艦隊これくしょん 〜諦めない心〜   作:橆諳髃

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30話 任せておけ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

討伐作戦は終わった。他の鎮守府に所属している艦娘達は既にこの海域から離脱しており、残るは俺と榛名達、それと黒い塊に特攻をかけた赤城だけだ。何故未だにここに残っているかというと、俺が赤城に話があるからだ。まぁそれは俺の鎮守府に帰りながらになるが。

 

「赤城、君が死なないといけない理由、話してくれるか?」

「……はい。話します。どうせこのまま帰る訳にもいけませんし……」

 

そこからは赤城の話を黙って聞いた。数年前に赤城はその鎮守府に配属されて、何の問題もなく艦娘達と生活を共にしていたらしい。戦闘行為もあまりなく、遠征ばかりに駆り出されてはいたが、誰もいなくなることはなく楽しい生活が送れていた。

 

しかし、それは提督が変わったことにより一変した。前までの生活は送れなくなってしまい、遠征よりも出撃回数が増え、それに加えてまともな入渠もさせてもらえず、補給も最小限にとどまる。いつの間にかたくさんいた仲間も少なくなり、今では赤城と加賀、後はレベルの低い艦娘達だけになってしまったということだ。そしてその加賀はというと、これ以上の提督の振る舞いに我慢できなくなり、提督の元に不適切な指揮をやめるようにと頼んだ。

 

だが、それは受け付けてもらえず、逆に加賀は上司に逆らった反逆行為とみなされ、鎮守府の地下にある地下牢へと閉じ込められてしまった。赤城は提督に加賀を出してもらうように頼み込んだが、それも受け入れられなかった。

 

そんな時にこの討伐指令が下った。そこの提督はこの討伐指令を餌にして、赤城1人で討伐するようにと言った。

 

赤城はもちろん断ったが、提督は赤城がこの討伐指令を断った場合、加賀を処分すると言った。そう言われた赤城はそれ以上断ることができず、今回の討伐指令に1人で参加することになった。

 

それならまだ良かった。しかし、討伐対象と戦闘になった時、急に提督から連絡が来た。その内容は

 

『やはり気が変わった。討伐対象を轟沈させれば加賀は出すと言ったが、それはお前が倒したらの話だ。どこかの鎮守府の物が轟沈させたら話は別だ。その時は加賀を処分する』

「そ、そんな⁈」

『だが、お前がある事をしたなら、加賀は解放しよう』

 

赤城の提督はそう言った。そして次に述べた言葉は

 

『赤城、お前がこの作戦で討伐対象に特攻をし命を落とすことだ。そうすれば私の艦娘は敵に向かって勇敢に戦ったという記録が残る。敵に決定打が見出せなかった状況に対し、俺の鎮守府が所属する艦娘が特攻を仕掛け、艦娘は轟沈するも、敵にも大きな隙とダメージが残り、その後の他の艦娘の攻撃により討伐対象は轟沈。それを導いた艦娘の提督として私の評価はうなぎ登りという訳だよ』

 

それはあまりにも勝手な都合であった。艦娘の犠牲を自分の手柄のように奪い去る。艦娘の誇りも日常も、たかだかのそんな事のために奪われる。

 

赤城は死にたくはなかった。しかし、加賀はいつも自分の隣にいてくれた存在であり、自分が辛い時も励ましてくれた。そんな加賀を見捨てることはできないがために、赤城は特攻という名の自決を選んだ。それは安騎尭に阻まれたが……

 

そして、その話を聞いた安騎尭はというと……

 

「……ふざけんな……」

「安騎尭……」

「ふざけんじゃねぇぞ‼︎ 何が評価だ‼︎ 何が導くだ‼︎ そんなくだらない事で人の命を遊び道具のように使いやがって‼︎」

 

安騎尭の目は赤くなっていた。それは安騎尭が激怒した時に現れる。それも、大切な者が何らかの危機を抱えた時、あるいは自分の勝手な都合で人の身体または心を傷つけ、さらに人の命を奪う者がいる時である。

 

「お前もお前だ‼︎ どうして自分の命を粗末に扱う⁉︎ 自分の命は! お前の命は、そんなちっぽけの都合で散るものなのか⁉︎」

「そんなの……」

 

赤城は顔を俯かせていた。そして次の言葉を発する時、赤城は安騎尭に素早く顔を上げ

 

「そんなの‼︎ 嫌に決まってるじゃないですか‼︎ 悔しいですよ‼︎ 考えても考えても何も出なくて……それで苦しくて……加賀さんも苦しい思いをしているのに……提督は……あいつは高い所でふんぞり返りながらそれを見てて‼︎ そんなの……悔しいに決まってるじゃないですか‼︎」

 

赤城は涙を流しながらそう訴えていた。これが赤城の心の叫びであり、その心は深い傷を負っていた。そんな赤城に安騎尭は近く。そして

 

「なら‼︎」

「っ⁈」

 

安騎尭は涙を流しながら語った赤城の両肩に自分の手を乗せて掴む。そして安騎尭は赤城の瞳を真っ直ぐ見ながら言った。

 

「悔しいなら……自分の心が苦しいなら、今すぐ俺を頼れ‼︎ 俺が、お前の代わりにその苦しみや悔しさ、お前達が抱いてきた無念を俺が晴らしてやる‼︎ だからお前の叫びを聞かせてくれ‼︎ お前が今何をして欲しいかを、俺に聞かせてくれ‼︎」

 

赤城は一瞬何と言われたのかを理解するのに少しだけ時間を要した。しかし、それを理解した瞬間

 

「私を……加賀さんを……私達を助けて下さい‼︎」

 

赤城は叫んだ。そしてその叫びを聞き入れた安騎尭は

 

「任せておけ‼︎ 今お前達を助けるぞ‼︎ 榛名‼︎」

「はい‼︎」

「榛名は長門達と赤城を連れて先に戻れ‼︎ 連れて行った後は赤城を至急入居施設へ入れろ‼︎」

「分りました‼︎ 安騎尭もご無事で‼︎」

「あぁ、榛名も道中警戒を怠るな‼︎」

「はい‼︎」

 

そして安騎尭は赤城の所属する鎮守府に全速力で向かって行き、榛名達は赤城のペースに合わせて海域を離脱、離脱後は、鎮守府を目指して警戒しながら進んだ。

 

 

 

それから数分、安騎尭は赤城が所属する鎮守府の正門に着いていた。しかしながらその鎮守府は、形は普通に保っていながらも、安騎尭の鎮守府とは比べるもなく汚らしかった。

 

「ここにも査察は入っているはずだ。なのに何故これが通る? ……調べてみるか」

 

そして安騎尭は本部に連絡して赤城が所属する鎮守府の査察結果を送ってもらうことにした。それも元帥に頼んでだ。安騎尭は養成所時代に元帥からの直接指導を受けるほどであり、元々安騎尭が海軍に入ったのも元帥が目をつけたからである。そのため、安騎尭と元帥の関係は良好である。

 

元帥が安騎尭に対する評価は、この停滞した海軍の現状を打破できる存在であるとしている。元帥も現海軍の現状に不満を持っていた。海軍を良くしようと元帥に着いたはいいが、周りがいつの間にか堕落し始め、遂には賄賂を送り合う始末にまでなった。元帥はそれを素早く察知していたものの、個人個人の為に簡単に動く事も出来ない。信頼できるのも直属の部下と艦娘、後は少数の汚れない管理職ぐらいしかいなかった。

 

そこで突然現れたのだ。深海棲艦を倒してしまう人間が……。それが安騎尭である。

 

元帥は安騎尭を早速海軍にスカウトした。しかしながら直属の部下などは反対した。まだ子供であるし、もしその子供が提督になれたとしても、やがて今の腐敗した提督達のようになるのではないかと。それでも元帥は安騎尭をスカウトした。そして元帥はスカウトしたその日に安騎尭と会った。そこには榛名もいたが、今回は安騎尭が海軍に入るかの是非と、彼の本心を聞きたかったがため、その時は何故戦艦級の榛名が安騎尭とともにいるかは聞かなかった。

 

そして元帥と安騎尭との話し合いが始まった。

 

「まずは礼を言わせてもらおう。急な呼び出しを受け入れてくれて感謝する」

「いえ、僕もいずれは海軍に入ろうかと思っていたので、手間が省けて助かりました。僕の方からも、礼を言わせてください」

「そうか……それでは君は、海軍に入りたいがために君の故郷から出たのかね?」

「えぇっと……そこは複雑な事情とかがあって僕が止む無く故郷を去ったんですけど……でも、海軍に入りたいのは本当です」

「海軍に入りたいその理由を尋ねても良いかな?」

「その……自分勝手な思いもあるんですけど……」

「なに、悪質なもの以外なら構わんさ」

「ははは……そうですか……でも僕が海軍に入りたいと思う理由は悪質なものじゃないです」

 

安騎尭はそう言い強い眼差しを元帥に向ける。そして次の言葉が安騎尭の口から紡ぎ出される。

 

「僕は、僕の隣にいる榛名さんを護りたいんです」

「護るとな?」

「はい。僕の命がいつまで続くのかは分りません。1年後か2年後か3年後か……それとも、それ以上に長く生きるかもしれません。でも、ただ生きているだけじゃ僕の隣にいる榛名さんは護れない。だから僕は、榛名さんを護る為に強くなりたいんです‼︎ だから僕は海軍に入りたいんです‼︎」

「……ふむ」

 

元帥は目を閉じて数秒考える。考え終えると目を開き、安騎尭を真っ直ぐと見据えて言った。

 

「良かろう。脩鴑安騎尭、そなたの海軍入りを認める。まずは養成学校に通ってもらうが、構わんな?」

「はい‼︎ ありがとうございます‼︎」

 

これが安騎尭と元帥のファーストコンタクトだった。また安騎尭が養成学校に通ってからも度々安騎尭の様子を見に行った。安騎尭が将来腐敗する提督になるとは思わないが、それでも気にはなった。それは杞憂に終わったが……。

 

そんな事もあり、安騎尭と元帥の関係は良好である。

 

閑話休題

 

安騎尭が情報を求めて数分後、安騎尭の携帯に赤城が所属する鎮守府の査察情報が送られた。そこに載っていたのは、鎮守府の運営には支障無し、という結果とその詳細だった。

 

しかし安騎尭は見逃さなかった。その査察された日がいつかを。

 

「この日は討伐日の2日前だ。しかし赤城の話によると提督が変わってからこの有様……なるほど。ここの提督とここを担当した査察官がグルだという事か」

 

安騎尭は他の査察日の資料も見た。それらの資料の査察官は、全て同じ人物だった。

 

「……」

 

安騎尭は言葉すら出なかった。それがあまりにもくだらないと感じたから。

 

「さて、これから加賀を助けに行くか!」

 

そして安騎尭は汚らしい鎮守府へと足を踏み入れた。無論、カメラなどには写らないようにして……。




今回はここまでとさせていただきます。加賀さんを解放するところまで書きたかったのですが、次回に回させていただきます。

次は、上記にも書いたように加賀さんを助ける物語を書きます。

それでは……。
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