仮面ライダーディケイド − THE LOST MEMORIES − feat インデックス   作:海東

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第6話 守るべき世界 (後編)

『KAMEN RIDE』

 

『DECADE』

 

 

士がディケイドに変身すると同時に、波止場ミハルは彼の隣へと立った。

 

「僕も……戦います!!」

 

確固たる意思を持った声の響き。

それは紛れも無く、彼自身の言葉であった。

 

「変身!!」

 

波止場ミハルは自らの意思でそう叫ぶと、彼の姿が海を思わせる青い鎧と白い雲を思わせる仮面に包まれる。

その姿は先程までの禍々しかったものとは異なり、爽やかで清々しいオーラを放っていた。

 

「仮面ライダー……アクア!!」

 

自身をそう名乗り上げる波止場ミハル。

それこそが、彼本来の姿であった。

 

「ん?」

 

と、その時、一枚のカードが飛び出してきて士の手の中へと収まった。

確認すると、それは何時の間にか紛れ込んでいた何も描かれていないカードであった。

今は、その表面に新たな仮面ライダーの姿が描かれている。

隣に立つ勇敢な戦士の姿が。

 

「フン……所詮はただの人形。いくら姿を変えようが我の敵では無いわ!!」

 

ギルは士たちの変身を見届けた後、 懐から手の平一杯のメダルを取り出す。

メダルはどれも真っ二つに割れていた。

 

「我の邪魔をするのであれば、誰であろうと許さぬ……」

 

そう言ってギルはメダルを全て地面へ投げ捨てる。

すると、メダルは瞬時にミイラ男のような姿──屑ヤミーへと変わった。

 

「今の手持ちはこれで全部……だが、貴様らを屠るには充分よ」

「そうか。なら、そいつは丁度いいぜ」

「何?」

「つまり、ここでお前ら全員を倒せば、それで万事解決ってことだろ?手間が省ける」

「……ここまで我を虚仮にした報い、受ける覚悟はあるのだろうな?」

 

多勢に無勢。

その中で、余裕の態度を崩さない士に対してギルは怒りを募らせる。

「奴らを潰せ!!」

 

ギルの言葉と同時に屑ヤミーたちが士へと襲い掛かって来る。

士は隣の仮面ライダーアクアこと波止場ミハルをチラッと見やると、バックルを開いて先程のカードを投げ入れた。

 

 

『FINAL FORM RIDE』

 

『A A A AQUA』

 

 

「ちょっとくすぐったいぞ!」

 

士の手が波止場ミハルの背中へ触れた時、彼の姿が変形し始める。

 

「これは……?」

 

変形していく自分に戸惑いを見せる波止場ミハル。

だが、それを拒むようなことはせず、流れに身を任せていた。

不思議と彼の中に不快感は無い。

やがて、仮面ライダーアクアは水陸両用ジェット推進式バイクの姿になった。

 

「アクアミライダー……」

 

波止場ミハルは自身の今の姿をそう呟いた。

 

「……乗って下さい、先生!」

「分かった!」

 

士は躊躇無く飛び乗ると、ハンドルをしっかりと握る。

 

「行くぞ!ミハル!!」

「はい!先生!!」

 

アクアミライダーは士を乗せたまま発進した。

空中を走っているのに、まるで水上を走っているかのように水飛沫を上げる。

さながらジェットスキーのようであった。

 

「はあ!!!!」

 

二人は物凄いスピードで屑ヤミーの群れの中へと突っ込んで行くと、その勢いのまま立ちはだかる屑ヤミーたちを吹き飛ばして行った。

攻撃を受けた屑ヤミーが次々と爆散していく。

 

「何……?」

 

屑ヤミーたちが短時間であまりにあっさりと片付けられていくのを見て、ギルは思わず口走っていた。

それだけ今の士たちの力が想定外だったということだろう。

僅かな動揺を見せる。

 

「今だ!!」

 

それを見て取った士が波止場ミハルに向かって叫んだ。

 

「はい!!」

 

二人は方向転換すると、ギルへ向かって突進していく。

 

「ッ!?」

 

ギルは素早く身を翻して直撃を交わした。

だが、その直後に彼の肉体の一部から火花が上がる。

 

「くぅ……ッ!?」

 

どうやら士たちの突進が僅かにギルの体を掠めていたようであった。

ダメージは決して低くは無いようで、見るからに顔色が変わっていく。

 

「屑ヤミーたちよ、来い!!」

 

咄嗟にギルは残りの屑ヤミーたちへ集合をかけた。

自らの盾にして、より確実に回避しようという魂胆なのだろう。

 

 

「はぁっ!!!!」

 

 

その声と共に通り過ぎたのは、炎を纏いし一陣の風。

直後、残りの屑ヤミーたちは一瞬の内に斬り伏せられ、バタバタと地面に倒れていく。

 

「……!?」

「……これで、残りはアンタだけね!」

 

声のした方を振り返ったギルが見たのは、長い髪を紅に染め、風に靡かせている小柄な少女──シャナであった。

シャナは愛刀である贄殿遮那を抜き、捕らわれていた鬱憤を晴らすかのようにギルを睨み付けている。

 

「貴様は……。何故自由に……?」

 

何時の間にか彼女に施した拘束が解かれていることにギルは気付く。

 

「僕が……助けた」

 

ギルの問いに答えたのは、坂井悠二であった。

 

「僕がシャナを助けた!」

 

その確かな実感を噛みしめるように彼はもう一度言った。

シャナの手助けが出来たことに満足感を覚えたようで、とてもいい表情をしている。

 

「人間如きが……」

 

忌々しげにギルが唸った。

プライドを甚く傷付けられたようで、物凄い形相をしている。

 

「どいつもこいつも……許さんぞ!!!!!!!!!」

 

叫び声と共にギルは全身から禍々しいオーラを発した。

それは確かに強烈なもので、普通であればたじろぎを見せてもおかしくない程のものであった。

実際に、シャナも油断ならないといった表情を見せている。

 

「……やれやれ。一気に小物になったな」

 

しかし、今の士は違っていた。

相手の本気にも動じない。

 

「どうした?威勢がいいのは口だけだったのか?」

「……何時までも」

 

と、ギルはニヤリと笑い、その手をある方向へ翳す。

 

「そのような口を聞けると思うな!!!!!」

 

手の平に力を集めると、体をその方向へ向けた。

その視線の先にいたのはインデックスであった。

 

「!?」

「ハーッハッハッハ!我を愚弄した罪、思い知るがよい!!」

 

ギルは勝ち誇ったように笑うと、自身と同じ色の紫の光弾を撃ち放った。

重い音を立て、大きな爆発が起こる。

それは、あまりに突然であった。

 

「インデックスさん!!」

 

坂井悠二が叫んだ。

 

「クックック、塵になったか」

 

その目で顛末を確認しようとギルが身を乗り出す。

もうもうと上がる煙が徐々に晴れていく。

そこにいたのは、インデックスの盾となった士であった。

 

「……なっ、何時の間に!?」

「こいつのスピードを甘く見たな」

「……でも、間一髪でした」

 

士が自信満々に言う一方で、波止場ミハルはふうっと溜め息を吐いていた。

その後ろでインデックスが戦々恐々としている。

 

「つかさ……」

「……お前の世界を救うって約束したからな。その前にお前がやられたら意味無いだろ?」

「……うん!」

 

士のその言葉に安心したのか、インデックスは破顔した。

彼女の笑顔を見て頷いた後、士はギルの方へ改めて向き直る。

 

「……お前はもう許さん」

 

そう言うと、取り出したカードをバックルの中に入れる。

 

 

『FINAL ATTACK RIDE』

 

『A A A AQUA』

 

 

すると、アクアミライダーの姿になっていた波止場ミハルが仮面ライダーアクアへと戻った。

それを確認した後、士は手をパンパンと叩く。

 

「一緒に行くぞ!!」

「はい!!」

 

まずは、士が高くジャンプし、キックの態勢を整えた。

すると目の前に次々とカードの形をしたオーラが出現していき、ギルへと向かって行く。

続いて、波止場ミハルが体中に海のようなオーラを纏うと、士と同様にキックの態勢を整える。

 

「はああああああああああ!!!!」

「オーシャニックブレイク!!!!」

 

同時に叫ぶと、士は目の前のカードを通過していき、波止場ミハルは水流と共にスライディングしていく。

 

「小癪なああああああああああ!!!!」

 

ギルが対抗するかのように全身から光弾を発して迎え撃った。

しかし、それでも二人の勢いは落ちない。

両者の距離が縮まっていく。

 

「はあああああああああああああああ!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

次の瞬間、二人のキックがギルの体を貫いた。

 

「…………………………」

 

何も言わず、茫然と立ち尽くすギル。

やがて、彼の手が、足が、体が、崩れ落ちていった。

ギルは天を仰ぐ。

 

「……我は、敗北したのか?」

『お前の敗因は人間を甘く見たことだ』

 

シャナの胸元でアラストールが一言そう告げる。

 

「人間……。人間にグリードが……ぐがが」

 

そう言い残すと、ギルは完全に消えた。

ギルの消滅と同時に、波止場ミハルの体からコアメダルが飛び出し、それもまた消える。

 

「……………………」

 

寂しげな顔でそれを見つめていた波止場ミハル。

何時の間にか赤に染まった世界は元の色を取り戻し、活動を止めていた生命たちも動き出していた。

一先ずの戦いが終わったのだと、世界が告げているように。

 

 

「……先生」

 

寂しそうな顔で波止場ミハルは士のことを見つめている。

最早戦う必要の無くなった二人は変身を解いていた。

 

「そんな顔をするな」

 

士が何処か照れ臭そうに言った。

 

「お前はお前のまま、生きるんだろ?」

「でも、コアメダルはもうありません。いずれ、僕は消えてしまう……」

「例え、そうだとしても、俺はお前のことを覚えておいてやる。それじゃ、不服か?」

「私も、みはるのこと忘れないんだよ」

 

インデックスも士に同調した。

 

「何たって、私には完全記憶能力があるからね。絶対に絶対に忘れないんだよ!」

「先生……。インデックスさん……。有難うございます」

 

泣きそうな顔で波止場ミハルは言った。

 

「行くのね」

 

そうつんけんとした感じで言ったのはシャナであった。

 

「ああ。どうやら、俺たちがこの世界でやることは終わったらしい」

 

士は意外にさばさばとした表情で言った。

対して、インデックスは名残惜しそうにシャナと坂井悠二を見る。

 

「せっかく二人ともお友達になれそうだったのに……とても寂しいんだよ」

「僕らはもう友達だよ。インデックスさん」

 

そう言って坂井悠二はインデックスの手を取った。

インデックスは泣きそうになるのを堪えながら、精一杯笑ってみせる。

 

「当たり前のことだが、お前たちの世界の敵はお前たちで何とかしろ。お前たちの守るべき世界をな。ま、お前たちなら、これから先も大丈夫だと思うがな」

 

士はシャナと坂井悠二の顔を交互に見て言った。

 

「……はい」

 

坂井悠二がシャナの顔を見やると、彼女は少し恥ずかしそうに顔を背けた。

どうやら、少しずつではあるが、二人の間には絆が生まれつつあるようである。

 

「ふーん」

インデックスはニヤニヤとした顔で士のことを見つめていた。

 

「……何だ?気持ち悪いな」

「つかさって、案外いい人だったんだね」

 

その言葉に思わず士は咽せる。

インデックスは、更にシャナの方をチラリと見た。

 

「……何?」

「つかさとシャナって、ちょっと似てるかも!」

「ハァ!?」

「ハァ!?」

 

士とシャナはまるで示し合わせたかのように声を同時に発した。

 

「私とこいつの何処が似てるって言うの!?」

「同感だな。こいつみたいなちんちくりんと俺を一緒にするな!」

「だ、誰がちんちくりんだって!?」

「見て分からないのか?」

 

そう言い合うと、士とシャナは共に睨み合った。

 

『同族嫌悪……という奴だな』

 

アラストールは静かにそう呟いた。

 

「もう!こんなときにまでケンカして!まるで子供みたいなんだよ!」

 

インデックスが呆れたような顔をして言った。

士は「フン」と鼻を鳴らす。

 

「……ったく、この役立たずの大飯食らいが。そういうとこだけは気が付きやがって」

「ム!?つかさは相変わらずレディーに対しての言葉遣いがなってないんだよ!ゆーじやみはるを見習うんだね!」

「例え、見習ったとしても、お前にそれを向けることは無いだろうがな」

「ムキー!」

 

言い合う二人を見て、シャナと坂井悠二、そして波止場ミハルは思わず笑っていた。

士はインデックスの攻撃を交わしながら、胸元にぶら下げたマゼンダカラーのトイカメラを手に持ち、笑い合う三人へ向けてシャッターを切った。

 

(その笑顔……悪くないな)

すると突然、士とインデックスの目の前にオーロラの光が現れた。

それは前に見た、どのオーロラと比べても優しそうな光を放っている。

 

「……どうやら、これが俺たちの進む道らしいな」

「……うん」

 

互いに顔を見合わせると、二人はオーロラの中へと足を踏み入れた。

 

「じゃあな」

「またね!」

 

そう言った直後、二人の姿はオーロラと共に消えてしまった。

それを見届けると、坂井悠二が寂しそうな顔で言った。

 

「……行っちゃったね」

「フン!別にいいわよあんな奴!」

「ははは……素直じゃ無いなあシャナは。それじゃ、行こっか。え~っと、波止場ミハル……だよね?」

「えっ?」

 

突然、名前を呼ばれて波止場ミハルは驚いていた。

 

「一緒に……いても?」

「勿論だよ。だって、クラスメイトじゃないか」

「……うん!」

 

波止場ミハルは青い空を見上げると、深呼吸する。

 

(そうだ。僕は……僕は、ここにいる!!)

 

「それじゃあ、帰ろっか。僕たちの学校に」

「うん!」

 

三人は共に“学校”という名の日常へと帰って行った。

その道中、波止場ミハルは思った。

例えその日常が仮初のものだとしても、何れ消えてしまう運命だとしても、自分を覚えてくれる誰かがいれば、それらは決して偽者では無いのだと。

不思議と今までの不安が薄れていくようであった。

 

(有難うございました……門矢先生!!)

 

波止場ミハルは、今はもうこの世界にいない恩師の名を心の中で呼んだ。

 

 

 

三人が去ったその場に、一人の男が現れる。

それは、あのチューリップハットの男であった。

 

「……おのれディケイド。お前のせいでこの世界も破壊されてしまった」

 

怒りなのか、憎しみなのか。

感情を吐き捨てた後に男の体はオーロラに包まれ、またもその姿を消してしまった。

 

 

 

オーロラを抜けた士とインデックスが立っていたのは夜の街であった。

御崎町と比べると人の数もビルの数も圧倒的に多く、まさに繁華街といった感じであった。

目の前のスクランブル交差点には溢れかえるような人々の往来が見える。

士は思わず呟く。

これから何度も言うであろうその言葉を。

 

「ここは……何処だ?」

 

 

 

「おい、本当に売ってくれんだろうな?」

 

柄の悪い少年たちが、スーツ姿の男へ詰め寄っていた。

スーツの男は顔色一つ変えずに取り出したジュラルミンケースを開いて中身を少年たちに見せる。

 

「おおおおお!!これだよ、これ!!」

その中身を見て少年たちは歓喜の声を上げた。

スーツの男は僅かに口元を歪ませる。

 

「我々は何時、いかなる時もお客様の為に商品をご用意させて頂きます。今後とも我がミュージアムをご贔屓下さいませ」

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