仮面ライダーディケイド − THE LOST MEMORIES − feat インデックス   作:海東

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第19話 転入編 Ⅵ

士と真藤ハルトの戦いは唐突に始まった。

互いに互いの真意を掴めぬまま。

 

 

「ハァッ!!」

 

鋭く重いキックやパンチを繰り出す仮面ライダーアギト……基本形態であるグランドフォームとなった士。

それを片手で払いのけつつキックや片手剣で反撃を試みる仮面ライダーウィザードランドスタイルの真藤ハルト。

二人の攻防は一進一退であった。

 

「このままじゃ埒が明かないな」

 

真藤ハルトはそう呟くと、一旦距離を取り、指輪を新たに付け替え、ベルトに翳す。

 

『ハリケーン、プリーズ!フー!、フー!、フー!、フー!、フー!』

 

緑の魔方陣が真藤ハルトの体を通り抜けると、マスクの複眼部分の形状が逆三角形へと変化し、色も緑色になった。

風を身に纏い、ふわっと宙に浮かび始める。

 

「行くぜ!」

 

言い終わるか終わらないかの内に真藤ハルトは士との距離を詰め、斬撃を見舞った。

 

「くっ!?」

 

士は交わすことも受け止めることも出来ず、その一撃を身に受けてしまう。

明らかに相手のスピードが先程よりも上がっていた。

幸いパワーが多少落ちていた為、致命傷とはならなかったものの、かと言って何度も何度も受けられる代物でもない。

相手もそれは承知していると思われるので、手数での勝負に来るのは必至。

ぼやぼやしていたら、すぐに次の攻撃が来てしまうだろう。

 

「……なら、こいつでどうだ!?」

 

『FORM RIDE』

 

『AGITO STORM』

 

士が新たに取り出したカードをバックルに入れるとアーマーの色が青色に変化した。

これは仮面ライダーアギトのストームフォーム。

スピードに特化した形態で、手には自身と同じくらいの長さの槍斧、ストームハルバートを握っている。

 

「さっきから妙なことをするようだが、このまま行くぜ!!」

 

疾風の如きスピードで、再び士へ向かって行く真藤ハルト。

 

「ハッ!!」

 

それを迎え撃つ形で士はストームハルバートを払うと、刃が相手の腹を直撃する。

 

「うわああ!!」

 

真藤ハルトは勢い良く地面を転がって行った。

突進力がそのままダメージに変わってしまう形となる。

当然、士はその好機を見逃す筈もなく、倒れた真藤ハルトへ向かって走り出す。

 

「ハァァッ!」

「ッ!」

 

追撃する形で降り下ろされるストームハルバート。

真藤ハルトは体を捻ってそれを交わすと、そのまま片手剣で士の胸を突く。

攻撃を食らって僅かに下がる士を見て、真藤ハルトは立ち上がると、片手剣を銃モードに変えて追撃した。

弾丸は風の力を帯びているようで先程撃っていた時よりも幾分か速い。

 

「ィヤァッ!」

 

身に迫ってくる風の弾丸を士はストームハルバートの一振りで薙ぎ払ってみせた。

 

「……その武器はウィザーソードガン、だっけか?なかなかに厄介だな」

 

士の持つライドブッカーと似た性質を持つ武器。

遠近両方に柔軟に対応出来るのはやはり強力である。

 

「変わったのは体の色だけじゃなくて俺みたいにスピードも上がっている。なのにパワーもそれ程落としていないなんてな」

 

一方で真藤ハルトの方も士の力に目を見張っていた。

スピードで対応されてしまうと、今の姿でのアドバンテージがあまり無い。

 

「……なら、スタンダードなこいつで行かせて貰うぜ!」

 

『フレイム、プリーズ!ヒー、ヒー、ヒー、ヒー、ヒー!』

 

再び出現する赤い魔方陣。

それが真藤ハルトの体を通り抜けた時、その姿は最初に変身した時のものになった。

スピードは先程より落ちても、パワー負けはしないようにとのことなのだろう。

 

「なるほどな。じゃあ、次はこいつだな」

 

それを見た士もまた新たなカードを使う。

 

『FORM RIDE』

 

『AGITO FLAME』

 

仮面ライダーアギトの姿はそのままに、アーマーの色が今度は目の前の真藤ハルトと同様の赤に染まる。

そして、手にしていたストームハルバートは剣へと変化した。

剣の名はフレイムソード。

仮面ライダーアギトフレイムフォームの武器である。

 

「来な!」

「言われなくても!!」

 

今度は地に足を着け、士へと走り出す真藤ハルト。

それを士はフレイムソードを構えて待ち構えていた。

そして、相手が間合いに入った直後を見計らいフレイムソードを振るう。

所謂、居合い抜きのような形であった。

剣の切っ先が胸部に当たり、真藤ハルトは一瞬だけ怯むものの、すぐに態勢を立て直して華麗な剣さばきで応戦してくる。

士もそれをフレイムソードで受け止めつつ時折反撃を試みた。

一撃の破壊力は士、手数は真藤ハルト。

そういった様子の攻防が続く。

 

「ちょっと手数が足りないか?」

 

真藤ハルトはそう言うと、新たに指輪を一つ取り出し、それを指に着けてベルトへ翳す。

 

『コピー、プリーズ』

 

すると、仮面ライダーウィザードの隣に新たな仮面ライダーウィザードが現れる。

当人と寸分違わぬ分身。

残像などではなくちゃんと実体を伴っているようで、そいつからの攻撃は士へのダメージとなっていた。

 

「チッ、増えやがって!」

「まだまだ増えるぜ」

 

真藤ハルトが改めてベルトに手を翳すと、その度に分身の数も増える。

合計で四人の仮面ライダーウィザードを相手にする形となった士は、相手の激しい攻撃の嵐に当然のように苦戦を強いられていた。

 

「こいつは少しキツいな……」

 

正面からの攻撃をフレイムソードで受け止める士。

その隙を突いて、横から背後から他の三人の仮面ライダーウィザードが次々と太刀を浴びせかけてくる。

 

「うわあああああ!!」

 

士は大きく仰け反りながら後退した。

囲まれた上に死角から攻撃をされてしまうと防ぐ術が無い。

地面にガクッと膝を着けると同時に仮面ライダーアギトの変身が解かれてしまう。

ディケイドの姿へ戻った士は顔を上げ、目の前の四人の仮面ライダーウィザードをキッと睨み付けた。

 

「……調子に乗りやがって。そういうの、こっちにもあるぜ!」

 

そう言いながらカードを一枚取り出すと、開いたバックルの中へ投げ入れた。

そして、バックルを閉じると同時に士は立ち上がる。

 

『ATTACK RIDE』

 

『ILLUSION』

 

すると、今度は仮面ライダーディケイドが瞬時に四人となった。

そのどれもが仮面ライダーウィザードの分身と同様に実体を持っており、これで相手と同条件に立つ形となる。

 

「俺のコピーと同じ?そんなことも出来るのか?」

「何だか楽しくなってきたぜ」

「うるさい!」

 

二者は同時に分身を引き連れて相手へと向かって地面を強く蹴り出した。

四人の仮面ライダーディケイドと四人の仮面ライダーウィザード。

それぞれが手にした武器を振るい、時に体術を織り交ぜ、激しく目まぐるしくぶつかり合う。

そうして一人、また一人と互いの分身が倒されていき、やがて本体同士の一対一となった。

二人は同時にバックステップで相手から一旦距離を取る。

 

「……そろそろ決着ってところか?」

「……ああ」

 

このまま小競り合いをしていても無駄に消耗するだけと、共に思ったのだろう。

士の呼び掛けに真藤ハルトは呼応し、互いに一撃で決めようとそれぞれカードと指輪を構えた。

その時、突如真藤ハルトの変身が解ける。

 

「チッ、どうやら魔力切れか」

 

振り返ると、レギオンやフェニックスと連戦する形で士とも戦っていたのだ。

バテてしまっても不思議では無いだろう。

一方で士はまだ余力を残している。

この状況、生殺与奪が誰にあるのかは明らかであった。

 

「……………………」

「……………………!!」

 

静かに視線を交わし合う二人。

真藤ハルトはやられることを半ば覚悟し、顔を強張らせている。

と、士はベルトのバックルに手をかけて自身の変身を解いた。

この行動に真藤ハルトは思わず目を丸くする。

 

「……何故、俺に止めを刺そうとしない?お前はこの世界を破壊するんだろ?」

「して欲しいならしてやる。だが、生憎とお前に止めを刺すつもりもこの世界を破壊するつもりも無いんでな」

 

士はあっけらかんとそう言ってのけた。

そもそも、誤解によって生じたこの戦い。

決着をつけるまでもないということだろう。

 

「……お前は一体?」

 

頭にクエスチョンマークを浮かべているといった様子の真藤ハルトは改めて士へそう尋ねる。

その質問に対する士の答えは至ってシンプルなものであった。

 

「……さあな」

「何?」

「俺にも俺が分からない。だから答えようも無いってことだ」

「変わった奴だな、あんた」

 

真藤ハルトはよっこらせと立ち上がると、そのまま士へ背を向けた。

今度は士が尋ねる。

 

「何処へ行く?」

「ちょっと、な。魔力回復のついでに、一度頭の中を整理させて貰うことにするよ。もしかすると、あんたになら話せるかも知れない」

「何をだ?」

「俺のこと、笛吹のこと。そして、この学校で何が起きようとしているのか。その全てをな」

「随分と信用してくれたもんだな。ついさっきまで戦ってたってのに」

「あんたの攻撃は激しかったが、そこに殺気はまるで感じられなかった。さっきのファントムたちと違ってな。だから、考えを少し改めた」

 

真藤ハルトはそう言うとフッと笑って見せた。

 

「正直、あんたのことは分からないことだらけだ。おかしなカードを使って全く別の姿になったりな。でも、こうして拳を突き合わせた感じでは少なくとも害意は無かったと思う。こうして背を向けても特に何もしてこないしな」

「そうやって信じ込ませて最後に裏切るって作戦かも知れないぜ?」

「だったら俺の判断ミスなだけさ。俺はそんなことないと信じてるぜ?」

「フン」

 

士は何処か照れ臭そうに少し視線を逸らした。

その様子を見て僅かに口の端を持ち上げた真藤ハルトは、そのままコツコツと歩いてこの場から立ち去ってしまう。

何とも不思議な男である。

 

「……ったく。だが、あの男やファントムたちと戦ったことで何となく見えてきたな。この世界で俺がすべきこと」

 

仮面ライダーウィザード、そしてファントム。

過去に訪れた世界のことを考えると、どちらも本来はこの世界にはいないイレギュラーである可能性は高い。

で、あるならば、自ずと士のすべきことも限られてくる。

 

(……あの腹ペコシスターが心配、だな)

 

ファントムは表立って行動しているというわけでは無さそうだが、士の介入で事態が良くも悪くも動き出すことだろう。

士は半ば早足気味に先程の食堂へ戻ることにした。

 

「ディケイド……」

 

突如、呼び止めるような声が士の耳に入った。

思わず足を止め、声のした方向に顔を向ける。

すると、そこにいたのはコート姿でチューリップハットを被る眼鏡を掛けた中年の男であった。

 

「……誰だ?」

 

目の前の男は士のことを“ディケイド”と呼んだ。

ということは、少なくともこの世界の人間では無いということになる。

真藤ハルトもあのファントムたちも士のことを知らなかったのだから。

そして、更に自身も知らない門矢士、そして仮面ライダーディケイドを知る人物ということにもなる。

 

「私は鳴滝」

 

男は自らをそう名乗った。

その名前に士は何処か引っ掛かりを感じている。

記憶を失う以前には面識があったような、そんな気がしてならない。

 

「お前は一体……」

「ディケイド、お前はやはり世界を滅ぼす」

「何?」

 

鳴滝と名乗った男は恨みがましそうにそれだけ言うと、突如現れたオーロラに包まれ消えてしまった。

そのオーロラは、インデックスの世界で見たオーロラに酷似しているように士には見えた。

後には、まるで最初から誰もいなかったかのように何も残っていない。

 

「……何だったんだ、あの男は?」

 

何者なのかを始め、言葉の意味や士に接触した目的など、何もかもが謎であった。

ただ、あの鳴滝という男から感じられたのは強く明確な敵意。

その口から告げられた言葉は士の心に確かな楔を植え付けていた。

 

(世界を滅ぼす?俺が?)

 

真藤ハルトにも同じ様なことを言われていた。

それは決して見に覚えの無いことでは無い。

インデックスの世界を始め、過去訪れた世界はどれも滅びの危機に瀕していた。

結果的に救えた世界があったとしても、見方を変えれば士が訪れる世界は滅びの危機に見舞われてしまうということにもなる。

現に、インデックスの世界は士が訪れた後にあのオーロラが出現したのだから。

 

(ニワトリが先か、卵が先か。或いは、両方なのかもな。……いや、今はそんなことを考える時じゃない。早いとこ、インデックスと合流しなけりゃな)

 

ふと湧いてきた自虐的な考えを振り払うように士は再び歩き出した。

食堂までの距離がやけに遠く感じる。

ここから食堂まで、さほど離れてはいなかった筈なのに。

 

 

「…………………………」

 

そんな士の背中を見つめる視線。

先程の戦いから、ずっと隠れてその動向を見つめていた。

 

「……彼は利用出来そうだね」

 

視線の主はそう呟き、口元を歪ませる。

その眼差しは狂気を隠さず爛々と耀いていた。

 

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