仮面ライダーディケイド − THE LOST MEMORIES − feat インデックス 作:海東
「……お前たちは何者だ?」
聳え立つビル並みの大きさを持つ躯の怪物がまず発したのはその一言であった。
おどろおどろしい声色で、剥き出しになった上下の顎をカクカクと鳴らす。
「人間如きが何故、この中で動けるのだ?」
怪物は二人を見下ろしながら、更に問い掛けてくる。
インデックスは怪物を見て狼狽していたが、士は自身でも驚くほど動じていなかった。
寧ろ、この手の怪物と対峙するのは初めてな気がしない。
余裕さえ感じている。
「……意思の疎通が出来るならば丁度いい。この世界について教えて貰おうか?」
「人間如きと交わす言葉なぞない……。喰ってやるわ!」
骸の怪物は問答無用で襲い掛かって来た。
大きな口を開け、二人を飲み込もうとする。
「!!」
士はインデックスを思い切り突き飛ばすと、自らも横へ飛んで怪物の初撃を交わした。
いきなり突き飛ばされたインデックスは受け身も取れずに倒れると、乱れたスカートを気にすることなく士へ文句を言う。
「つかさ!レディーにはもうちょっと優しくして欲しいかも!」
「喰われるよりはマシだろ?ガキくさいパンツ見せながらブー垂れるな」
「!?キャッ!!」
慌ててインデックスは決して長くは無い制服のスカートを手で押さえる。
そして真っ赤な顔で士のことを睨み付けた。
「……つかさのスケベなんだよ」
「見たくて見たわけじゃない。勘違いするな」
「舐めるな人間があああああああ!!」
二人の暢気なやり取りに苛立ったのか、怪物は咆哮した。
そして、狙いをインデックスへ定めると再び襲い掛かろうと構えを取る。
「ちぃッ!」
怪物の動きを察知した士は驚異的な身体能力で怪物よりも早くインデックスの元へ走ると、彼女のことを庇った。
「があああああああああああ!!」
「くっ!!」
大きな腕を振り回す怪物。
その攻撃を肩に受けた士はそのまま吹き飛ばされてしまう。
「つかさ!!」
「……大丈夫だ。この程度ならかすり傷の内にも入らない」
インデックスが心配そうに声を掛けると、士は心配はいらないとばかりに手を振ってみせた。
だが、あまり力が入っていないのか、その手が微かに震えている。
「人間如きが、邪魔しおって……。食う前に徹底的に痛めつけてやる!!」
怪物は邪魔された怒りからか全身をカタカタと震わせ、空洞に落ち窪んだ目を士へと向けた。
どうやら狙いを士へと定め直した模様である。
「チッ、このままじゃ……」
士はダメージで立ち上がることが出来ない。
負傷した肩を手で押さえながらじりじりと後退する。
その時、士の指に何かが触れた。
見ると、それは一枚のカードであった。
どうやら先程吹き飛ばされた時に落としたもののようである。
カードには士のトイカメラの色と同じマゼンダカラーの仮面の戦士が描かれていた。
「これは……」
それを見た瞬間、考えるよりも先に士の体が動き出した。
素早くカードを拾い上げると、まるで何者かに操られたかのように紅渡から手渡されバックルを取り出し、それを腰に当てる。
バックルからは突然ベルトが現れ、士の腰へと巻き付いていった。
士はすぐに開閉式となっているバックルの両側を開くと、カードを敵に向けて翳し、無意識に言葉を発する。
「……変身!!」
直後、士はカードを指で器用にひっくり返し、横になったバックルの差し入れ口へ入れた。
『KAMEN RIDE』
バックルから突如音声が発せられる。
士はそれに構わず、手を交差させながらバックルの両側を閉じた。
『DECADE』
すると、バックルの音声と同時に士の周囲に幾つもの影が出現した。
それら全てが士へと重なると、次の瞬間、空中に黒い板のようなものが現れ、士の頭部へと突き刺さる。
気が付くと、士は先程のカードに描かれていたマゼンダカラーの鎧と仮面を身に着けていた。
「つ、つかさ?」
インデックスは目を丸くして士の変身を見守っていた。
自身の変化に士もまた戸惑いを見せる。
「何だ……これは?」
士は試しに体を動かしてみた。
重そうな鎧を身に着けている割に体全体がやけに軽く感じる。
何処からか力も沸いて来ているようで、肩の痛みも殆ど無くなっていた。
あまりに不可解な状況。
だが、何よりも驚くべきは、自身がこの変化にもう慣れつつあるということ。
かつての自分はこの姿に何度もなった。
そんな気がしてならない。
「カカカカカカカカカ」
怪物は顎をカタカタと鳴らしながら笑った。
士の変身を目の当たりにしながらも、余裕の態度である。
「何だあ、それは?」
「さて、な?」
士はただ一言、そう言った。
頭の中では何も理解出来てはいないが、彼の中で一つ確信していることがある。
それは、今の姿ならば、あの怪物とも互角以上に戦えるということであった。
「……そうか。では、死ねえええええ!!」
怪物は士へ向けて、先程の様に右手を振り下ろす。
まるで巨大な鉈を振るうが如くであった。
「つかさ!」
インデックスは思わず目を塞ぐ。
「な、なにぃ!?」
怪物の素っ頓狂な声にインデックスは恐る恐る目を開いた。
すると、そこには自身の何倍もの大きさもある怪物の右腕を片腕一本で止めている士の姿があった。
「ハァ!」
士が力ずくで押し返すと、怪物はいとも簡単に後方へ飛んで行った。
「な、何故だあ!?」
怪物は信じられないといった困惑の声を上げる。
「何故、人間如きに……!?」
「……どうやら形勢は逆転したみたいだな」
そう言って士は手をパンパンと軽く払うと、腰に付けたカードホルダーを外した。
紅渡が言うにはライドブッカーと呼ぶらしいそのホルダーの中からカードを一枚取り出すと、先程の様にバックルの中へ入れる。
『ATTACK RIDE』
『SLASH』
すると、ライドブッカーが変形し、刃と柄が飛び出した。
士は右手で柄の方を握り、剣のように持って構える。
「……今度はこっちから行くぞ!」
直後、士は正面から怪物へぶつかっていく。
見た目よりも素早い動きで間合いを一気に詰めると、勢い良くライドブッカーを振り下ろした。
すると、怪物の右腕がいとも容易く断ち切れ、ズドンと大きな音を立てて地面へ落ちる。
「な、何ぃぃぃぃ!?」
失った右腕を見て怪物は驚愕の声を上げた。
圧倒的な体格差と自身の力を過信し、ずっと余裕を見せていた怪物が明らかな動揺を見せ始めている。
「まだまだ行くぜ!」
士は攻撃の手を休めることなく、同じ様に何度も何度も怪物を斬り付けていった。
それは一見、乱暴に見える太刀筋であったが、その一撃一撃が確実に相手の急所を捉えており、斬られる度に怪物は悲鳴を上げる。
(……何故だ?何故、俺は戦い方を知っている!?)
一方的に相手を攻めながらも、士の頭の中にはそんな疑問が浮かんでいた。
頭ではなく、体が覚えている。
正にそんな感覚であった。
少なくとも、こうして何者かと戦うことは、どうも初めてでは無いようである。
(……色々気になることはある。だが、今はこいつを倒す方が先決だ!)
そう割り切ると、士は考えることを止め、一心不乱に怪物を攻め続けた。
攻撃の手が緩まることは無い。
「調子に乗るなァ!!」
怪物は怒りに身を震わせて叫んだ。
そして、なりふり構わずに士へ向かって捨て身で体当たりをかける。
「死ねぃッ!!!!!!!!」
「………………………ッ!!」
士はマタドールのように怪物の突進をひらりと交わした。
怪物は勢いそのままに通り過ぎていくが、すぐに向き直って再度体当たりを試みる。
あの巨体がぶつかってしまえば、いくら今の姿の士でも無事には済まないだろう。
しかし、士は慌てることなくライドブッカーからまた一枚カードを取り出した。
「そろそろ終わりにしてやる」
そう言い放つと、カードをバックルの中へ投げ入れた。
『FINAL ATTACK RIDE』
『DE DE DE DECADE』
ベルトからスクラッチしたような音声が発せられると、士の目の前にカードをオーラ化させたようなものが次々と現れ、怪物へと伸びていった。
士はライドブッカーを構えると、地面を蹴って出現したカードの中を通って行く。
「はああああああああああああああああああ!」
「死ねえええええええええええええええええ!」
士と怪物は互いに声を張り上げ、交差する。
直後、ライドブッカーの刃が怪物を両断した。
「ぐあああああああああああああああ!!!!」
怪物は断末魔の末、そのまま爆散し、跡形もなく消え去った。
それを背中で感じ取った士はライドブッカーの刃を手で払ってみせる。
「つかさー!」
怪物が倒されたことを確認すると、インデックスが士の下へと駆け寄った。
ハァハァと息を弾ませながらも、笑顔で士に声を掛ける。
「す、すごいんだよ、つかさ!」
「………………………」
「そのよろいは一体何なの?魔術とは違うみたいだけど……」
「仮面ライダー……ディケイド」
「かめん……らいだあ?」
その言葉を聞いてインデックスは思わずあの紅渡と名乗った青年のことを思い出していた。
彼は士のことを『仮面ライダーディケイド』と呼んだ。
今の士の姿こそ、その『仮面ライダーディケイド』の姿なのだろうか。
「………………………」
士は改めて自分の姿を見回してみる。
(……俺は、この姿で戦ったことがある。それも一度や二度じゃない)
この時、士の頭の中にはいくつもの場面が浮かび上がっていた。
自身がこの姿……仮面ライダーディケイドとして、自分と似た格好の者たち──それらもまた仮面ライダーであった──と戦っている姿である。
仮面ライダーディケイドの進む後には、仮面ライダーたちの屍が次々と地面へと転がっていった。
「これ……は……?」
士は思わずよろめいてしまう。
おぼろげな記憶とは言え、あまりに刺激的な内容であった。
インデックスが心配そうな顔で士のことを見つめる。
「つかさ?どうしたの?」
「…………何でも無い」
士はそれだけ言うと、先程のフラッシュバックを振り払うように頭を二度三度振った。
何とか気を取り直すと、変身を解く為にベルトへ手をやる。
何故かは分からぬが、変身解除の方法まで無意識に体が覚えているようであった。
と、その時であった。
士は突如、強い殺気を感じる。
「ハアアアアアアア!」
咆哮と共に何者かが襲い掛かって来た。
何やら刀のようなものを持っているようで、それを士へ振り下ろす。
士は即座に反応し、ライドブッカーの刃で敵の斬撃を受け止めた。
その一撃は普通の者ならば避けることはおろか、気付くことすら不可能だっただろう。
それ程見事な奇襲攻撃であった。
「何者だ!?」
「それはこっちの台詞よ!」
問い掛けに答えたのは、意外にも幼い少女のような声であった。
士は自身を狙ってきた襲撃者の姿を改めて見る。
すると、そこにいたのは燃え上がる赤い炎のような髪と瞳の美しい少女であった。
少女は今も強い敵意を士へと向けている。
「今度はガキか?」
鍔迫り合いの最中に士が思わず首を捻る。
「ガキ……ですって!?」
少女は士の言葉に激昂したようで、紅蓮の瞳が吊り上がる。
直後、マントを翻して自ら後方へ飛ぶと士から距離を取った。
そして、美しい刀剣の切っ先を士へと向けながら、キッと睨み付ける。
「お前、一体何者だ!?新たな徒(ともがら)か!?」
徒。
全く知らない言葉である。
だが、それよりも士は少女の態度が気に食わない。
「……知らないのか?人のことを尋ねる時には、まず自分から名乗るのが礼儀って奴だぞ?」
「お前が言うな!!」
「まあ、ガキには分からないか」
「何ですって!?」
「ガキって言われてムキになったのか?そうやってすぐにムキになるのはガキだって証拠だな」
「うるさい!うるさい!うるさい!」
少女は頭をブンブンと振った。
「何でただの人間が封絶(ふうぜつ)の中で動ける!?」
「さあな。寧ろこっちが聞きたいくらいだ」
「……そう、惚けるのね。なら、力ずくで聞き出す!!」
そう言って少女は地面を蹴ると、洗練された素早い動きでこちらへと近付いて来る。
その洗練された動きだけを見れば、先程の怪物とは雲泥の差で、明らかに少女の方が格上であった。
「……ガキが。お尻ペンペンしてやらないと分からないってか?」
士は無意識にライドブッカーを変形させる。
すると、ライドブッカーは銃のような形状へと変わった。
グリップ部分を持って引き金を引くと、ライドブッカーから光弾が発射される。
「なっ!?」
地面へ着弾した光弾は小さな爆発を起こして少女の前進を止めた。
「……その変なの、剣じゃなかったの!?」
「……らしいな。俺も今知った」
士はライドブッカーの銃口を少女へと向けた。
「……俺もお前に聞きたいことがある」
「何よ!?」
「封絶ってのは何だ?さっきの骸骨の化け物は何だ?そして、お前は誰だ?」
少女は士の質問責めに思わず眉を顰める。
「お前……本当に何も知らないのか?」
「さっきからそう言ってるだろ!」
「でも……『ここは刀を収めろ』 」
突如厳かな声が辺りに響き渡った。
士は声の主を探して辺りを見回したが、誰の姿も見当たらない。
「アラストール!こいつらは明らかに普通の人間じゃない!」
少女は納得がいかないといった表情で声を荒げる。
『……だからと言って、無闇に襲い掛かっては徒と何一つ変わらないではないか』
「くっ……!!」
姿の見えぬ声と会話する少女を見て、インデックスが何かに気が付いた。
「つかさ……きっとあのペンダントが喋ってるんだよ」
「ペンダント……だと?」
よく見ると、少女の視線は下の方を向いている。
その先を追うと、確かにそこには少女の首にかかったペンダントがあった。
『仮面の男よ。どうかお前も矛を収めて欲しい』
謎の声が今度は士へと語り掛けた。
意識して聞いてみると、確かにこの声は少女のペンダントから発せられているらしい。
士は少女へ向けていたライドブッカーを下ろすと、もう片方の手をベルトにやった。
そして、バックルの外側の部分を引っ張る。
次の瞬間、士は元の姿へと戻った。
「……俺は変身を解いた。お前もその物騒な刀、とっとと仕舞ったらどうだ?」
「…………………………」
少女は渋々といった様子で刀をマントの中へと仕舞う。
互いに武器を収めたところで、士は再び少女へ尋ねた。
「じゃあ、教えてもらおうか?この世界のことをな」
「……………………フン!」
気に食わない。
そんな表情で少女は士のことを見ていた。
「……なるほど、大体分かった」
少女から聞かされたことに対して、士は一言そう言ってのけた。
「つかさ!大体じゃダメだと思うんだよ!」
インデックスが突っ込むと、士はやれやれといった表情になる。
「……要するに、世界が真っ赤になったのは封絶とかいう奴で、さっきの化け物は徒と言って人間の存在を喰っちまうんだろ?で、このガキはフレイムヘイズと言って、それを防いでる。これでいいか?」
「またガキって言ったわね!?」
少女は再び刀を取り出そうとする。
士は呆れたように視線をペンダントの方へ向けた。
「……ったく、その程度ですぐキレるのは精神修行が足りていないんじゃないのか?」
『……面目ない。だが、お前もあまりこの子を挑発するのは止めて欲しい』
「ま、俺は誰かさんと違って大人だからな。これ以上からかうのは止めておいてやるよ」
士の言葉に、またも少女は苛立ちを見せるが、軽く咳払いをして気を取り直した。
「……さっきアンタが言ったことだけどね。少しだけ違うわ。私たちフレイムヘイズはこの世と紅世のバランスを守るのが使命なの。私たちが徒を討伐するのもその為よ。人間の存在の力の浪費が大きくなれば“歪み”が発生するの」
「その“歪み”って奴が大きくなったらどうなるんだ?」
「色々あるけど……簡単に言うなら世界が崩壊するわ」
「何?」
世界の崩壊。
その言葉に、つい先程世界の崩壊を目の当たりにしてきた士とインデックスは反応する。
少女は二人の変化にすぐ気が付いたが、特に言及はしなかった。
「で、アンタたち、これからどうする気?」
少女が尋ねると、士は少し考える素振りを見せた。
「……さあな。何せ俺たちはこの世界へ来たばかりだ。何をすればいいのか、何をしなきゃいけないのか。全く見当もつかない」
「そう。じゃあ、一つだけ忠告するわ。……あまり、調子に乗らないほうがいい」
「どういうことだ?」
「確かにアンタには私もアラストールも知らない力がある。だけど、紅世の徒を甘く見ない方がいい。いつかきっと足元を掬われる」
「……そうか。ま、忠告は忠告として受け止めてやるよ」
「……忠告したわよ」
少女はそう言うと、踵を返して、そのまま二人の目の前から去って行った。
彼女の姿が見えなくなってから暫くすると、今まで世界を覆っていた空間が消えて、空も晴れ渡る青い空へと変わっていく。
そして、止まっていた世界は元通り動き始めた。
「……取り敢えず、目の前の危機は去ったということか」
先程までの脅威など露程にも知らずに行き交う人々を見ながら士は呟く。
封絶という現象に巻き込まれ、その中で化け物と戦い、謎の少女と出会った。
それらのことがまるで白昼夢のように感じられてしまう。
しかし、体に刻まれた痛みなどが、実感として夢では無いと士へ告げていた。
この世界で何をすべきなのか。
何時の間にか士の頭の中はそのことでいっぱいになっていた。
「フレイムヘイズ……それに、紅世の徒か。おぼろげながらだが、この世界が見えてきた。そんな気がする」
「……………………」
「……どうしたんだ、インデックス?」
「世界の、崩壊……」
「……!」
インデックスはどうやら先程の少女の言葉に軽くショックを受けているようであった。
無理も無いだろう。
自分たちの世界が崩壊の危機に瀕しているのをつい先程目の当たりにしたばかりなのだから。
その原因は士にあると、紅渡と名乗った青年は言っていた。
いつも通り振舞ってはいたが、士に対して複雑な感情を抱いていてもおかしくはない。
「……必ずお前の世界を救ってやる」
気が付くと、士はそんな言葉を言っていた。
インデックスが驚いたように士の顔を見る。
「つかさ……?」
「だから、そんな顔するな。……って、世界を崩壊させた奴に言われても嬉しいわけないか」
「……ううん。そんなことないんだよ」
インデックスはそう言って少しだけ笑ってみせた。
その笑顔はまるで聖母のようであった。
士は照れ隠しに「フン」と鼻を鳴らしてみせる。
「……それで、これからどうするの?」
「そうだな……」
これからのことを士は思案する。
と、背中に何者かの視線を感じた。
「……ん?」
振り返ると、一人の男子学生の姿が目に入った。
何処か陰のある少年である。
「……………………」
彼は視線を逸らすと、そのまま何処かへ行ってしまった。
時間的に考えると、これから学校へ登校するのだろうか。
彼の行く先を目で追っていると、新たに学生らしき女子たちを見つける。
「あ。同じ格好なんだよ!」
インデックスが彼女たちを見て言った。
確かに彼女たちはインデックスが今着ているのと同じデザインの制服を着ている。
このことに意味が無い筈は無い……と、士は考えた。
「……今のところ、手掛かりはあれしか無いみたいだな。取り敢えず、あいつらに付いて行くとするか」
「うん!分かったんだよ!」
インデックスも同じように考えたのか、士の意見に賛同する。
こうして二人はこの世界でのそれぞれの一歩を踏み出すのであった。
これが長い長い旅の始まりであるとは知らずに……。