仮面ライダーディケイド − THE LOST MEMORIES − feat インデックス   作:海東

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第20話 転入編 Ⅶ

「……フェニックスがやられた?」

「そのようだ」

 

笛吹から告げられたその事実にミサは唖然とする。

 

「俄かには信じかねます」

「それは私とて同じ。フェニックスは蘇生能力だけじゃなく確かな実力者だ。そうそう後れを取ることは無いだろう。だが、現実はこの通りだ。奴はここにいない。あの男が私の招集に応じなかったことなど決して無かったのに」

「フェニックスを倒したのは指輪の魔法使い……真藤ハルトですか?」

「いや、その場に奴がいたのは確かだが、倒したのは別の者だとグレムリンからは報告があった」

「グレムリン……。あのような男の報告など、とてもではないですが信じかねます」

「そんな冷たいこと言わないでよ、ミサちゃん♪」

 

軽い口調で話に加わってきたのは、そのグレムリンであった。

ミサは明らかに嫌そうな顔になる。

 

「僕のこの目でちゃんとその一部始終を見たんだからさ」

「私と口を利くな。貴様と話すと気分が悪くしかならん!」

「え~、そんなぁ~」

 

グレムリンはわざとらしく泣くフリをしてみせた。

その一挙手一投足が目に見えてミサを苛つかせている。

 

「くっ、何者かは知らないが、許せん!」

 

ミサはギリリと歯噛みした。

彼女の様子を見て取ったグレムリンは、わざとらしく手をポンと叩いてみせる。

 

「……そう言えば、指輪の魔法使い。真藤くんだっけ?彼が司波くんたちと一緒にいたところを見たよ」

「何?」

「フジタくんを倒した奴も一緒にいたっけなあ。もしかして、彼らは仲間なんじゃないのかなあ?」

「その話、本当なんだろうな?」

 

ミサに厳しい視線を浴びせかけられてもグレムリンは動じずにニコニコと笑っている。

 

「……貴様を信用するわけじゃない。だが、この目で見てみないことには嘘か本当か分からんからな」

 

そう言い捨て、ミサはこの場から去って行った。

 

「あーあ、行っちゃった」

 

ミサの姿が見えなくなると、グレムリンは意外そうに言ってのけた。

仲間を失って多少なりとも焦燥があったのだろう。

でなければ、彼女が自身の言葉をこうまで簡単に信用するなど有り得ない。

グレムリンはそう推察していた。

 

「……………………」

 

一方で、笛吹はミサの動向には一瞥もくれず、何か考えるような面持ちで立っていた。

グレムリンがその様子を不思議そうに見つめている。

 

「どうしたの?笛吹さん?」

「……私も出向く」

「え?笛吹さんも?珍しいなあ、笛吹さん自ら動くなんて」

「真藤ハルトや司波達也に用が無いわけでもないからな。それに、共に戦っていたという奴にも興味がある」

「へ~」

 

ミサの後を追って笛吹がこの場を去ると、グレムリンはこの場に一人残される形となった。

薄闇の中、彼の口の端が僅かに上がる。

 

(……チャンスってのは、唐突にやって来るものだね。フフン、どうしようかな?)

 

やがて、グレムリンの姿は薄闇の中に消えていった。

 

 

 

「あ、つかさ!おかえりなんだよ!」

 

食堂へ戻ってきた士を朗らかに迎えてくれたのはインデックスであった。

ケーキか何かを食べているのか口の周りには生クリームのようなものを付けている。

 

「……まだ食ってたのか。お前の食欲は底無しだな」

 

やれやれといった様子で士は言った。

その一方で、安心感のようなものを感じている自分にふと気が付く。

誰かがこうして自身の帰りを待っていてくれる。

今の士にとって、それは決して小さなことでは無かった。

あの鳴滝という男の意味深な言葉を聞いた後だからこそ余計にそのことを実感する。

何となくではあったが、士は過去にも似たような経験があるような気がしていた。

 

「どうしたの、つかさ?何だかボーッとしているみたいなんだよ?」

「……お前の食い意地に呆れてるだけだ」

「もう!つかさはまたそういうことを言うんだよ!」

 

インデックスはぷくーっと頬を膨らました。

こうして無邪気に振る舞ってはいるが、内心では不安や心細さも当然感じていることだろう。

彼女の帰るべき場所が、今は大変な出来事に巻き込まれているのだから。

だが、それでもそんな素振りを見せまいとするインデックスの心遣いに士は何処か救われていた。

 

「おいおい、戻ってきて早々痴話喧嘩か?」

「仲いいんだね~」

 

そうやって二人へからかいの言葉を投げて来たのはレオと千葉エリカであった。

近くには司波兄妹もいる。

彼らは士のいない間、一人も欠けることなくインデックスのことを見ていてくれたようであった。

 

「別に喧嘩なんて大層なもんじゃない。飼い犬の躾は飼い主としての最低限のマナーだからな」

「だから、犬じゃないんだよ!」

「まあ、それはそれとして、お守りみたいなことをさせちまって悪かったな」

 

士がそう言うと、司波達也は気にするなという風に首を横に振った。

 

「こちらとしては何も問題ない。用事も特に無かったからな」

「私はお兄様のお側にいられるだけで楽しいですから」

 

司波深雪も続く。

彼女が司波達也へ向ける視線は家族に向けるものにしては、大分熱っぽい。

少し気にはなったものの、士は特にそこには触れないことにする。

 

「ところで、彼女を我々に預け、お前は一体何をしていたんだ?」

 

怪訝な様子で司波達也が尋ねて来た。

出会って間もないのに、半ば強引に連れを預けられたのだから、その理由を聞くのも当然だろう。

士は返答に少し悩んだ。

果たして、彼らについ先程自身が見てきたことをそのまま伝えても良いのだろうかと。

彼らは恐らくファントムの存在を知らない。

もしも彼らが既に自分たちの学校が人ならざる者に支配されていることを知っていたというのならば、こんな落ち着き払ってはいられない筈である。

或いは、彼らがそんなことでは動じないだけの力を備えているということなのか。

ここは明らかに普通の学校とは違う。

目の前の司波達也のグループを始めとして、生徒たちの立ち振舞いは素人のそれでは無い。

それならば、今この学校で起きていることを伝えても問題は無いのではないか。

伝える義務があるのではないか。

どうすべきか士は考える。

 

「……………………」

 

だが、その心配をする必要はすぐに無くなった。

敵の方からこちらへやって来たからである。

 

「ここにいたか!!」

 

声を荒げ、鬼のような形相で近付いて来るのは笛吹の側近の長い黒髪の少女であった。

笛吹の側近と思われる彼女もまた普通の人間でない可能性は非常に高い。

その隠そうともしない敵意は、士だけでなく司波達也たちをも身構えさせる。

 

「お前は確か笛吹って奴と一緒にいた……。ミサ……とか呼ばれていたな。一体、何の用だ?」

「真藤ハルトは何処にいる?」

 

士の問い掛けを無視してミサは尋ねてきた。

 

「知りません」

 

即座にそう返答したのは司波達也であった。

言葉に敬語を交えているのは相手が一応生徒会の人間で上級生だからだろう。

だが、その何処か冷めた感じの物言いには、彼女への敬意など少しも感じられない。

それもあってか、彼女の苛立ちも目に見えて増しているようで、こちらへ聞こえるようにチッと舌打ちする。

 

「嘘を吐くと身のためにならぬぞ?お前たちと一緒にいたという目撃情報があるのだからな」

「確かに彼とは一緒にいました。しかし、それも僅かな時間だけですし、特別親しい間柄というわけではありません。逆にお尋ねいたしますが、彼にどういった用件がおありなのでしょうか?」

「それをお前たちに言う必要などない」

 

高圧的な態度でミサが答える。

 

「……癪に触るが、グレムリンの言っていたことは強ち間違いというわけではないということか」

「?何か仰られましたか?」

「何でもない。それよりも、司波達也。司波深雪。お前たちにも用件がある」

 

ミサはニヤリと笑い、一歩前へ出た。

 

「ワイズマンは仰られた。お前たちには利用価値があると。私と共に来い」

「断ればどうなりますか?」

「こちらも時間があまり無いのでな。ワイズマンの悲願を叶える為にも力ずくということになるが?」

「ならば、お断りさせて頂きます。そして、その上で七草会長たちの行方を教えて頂きましょうか」

 

司波達也は毅然とした態度で言った。

それは彼だけでなく、この場にいる他の者たちも同じ意思のようで、全員の空気が変わり臨戦態勢となる。

 

「…………そうか」

 

少しの沈黙を挟んでからミサは口を開いた。

顔からは表情が消え、目もまるで氷のように冷たく光っている。

 

「……どうやら、お前たちは揃いも揃って死にたいらしいな。たかがブルームの分際でッッ!!」

 

激昂。

次の瞬間、彼女の姿は少女から全身が紫がかった異形のものへと変貌した。

頭部はヘルメットとバイザーを付けたような形状になっており、髪はその一本一本が蛇になっている。

その見た目はまるで神話に名高いメデューサのようであった。

 

「うわあああああああああああああああああああああ」

「化け物だあああああああああああああああああああ」

 

衆目を意に介さず変身した彼女に対して周囲から恐怖と驚きの声が次々と上がった。

その衝撃は司波達也たちも同様で、周りの生徒たちのように取り乱しこそしなかったものの、皆が目を丸くさせている。

彼らにとって彼女……ファントムの存在は全くのイレギュラーだったということなのだろう。

そして、彼女が変身しただけでこれだけの騒ぎが起こるということは、ファントムもまた他の人間の目に触れぬように上手く隠れながら行動をしていたという証拠でもある。

 

(だが、何故今になってこんな正体を明かすような真似を?手段を選んでいられない事情でも出来たのか?)

 

相手の性急過ぎる行動。

そこには何かしらの理由があるのではないかと士は考えた。

 

「何者だ、貴様?」

 

表情を変えずにそう尋ねたのは司波達也であった。

異形の相手にも怯むことなく相対している。

 

「我が名はメデューサ」

 

ミサは自身をそう名乗ると、クククと嘲るように笑ってみせた。

 

「何が可笑しい?」

「いや、何、こんな容易いことだったなんてと思ってな?」

「容易い……一体何がだ?」

「お前たちを絶望させることだ。双方共に傷付ければ良いのだから。一生癒えぬ傷をな!!」

 

ファントムと化し、自らをメデューサと呼称する彼女はその場から一歩も動かずに、その蛇のような髪をまるで触手のように伸ばしてみせた。

 

「!!」

 

突然の攻撃にも関わらず司波達也たちは瞬時に対応し、交わしてみせる。

その一連の動きを見てもやはり素人のそれでは無い。

彼らはやはりただの学生では無いのだろう。

態勢を整えた瞬間、司波深雪が目を閉じ集中し始めた。

 

「…………はぁっ!!」

 

強い冷気を纏った司波深雪が、それをメデューサへ向けて放つと、一瞬で相手が氷付けになる。

陽射しを浴びても溶ける気配すらない氷。

その中でメデューサはピクリとも動かない。

 

「凄いな……」

 

想像以上の司波深雪の攻撃に士も思わず唸る。

これがこの世界の魔法なのか。

真藤ハルトも指輪を使って魔法を繰り出してはいたが、彼女の場合はそういったギミックを用いてはいない。

それでこの威力である。

だが、次の瞬間、氷の表面に突如としてヒビが入った。

 

「!?」

「ハァッ!!!!」

 

その一声と共にメデューサを覆っていた氷は砕け散った。

 

「何だこれは?まさか、こんなものが私に効くと思ったのか?」

「無傷……?」

 

まるで何も無かったかのように平然としているメデューサを見て、司波深雪はその表情を曇らせる。

先程の魔法は彼女にとって自信のあるものだったのだろう。

それが全く通用していないということに動揺を隠せないでいるようだ。

 

「ハァ!」

「てやぁ!!」

 

今度は千葉エリカとレオが同時にメデューサへ向かって行った。

双方共に得意にしていると目される武器を持っている。

どうやら近接戦闘に持ち込もうとしているらしい。

 

「小賢しい!!」

 

その時、メデューサの頭部の蛇たちがまるで意思を持っているかのように高速でグーンと伸びた。

直後、二人は間合いに入る前にその蛇に叩き落されてしまう。

 

「くっ!?」

「うぅっ…!!」

 

地面に倒れ伏せたままの二人。

殴打されたダメージと地面へ叩きつけられたダメージで立ち上がれないようである。

 

「止めだ!!」

 

追撃しようとメデューサの蛇が伸びた瞬間、何かが当たって弾かれた。

 

「何?」

「……………………」

 

見ると、司波達也が何時の間にか銃を構えていた。

どうやら先程のは、彼の銃撃によるものであったらしい。

距離があるわけではないが、素早く鞭のようにしなる蛇へ正確に当てるのは相当な腕前と言える。

 

「司波……達也!!」

 

メデューサが怒りに身を震わせ、視線を司波達也の方へ向けた。

 

「どうやら死にたいらしいな!」

「これ以上、貴様の好きにはさせん!」

 

司波達也は躊躇い無く引き金を引き、毅然とした態度でメデューサに立ち向かう。

だが、放たれた銃弾は次々と蛇によって弾かれ、メデューサの肉体へは届かなかった。

狙いこそ寸分狂わず正確ではあったが、威力の方が不足しているようである。

 

「どうした?それで終わりか?今度はこちらから行くぞ!!」

 

メデューサの蛇は防御から攻撃へ転じ、地面を抉りながら司波達也の方へ向かって行った。

直撃してしまえば致命傷は免れないだろう。

 

「っ……!!」

 

司波達也は見事な反射神経で、向かって来る蛇を避けては銃を撃ち込んでいる。

だが、その銃弾は未だ直撃しない。

 

「フッ、何発撃とうが同じだ。当たりなどしない!」

「だが、そうやって銃弾を弾き続けるということは、当たりさえすればダメージが通るということでもある」

「では、どうする?」

「……こうする!!」

 

突如、司波達也は回避する方向を変え、その勢いのままメデューサへと突っ込んで行った。

 

「勝てないと分かり、自ら死にに来たか!!」

 

メデューサの蛇が一斉に目の前の司波達也へと襲い掛かる。

司波達也はスライディングでそれらを交わしながらメデューサの懐へ潜り込むと、すかさず銃の引き金を引き何発も撃ち込んだ。

 

「!?」

 

銃弾がメデューサの体へ直撃すると同時に火花が散る。

ここで初めてメデューサが後退した。

 

「き…さま……ッ!!」

 

下に見ていた相手からの思いがけない一撃。

それはメデューサの怒りに更に火を注ぐ形となる。

 

「殺してやる!!!!」

 

怒りに身を任せ、滅茶苦茶に頭の蛇を振り回し始めた。

蛇たちは地面やら壁やらを縦横無尽に破壊する。

その乱雑で読めない挙動に、司波達也は思わず顔を顰めた。

 

「……不味いな」

 

力の限り攻撃する。

単純なことではあるが、それが一番恐ろしいことであった。

多少の怒りであれば、攻撃は単調になり読み易くなる。

だが、度を超した怒りは、より大きな破壊を生むのである。

圧倒的な力を持つ者がそれを行うのであれば、対処することはとても難しい。

 

「……やれやれ。どうやら、この世界も俺を休ませてはくれないようだな」

 

ここまで半ば蚊帳の外であった士がそう呟くと、変身する為に再びカードを取り出す。

先程、フェニックスと戦った時に変身してからさほど時間も経ってはいないが、このまま見ているというわけにもいかない。

それに、司波達也たちにはインデックスを見てもらったという恩もある。

何より、このままメデューサが破壊行為をし続ければ、そのインデックスの身も危ない。

 

「……行くぞ!」

 

『KAMEN RIDE』

 

『DECADE』

 

仮面ライダーディケイドの姿になった士はライドブッカーを剣の形すると、それを持ってすぐさまメデューサと司波達也の間に入る為、地面を蹴った。

 

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