機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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今回は文字数がとんでもなく多くなってしまいました…。分割したほうがよかったかな?


グレートキャニオン─それぞれの想い─

 

 《……ルスラン、良くやってくれた。お陰でデータは取れた》

 

 広大な敷地に建てられたパナマ基地にてヴァルターとの通信をしていたのはルスランだった。

 ヴァルターに託された新型を半壊させ鹵獲も出来なかったことにルスランは咎を受けると覚悟していたが、ヴァルターからは違う反応が返ってきた。

 

「……わ、私はヴァルター様からいただいた機体を半壊させ、奴を鹵獲することも出来ませんでした……。なのに……」

 《私は戦闘の記録を録れ、場合によっては鹵獲しろとは言ったが絶対ではない、しかも本来の目的であるデータ取りも成功している。グレートキャニオン自体もあの基地を上回る地球軍の物量とあのレギンまでいたという話ではないか。今回の敗北は目に見えていた》

「しかし……」

 

 今回もお咎めはなしだ。

 ルスランはおどおどと口を開くとヴァルターはデスクの上に手を組んで説明をする。その説明に納得がいかないのかルスランが食い下がるも……。

 

 《ルスラン、お前の本来の役目は地球攻略作戦だ。ストライクノワールも修復可能なようだし、それが済んだら宇宙へ上がれ》

「……ハッ!」

 

 ヴァルターは気遣うように、それでいて反論は許さないと言わんばかりの口調に、ルスランはこれ以上はいけないと背筋を伸ばすと通信が切られる。

 

 

『……そこまで言えるなら……なんで間違った道を行くのを止めなかったの……!? 俺には……ッ……私には……今のあの人は理解出来ない……!』

(……ヴァルター様)

 

 通信が終わり、自分ひとりの空間でルスランはブレイカーFBのパイロットの言葉を思い出す。そして、その言葉からルスランは自身の主を想う。

 

 SIDE ルスラン

 

 

 全てはーナお嬢さんが死んでしまったことが始まりだった。

 

 

 ヴァルター様は素晴らしいお方だ。

 私とてただ引き取られたから、あそこまで従っているわけではない。

 

 人格者……まさにそういった言い方が正しい人物だ。

 だが、シーナお嬢さんが死んでしまったことで全て変わってしまった。もう一人の娘であるお嬢さんも事故を境に数週間後には行方を晦ませ、今ではあろうことか地球軍にいる。

 

 元々、コロニー側と地球側の和平を考えていた御方だったのにmシーナお嬢さんの一件以降は地球に住む人間を根絶やしにしようと言わんばかりの勢いで動いている。地球攻略作戦などまさにソレだ。

 

 シーナお嬢さんが死んだ原因は地球軍のせいだ。物理的距離に左右されない意思伝達システムの開発……。そして汚れ切った地球の再生のプロジェクト……。ヴァルター様主導の元、シーナお嬢さんは技術士官としてテストパイロットとして参加したが、結果はシーナお嬢さんの死という結果で終わった。

 

 システムを搭載したMSのテスト中に起きた事故……そうコロニー軍では流れている。

 元々高い立場にいながら和平を目指していたヴァルター様が目障りだった上層部の一部の人間が失態にしようと圧力をかけた結果だが、実態は地球軍のMSによる攻撃だ。

 

 結果、シーナお嬢さんが死んでしまってから全てが変わった。

 拠り所であったもう一人のお嬢さんまで家を出て残ったヴァルター様は復讐心に取り付かれてしまった。私にはどうすることも出来なかった。ヴァルター様の心の拠り所となることも……。だから私はせめてヴァルター様の願いを叶えようと動いてきた。

 

 私は本当は復讐に走るヴァルター様を止めなくてはいけなかったのだろうか……?

 だが私にとってもシーナお嬢さんを殺した地球軍は憎い、そしてその事実を事故にした上層部の一部の奴らも……。

 

 復讐はいけません、止めましょう。子供でも知っていることだ。だが人間の感情は難しいものだ。いけないと分かっていてもその道を走ってしまうこともある。

 

「例え間違っていたとしても……シーナお嬢さんを奪った奴らを……真相をもみ消した奴らを許すことなんて出来ない……」

 

 私は間違っていたとしても……この道を進むしかないのだ。

 ガンダムのパイロット……お前に愛する者を奪われ、その真相さえももみ消された者達の気持ちが分かるか?

 

 SIDE OUT

 

 SIDE ヴァルター

 

 ルスランとの通信から何時間経っただろうか。

 別に鹵獲を期待していた訳ではない。データさえも取れれば良かったのだ。しかし思った通り、シーナがMSに乗り何度か放った光に似ている。

 

 まさか本当にシーナと同じような人間なのか?

 そして気になることがもう一つ……ルスランだ。

 

 他の戦闘記録も見たが一瞬だが、奴の機体が発光した。

 まさか奴も微弱ながらシーナのような力を秘めているのか?

 

 元々、ルスランは戦災孤児だ。

 コロニー軍と地球軍の戦闘で全てを失った。

 

 その戦場の指揮をしていた私は戦争が生み出した悲しみの象徴であるルスランを引き取った。コロニー軍も片棒を担っていたからな。

 

 幼かった奴は年の近いシーナ達とすぐに打ち解けられた。日に日に笑顔を取り戻す奴を見て私も嬉しかったのを覚えている。奴がシーナに恋をしていたのを知っているし奴ならばシーナを任せられるとも考えていた。

 

 だがシーナは死んでしまった。

 私とシーナの理想である争いのない世界、そして地球の再生。その目的の目指していた最中で……。

 

 私はただ目指すだけだ。

 シーナの願いを叶えるためにも……争いのない世界と荒れ果てた地球の再生……。その為には……。

 

 

「人知を超えた究極の力が必要なのだ……」

 

 

 モニターに映る生物的な六本足を持つユニットに接続されたガンダム。

 この究極のガンダムがあれば、我ら親子の悲願が達成される。

 

 ・・・

 

 アドラステア戦から数時間後、アークエンジェルの医務室にて目を覚ました翔は周囲を見渡して、ここが医務室であることを確認すると額に右手の甲を乗せ、目を瞑る。

 

「……ッ!」

 

 目を瞑る翔だが脳裏に焼き付いたZプラス隊の隊員達の声とアドラステアに轢き潰されたZプラスの光景。まさにトラウマのように何度も同じ光景が頭を過る。

 

「──おっ、起きたかい」

 

 医務室の扉が自動で開き、そこにはこの医務室のドクターとレーアがやって来ていた。

 ドクターが気さくに話しかけていると翔はドクターの隣のレーアに気づく。

 

「すっかり医務室の常連ね」

「……またお説教か?」

 

 開口一番のレーアの一言にトラウマの苛立ちもあってか皮肉のように答えると、彼女は動揺したように目を見開き、そして伏せる。

 

「……心配……したのよ」

「……ッ」

「でも元気そうで安心したわ……。それじゃあ」

 

 ポツリと呟くレーアに翔は息を呑む。

 何時になく素直な彼女、そしてそんな彼女に対して失礼な態度を取ったことの気まずさから自分も目を伏せる。

 そんな翔にレーアはこの場にいるのを止め、部屋から退出してしまう。

 

「──レーアッ!!」

 

 だがそんなレーアを翔が引き止める。

 レーアがビクッと反応し、普段の彼が出さないような声量に驚いて振り返れば……。

 

「その……心配かけてごめん。俺、頑張る……。心配かけないようにする為にも……」

「……そう、なら良いわ」

 

 翔の振り絞るような言葉に背を向けながら答え、人知れず笑みを零しながら医務室を出るのであった。

 

 ・・・

 

「……少しは素直になれたかしら」

 

 自分は素直ではないと姉に言われたことがある。

 それは自分でも知っていることだし、そんな自分が嫌だ。

 現に行方不明の一件があったからか翔は嫌そうな表情を浮かべていた。漸く自分の心を素直に言えたことにレーアはこれで良かったかのかと思いながらもその場を後にする。

 

 ・・・

 

「翔くんっ!!」

 

 レーアが退室してから数分後、トレーを持ったルルが飛び込むように医務室に入って来ると目を覚ました翔を見て、安堵の表情を浮かべる。

 

「翔君は何度も何度も心配させるんだからぁっ……!」

「……ホントにごめん」

 

 涙目のルルは本当に心から翔を心配していたのだろう。

 翔の近くの台にトレーを置くルルに流石の翔も素直に謝る。

 

「艦長代行がいらっしゃるという事は追悼式は終わったのかな?」

「ええ。そして今後の作戦の事についても……」

 

 翔のこともあって動けずにいたドクターがルルに聞くとルルは表情を曇らせながら答える。

 

「……この後も引き続き、レギン司令官の作戦指揮のもと地上作戦への参加を行います。今度はパナマ基地攻略作戦です。それとZプラス隊の状況から解隊となってフェズさんとショウマ君はアークエンジェルに転属する事が正式に通達されました。アウドムラ隊は一部のビッグトレーの隊と共に戦線を離脱します」

「ショウマとフェズが……」

 

 ルルが司令部からの通達を翔達に伝えると翔は考えるように目を伏せる。

 

「翔君……。やっぱり翔君は今からでもアークエンジェルを出た方が……」

「──それは出来んな」

 

 幾度の戦闘でその身を危険にさらす翔にルルは翔の身を案じアークエンジェルを出て民間人として暮らすように伝えようとするも、医務室の扉が開き、そこにはレギンと背後に控えるマドックがいた。

 

「レギン司令!!?」

「そのままで良い。ところでルティエンス艦長代行…彼は暫くは軍から離れられないと思いたまえ。そうだな……。抜けたいのであれば大体、1年は刑務所出ることはできん、それが例え民間の協力者でもな。あのレーアと言う少女もだ」

「な……なんでですか!?」

 

 ルルとドクターは姿勢を正そうとするもレギンは手を突き出しそれを制すると衝撃の言葉を放ち、ルルは思わず食ってかかる。

 

「機密保持の為だ。彼はもう軍の一人として最前線に立ってきて、その過程で見てきたものもあるだろう。そして何よりあの光だ。本来ならば、あのような光を放つのは異例だ。彼の機体を調べたが、互換性に異様に優れているだけでそれ以上の特出したものはない。彼自身がそうだな……。超能力のような力を秘めている可能性が高い」

「超能力……?」

 

 レギンの説明はあくまでも軍の事を考えての理由だった。

 そしてレギンの言葉に翔はなにを言っているんだと言わんばかりに顔を顰める。

 

「君はニュータイプという言葉を知っているかね」

「人類の革新……とか?」

 

 レギンの突然の問い掛けの単語に思わずガンダム作品から脊髄反射のごとくすぐさま答えてしまう。

 

「そうだ。これまで人類が猿から進化してきたように宇宙に暮らすために進化した存在だ。地球の重力を振り切ったとき、人類は新たなセンスを見つけたのだ。この世界には国だけに留まらず様々な人種が存在する。遺伝子操作をしたコーディネーターと呼ばれる者達。そして詳細は分からんがイノベイターやXラウンダーと呼ばれる者達もいる。私はこの中のどれかが君に各当すると考えている。でなければあの光の説明がつかん」

「……それで仮に俺がその中のどれかだとしてもなんだって言うんです?」

「……我が軍はお世辞にも綺麗な軍と言えるモノではなくてな。今回の件、公になれば下手をすれば君は一生を施設で過ごすこととなる」

 

 翔の返答に頷きながらも説明をするレギンに目を細めながら問いかければ、一瞬、迷うような素振りを見せたもの厳格に放たれたレギンの言葉にルルは目を見開き、分かっていたのかマドックやドクターは黙っている。

 

「……別に抜ける気なんてありませんよ。俺には俺の目的があるんですから」

「ふむ……。気になるところではあるが、居てくれるのであれば深くは問うまい。これからの健闘を祈る」

 

 翔とて何も感じなかったわけではないが、今更抜けるつもりはない。

 翔の返答に頷いたレギンは医務室を退室する。

 

「……確かにあのような光を発してしまった以上、軍が黙って君を手放すとは考えずらい。下手をすれば君は研究者共の知的探究心の欲望が赴くまま施設で過ごすことになるだろう。1年というのはレギン司令なりの配慮だ。流石に手放しに今の関係を崩すわけには行かんのでな。恨むのであれば恨んでもらって構わない」

「……別に俺が自分で志願したことです。お気になさらず」

「……そう言ってくれると私としても救われる」

 

 レギンの後を追うように退室しようとするマドックは去り際に翔に声をかけると、翔は気にする様子もなく答える。

 その様子に救われたのかマドックは医務室を退室するのだった。

 

「さて空気が重くなってしまったね。艦長代行、彼にそれを食べさせる為に来たのだろう?」

「あっ……そうでした……」

 

 パンと手のひらを合わせ空気を払拭するドクターの指摘にルルは自分が置いた食事の乗ったトレーを見る。

 

「じゃあ……翔君食べさせてあげるね」

(……なんで当たり前のようにルルが俺に食べさしてくれるみたいになってるんだ?)

 

 先程の会話から元気のないルルはトレーを自身の膝に置き、スプーンを手に取るとその様子を見て翔は困った表情を浮かべる。

 

「ふむ……。私は退室することにするよ。幸い、なんともないようだから食事を普通に取る事は出来るからね。後は艦長代行に任せることにしよう」

(……その私、空気読めてるだろう? みたいな顔止めろ。そして親指立てるな! これ結構恥ずかしいんだから空気読んでくれ! いや、読んでるのかもしれないが!)

 

 無駄にしたり顔で翔にだけ見える角度でサムズアップを見せるドクターに苛立つも翔の気持ちは届かず、部屋を退室されてしまう。

 結局、今のルルの様子から拒むことは出来ず再び食べさせてもらうこととなった。

 

 ・・・

 

「着任早々、出かけるのか?」

「ああ。今回のことを踏まえて自分を見つめ直したくてね。作戦開始前には戻るよ」

「美人とご一緒出来なくて残念だ」

 

 格納庫にてコアランダーの調節をするフェズに見送りに来ていたカレヴィとショウマ。珍しく暗い表情を見せるフェズにカレヴィは軽口を言う。

 

「あら、アタシもさ。バカ弟子を頼むよ、色男」

「ああ。翔とレーアの面倒を見てもらったからな。任せろ」

 

 いつもの明るい表情に戻るフェズに対し、カレヴィは安心したように隣のショウマの髪の毛をもみくちゃにする。この数分後、フェズのコアランダーは出撃した。

 

「……なぁ、おっさん」

「おいおい、おっさんは止めてくれよ。で、なんだ?」

 

 今まで黙っていたショウマがつまらなさそうに口を開くとカレヴィは困ったような表情を浮かべながら顔を向ければ……。

 

「先生に手を出すなよ」

「止してくれ。返り討ちにされちまう」

 

 ジト目でカレヴィを見るショウマにカレヴィは肩を竦めながら答えながら苦笑する。

 さながら今のショウマは親を取られそうで嫉妬する子供のようだったからだ。

 

 ・・・

 

「ねぇ、マスター。フェズさんがこっちに来るらしいわよ」

 

 南アメリカ大陸の北部のネグロ川に囲まれた地域に存在するコロンビア……ギアナ高地。

 この場にて初老の男性と茶髪のツインテールの活発そうな少女がいた。フェズとは違う形のコアランダーの操縦席で休んでいた少女はフェズの知り合いなのか初老の男性に声をかける。

 

「ふむ……。さてはあの馬鹿弟子になにか起きおったか……。それとも奴が元々、ワシに頼んでいたこの機体を取りに来たか」

「え? でもあの機体は形にはなってるけどまだ調整中でしょ? そのことはフェズさんだって知ってるでしょ」

 

 初老の男性は背中に赤い羽根のようモノを装備した黒いガンダム……マスターガンダムの肩の上で陽を見ながら立っていた。

 男性の言葉に両腕に龍を彷彿とさせる装備をした中華形をモチーフにしたようなガンダム……ドラゴンガンダムのコアランダーにいる少女が疑問そうに答える。

 

「なに奴が来れば全て分かること……。今はただ待つのみよ」

「ふー……。ところであの馬鹿(ショウマ)は来るの? 元々、アイツの為でしょ、これ」

 

 ただ落ち着いた佇まいを見せる男性に対し、少女は退屈そうに頬杖を突きながらマスターとドラゴンの背後にあるチューリップ型の巨大なポットを見つめる。

 

 その中には後に(ゴッド)と呼ばれるガンダムが目覚めの時を待っていた……。




色んな所での話と新キャラ二人です。本小説は出来るだけオリキャラは出さないようにしてますが、やはり話の都合上、何人か出します。

後、MGフォースインパルスが完成しました。エクスカリバーまで付属していると、MGのフリーダムまで欲しくなりますね!ジオラマは作ってみたいですがRGやPGよりも敷居が高そうです。

正直、デスティニーも好きですがインパルスの方が好きなんですよね。種死は全話見ましたが、後半はどっちかって言うと、同時期のSDガンダムフォースの方にどハマリしていたので…。キャプテンやゼロ、爆熱丸のレジェンドBB化はまだですかね…?
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