仮面ライダーディケイド − THE LOST MEMORIES − feat インデックス 作:海東
『KAMEN RIDE』
『DECADE』
士がディケイドに変身すると同時に、一枚のカードが飛び出して彼の手の中に収まった。
確認すると、そのカードには仮面ライダースカルの姿が描かれている。
前の世界でも同様の現象が起きたことを士は思い出した。
「……なるほどな」
納得したようにそう言うと、士はすぐに鳴海ソウキチの方へ体を向け、そのまま歩み寄って行った。
「立てるか?何なら手を貸すぞ?」
「……問題ない」
鳴海ソウキチはそう言うと自らの力でゆっくりと立ち上がった。
ダメージは決して浅くは無いだろうが、それでも気丈に振舞っている。
弱みを誰にも見せないことが彼のポリシーなのだろう。
二人の仮面ライダーは互いに並び立ち、向かい合う形となる。
「行くぞ」
士の言葉に、鳴海ソウキチは無言で頷いた。
それを確認すると、士はバックルを開いて先程のカードをその中へ素早く投げ入れる。
『FINAL FORM RIDE』
『S S S SKULL』
「ちょっとくすぐったいぞ」
士は鳴海ソウキチの背後に立つと。その背中に触れて開くような動作を取った。
鳴海ソウキチは直感で理解したのか、特に抵抗などはせず、士に全てを任せるといった感じで背中を預けている。
と、鳴海ソウキチの体が宙へ浮かび上がり、その肉体が見る見る内に変形していった。
やがて、彼の姿は巨大な車両へと変わる。
「これは……スカルギャリーか?」
それは、鳴海ソウキチがいざという時に使用する乗り物であった。
大型の車で、ボディの一番目立つ場所に髑髏が描かれている。
流石の彼も、自身がスカルギャリーになるとは思わなかったのか、若干の戸惑いを見せていた。
だが、そんなことはお構いなしといった感じで、士はまるでサーフィンの様にその上へ飛び乗ってみせる。
「行くぞ!」
「ああ」
士と鳴海ソウキチは共に目の前のキリヒコへ突進する。
「なっ!?」
物凄い勢いで突っ込んでくるスカルギャリーをキリヒコは避けることが出来なかった。
突撃をまともに食らい、数十メートルは軽く飛ばされ、地面を激しく転がっていく。
「ッッッッッッッッッ!!」
スカルギャリーに轢かれたダメージと地面へ叩きつけられたダメージとで、キリヒコはかなりの深手を負ったようであった。
しかし、すぐに立ち上がると、士たちのことを睨み付ける。
怪人になっている為、表情は読み取れないものの、全身から怒りのオーラを立ち上らせているのは分かった。
「ふざ……けるなぁぁぁああああ!!」
そう叫んだのと同時にキリヒコの姿がその場から消えた。
例の超加速を発動させたのである。
先程までの士たちはこれに手を焼いていた。
──だが。
「……そいつはもう見切ったぜ!」
士が自信満々にそう言うと同時にスカルギャリーがその場で器用に回転を始めた。
次の瞬間、スカルギャリーに跳ね飛ばされて再び地面へと強く叩きつけられるキリヒコの姿が現れる。
今度はダメージも深く、すぐに立ち上がることは出来ずにかなりよろめいている様子であった。
信じられないといった様子でキリヒコは士たちを見る。
「な、何故だ……!?何故、私の動きが!?」
「お前の動きはワンパターンなんだよ。それじゃあ、どんなに動きが速くても通用しないな」
「くそぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
キリヒコはそう叫ぶと、地面を強く殴りつけた。
と、すぐにその背中へ翼を生やす。
その大きな翼はまるでナスカの地上絵の様なデザインであった。
「……悔しいが、一先ず退散だ!貴様らはいずれ殺す!覚えていろ!!」
キリヒコはそう捨て台詞を残すと、そのまま舞い上がろうとした。
「逃がすか!!」
士はまた新たにカードを一枚取り出し、それをバックルに投げ入れた。
『FINAL ATTACK RIDE』
『S S S SKULL』
士は手をパンパンと払うと、その場から空高くジャンプした。
すると何枚もの巨大なカードを模したオーラが出現し、飛翔し始めたばかりのキリヒコを捕捉する。
「な、何ぃ!?」
「これで止めだ!!」
士はそのまま空中でキックの態勢を整えると、出現したオーラを一枚一枚通り抜けていった。
それと同時にスカルギャリーとなった鳴海ソウキチもキリヒコへ向け、全速力で突っ込んで行く。
「たああああああああ!!」
雄叫びを上げる士。
次の瞬間、士の蹴り足とスカルギャリーが同時にキリヒコの体を貫く。
「ぐ、ぐああああああ、そ、そんな馬鹿なああああああああああ!!!!」
キリヒコは悲鳴と共に地上へ墜落し、地面へ叩きつけられると同時に爆発した。
その勢いで彼の所持していた全てのガイアメモリが空中へと放り出され、そのまま破壊される。
雨の様にパラパラとガイアメモリの残骸が降り注ぐ中、地面へ仰向けになってぐったりと倒れているキリヒコの姿がそこにあった。
ガイアメモリが体内から排出された様で、ただの人間の姿へと戻っている。
よく見ると死んではおらず、ただ気を失っているだけのようであった。
「終わった……か」
士は地面へ綺麗に着地すると、呟くように言った。
隣に立った鳴海ソウキチは何時の間にかスカルギャリーから仮面ライダースカルの姿へと戻っている。
二人の仮面ライダーが並び立つ中、周囲が薄っすらと明るくなり始めていた。
どうやら、何時の間にか夜が明けていたようである。
「……何時だって昇らない太陽など無い」
鳴海ソウキチが帽子を被り直しながらボソッと呟く。
「この街もきっとやり直すことが出来るだろう」
「……ああ、そうだな」
士も鳴海ソウキチの言葉に同調した。
その後ろで戦いを見守っていたインデックスや門田たちも戦いの終わりにホッと胸を撫で下ろしながら二人のことを見つめている。
園藤キリヒコの敗北を持って、池袋を騒がせたガイアメモリ事件の幕は一先ず下りたのであった。
「……行っちまうのか?」
門田がそう尋ねると、士は無言で頷いた。
終わってみれば一夜限りの短い付き合いではあったが、門田たち四人とはそれなりの交流があった。
別れが寂しくない、と言ったら双方共に嘘になってしまうだろう。
「……ったく、来た途端にチーマーたちに絡まれるわ、ドーパントと戦わされるわで散々だったぜ。こんな街とはとっととオサラバしたいところだぜ」
しかし、士はそうやって皮肉めいたことを口にしてしまうのであった。
寂しさの裏返しや照れ隠しというのが強いのだろう。
そんな士の人となりを短い間で何となく察した門田はその言葉に少しだけニヤリとしていた。
「寂しいッスよ~、せっかく本物の二次元キャラと出会えたっスのに~」
「インちゃん!元気でね!私たちのこと、忘れないでね!?」
遊馬崎と狩沢の二人はそう言ってインデックスとの別れを惜しんでいた。
当のインデックスも、やはり寂しそうな顔で二人のことを見つめている。
これが初めての別れでは無いのだが、やはり寂しいことには違いないのだろう。
「乗ってくか?何処へ行くかは知らないけど、途中までなら送って行くぞ?」
ワゴンの中から渡草が士とインデックスへそう提案した。
「……気持ちだけ貰っておく。どうやら俺たちの道は俺たちしか行けないみたいだからな」
「そうか……」
渡草は納得したような、そうでないような複雑な顔をした。
「……じゃあな」
士は短くそれだけ告げると、四人へ背を向けた。
その一言に士の思いが集約されていることを感じ取った門田たちは和らいだ表情でそれを見送る。
士はふと思い出したように胸にぶら下げていたトイカメラを構えると、振り返って門田たちをフレーム内に収めてからシャッターを切った。
そして、未だに別れを惜しまれているインデックスへ視線を向ける。
「おい、インデックス!とっとと来ないと置いてくぞ!」
「あ、待ってつかさー!」
インデックスはとてとてと士の後を追って走り出した。
大股気味に歩く士へインデックスが追いついた時、二人の目の前に鳴海ソウキチが現れる。
「……世話をかけてしまったな」
鳴海ソウキチはそう言うと被っていた帽子を取り、律儀に頭を下げた。
「別にいいさ」
士は気にしていないという風に答えた。
「……ところで、あんたも別の世界の人間なんだろ?」
「ああ、そうだ」
「これからどうするんだ?」
「……この街に残る」
そう言って鳴海ソウキチは再び帽子を被った。
「この街には、まだ奴の……園藤キリヒコの配ったガイアメモリがあり、ドーパントがいる。そいつらを倒し尽くすまで、俺は元の世界へ帰るつもりはない」
それは鳴海ソウキチの責任感であった。
本来であれば、ガイアメモリの存在しなかったこの世界。
そこへ悪の元凶を運び入れてしまったことへの贖罪。
園藤キリヒコが来たことも、ガイアメモリがばら撒かれたことも鳴海ソウキチが直接の原因ということでは無いのだろうが、それでも彼の意思は見るからに固い。
「……そうか」
それが分かるからこそ、士はそれ以上は何も言わなかった。
二人がそうしていると、鳴海ソウキチの元へ静雄とセルティがやって来る。
静雄は未だにセルティに肩を貸して貰っている状態であったが、表情は何処か晴れやかであった。
鳴海ソウキチと向かい合った静雄は気恥ずかしさからか視線を少し逸らしたが、すぐに決心したように口を開く。
「……オッサン、その……何だ」
「……………………」
「……ありがとな」
「……フッ」
鳴海ソウキチは口の端を僅かに上げた。
「まだ全てが終わったわけじゃない。大変なのは寧ろこれからだ」
「……だな」
「……何かあったら、お前たちに力を借りてもいいか?」
「……ああ」
そう会話する鳴海ソウキチたちを見た士は再びトイカメラを構えた。
彼らの姿をフレームに納めてシャッターを切ると、それに気付いた鳴海ソウキチはまたも「フッ」と笑う。
「……これは探偵としての勘だが、お前とはまた何処かで会えるかも知れんな」
「その時は敵か味方か分からないけどな」
「ああ、そうだな」
互いにそう言って頷き合うと、士とインデックスは彼らと別れた。
暫く歩いていると、すっかり明けた空の眩しさに思わず目を閉じてしまう。
「オっハヨ~~!今日もいい天気だねぃ!」
「朝から元気だね正臣」
「お、隣にいるのはもしや杏里ちゃんカナ~~?」
「おはよう……ございます紀田くん」
士たちの横をそんな会話をしている三人の学生が通り過ぎて行った。
時間を考えるとこれから学校へ向かう途中なのだろう。
そんな彼らの姿が、この街に日常を取り戻したことを告げているようであった。
まだ、この街からガイアメモリの脅威が全て去ったというわけでは無い。
この日常も壊されてしまう日がまた来てしまうかも知れない。
だが、そのようなことが起きても、彼らは戦うだろう。
そして、そんな彼らを鳴海ソウキチはきっと助けるだろう。
世界が違っても、街を泣かせる者を許せない彼ならば、きっと。
「昇らない太陽はない……確かに、な」
「つかさ、何かカッコつけてるね?」
「……うるさい」
そして、士とインデックスの二人は朝の光に紛れていたオーロラの中へと消えて行った。
「……どうやら昨日の夜、色々と面白いことがあったそうだね。クーッ!俺も混ざりたかったよ」
臨也はそう悔しがると、室内に置いてあるチェス盤へ乱暴に将棋の駒を叩き付けた。
その様子をひょんなことから彼の部下になった矢霧波江が冷めた視線で見つめている。
「にしても、あの男は一体?この俺にも分からないことがあるなんて癪だね」
臨也はそう言うと、本棚の上に置いてあるものを見た。
それは人間……それも女性の首であった。
カプセル状のガラスの容器の中に入っており化学薬品などの液体に浸してある。
(君の持っているものには興味がある)
(セルティ・ストゥルルソンの首)
「…………………………」
(何故、あの男はこの首の存在を知っていた?彼女がバラした……というわけではないだろうし)
臨也は波江の方をチラッと見る。
(……ククク、まあいいか。実に面白いよ。また会えるといいなあ、あの男に!)
夜の路上で出会った、パーマがかった長髪の青年。
たった一度、それも僅かな時間の出会いに臨也はすっかり虜となっていた。
(……不機嫌かと思ったら、今度は上機嫌。本当にこの男はよく分からない)
波江は臨也の一喜一憂を見ながらそう思った。
「さあて、と」
一人の青年がとあるビルの屋上から街を見下ろしていた。
パーマがかった長い髪が風に揺れている。
「この世界に大したお宝は無かったし、そろそろ次の世界へ行くとするか」
そう言った青年の近くに突如オーロラが発生した。
彼は躊躇せずにその中へ足を踏み入れる。
「……士。君とは近い内に逢えそうだ。何だか、そんな気がするよ」
そしてすぐに彼の姿はオーロラと共にビルの屋上から消えてしまった。
まるで最初からそこには誰もいなかったかのように。