悪提督がお縄になった数日後、赤城達の鎮守府に新しく提督が着任した。その提督は、悪提督が着任する前の提督だった。つまりは元に戻ったという事であり、昔の様に賑やかではないものの、前の優しい提督を知っている艦娘達は、これでまた前の生活が送れると思い歓喜した。
これで安騎尭も安心した。赤城や加賀はこれで元どおりの生活に戻れると。そう……思っていたのだが……。
「提督……これから宜しくお願いしますね」
「私も貴方の元にいさせて下さい。提督」
「……これは一体どういう事だ?」
安騎尭は何故こうなったか分からなかった。それは目の前にいる2人の艦娘が原因だった。その2人とは……。
「赤城……加賀……何故君たちが俺の鎮守府にいるんだ? 君達の鎮守府には、元の優しい提督が戻ったんじゃないのか?」
それは赤城と加賀だった。赤城は笑顔を浮かべており、加賀は無表情に見える顔をしながらも、どことなく笑った顔を見せる。しかし安騎尭には分からなかった。何故2人が自分の目の前におり、しかも自分の鎮守府に入れて欲しいと言っているのか。
「確かに俺は、君達の後の事は海軍本部に任せると言った。海軍本部ならば、彼女達……君達が行きたい所を言えば、それは叶うはずだ。現に君達と共にいた他の艦娘は元の提督の所に戻ったと聞いている。なのに何故君たちは俺の所にいるんだ? 君達は幸せな生活を望んでいるはず。ならば元の提督にいるべきなんじゃないのか?」
安騎尭はそう思っていた。赤城と加賀が幸せな生活を送れるのはここではなく、優しい提督の元の方が良いのではと。だがそれは安騎尭の思い過ごしだった。
「確かにあの提督も優しい方です。でも私は気付いてしまいました」
安騎尭の最初の問いに口を開いたのは赤城で、赤城は目を閉じ、自分の手をまるで何かにお祈りする様な形で結んだ。
「提督……貴方も優しい方だと。それも、戦場に立つ艦娘を誰よりも気遣い、そして自分が傷ついてでも艦娘を守る。それは並の提督ではできません。それは私が以前勤めていた鎮守府の提督もそうです。そこまで艦娘達を守ってあげれません。それは、仕方ない事だと私も分かっています。でも貴方はそれを可能にした。自らの手で戦い、そして艦娘を守る。どうして貴方にそんな力があるのかは……私には分かりません。その力を持とうとした理由も……。分かりませんけど、私はそんな貴方に助けられた。そして感じました。貴方の優しさを……その優しさを支える強い心を。それを感じた時、私は……何故か胸の奥が締め付けられる様な……そんな感覚に囚われてしまいました。長々と語りましたけど、簡潔に言うと私は……貴方が、貴方の事が好きになってしまいました。だから私は貴方のお側にいたいのです」
「……は?」
赤城がそう語った時、赤城の目は真っ直ぐと安騎尭を見据えていた。手はそのままにしていたが、瞳はどことなく優しい表情をしていた。そして頬をほんのりと赤く染めていた。
そして、赤城に唐突に告白された安騎尭は最初に何を言われたのか分からなかった。そして数秒経って言われた意味を理解した。
「あぁ……その……赤城の申し出は……俺にとっては嬉しい。俺の鎮守府に所属する事も構わない。だが、俺の側に常にいたいというその申し出を受け取る事はできない」
「理由を聞いても良いですか?」
「理由……か。それは長くなる。それに、その理由を聞いたら君も傷付いてしまう。それでも聞きたいか?」
「そうですね。聞きたいです。貴方の過去に、私は興味があります」
「過去……か。そう楽しいものでもないが?」
「それでも、私は聞いてみたいです」
「……そう……か。ふむ……」
安騎尭はそこで少し考えた。目を閉じ、顎に手を置き、顔を俯かせていた。そして考えがまとまったのか、安騎尭は赤城に顔を向けた。
「分かった。でもここでは話せない。皆の前で話したい。それで良いか?」
「はい。それで構いません」
安騎尭は赤城の答えに頷きで返す。そして直ぐに加賀の方に向き直る。
「赤城に関しては分かった。次に加賀だが……赤城と一緒にいたいからこちらに来たのか?」
「えぇ。確かに私は赤城さんが好きだし、一緒にいたいと思うわ。でも、それ以外にも理由があるわ」
加賀はそこで一旦言葉を切り、目を閉じた。数秒閉じた後、目を開いた。そして安騎尭に近づく。次の瞬間
「っ⁈」
加賀は安騎尭に抱き付いた。しかも、安騎尭の後ろには榛名も控えていた。なので赤城の告白も聞いている。赤城に関してもそうであるが、加賀のいきなりの行動に驚いた。その驚きは赤城の告白よりも衝撃を受けた。
加賀はというと、安騎尭の首に腕を回していた。それも目を閉じ、顔は安らいでいた。
「私も……赤城さんと同じで貴方の事が好きなの。最初はふざけた人だと、そう思ったわ。でも、あの牢から助かられた時の貴方の笑顔が何故か忘れられないの。それに……貴方の事を思うと胸の鼓動が早くなって……それで気付いたの。私は……提督……いえ、貴方の事が好きなんだと。だから私も赤城さんと同じ思い。私も、貴方の側にいたい」
「……」
安騎尭は加賀の告白に黙ってしまった。自分としてはこう言ってくれるのは正直嬉しい。
だが、それ故に申し訳なく思う。自分がいつまでもこの世界にいるなら良い。例え老いぼれたとしても、死ぬまでこの世界に居られるのならばそれでも良い。だが安騎尭の場合は違う。安騎尭の場合、いつこの世から去るか分からないのだ。安騎尭自身は、何らかの事を成してこの世から去ると考えてはいるが、それが何なのかは分からない。子供の頃に見たあの夢も、あの時以来見ていない。だから安騎尭は何を成せばこの世から自分が去るのか分からない。
そう思いながらも、加賀の告白に黙ったままにしておく事はないと思い、それに返答した。
「加賀、君の思いも嬉しい。でも俺は……」
「それは赤城さんの告白の返事を聞いて分かっています。私の告白にも応えることができないのでしょう。それでも私は、貴方の事が好きです」
「……ありがとう。今はその気持ちだけ受け取っておくよ」
「えぇ、それで構わないわ」
安騎尭の返答を聞き、加賀はさらに抱きつきを強くした。それを見ていた榛名は……。
「もう……き……せん」
榛名は1回俯いてそう呟き、次の瞬間勢い良く顔を上げ……。
「もう我慢できません‼︎」
榛名は安騎尭に勢い良く近づいて安騎尭の背中から強く抱き付いた。
「うぉっ⁈」
「私だって安騎尭の事がずっと好きなんです‼︎ 安騎尭が小さい頃から……ずっとずっとこの想いは変わりません‼︎ 寧ろ日に日にこの想いは強まる一方です‼︎ だから……だから私は、安騎尭が例え何人の人に告白されても負けません‼︎」
榛名はそう言った後、安騎尭をより一層抱き締めた。安騎尭はというと、加賀と榛名に両側から挟まれて困惑している。
そして、その光景を見ていた赤城も……。
「わ、私も‼︎」
「うわっと‼︎」
赤城も安騎尭の横に抱き付いた。2人に負けじど抱き付く。2人から3人に抱き付きが増えた安騎尭は、さっき以上に困惑していた。確かに、榛名に抱き付かれる事に関しては抵抗というものは無い。抵抗は無いが、榛名の胸が大きいがために、抱き付かれたら自然と榛名の胸が当たる。おまけに榛名の胸は柔らかい。これでもかというほど柔らかい。そのため榛名に抱き付かれてしまうといつの間にか赤面してしまう。
しかし今回は榛名だけではない。正面からは加賀、背後からは榛名、そして側面からは赤城と3人から抱き付かれている。しかも3人とも……。
(榛名に至っては分かってはいたが……赤城も加賀も同じくらい大きいじゃねぇか……)
そう、赤城も加賀も胸は大きい部類だ。普段は胸の上に鉄当てを付けているので分かりづらいが、それを外すと誰にでも分かってしまう程胸が大きい。
(どうすりゃ良いんだよ……)
結局安騎尭は3人が離れるまで困惑しまくり動けなかった。
これをR-15にするかとても迷いましたが、取り敢えずしておきました。キスなどのシーンは書きませんでしたが……まぁ良いのではないかなと思います。
それではまたお会いしましょう。