁型4姉妹は単縦陣の陣形で進んでいた。
暁、響、雷、電の順番だ。一見見ると普通の光景ではあるが、1つだけ異色な光景がある。それは、4人の前に人が1人暁たちと同じ速度で海の上を進んでいた。
「周囲に敵影はまだないようだな……君達の方はどうだ?」
戦闘を行く脩鴑安騎尭は後ろの4人に言う。
「私の方も何もないわよ」
「こちらも異常は確認できない」
「「……」」
暁と響は答えたが、雷と電は黙っていた。
そんな事よりも4人が気になったのは……何故安騎尭が海の上に浮かび、また自分達と同じように移動できるのかだった。
安騎尭がこれをできる理由……それは本人のこれまでの努力の賜物だった。自分が世界を救うからには、自分が前線に出る必要がある。
確かに聖霊の力を使えば、安騎尭は簡単に海の上に浮かび、移動することができる。
しかし安騎尭はできるだけそれを使いたくはなかった。理由として、聖霊の負担を少しでも軽減させる為だ。だから安騎尭は自分で努力して波で荒れる海の上に浮かぶ修行をし、移動する術を身に付けた。
時間はかかったものの、自力で海の上を自由に行くことができ、今に至る。
「っ‼︎ 深海棲艦確認。暁、響、雷、電の4人は今の陣形を保ったまま敵に威嚇、もしくは攻撃を行ってくれ。俺は囮になる‼︎」
「なっ、何を言ってるのよ‼︎ 人間の貴方が深海棲艦に勝てるわけ「まぁ、それは見てみないとわからないだろ?」……怪我しても知らないわよ」
「あぁ、自己責任だからな」
そう言って俺は速度を上げて前方にいる深海棲艦との距離を詰める。相手の方は俺を視認するや否や攻撃して来た。
相手の艦隊構成は、報告を受けた通り軽巡1体と駆逐艦3体だった。しかしながら駆逐艦がこれらの攻撃を受けたらひとたまりもないだろう。そう、駆逐艦なら……
「ふんっ!」
安騎尭は直撃コースの弾だけを手で弾きかえす。これを見た敵は驚いていた。そして後ろの方で見ていた暁たちも同じだった。
海の上に立ち、自分達と同じように移動することは一応100歩譲って認めるとしよう……だが、自分目掛けて撃たれた砲弾を弾きかえすというのは、最早人間でしてみればあり得ないだろう。
それを目の前の男は顔色を変えず、ただ普通に、加えて言えば日常的な感覚で弾きかえしている。
「どうした? 手が止まっているぞ。早く反撃をしてくれ」
安騎尭の言葉に暁たちは我に返って敵に攻撃を加えていく。
暁たちの攻撃が敵に命中し、深海棲艦達は海の底へと沈んだ。
「なかなかやるじゃないか」
砲撃をし終えた暁達のところに囮として砲弾を弾きかえしていた安騎尭が声をかける。
「ふ、ふん! 私からしてみたら当然よ……貴方も……なかなかやるじゃない……」
「ん? 何か言ったか?」
「な、何でもないわ‼︎」
暁の最後の方の言葉は安騎尭には聞こえなかったらしく、聞き返された時は恥ずかしくてそっぽを向いた。
そんな時、上空から駆動音が聞こえた。いち早くそれに気づいた安騎尭が空を見上げると、そこには深海棲艦の艦載機群がこちらに迫って爆弾を投下していた。
「チッ‼︎ さっきのはあくまでも囮ってことか‼︎」
安騎尭はそう悪態を吐くと、見えぬ速さで暁達を抱えて爆弾の雨から逃れる。
「なっ、何が起こったの?」
「どうやら敵の援軍らしい。俺は艦載機どもを抑える。君達は辺りの警戒をしていてくれ」
「ちょ、ちょっと‼︎」
安騎尭はそう言うと、暁達を離して艦載機群に向かって行く。
そこで暁達は本日何度目かの驚きを覚えた。
それは、安騎尭が海を蹴って空に高く跳んだ事だった。まっすぐ飛んできた艦載機は、一瞬の事で判断ができず安騎尭の拳で粉々になっていた。
艦載機群は安騎尭に向かって機銃で攻撃したが、安騎尭はそれをかいくぐるようにして避けていた……それも空中で……
「あ、あり得ないわ……人があんな事するなんて……」
暁はぽつりと言った。
「ハァァァァッ‼︎」
安騎尭はというと雄叫びを上げながら艦載機を次々と破壊……敵の銃弾でさえも足場として艦載機に向かっていく。
艦載機を破壊していく中……安騎尭は海上に敵の軽空母を発見した。
「あんなところにいたか……叩きのめす‼︎」
近くを通った敵艦載機を勢いよく蹴って破壊。その時の爆風を利用して敵軽空母に急接近する。
安騎尭は接近する間にも右手を引き絞りタイミングを待つ。
そして、安騎尭の攻撃範囲に入った軽空母に、安騎尭は引き絞った右手で殴った。その右手は軽空母の艦載機発着口にのめり込む。
それだけで軽空母は機能を停止し、海に沈んだ。
その時、暁達の方から悲鳴が上がった。悲鳴をあげたのは電で、海にいきなり出てきた敵駆逐艦が電を丸呑みしようと大口を開けて迫っていた。
side 電
私は鎮守府近海に深海棲艦を迎撃するために駆り出されていました。
でも……私は提督に対して恐怖感しかなく、新しく来た提督に対してもそうでした。確かに前の提督よりも若く、顔もイケメン風ですが、この人もまた前の提督みたいな事を私たちにするんだと思うと震えが止まりませんでした。
けど、この提督はこう言ってくれました。私たちと一緒に前線にでて戦うと……
前の提督とは大違いだと思って、今私たちは鎮守府近海に出ていました。
提督が私たちと同じように動いている事に驚いていました。
そんな事を思っているとあっという間に敵は撃沈されていって、後から来た敵の援軍にも素早く対処していました。
私は……その姿に見とれていました。そして、この提督でなら信頼できる、そう思っていた矢先に突然敵駆逐艦が私に襲いかかってきました。
この時、正直私はここで沈んでしまうんだろうなと思いました。この提督にだけですが、この提督になら恐怖感もなく、ありのままの自分で接していけると思ったのに……
口を開いた敵の駆逐艦が私の目と鼻の先にまで迫っていました。お姉ちゃん達が逃げてと言っているようですが……恐怖で足が動きませんでした。
本当にここで終わる……そう思った時でした。
「俺の部下に……」
「俺の部下に手を出すなっ‼︎」
敵の駆逐艦がいきなり吹き飛ばされました。それに放心した状態で見ていると……
「大丈夫か?」
提督が私の近くまで来て頭に手を乗せてきました。
前の提督では、近寄るのも嫌だったのに、この提督には近寄られても、触れられても嫌気はしません。
ただ、気恥ずかしい気持ちが私の中にありました。
side out
俺は電に襲いかかっていた駆逐艦を殴ってぶっ飛ばしていた。その後は電に怪我がないか確認した。ざっと確認した限りでは外傷はなく、ただ未だに震えていたから頭に掌を乗せて安心させようとした。
震えは止まったが、何故か顔を赤くしていた。この戦闘で風邪を引いたのかと思ったが、それよりもさっきの駆逐艦をまず沈めるか……
「おいテメェ……さっき俺の部下を食おうとしていたよな? なら……テメェは沈められても文句はねぇよな⁉︎」
安騎尭がそう言うと、安騎尭から怒気が発せられる。それは余波となって安騎尭が立っている海が波紋状に揺らぐ。
敵はその怒気を諸共せず安騎尭に攻撃を仕掛けようと接近するが……その時にはすでに安騎尭は駆逐艦の目の前にいて殴っていた。
駆逐艦が殴られて飛ばされていた時には、安騎尭は中に高く舞っていた。
「吹き飛びな‼︎」
そこから左に1回転する。そして左足を伸ばし、右足を畳んだ状態にする。
姿勢が整ったと当時に重力落下の力も加えて殴り飛ばされた駆逐艦一直線に落ちていく。
落ちている最中、空気摩擦の影響で左足の先っぽが赤に包まれる。
「紅蓮襲撃‼︎」
安騎尭の左足が敵駆逐艦に当たる。すると、当たったところを中心に大きな炎の柱が立つ。炎の柱が立ったと同時に駆逐艦は爆発し、それを見ていた4人は唖然としていた。
「す……すごい……」
「ハラショー……」
暁達はそんな声をあげる事しか出来なかった。
そして確信した。この提督の事なら……自分達の妹を助けてくれたこの人ならば……信頼しても良いと……
その思いと同時に、今回の鎮守府近海の深海棲艦を撃沈させる任務は終了し、安騎尭達は傷ひとつなく、無事に鎮守府に帰還した。
久々なので上手く書けてないかなと思ってます……
ここで出てきた技について簡単に説明します。
紅蓮襲撃
高く飛び上がり、相手目掛けて飛び蹴りします。地面に足がついたと同時に炎の柱が立ちます。
それではこの辺で。