仮面ライダーディケイド − THE LOST MEMORIES − feat インデックス   作:海東

10 / 22
第9話 如法暗夜

「お前……一体、何者だ?」

 

ニット帽の男が目の前の士へ尋ねた。

怪訝な表情で見つめている。

彼にとっては、士もあの仮面の怪人たちと同様に変身した人間なのだから仕方ない。

 

「ただの通りすがりだ。気にするな」

 

士は意外にも涼しい顔で言った。

いちいち気にしていられないといったところだろう。

 

「気にするな、と言われてもなあ……」

「ねえねえ!!」

 

ニット帽の男の言葉を遮るようにカップルの女の方が士へ話し掛けた。

目をキラキラと輝かせている。

 

「あれって、何!?変身!?変身なの!?」

「僕も聞きたいッス!!何スか?そのベルト!?」

 

カップルの男の方も彼女に便乗して詰め寄って来た。

興味津々といった様子で尋ねてくる。

彼らも前の世界のシャナたちと同様に仮面ライダーの存在を知らないのだろうか。

 

「……一つ、聞いてもいいか?」

「あ。ゴメンゴメン、こっちばっか質問しちゃってたねー」

「何スか?僕たちに答えられることなら答えるッスよ」

「仮面ライダー。その言葉に聞き覚えはあるか?」

 

士が尋ねると、二人は顔を見合わせた。

 

「ねえねえ、ゆまっち知ってる?」

「ん~、残念ながら知らないッスねえ~。新しい特撮ヒーローか何かッスか?」

 

どうやら、知らないらしい。

 

「……もういい。おい、インデックス」

 

士はこの話を打ち切ると、車の中に鎮座するインデックスを手で招き寄せた。

インデックスは座席からひょいと飛び降り、とてとてと士の元へ歩いて行く。

 

「どうしたの、つかさ?」

「行くぞ」

「えー?もう行っちゃうの?せっかく友達になれそうだったのに……」

 

インデックスが寂しそうに言った。

カップル二人もインデックスの言葉に同意するように頷く。

 

「そうだよー。旅は道連れ、世は情け。って言うじゃない」

「そうッス、そうッス」

「……いいのか?俺と一緒にいるとろくなことにならないぞ?」

「おっ?それ、よくある台詞ッスね?」

「うんうん。実に厨二だねぃ」

 

士の言葉にカップル二人はそう答えた。

こんな怪しい人間をよく追い払わないものだと士は思う。

余程人がいいのか、或いは同じ格好をしているということで親近感でも湧いたのかも知れない。

 

「……なら、もう少しだけここにいさせてもらうぞ」

「オーケィ!」

「あ、そう言えば、まだ名前聞いて無かったッスね」

「お前たちの名前も聞いていなかったな」

「じゃ、私たちから……」

 

と、カップルの女が自分を含めて紹介を始めた。

 

「私は狩沢絵理華(カリサワ エリカ)。隣はゆまっち。車運転しているのが渡草っちで、帽子被ってるのがドタチン」

「おい待て、誰がドタチンだ!!それに、そんなんじゃ分からねえだろ」

 

ドタチンと呼ばれたニット帽の男は狩沢へそう苦言を呈した後、改めて士へと向き直る。

 

「改めて自己紹介させて貰う。俺は門田京平(カドタ キョウヘイ)。門田でいい」

「そうか。あんたには助けてもらったし、礼を言わなきゃな。助かったよ、ド・タ・チ・ン」

「……お前、今わざと言っただろ?」

「さあな?」

 

ニヤつきながらそう言ってのけた士を門田は白い目で見つめた。

しかし、すぐに気を取り直すと、紹介を続ける。

 

「俺の隣で車を運転している長髪の男が渡草三郎(トグサ サブロウ)、お前と同じ格好してるのが遊馬崎(ユマサキ)ウォーカーだ」

「なるほど、大体分かった」

「さあ、今度はそっちの番じゃないか?」

「……俺は門矢士だ。別に覚えてくれなくてもいい」

 

やや間を空けてから士は面倒臭そうに答えた。

ニコニコと笑顔のインデックスがその後に続く。

 

「私はインデックス。よろしくね、えりか!」

「え!?インデックス!?」

 

遊馬崎と狩沢は同時に声を上げると、互い目を見合わせた。

そして一冊の本を取り出すと、目を落としページをパラパラとめくり始める。

 

「ん?こいつがどうかしたか?」

二人の態度を不思議に思った士が尋ねると、彼らは急に顔を上げた。

その顔はまるで世紀の発見でもしたかのようにキラキラと輝いている。

 

「これだけ似てるってことはやっぱり……」

「本物のインデックスさんに間違いないッスよ!!」

 

二人は口々にそう言った。

まるで、インデックスのことを前から知っていたかのような物言いである。

彼らの様子に戸惑いの表情で士の顔を見るインデックス。

士も思わず首を捻る。

 

「何だ?インデックスがどうかしたのか?」

 

士が尋ねると、狩沢と遊馬崎は意外そうな顔で答えた。

 

「え?インデックスさんを知らないんスか?」

「知るも知らないも、俺の知るインデックスは隣にいるこのちんちくりんだけだ。他のインデックスは知らないな」

「つかさ!さり気無くまた私のことちんちくりんって呼んだね!?」

「ちんちくりんなのは事実だろ?」

「ムキーーーー!!」

「ねえねえ!」

 

士とインデックスがそんなやり取りをしていると、狩沢が声を掛けてきた。

手に一冊の本を持っている。

文庫くらいのサイズで、表紙には漫画のようなイラストが描かれていた。

どうやら、車内に置いてある紙袋の中から取り出したもののようである。

 

「はい、どうぞ!」

「……これは何だ?」

 

狩沢から手渡された本を見ながら士は尋ねた。

当の彼女はニマニマと笑うだけである。

 

「取り敢えず読んでみてよ」

「『とある魔術の禁書目録』?何だこの本?」

「『とあるまじゅつのいんでっくす』って読むッスよ!取り敢えず読むッス!マジで面白いッスから!」

「…………………………」

 

士は遊馬崎に言われるがままパラパラとその本を読み始めた。

小説ということで面倒臭そうだと思っていたが、意外と読み易い。

何となく読んでいると、作中の記述にいくつか見覚えのある単語を見つける。

 

「これは……」

 

話を読み進めていくにつれて、ページをめくる手が微かに震えるのが分かった。

 

(どういうことだ?上条当麻にインデックス、それに学園都市。……これは偶然の一致か?)

 

本の中に書かれていたそれらの単語は、インデックスの世界で使われていたものと同一のものであった。

まるで、彼女の世界をそのまま文章化したかのようである。

 

「どう?」

「…………………………」

「面白いでしょ?」

 

「面白い」以外の答えを許さない感じで狩沢が尋ねてきた。

どうやら、この作品を気に入っている様子である。

遊馬崎も同様の視線を士たちへ向けていた。

 

「……まあまあだな」

 

士はそう言うに止めた。

実際の所、作中の言葉に気を取られ、内容がそこまで頭の中に入って来てはいない。

これ以上感想等を聞かれても面倒なので、無言で本を閉じるとそのまま狩沢に突っ返した。

そうした後に士は先程の本の内容は一先ず忘れ、この世界で為すべきことについて改めて考える。

 

(…………………………)

 

まず最初に浮かんだのは先程戦ったドーパントたちであった。

連中は明らかに元からこの世界にいた存在では無い。

果たして何処からやって来たのだろうか。

その答えは残念ながらまだ分からない。

 

(俺は、奴らを知っている……!)

 

士はそのことを確信していた。

しかし、そのことを知っている自分を自分は知らない。

 

「……フッ」

 

矛盾しそうな自身の現状に、士は思わず苦笑いをしてしまっていた。

何はともあれ、ドーパントが自身やインデックスと同じく、この世界における招かれざる客、イレギュラーである可能性は高い。

ならば、同じイレギュラーである自分たちがやるべきことは唯一つ。

ドーパントたちを……いや、連中の元となる存在をこの世界から消すことではないか。

思えば、前の世界に現れたギルとかいう怪人もそうであった。

シャナやアラストールもあんな奴は見たことがないと口を揃えていた。

彼もあの世界におけるイレギュラーな存在だったのかも知れない。

 

(俺たちが、この世界ですべきこと……)

 

世界の歪み、それを正す。

それが士の考えたこの世界、ひいてはこの先の世界で為すべきことであった。

 

「……大体こんなところか?」

 

誰に言うでも無く独りごちると、士は門田たちへと向き直る。

 

「すまないが、この世界について話を聞かせて欲しい。特にあのドーパント……いや、『EXE(エグゼ)』とか言ってたな?連中について知っていることは全て教えろ」

「何だ?その下に出てるんだか横柄なんだか分からない物の聞き方は?」

 

門田は苦笑した。

 

「まあ、いい。俺たちが知ってることを話そう。取り敢えず……」

 

そう言って、門田は背後のワゴンを指差す。

 

「立ち話も何だ。続きはあの中で話すぞ。……こんなとこでボヤボヤしてるとまた連中に囲まれかねないしな」

 

 

 

「探偵……だったのか?」

 

貰った名刺を見ながら意外そうに静雄は言った。

名刺には『風都 鳴海探偵事務所』と書いてある。

 

「真っ当な職種の人間じゃ無いとは思っていたが、まさか探偵とはな」

「ああ。だが『この世界』じゃ、その肩書きも殆ど無意味だろうがな」

 

残念そうに鳴海ソウキチが言った。

ここが彼の知る風都では無く、池袋という街だということは静雄から聞いている。

静雄ともう一人の彼女が風都を知らない様に、鳴海ソウキチもまた池袋という街には聞き覚えは無かった。

 

……ここは、自分のいた世界では無い。

 

鳴海ソウキチはそれをすぐに確信した。

異なる世界の移動、それ自体は彼にとっては珍しいことでは無い。

以前、謎のオーロラに巻き込まれ、突如謎の場所に飛ばされたことがあったからだ。

その先で出会ったのは見ず知らずの三人の若者で、その中の一人が帽子の似合ういい面構えをしていたことを今でもよく覚えている。

帽子が似合うのは一人前である証拠。

それが彼の人生観における、一つの哲学である。

その後、すぐにまたあの謎のオーロラが出現し、気が付くと元の世界へと戻っていた。

あれが何だったのか、鳴海ソウキチは今もよく分かってはいない。

謎のオーロラにしても、あの日から出現を確認しなかった為、それ以上の調査のしようが無かった。

彼が再びそのオーロラに巻き込まれたのは、それからかなりの時間が経ってからである。

 

「……………………」

 

ライダースーツの女性は相変わらずヘルメットを被ったまま、手に持ったPDAをカタカタと叩いていた。

どうやら彼女はそれを通してで無いと、こちらと会話が出来ないらしい。

余程奥手な女性なのだろうか。

或いは、何か喋ることの出来ない理由でもあるのか。

だが、人のそういう部分に部外者が勝手に立ち入るのは無粋だと鳴海ソウキチは考える。

まだ彼女の声を聞いてはいないが、いずれ聞く機会も訪れるだろうと特に言及することは無かった。

と、文字を打ち終えた様子の彼女が、PDAを鳴海ソウキチへと見せる。

 

『私はセルティ・ストゥルルソン。彼……平和島静雄の友人だ。取り敢えず、彼の治療をするべきだと私は思う』

「……そうだな。お嬢さんの言う通りだ」

「別にいらねえよ」

 

静雄はそう言うと、フラフラの足を抑えながら歩くが、数歩進んだところで壁にもたれかかってしまった。

やはり、先程の怪物にやられたダメージは尋常では無いようである。

そんな状態でも強がっているのはプライドが高いのか、それとも他人の世話になりたくないのか。

どちらにしろ、放っておける状態ではない。

 

「……ちょっと待ってろ」

 

鳴海ソウキチはそう言うと、その場から去って行った。

それから数分もしない内に一台のバイクを引きずりながら再び静雄たちの前に現れる。

夜の闇に完全に溶け込むような、真っ黒なバイクであった。

 

「こいつは、俺が『この世界』へ来た時に唯一元の世界から持って来れたものだ。他の機能は使えないが、バイクとしてなら充分使える。……ほら、乗れ静雄」

「別にいいって言ってんだろ」

「泥の上を這いつくばることになっても自分の足で歩きたいって奴がいたら、俺はそいつを尊敬するし、その意思は尊重させたい。そんな奴の助けになれたら、とも思う。……俺にそんな奴の手助けをさせてはくれないか、静雄?」

「……そこまでご立派な精神は持ってねえよ」

 

そう言うと、渋々ながら静雄は鳴海ソウキチのバイクの後ろへと乗った。

鳴海ソウキチは口元を綻ばせると、セルティの方へ振り向く。

 

「それで、セルティ嬢。病院へはどう行けばいいだろうか?時間も時間なので、空いている病院があるといいのだが」

「……………………」

 

セルティは再びカタカタとPDAを叩いた。

文字入力を終えると、それを鳴海ソウキチへ見せる。

 

『この時間だと空いている病院を見つけるのは難しい。知り合いに医者がいる。彼ならば、大丈夫。……多分』

「……ワケありみたいだな。分かった、そこへ行くとしよう」

 

鳴海ソウキチとセルティは同時に頷くと、共にバイクへ跨りエンジンを蒸かした。

彼女もまた真っ黒なバイクに乗っている。

鳴海ソウキチのバイクが闇とするならば、セルティのバイクは影といったところか。

二台のバイクはそのまま夜の街へと消えて行った。

 

 

 

同時刻、この世界に新たなオーロラが出現した。

そこから長身の青年が現れる。

 

「……ここが新しい世界かあ」

 

彼は、まるで少年のような無垢な目で夜の空を見つめていた。

そして、右手を鉄砲のような形にすると、空へ向けて撃つ真似をする。

 

「この世界のお宝も、絶対に僕が頂く」

 

青年は実に楽しそうに言った。

そうして、すぐにその場を去ってしまう。

その速さはまるで風のようで、気が付くと彼の姿は周囲から完全に消えてしまった。

 

新たな闖入者。

彼が敵なのか、味方なのか。

この時の士には知る由も無い。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。