「なぁ……もうそろそろ良いか?」
「うーん……後もう少しだけ良いかしら?」
「……それは何回めの言葉だ?」
俺は未だに夕張に抱きしめられていた。俺はというと、火傷をした手で女性を抱きしめるとかはしたくなかったからそのままダランとしていたが、夕張は構わず俺を抱きしめていた。
(しかも、何故か俺の頭が夕張の胸の位置にあるし……)
正直言うと……柔らかい。確か養成学校時代、夕張の胸はぺったんこだとか、そんな事を誰か……いや、ほぼ全ての人が言ってたんじゃないか?
だが俺はその情報は嘘だと今確信した。夕張の胸は、確かに胸の大きな艦娘からすればないように思えるかもしれない。だが、俺は夕張の胸は一般の女性と変わりないのではないかと、そう思う。
まぁそれは良いのだが……
「なぁ、もうそろそろ仕事に戻らないといけないんだが……」
「……分かったわ。でも最後に、その火傷の手当てだけでもさせてよ。そうなったのは私の我儘でもあるんだし……」
「分かった。じゃあ、掌の火傷を頼めるか?」
「えぇ‼︎ 任せてよ‼︎」
夕張は俺を抱きしめるのをやめた。変わりに手を差し出してきた。手を繋いで歩こうという事なのだろう。だが俺は手を出せずにいた。だが夕張はそれにもかかわらず俺の手を握った。
「な、なんで……」
「貴方が手を出さないからに決まってるじゃない。それとも何? 自分の手が火傷を負ってるからそれを気にしてるの?」
「……あぁ、その通りだ。女性にこんな汚い手で触れるというのは「汚くないわよ」……」
「私のために負ってくれた傷だもの。汚くなんてないわ。それより早く医務室に行きましょ? ね?」
「……分かったよ」
俺は夕張に手を引かれながら医務室に向かった。
夕張に手の手当てをしてもらった後、俺は書類などの諸々の仕事をこなすために提督室に向かっていた。榛名には先に書類を確認して、自分で判断できるようなものには自分で処理をして欲しいと言ってある。まぁ、俺の仕事である事は間違いない事なんだが……
とそんな事を考えながら歩いていると
「きゃっ⁈」
「うぉ⁈」
誰かにぶつかったようで、俺は尻餅はつかなかったものの、相手の方は尻餅をついていた。しかもそれが女性だったがために、考えながら歩いた事を少し後悔していた。
「すまない……怪我はないか?」
「あっ、ありがとう」
「いや、ぶつかった俺が悪い。どうやら怪我はないようだな」
「えぇ、心配してくれてありがとう」
ぶつかった相手は足柄だった。しかし、いつも着ているような服ではなく、白の洋服を着ていた。
「足柄、こうやって面と向かって話すのは初めてで、その第一声がこんなんで悪いとは思うが、その格好はどうしたんだ?」
「えっ? これですか? あの……今から合コンなの」
「合コン?」
「えぇ、久々に友達に誘われたの。この鎮守府に配属されてからも誘われてたんだけど、前の提督が外出は禁止するし、もし行けたとしても、入居設備が使えなくてろくに準備もできなかったから今まで断ってたの。だから、今日に久々に誘われて行く事にしたのよ」
足柄はそう言っていた。確かに化粧も綺麗にしてるし、洋服にもシワひとつ付いていない。今日の合コンにどれだけ気合を入れているかが分かる。まぁ、俺から見ても綺麗なのは間違いない。だが足柄……残念ながら1つだけ忘れている事があるぞ……
「足柄、合コンに行くのは良いが、どこまで行く気なんだ?」
「えっ? そうね、2つほど離れた街まで行くつもりだけど……」
「そうか……それは残念なんだが、足柄、なんか忘れてないか?」
「えっ? 何を?」
足柄は首を傾げて頭の上に思いっきり?マークを浮かべている。
(あれ? 知らないのか? いやいや、幾ら何でもそれは……)
「なぁ足柄、この鎮守府に着任した時に聞かなかったか? いくらあの屑な提督でも言ってるとは思うんだが……」
「? なんの事? 私は何も聞いてないわよ? ただ、外出は禁止する事と、無駄を省くために諸々の施設は使わないって聞いたくらいかしら?」
「……」
俺は黙るしかなかった。だってそうだろう? 確かに、この鎮守府が併設されている街に繰り出すにも、どこに行くかは明記しなければならないが、そんなに手間はかからない。しかし、この街から出る場合は、どこに行くのか? それから、目的と行く時刻と帰る時刻を書いて直接俺に提出しなければならない。それを俺が確認して、サインを書いて初めてこの街以外の街に行って遊ぶ事が出来る。
これは俺が決めた事ではなく、本部が決めた事だ。俺も少し堅苦しいとは思うものの、特に反対する理由もないからそれに従っている。
そしてこの事は、着任した提督が必ず全艦娘に言わないといけない事であるし、これも提督の義務であるのだが……
(……あの屑提督……会う事があったら地獄行きだ……)
「提督? なんでそんな怖い顔になってるの?」
「ん? あぁ、びっくりさせたか?」
「……正直怖かったわ……」
「それはすまない……あの屑がこんなにも地の底のレベルとは思ってなくてな……おっと、話が変わってたな。それで足柄、君はこのままだと外出できないぞ?」
「えっ⁈ どうして⁉︎」
「それはだな……」
俺は海軍で定めてある事を懇切丁寧に説明した。それを聞いた足柄は、とても残念そうな顔をしていた。
(あぁ……俺別に悪い事してないのに、なんだか悪い事をした気分になるな……)
「まぁそう落ち込むな。俺も皆と一緒に確認するのを怠っていたんだ。だからさ、今回は見逃すけど、今度この街から離れて外出する時は、ちゃんと書いてくれよ?」
「っ‼︎ ありがとう‼︎ 貴方が新任としてこの鎮守府に来てくれて良かったわ‼︎ 本当にありがとう‼︎ 今度はちゃんと書くから‼︎」
そう言って足柄は鎮守府の出入り口の方に向かって走っていった。
「別に感謝されるような事はしてないんだがな……おっと、そう言えば榛名に仕事を任せてたんだった。急がねぇと」
俺は早歩きで提督室まで向かった。そこには笑顔で書類仕事をする榛名がいたが、どうしてこんなに遅くなったのかを聞かれた。俺はそれに対して、別に隠す事もないから正直に答えたが、それを聞いた榛名は一言了承した後、手元の書類に目を戻す。俺も椅子に座って、残りの書類に手を伸ばして処理していった。
それから時間が過ぎて夕方になった。近海を哨戒させていた暁4姉妹も帰ってきていた。
その時には書類も粗方片付いていたので、ドッグの方にまで迎えに行っていた。
「4人ともお疲れ。哨戒任務の方はどうだった?」
「今回は別に何も無かったわ。敵一隻も見なかったわよ」
「なのです。結構範囲も広く哨戒にあたったのですが、本当に一隻も敵は見当たらなかったのです」
「本当に不思議だった。こんな事は初めて」
「本当にどうしちゃったのかしら? いつもの哨戒任務なら、敵に何回も遭遇していたわ」
上から順に、暁、電、響、雷が言っていた。どうやら今回は敵に1回も遭遇せず哨戒任務ができたようだ。だが俺はそれよりも……
「敵に遭遇せずに帰ってきたのは驚いた。でも、それよりも無事に帰ってきて良かった」
俺は先頭にいた暁の帽子を取って、暁の頭を撫でる。
「なっ⁈ ちょっと‼︎ 子供扱いしないでよ‼︎」
暁は睨みながら俺に言ってくるのだが……
(なんだろう……こうしているとなんだか可愛いな……)
自分は特に小さい子が好きだとか、そんな事はないのだが、こんな仕草は正直可愛いとしか思えなかった。とまぁ、そんな事を考えながら暁の頭を撫で続けていると……
「し、司令官さん‼︎ 電も頭撫で撫でして欲しいのです‼︎」
「私も指令に頭撫で撫でされたい」
「そうよそうよ‼︎ 暁だけなんてずるいわ‼︎」
響たちも俺の近くに寄ってきて頭を出してくる。まさかあっちの方から頭を撫でて欲しいと言われるとは思ってなかったが、俺は彼女たちの要望に応えて順番に頭を撫でた。
まず響の頭を撫でたのだが、なんだか無表情に見えた。しかし頰は正直だったようで、赤く染まっていた。
「スパシーバ。ありがとう」
「あぁ、どういたしまして」
俺は響の頭から手を退ける。次に撫でたのは雷だ。彼女は頭を撫でられている時、とても気持ちよさそうにしていた。
「よし、これぐらいでいいだろう」
俺がそう言って雷の頭から手をどかそうとすると……
「えっ……もうやめちゃうの……」
瞳をうるうるさせながらこっちを向いてくる。
「……すまない、また夕食の時とかにもやってあげるから……」
「……約束よ?」
「あぁ、約束だ」
雷は物足りなさそうだったが、今回は引いてくれた。そして今度は電の頭を撫でようとするのだが……
(ん? なんか震えているな?)
「電、どうかしたのか?」
「えっ⁈ い、いえ‼︎ その、なんでもないのです……」
「そうか? でも震えているように俺は見える。もしかして不安なのか?」
「いっ、いえ、そういうわけじゃなくて……ただ、いざ自分の頭を撫でられると思うと、とても緊張するのです……」
「……そうか。それは配慮が足りなかったな。でも安心しろ。別に痛くなんてしないし、優しくする。だから、そう身構えるな」
「し、司令官がそういうなら……」
そうやって電は目をギュッとつぶる。俺はそんな電の頭に手を乗せて、優しく撫でる。
「はわわっ!」
電は顔を真っ赤にさせていたが、どうやら気持ちが良かったみたいで、後は落ち着いていた。
「司令官、ありがとうなのです」
「あぁ、また撫でられたくなったらいつでも言えよ? 俺は別に拒んだりしないからな。まぁ……忙しい時は遠慮して欲しいが」
「提督を困らせるような真似はしない」
「なのです‼︎ 電達も一生懸命司令官の力になるのです‼︎」
「そうよ‼︎ もしも司令官が忙しかったら、私が手伝ってあげるわよ‼︎」
「……私をレディーのように扱ってくれたなら、考えてあげるわ‼︎」
「はは、それは頼もしいな。なら俺もカッコ悪いところは見せられねぇな。んじゃ、また夕食の時とかに会おう」
そう言って俺は提督室に戻る。
「安騎尭、おかえりなさい。彼女達はどうでしたか?」
戻って早々榛名にそう問われたが俺はそれに簡潔に答える。
「あぁ、特に問題なく戻ってきたようだな。怪我もなかったし、何事もならずに済んで良かったよ」
「そうですね。榛名も彼女達だけ行かせて心配してましたけれど……なんともなくて良かったです」
「俺もそう思うよ。怪我でも負って帰ってきたんなら、俺は怪我を負わせた奴はタダじゃおかなかったろうからな……」
「もう、安騎尭は少し過保護すぎるんじゃないですか?」
「……そうかもな。でも、俺は彼女達の暮らしを護りたいんだ。あの屑な提督の元で暮らしていた彼女達を思うと、俺は腹立たしく仕方ないんだ……俺がもっと早くにここに来ていたらと……」
「……でも、それは仕方ないことだって榛名は思います。残酷な言い方かもしれませんけど……」
「確かに仕方ないことではある。提督になるためには、養成学校を卒業しないといけないし、卒業したからといってすぐに着任先が決まるわけでもない。だが俺は、辛い暮らしを強いられてきた彼女達のことを思うと、どうしても腹立たしく感じるんだ……」
「安騎尭……」
俺が顔を俯けていると、榛名が近くに寄ってきて俺を抱きしめた。
「榛名?」
「安騎尭の気持ちは、榛名もよく分かります。だから、1人で背負わなくても良いんですよ? 私も、安騎尭が辛いと思った事を一緒に背負いますから」
「榛名……ありがとう。おかげで元気でたよ。こんな所で俯いていても仕方ないって、辛い生活をしてきた彼女達のこれからを、幸せのあるものにしないとな」
「そうですね。榛名もお手伝いしますよ、安騎尭」
「あぁ、ありがとう。その代わりってわけでもないけど、榛名の事も幸せにするからな。例えこの後俺がいなくなっても、その後を幸せに暮らしていけるように」
「安騎尭……えぇ、榛名をめいいっぱい幸せにして下さいね」
俺も榛名を抱きしめる。やはりと言ってなんだが、榛名を抱いているととても落ち着く。理由は分からない。でも俺は、確かな安心感を榛名からもらっていると思った。
そしてすぐに夕食どきになった。鳳翔が来てから一気におかずのレパートリーが増えて、自分達で好きなおかずを取れるようになった。そして各々で食べるのだが、俺が食べている最中に雷が来て頭を撫でてとせがまれた。
約束は約束だから撫ではしたものの、雷が戻ってから、隣で俺と一緒に食べていた榛名が自分も頭を撫でて下さいと言ってきた。
まぁ、断る理由は無かったから撫ではしたが、その後すごく甘えてきた。まぁ……構いはしないんだがな……と言うより俺得だし……
とまぁ、そんな甘い脳内思考になっていた時にふと気がつく。
(そういえば足柄の姿が見当たらないな…… まぁ、帰る時間を聞かなかった俺も悪いし、大丈夫だろう)
俺はそう思いながら夕食を続けた。
夕食を終えた俺は、榛名と一緒に提督室に戻り、残った書類を処理した。と言っても、後の書類は暁達が哨戒任務に出た際の消費した資源と、その他諸々の事だった。
その他諸々の事というのは、これからこの鎮守府に来る艦娘達のリストだ。別に俺はこの少数でも問題は無いのだが、本部が何かと補充要員をとこちらに書類で送ってくる。
(……本当にこれなんなんだろうな……)
とまぁ、こんな調子で書類を処理していたのだが……
「あっ、そういえば安騎尭に言い忘れていた事があります」
「ん? どうした?」
「実は、鳳翔さんからお知らせがあったんですけど、その時安騎尭はいなかったので、榛名が代わりに聞いてたんですけど、今の今まですっかり忘れてました。ごめんなさい」
榛名は俺に頭を下げるけど、別に俺は気にしちゃいない。俺は頭を下げた榛名の頭に手を乗せて撫でる。
「はわ⁈」
「俺はそんな事じゃ気にしないよ。まぁ、誰かが怪我をしたとかっていう報告が遅れたなら、凄く怒っていたけれどもな……」
「あっ、安騎尭……怖いです……」
「怖くなかったら、怒った意味なんて無いし、何より怒るって事は、その事について反省してもらいたいからだ。でも、だからって榛名の事が嫌いになるだとか、そんな事は絶対に無いからな」
「もう……安騎尭……」
「はは、まっ、そんな顔するなって。それで、鳳翔からのお知らせってのは?」
「あっ、はい。鳳翔さんが言ってたんですけど、今日の夕食終わりから食堂を使って居酒屋を開くと言っていました」
「ほぅ、居酒屋か。まぁ、鳳翔には食堂の使用は自由にしていいと言ってあるし、別に本人に負担がかからなければ俺は大丈夫だ。さて、書類も今日のは片付いたし、少し様子でも見てくるか」
「鳳翔さんのところにですか? なら榛名も一緒に……」
「あぁ、榛名はここでお留守番な?」
「えっ⁈」
「本当は俺もこんな事はしたくないんだが、一応報告が遅れた罰って事で……」
「そっ、そんなぁ〜……」
「はは、まぁそんな顔をするな。その代わりと言ってはなんだが、もし俺が何かミスをしたなら、その時は榛名が俺に罰を課せたって構わないからな?」
「えっ⁉︎ そ、それはどうかと……」
「提督の俺が許可をするんだ。構わない」
「……わかりました……榛名、待機命令……了解です……」
榛名はシュンとした顔をして了承はしてくれたが、俺も少し胸が痛む。だから俺はまた榛名の頭に手を乗せた。
「まぁ……そんな顔をするな。今日も一緒に寝てあげるから」
「ほっ、本当ですか⁉︎ や、約束ですよ⁉︎」
「あぁ、約束する。それに、そこまで遅くなる予定じゃないから。それじゃ、行ってくる」
「はい‼︎ 行ってらっしゃい‼︎」
俺は榛名に笑顔で見送られて、鳳翔が開いているという居酒屋に向かった。
俺は鳳翔が食堂でやっている居酒屋に向かった。普通に食堂までの道のりを進むが、食堂の前に着くと、そこには「居酒屋 鳳翔」と書かれた暖簾が設置されてあった。
(というか……今日着任したばかりなのにいつの間に作ったんだ?)
そんな疑問を抱きながら俺は暖簾をくぐってドアを開ける。
「いらっしゃいませ‼︎ って、提督さんじゃないですか⁉︎ どうしたんですか?」
「いや何、榛名から鳳翔が食堂で居酒屋をやってるって報告があったからさ。今回は様子見みたいなもんだ」
「まぁ……そうなんですね。それでも提督が来てくれて嬉しいです。ごゆっくり過ごしてくださいね」
「あぁそうさせてもらう」
そう言って俺はカウンター席に着こうとするが、そこには先客が1人いて、1人で酒を飲んでいた……って
「足柄じゃないか⁉︎ どうしたんだ⁉︎ しかもこんなに飲んで……」
足柄が座っていたカウンターには結構な数の日本酒の空きが並んでいた。
「うぅ……私……振られたの……」
「ふ、振られた?」
「そうよ‼︎ 振られたわよ‼︎ 最初の方は順調に進んでたと思ったのに、いざ皆と別れて気になる相手とその後デートしたら、何でか分からないけど……飢えた狼みたいだなって言われて、馬鹿にされて振られたのよ‼︎ そんなこと言われて、笑われて、プライドがズタズタにされて……こんなの、飲んでいないとやってられないのよ‼︎ うぅっ……ひっく……」
「……」
俺は黙って足柄の話を聞いた。足柄は泣いていて、泣きながら日本酒を飲んでいた。
ブチッ……
何かが切れかける音がした。だが、それは気のせいじゃない。
足柄とは、今日が初対面みたいなもんだ。確かに俺が着任した時や、初めて夕食を食べた時には会っているかもしれないが、2人で話すのは初めてだった。
でも、俺は足柄を見て綺麗な娘だとそう思った。
だってそうだろ? 確かに養成学校時代、足柄は飢えた狼だって皆言ってた。でも、俺はそうは思わない。確かに言動は肉食系女子に見えるかもしれない。だが、それは努力して相手に自分を好きになってもらうためにしてることだ。俺は、その努力は凄いことだと思う。というか、努力しなければ何も手に入らない。
それをこの娘は一生懸命してるんだ。俺はそれを含めて、足柄は綺麗な娘だと思っている。それを……
(足柄の努力を全て無駄みたいに言いやがって……こんなにも努力した娘のプライドをボロボロにするなんて……)
ブチブチッ‼︎
俺は昔に比べれば短気だと思う。だって、昨日も何回か切れたし……でも、俺は下らないことで切れるわけじゃない。俺が切れる時は……
(俺の身内を馬鹿にされたり、プライドやその他諸々をボロボロにされたりする時だけだ‼︎)
だが、ここでは切れない。この怒りはまだしまっておく。今は足柄の心のケアをするのに徹する。
「足柄……明日、デートしよう」
「えっ……」
「明日の昼デートしよう。遠くまでは行けねぇけど、それでも、お前が明日もずっと泣いているよりかはマシだろう?」
「提督……」
「それじゃ、今日はその辺にしといて早く寝ろ。俺も明日の業務は午前中に終わらせるからさ。それじゃ、明日の正午に鎮守府の入り口で待ち合わせな」
そう言って俺は居酒屋から出て提督室に向かう。そこからは、今日の朝リフォームし直した自室にある風呂で今日の疲れをとって、約束通り榛名と一緒に寝た。