俺がこの鎮守府に副提督で就任して1日が経った。就任して知った事だが、各鎮守府には艦娘達が勉強するところがあるとの事で……俺は早速見学する事にした。
そこでは主に駆逐艦の子達が授業をしていた。そして教鞭をとっているのは重巡の足柄だ。
確か海軍の間で足柄は飢えた狼だと言われているらしく、ここに配属される前にもこの話は聞いた事がある。
(だが俺はそうは見えないな……今こうしてみているわけだが、普通に教え子に教鞭をとっている風にしか見えない。それに美人だし……)
そう思っていたら、授業がいつの間にか終わっていたようだ。教室の前側のスライドドアが開く。そこから、先ほどまで教鞭をとっていた足柄が出てきた。ドアを閉めると、足柄の方は俺に気づいたようで、俺の方に近づいてきた。
「えぇっと……貴方は確か……」
「そういえば紹介が遅れていたよね。俺は幾島祠堂だ。昨日から副提督としてこの鎮守府に配属されてる」
「えっ⁉︎ 副提督ですか⁉︎ えと、先ほどは失礼な態度を取ってしまって……」
「いや良いさ。俺は副提督と名乗っていても、どちらかといえば雑用に近いし、何より今日が初対面なら仕方ないよ」
「は、はぁ……そうですか……」
「うん。だからさ、気軽に呼び捨てで呼んでも構わないからさ」
「えっ⁉︎ それは軍規に違反するのでは……」
「言ったでしょ? 副提督と名乗っていても雑用に近いって。それに副提督を置いてるのってこの鎮守府だけだよ? だから俺を呼び捨てしたって軍規違反にはならないってわけ。まぁその前に、俺がそういうのに慣れてないのが1番にあるんだけどね……」
俺は頭をかきながら言った。その理由としては、なんだか恥ずかしくなってきたからである。俺は生きててこれまでに女性と会話という会話をした事がなかった。
女性と初めて会話らしい会話をしたのはつい昨日の事で、空母の赤城と話したのが本当の最初だった。後は吹雪とかの駆逐艦級の子達と何回か会話はした。しかしその時はあまり今のような感情は抱いてはいなかった。
(やはり駆逐艦の子達は容姿が子供に見えるから今抱いているような感情がないのか……?)
「フフッ」
そうやって考えていると、目の前にいる足柄が口に手を添えて笑っていた。
「ん? どうして笑っているんだ?」
「いいえ。大した事ではないんだけど、貴方の事が面白く思えてしまって……」
「? どこが?」
「さっきまで普通に話していたと思ったら、顔を赤く染めながら違うところに視線を向けるし、そうしたかと思えば今度は何か考えてるようだし……その様子を見ていたらなんだかいつまにか笑いが出てしまっていたの。気を悪くしたならごめんなさい」
足柄はそう言って謝罪をしてきたが、別に俺は気を悪くはしていないし、大した事とも思ってはいない。それよりも……
(笑った顔の足柄がとても可愛く思えるな……)
「そうだったのか。いや、俺は別に気にしないさ。多分誰が見ても笑うだろうからさ」
「そう? それなら良いんだけど。あっ、そろそろ行かなくちゃ。それじゃ、また会った時はゆっくり話しましょ」
そう言って足柄は去っていった。ふむ……俺が最初に耳にしていた足柄のイメージは、どうやら違っていたようだ。確かに鎮守府によっては個人差はあるが、ここの足柄はどうも優しそうだな。これは今までに耳にしてきた他の情報も改めねば……
その後は鎮守府内を歩いて回った。演習場に差し掛かった時、そこでは吹雪が訓練を行っていた……のだが……
(ふむ……あまり良いように動けていないようだな……)
確か最初に会った時もあんな感じだったな。自分の重心がなってなく、海では転げ、攻撃しようにもこれまた重心が捉えれてないから当たらない。
まっ、初心者にはよくある事だ。
(それに特型は装備も重いと聞いた事がある……それもあるんだろう。まっ、どうにかなるだろうがな……)
その感想を心の中で思ったのち、俺は鎮守府の屋根へと上がり日向ぼっこをするのであった。
何故日向ぼっこなのかって? だって、今日俺がする業務は終わったし、1日鎮守府の中回って施設の把握はしたからな。それ以外にやる事がない……
艦娘と親交を深めるというのも大事ではあるんだろうが……今の俺はそうする気分じゃねぇな……
てなわけで、俺は夕食どきになるまで日向ぼっこをして過ごした。