穂乃果「地方遠征?」
μ’sの活動拠点である、音ノ木坂学院アイドル研究部部室。練習前、ここで彼女ら九人はパイプ椅子に腰掛け、一卓の長机を囲んでいる。
にこ「なんでまたそんな…」
絵里「スクールアイドル活動の地方進出促進…こんなところかしらね。」
穂乃果「場所は?静岡?長野?足伸ばして新潟とか?」
花陽「新潟……♡」
無類の米好き小泉花陽は、どうも頭に米のことしかないらしい。新潟と聞いただけで魚沼産最高品質のコシヒカリをまぶたの裏に浮かべ、妄想の世界へと突入する。
海未「私は福井県へ行ってみたいです。水晶浜という、とても綺麗な海があるらしいですよ。」
希「おっ、海未ちゃんダジャレ〜?」
海未「ちっ、違いますっ!」
凛「はいはーい!凛は札幌ラーメン食べに行きたいにゃ!>ω</」
ことり「流石にそれは遠すぎるんじゃないかなぁ…。」
絵里「この季節に北海道はちょっとね…。でも距離としてはそのくらいよ。」
穂乃果「ええー!じゃあ飛行機乗るの!?」
絵里「陸路でも行けるけど…今回は飛行機使うみたいよ。はいこれ詳細。」
絵里はキィ、と音をたて、パイプ椅子から立ち上がると、慣れた手つきでプリントを各々に配布する。そこに記されていたのは、とても意外な場所だった。
ことり「開催場所…鳥取県倉野川市?」
穂乃果「鳥取ってあれだっけ。日本一人が少ないっていう…」
海未「…なぜそれが思い浮かぶんですか。そこは鳥取砂丘とか梨でしょう。」
はぁ…と軽くため息。
にこ「しかし遠いわねー。どうしてまたそんな…」
絵里「あ、そうそう。もう一つ重要なことが。」
ポンっ、と左手の握りこぶしを右手の掌にあて、8人の注目を集める。
凛「?何かにゃ?」
絵里「今回、曲の演奏を倉野川市のガールズバンドグループが担当してくれるそうよ。えっと…なんてグループだったかしら…」
穂乃果「絵里ちゃんが分からなきゃ誰もわからないよぉ。」
アハハ、と苦笑する穂乃果。
その時、右側の、一番手前に座っていた女の子がバンッと両手で机を叩き、勢いよく立ち上がる。パイプ椅子は彼女の膝の裏にヒット、後方へとブッ飛ばされた。
真姫「私、その子達知ってる!」
花陽「お米……♡」
凛「かよちんがお米の国に旅立ったにゃ…」
花陽、はよ帰ってこい。
もっともっと、踊らせて──
みんなみんな、止まらない──
まり花「ふおおおお…」
イブ「動き超キレっキレだし。凄いなぁ…」
所変わってレコードショップ、サウダージ。まり花の父が経営する店であり、上の階は日向美ビタースイーツの練習場所だ。
合奏合間の休憩中、彼女ら五人は、めうのノートパソコンに映し出された動画を食い入るようにして見ていた。
凛「洋服屋がこんなにたくさん…」
咲子「とってもとってもイケイケさんです!」
めう「このからふるるでフリッフリの衣装…是非ともりんりん先生にコップレして頂きたいめう!」
凛「嫌よ…こんな肌むき出しの破廉恥な装束、単なる布切れじゃない。相当の露出狂か洋服屋以外好んで着たりしないわ。」
イブ「露出狂と同列ってなんか癪だし。ていうかこのくらいフツーフツー。ほら、凛とかこの子の衣装、似合うんじゃない?」
そう言ってイブは小悪魔チックな装いの、真姫を指さす。
めう「むひゅひゅん♪そりは鼻血不可避めう。」
まり花「私この青髪さんの衣装着てみたいなぁ。海賊の親分さんみたいでかっこいいよ!」
うーん、確かに似合うかもしれない。
咲子「私はこのツインテールの子が着てる、猫さんのを着てみたいです!」
イブ「え…」
……ここで咲子が言っているのは、ネコ耳に肉球手袋という装備の、にこのことらしい。
凛(サイズ…)
イブ(サイズが…)
まり花(サイズさんが…)
めう(あるてぃめっと規格外めう…)
高二の咲子、高三のにこ。世の中とは、時に非情なものであった。
何気に真姫、今回初コメ。