仮面ライダーディケイド − THE LOST MEMORIES − feat インデックス   作:海東

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第7話 驚天動地

行き交う人々の群れの中、士とインデックスはまるで取り残されたかのようにぽつりと立っていた。

 

「ここが、次の世界か?」

 

誰に言うでも無く士は呟いた。

今いる場所が何処かの街の中であることは間違いない。

見上げた空は夜の闇に包まれ、星さえも覆い隠している。

しかし、街は絶えず光を放ち、まるで眠りにつくことを拒否しているようであった。

鳴り止まぬ喧騒がこの街を往来する人の多さを物語る。

 

「ハァイミナサン!ヨッテラッシャイミテラッシャイ!ソシテ、タベテラッシャイネー」

 

寿司職人のような格好をした黒人の大男が片言の日本語で呼び込みを行い、店のチラシらしきものを配っている。

一見すると珍妙な光景ではあるが、誰も気に留めていないのを見るに、この街では日常の光景なのであろう。

情報収集の意味も兼ねて、士もそれを一枚貰うことにした。

 

「……どうやら、ここは『池袋』という場所らしいな」

 

手にしたチラシを眺めながら士が言った。

チラシは『露西亜寿司』という寿司屋のものらしく、住所が書いてある場所に『池袋』という単語が確認出来る。

 

「いけぶくろ?私の世界にも同じ名前の場所があったけど、きっと同じ場所じゃ無いよね……」

 

そう言ってインデックス小首を傾げてみせた。

彼女のいた世界は崩壊の最中にある為、その様子の無いこの街が同じ世界でないことは確かだろう。

 

「……ところで、お前はまた変な格好しているな」

「それはつかさも同じ……と言いたいところだけど、どうやら今回は普通の格好みたいだね」

 

互いに互いを見合って、改めて二人は自分たちの現在の姿に気が付く。

新たな世界へ来たことで、二人はまたも違う服装へと変わっていた。

インデックスは黒い帽子を被り、黒い服に黒いロングスカートと全身黒一色でコーディネイトされている。

片手には紙袋を持っていて、中を見るとたくさんの小説らしき小さい本が入っていた。

一方で、士はパーカーにジーンズと至ってシンプルな格好であったが、小脇に何かのキャラクターが描かれた立て看板のようなものを抱えている。

前の世界でも同様の現象が発生していたことを考えると、二人が世界を跨いだ際には服装も変わってしまうようであった。

 

「ハァ……」

 

インデックスが深くため息を吐いた。

 

「なんでいつもこんな変な格好をさせられるのかな?」

「全くだ……」

 

士もやれやれとため息を吐く。

 

「本当に嫌になる……。何でも着こなしてしまう自分が、な」

「…………………………」

 

インデックスは何も言わず、ただジト目で士のことを見つめていた。

 

 

「……おい、インデックス」

 

街の中を暫く散策していたところで、士が不意に口を開いた。

 

「気が付いているか?」

「えっ?何のこと?」

「……囲まれている」

 

周囲へ目を向けると、何時の間にか何人もの男たちが二人を取り囲んでいた。

皆が皆、同じ色の服を着ていて、例外なく柄の悪い人相をしている。

思わずインデックスは士の腰にしがみ付いた。

 

「こ、この怖い人たちは何なのかな?」

「カラーギャング……って奴だろ」

 

士は特に恐れる様子も無く言った。

 

「オイオイオイ、てめーら!」

 

男たちの中から、一際柄の悪い風貌の男が首をコキコキと鳴らして二人へ声を掛けてきた。

表情や雰囲気から見るに、友好目的で近付いて来たわけで無いのは確かだろう。

 

「てめーらアレだよなあ?アイツの連れだよなあ?オイオイ、アイツは何処だ?ああ?」

「アレとかアイツじゃ分からないな」

 

相変わらずの不遜な態度で士は答えた。

この状況下でも一切動じてはいない。

頼もしくもあるが、同時に火に油を注いでいるようにも思われる。

 

「んだとゴルァ!?」

 

案の定、男は士の態度にすぐに激昂した。

 

「調子こいてっと、ぶち殺すぞてめえ!?」

「やれやれ、これじゃ話が通じそうにも無いな」

 

士は肩を竦めて見せた。

 

「お前たちはこんなところで無駄な時間を過ごすよりも、学校へ行って一から日本語を勉強し直した方がいいんじゃないか?」

「ざけんなコラァ!!」

 

男は士の言葉に返す刀で拳を振るった。

士は軽く身を引いてそれを交わすと、直後に男の足を引っ掛ける。

男は豪快にすっ転んだ。

 

「てめえ!!」

「ざけんな!!」

「ぶっ殺せ!!!!」

 

周りから物騒な声が次々と上がっていく。

どうやら完全に火が点いてしまったようである。

士が転ばせた男はゆっくりと立ち上がると、改めて士へ向き直った。

 

「てめえ……調子に乗ったらどうなるか、分かってんだろうなあ?」

「ほう、どうなるんだ?」

「へへ……」

 

男はニヤリと笑って、ズボンのポケットから何かを取り出した。

それはパソコンなどに取り付けるUSBメモリのようなものであった。

見たことも無いデザインのもので、何処か禍々しい。

他の仲間たちも同様のUSBメモリを取り出す。

 

「こうなるんだよ!」

 

そう言って男はUSBメモリの表面を指で押した。

 

『マスカレイド!』

 

何処からか声が響く。

それから男たちは、一斉にUSBメモリのコネクタ部分を首の部分へと突き刺した。

すると、男たちの顔が骨とムカデを模したような奇怪な仮面に覆われていく。

 

「つ、つかさ……」

「チッ、この世界もまた物騒な世界らしいな」

 

士はディケイドへ変身する為にベルトのバックルを取り出し、それを腰に装着しようとした。

その時、車のクラクションの音が周囲にけたたましく鳴り響く。

 

「何だ!?」

 

目を向けると、一台のワゴンが仮面を纏った男たちを蹴散らしながらこちらへ向かって来ていた。

そして、二人の目の前で急停止する。

 

「お前ら!早く乗れ!!」

 

車内から、ニット帽を被った男が顔を出して、二人に向かって叫んだ。

 

「え?え?え?」

 

あまりに突然のことにインデックスは戸惑いを隠せず、周囲をきょろきょろと見回していた。

突然やって来て「乗れ!」と言われたら、当然の反応だろう。

敵か味方か判断する材料も乏しい。

 

「!?てめーは!!」

士とインデックスへ最初に絡んできた男が、ニット帽の男の顔を見て声を上げた。

男の様子から察するに、彼のことを知っているようである。

だが、仲間や友人といった感じではない。

それどころか、敵意のようなものを向けているように見える。

 

「!!」

 

士はインデックスの腕を取ると、そのままワゴンの中へ転がるように乗り込んだ。

 

「おい、乗ったぞ!」

「よし……出せ、渡草!」

「分かった!」

 

ニット帽の男の隣でハンドルを握っていた長髪の男が、力強くアクセルを踏み込むと、ワゴンは急発進した。

あっという間に現場から遠ざかり、男たちの姿も見えなくなる。

インデックスは不格好な体勢のままで安心したように一息ついた。

 

「こ、怖かったあ……」

「何時までそんな格好してんだ?またガキ臭いパンツが見えるぞ」

「むぅー……、つかさって本当にデリカシーの欠片もないんだよ!」

 

ブツクサ言いながらも、インデックスはゆっくりと体勢を整える。

こういう会話を交わせるのは、それだけ余裕が出て来たという証拠だろう。

 

「ふう、危ない所だったなお前ら」

 

そうしていると、助手席に座っていたニット帽の男が二人へ声を掛けてきた。

 

「怪我とかしてないか?……って、誰だお前ら!?」

 

バックミラーに映る士とインデックスの顔を見て、ニット帽の男は驚きを見せた。

リアクションから察するに、士たちを誰かと間違えていたらしい。

 

「誰だ……って、俺たちを助けたのはあんたたちだろ?それは寧ろこっちが聞きたいくらいだ」

 

士がそう言うと、ニット帽の男は「うーん」と唸る。

 

「……いや、すまない。お前たちの格好が知り合いによく似ていたものでな」

「つまり、人間違いってことか」

「まあ、あんたらが知り合いだろうとそうじゃなかろうと、あのまま見過ごすつもりも無かったから問題は無い」

「そうか。で、さっきの奴らは一体何だ?」

「ここ最近、この池袋で幅を利かせてるグループだ。名前は確か、『EXE(エグゼ)』とか言ったな」

「EXE?」

「ああ」

 

ニット帽の男は苦々しい顔をすると、ジュースホルダーに置いてあった缶コーヒーを手に取って一口飲む。

 

「……連中はあのUSBメモリみたいなのを手に入れてから、大きく変わっちまった。元は何処にでもいるようなカラーギャングだったんだがな」

「変わった?」

「お前たちも見ただろ?連中が持ってた変なUSBメモリ。あのUSBメモリを体に挿すと連中の姿が変わって、途端に強くなりやがる。連中はそれを使い、暴力でこの池袋を蹂躙し始めやがったのさ。連中に刃向かう奴らは皆潰された」

 

苛立たしげに舌打ちするニット帽の男。

まだ出会って数分しか経っていないので、彼のことはよく分かってはいない。

だが、少なくとも『EXE』という連中に対して、良い感情を持っていないのは確かだろう。

士は先程の連中が手に持っていたUSBメモリを思い出していた。

 

「……もしかして、あれはガイアメモリか?ってことは奴らはドーパントか」

「ん?つかさ、さっきから何ブツブツ言ってるの?」

「……別に何でもない」

「そう?ならいいけど……」

 

インデックスはそう言うと、少し心配そうな顔をする。

こうしている時の士は何処か危うく見えるからだ。

まるで、そのまま別の誰かになってしまいそうな……そんなことを考えてしまう。

 

「お前たちが何者かは知らないが、この辺はまだ連中の縄張りだ。安全な場所に着くまではここにいた方がいい」

 

物憂げな顔の士をバックミラー越しに見ながらニット帽の男は言った。

 

「ああ。そうさせて貰う」

 

士はそう答えるが、心ここにあらずといった様子であった。

 

「……でも、今の池袋に安全な場所なんかあるのか?」

 

運転している長髪の男が思わず口を開いた。

それに対してニット帽の男は何も答えない。

士とインデックスもまた無言で車の窓の外を眺めている。

沈黙の車内は何処か重苦しい雰囲気を生み出しつつあった。

そうして暫く走っていると、何者かが車の前へ飛び込んで来た。

 

「渡草!止めろ!」

 

ニット帽の男に言われて、渡草と呼ばれた長髪の男は慌ててブレーキを踏む。

 

「……!!」

「うわわ!?」

 

急停止した車内で、士とインデックスは思わず体勢を崩した。

車が完全に止まったことを確認した後に彼らは窓から外を覗く。

すると、そこには二人組の男女が立っていた。

先程まで走っていたからなのか、彼らは二人ともハァハァと息が乱れている。

 

「ハァハァ……ドタチン、ナイスタイミング!」

「いや~、正に渡りに船って奴ッスよ!」

 

緊張感の無い様子で話し掛けて来る彼ら。

親しげな様子から見るに、どうやらニット帽の男の知り合いのようである。

見ると、服装が今の士やインデックスとよく似ていた。

二人が間違われた人物とは、彼らのことだろう。

 

「お前たち、早く入れ!」

 

ニット帽の男が車のドアを開けると、彼らは素早く中へと入った。

狭い車内が更に狭くなる。

 

「あれ、先客がいる?君たち誰?ていうか、何で私たちのコスプレしてんの?」

 

女の方が、士とインデックスを見て言った。

少し吃驚した様子で、目を見開いている。

「……好きでしているわけじゃない」

 

士はただそれだけ答え、インデックスも無言で頷いた。

何故しているのか、と聞かれても他に答えようが無い。

この世界へ来た時には既にこの格好だったのだから。

 

「いやー感慨深いッスねー!」

 

すると今度は男の方が口を開いた。

興奮した様子で士とインデックスのことを見つめる。

 

「遂に僕たちもコスプレされる側になったってことッスか!これで二次元の世界へとまた一歩近付きましたよ!っていうか、もう既に僕たちは二次元の人間なのでわ!?これは……」

「出せ、渡草」

「分かった」

 

男の話を遮るように車が急発進した。

暫く車が走った後、ニット帽の男が後ろを振り向く。

 

「誰かに追われていたようだが、……『EXE』の連中か?」

 

彼らはこくりと頷いた。

 

「奴ら、超しつこかったッスよ~。おかげであっちこっち逃げ回る羽目になって、もうクタクタッス!」

「もうダメだーーーー!って思った時にドタチンたちがいたから、正に九死に一生だったねー」

 

そう言うと二人は顔を見合わせ、互いの無事を喜んだ。

と、女の方が士と目が合う。

 

「……ところで、私たちのコスプレしてるこの子たちは誰なの?」

「ああ、街中で連中に絡まれててな。助けてやったんだよ」

 

ニット帽の男が簡単に事情を説明すると、女は「へー」とだけ言った。

そして、インデックスの方をまじまじと見つめる。

 

「……………………」

「……な、なんなのかな?」

「……うーん、この子、どっかで見たことあるんだけどなー」

「あ、狩沢さんもそう思うッスか?実は僕もなんスよ!」

 

男の方も彼女の意見に同調した。

 

「う~ん、何処で見たッスかね~?」

「何処でだろねー?」

「……でも、僕と狩沢さんのコスプレなんて、ちょっとマニアック過ぎやしないッスか?いや、逆にこれはこれでアリ?」

「うん。アリアリー♪」

 

そう言うと、二人はまるでいたずらっ子のように笑い合う。

先程まで追われていたとはとても思えない程にリラックスしているようのであった。

 

「お前ら、よくあいつらから逃げ切れたな」

 

士は二人へ尋ねた。

 

「連中、意外と土地勘無いッスからねー。あいつらのテリトリーにさえ入らなきゃ大丈夫!……なんスけど」

「ゆまっちがGAMERSに寄ろうとか言うから」

「狩沢さんも行くって言ってたじゃないッスかー!……で、その帰りに入り口でばったりと」

「あいつらに会っちゃったんだよねえ……」

 

二人は同時にため息を吐いた。

 

「あいつらは本当に何なんスかね?少なくとも僕はあいつらとはまともにやり合いたく無いッスよ!」

「本当だね。あんな連中、まともに相手出来るのは静ちゃんくらいなもんだね、きっと」

「静ちゃん?」

 

唐突に出て来た名前。

思わず士が聞き返すと、二人ではなくニット帽の男が口を開いた。

 

「静ちゃんってのは、平和島静雄のことだ」

「平和島静雄?それは一体誰だ?」

「ああ。あいつは……」

 

 

 

「ぐわああああああ!」

 

仮面の怪人たちが次々と地面を転がっていった。

彼らの視線は目の前にいる一人の男へと注がれている。

 

「くそ!静雄は化け物か!?」

 

地面に突っ伏した男が思わずその言葉を漏らした。

金髪にサングラス、そしてバーテンダーの制服。

静雄と呼ばれた男は何も言わずに、ただ荒く呼吸をしながら目の前の男たちを睨み付けている。

その表情は明らかに怒りを表していた。

 

「……お前らは下がってろ」

 

男が前に出た。

彼は、一人だけ仮面の怪人の姿にはなっていない。

 

「よお、静雄。俺を覚えてるか?……覚えてねえよなあ?俺みたいな小物のことなんかさあ」

「あぁ!?」

「俺は覚えてるぜえ、あれは痛かったなあ……。怖かった。思わずビビっちまったよぉ」

 

男は顎の部分を摩りながら言った。

どうやら、以前にそこを目の前の静雄という人物にやられたようである。

 

「お前に復讐してぇ、っていつも思ってんだけどよぉ。体が震えちまって全然動けねえんだな、これが」

「……うぜぇ」

 

静雄は相手に聞こえるように言った。

男は気にせず続ける。

 

「……だがよぉ、コレがあればよぉ。お前なんか、怖くも何ともねえんだよ!!!!」

 

男は気味の悪いデザインのUSBメモリを取り出すと、それを指で押した。

 

 

『バイオレンス!』

 

 

何処からか声が響くと同時に、男は自分の首へそれを勢い良く突き刺した。

すると、それは男の体内へとすんなり入って行き、消えてしまう。

次の瞬間、男の姿は怪物と化した。

全身灰色で体も一回り以上も大きくなり、右手には鉄球のようなものを付けている。

 

「静雄!てめーはぶっ殺す!」

「ウダウダうるせーんだよお前はよおおおお!!」

 

静雄はそう吠えると、何の躊躇も無く男へと向かって飛び掛かった。

 

 

 

「……そんな奴がいるのか」

 

士は感心したように言った。

特殊な能力があるというわけではなく仮面ライダーでも無い人間が、自身の力だけで怪物へ立ち向かうとは、実に勇ましい。

 

「そうそう。静ちゃんはまず怒らせない方がいいねー」

「近くに自動販売機があったら、まずそれを投げつけられるッスからねえ」

「へー、その人、ちょっと凄いかも!」

 

インデックスも感心していた。

 

「ちょっとどころじゃないって。静ちゃんは池袋で一番ヤバイんだから!」

「そうッスよ~!」

 

そんな感じで話し込んでいると、急に車が停止した。

 

「……もう、その安全な場所ってのに着いたのか?」

 

士は運転席の男……渡草へそう尋ねる。

 

「いや、違う!」

 

渡草はそう言うと、青ざめた顔でフロントガラスの向こう側を指差した。

ニット帽の男はすぐに異変に気が付くと、周囲を見回した。

そして、車内にいる全員に聞こえるくらい大きく舌打ちをする。

 

「チッ……囲まれてやがる!!」

「何……?」

 

士も窓の外から様子を伺った。

いつの間にかワゴンの周りを仮面の怪人が取り囲んでいた。

 

 

 

「……ガハッ!」

 

静雄はコンクリートの壁に背中から思い切り叩きつけられると、口から血を吐いた。

その衝撃で壁にひびが入っている。

怪物と化した男は優越感に浸りながら声を上げた。

 

「すげええよコレ!静雄なんか目じゃないぜ!!!!」

「……糞が」

 

静雄はそう呟くと、立ち上がった。

しかし、フラフラで、少し押したらすぐに倒れてしまいそうである。

よく見ると、全身が打ち据えられているようであった。

別の怪物へ変身した男にやられたのだろう。

そいつは鉄球のある腕を静雄に向ける。

 

「ぶっ殺してやるよ……静雄オオオオオオ!!!!」

「チッ……!」

 

静雄は舌打ちすると、目の前の怪物を真正面からじっと見据えた。

そして、拳をぐっと力強く握り締め、それを相手に向かって振るおうとする。

 

 

「もうそろそろ止めておけ」

 

 

その時、突如その場に声が割って入った。

特別大きな声では無かったが、力強い声である。

思わず二人は声のする方を振り向いた。

すると、そこには白い帽子を被った白いスーツの男がこちらへ向かって歩いて来ているのが見える。

男は白い帽子をゆっくりと脱ぐ。

 

「……お前たち。街を泣かせるのも程々にしておけ」

「何だテメエは!!」

 

怪物と化した男が声を荒げた。

対して、白いスーツの男はポケットから黒いUSBメモリを取り出した。

そして、指でそのUSBメモリの表面を押す。

 

 

『スカル!』

 

 

男は何時の間にか腰に巻かれていたベルトのバックル部分に、そのUSBメモリを差し込んだ。

次の瞬間、男の体が鎧のようなものに包まれ、顔を髑髏のような仮面が覆う。

 

「な、何だあ!?」

 

怪物と化した男が素っ頓狂な声を上げた。

一方で、静雄は警戒を解かずにじっと彼のことを見つめている。

白いスーツの男は先程脱いだ帽子を再び頭に被り、右手を怪物と化した男の方へ向けた。

 

「さあ……お前の罪を数えろ」

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