機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

24 / 96
お待たせしました!長くなってすいません…。


パナマベース
パナマベース─パナマに集まる戦士達─


 

「地球攻略作戦……か」

「諜報部の報告によりますと核攻撃による地上の殲滅ではないかとのことです」

 

 陸路でパナマへ向かうビッグトレーの司令室にしてレギンが秘書からの報告に耳を傾けていた。

 

「ボタンを押せば戦争が終わる。核を撃てばそれだけの効果はある……。奴らめ、こちらの地上作戦のこのタイミングを狙ってきたな」

「パナマ基地で地上の戦力を少しでも削るためでしょうか?」

「恐らくな。今回の作戦は大々的なものになるだろう……。今更戦力を分けるわけにも行かんし、アークエンジェル隊の他にもパナマ基地へ向かっている部隊はある」

 

 苦虫を潰したような表情のレギンに秘書がこのタイミングでの地球攻略作戦の発動に関する考えを述べると頷かれる。

 

「もしこれが本当ならば、なんとしてもマスドライバーを保有するパナマ基地を攻略し、宇宙(そら)上がる必要がある。それまでは宇宙艦隊に任せるしかないな」

 

 レギンは背もたれに身を預け、窓に映る景色を見つめ今後の行動をどうするか見極めるのだった。

 

 ・・・

 

「っ……!」

 

 パナマ基地攻略作戦の為、海路でパナマへ向かうアークエンジェル。

 陸路ではビッグトレーがそれぞれ別々に向かっていた。

 

 アークエンジェルの格納庫にて翔がカレヴィやレーアの指導のもとシミュレーターに励んでいた。シミュレーター画面では敵機を撃破し、シミュレーターが終了すると翔の額には汗が滲んでいた。

 

「へぇ……射撃の精度が上がってるわね。ロングライフルによる精密射撃が更に上手くなってる」

「でも……精密射撃は10分ちょいが限界だな。それ以上は無理だ」

 

 後ろで見ていたレーアとカレヴィが翔のシュミレータでの様子を見てそれぞれ評価をする。

 

「さて次は色んな武器を使ったシュミレーションをしてみるか」

「……分かった」

 

 シミュレーターを翔の横から割って入り、操作するカレヴィの言葉に翔は額の汗を掌で拭い、意気込むのだった。

 

 ・・・

 

 シミュレーターを終え、休憩をしようと翔は最寄りの休憩室に来た。

 ふと何かに気づく翔、見てみれば休憩室には既に先客であるショウマがベンチに腰かけていた。

 

「……翔か」

「……随分と浮かない顔をしているな」

 

 ベンチに座り込むショウマがやって来た翔に気づくと暗い表情で翔に声をかける。

 理由は分かっているとはいえ、元気のないショウマに翔は自販機で飲み物を買って隣に座る。

 

「なぁ翔。一期一会って言葉知ってるか?」

「……一応は」

 

 ショウマの問いかけに対し、日本人である翔は何となくではあるが意味を知っているため頷き、それがなんだ? と言わんばかりにショウマを見る。

 

「俺さ、ゼータプラス隊の皆に最後に会った時、突っ慳貪な物言いをしっちゃってさ。あんな言葉を最後にみんなともう二度と会えなくなっちまった……。そう考えだしたら無性に悲しくてさ」

「まぁ、いつどこで会えなくなるなんて分かるわけがないからな……」

 

 ゼータプラス隊の面々との最後の会話を思い出しながら自嘲気味に頬を掻きながら笑う。

 翔自身もこの世界にやって来たことで元の世界の人達との突然の別れを思い、ショウマの言葉に頷く。

 

「もっとちゃんと接してればなぁっ……。みんな良くしてくれてたのにあんな風に別れちまうなんて…」

「……そう思うならこれから変えていけば良いさ。そうすれば少しは気が紛れるだろ」

「そう、だな……」

 

 はぁっ、と重いため息をついて体を反らしたショウマは頭の後ろで手を組んで目に涙を溜めながらぼやく。

 そんなショウマを見兼ねて今の自分が思い付くアドバイスを送る翔にショウマは再び前屈みになって膝の上に両手を組むのだった。

 

 ・・・

 

「ほぉっ……戦力を集めろとは言ったが、中々良い光景じゃないかい」

「しかし敵部隊には謎の光を放つガンダムがいるようだな。他にもゼロシステム搭載型やMFもいるようだし…なにより地球軍の地上作戦はレギンが指揮を取っているようではないか……。そのせいでグレートキャニオンのアドラステアが…」

 

 パナマ基地の司令部にてベロニカが続々とパナマ基地へ集まってくるコロニー軍の部隊のリストを確認し窓から見えるそれぞれの部隊が着艦していく様子を見ながら呟くと背後に控えていたパナマ基地を束ねる司令官が不安そうに呟く。

 

「──その為に態々、パナマ基地に戦力を集めさせたんでしょ?」

 

 そこに司令部に活気を感じさせる若い男性の声が響く。声に聞き覚えがあるのか、ベロニカはニヤリと笑みを浮かべながら振り返るとそこにはカレヴィと同い年くらいの茶髪の青年が笑みを浮かべ、その背後には彼より幼い翔やショウマぐらいの年が立っていた。

 

「今は空の支配者なんて言われて小隊の隊長までしてるんだってねぇ。なぁジェイク」

「ははっ、ムズ痒いんで止めてくださいよ。坊やなんて言われて、貴方にしごかれていたのが懐かしいです。今回、俺達も暴れさせてもらいますよ」

 

 からかうように意地悪い笑みを浮かべるベロニカに対し茶髪の青年……ジェイクは豪快に笑い頭の後ろに手をやりながら答える。

 

「──俺達も忘れないでもらいたいな」

「アンタも来たのかい」

 

 そんなベロニカとジェイクのやり取りに口を挟む者が。ベロニカといえば戦闘中にはコンバットハイになり、非戦闘時には気難しい性格をしているため会話中に割ってはいるなど、彼女を知る者からすれば言語道断である。

 しかしそんな中で声をかけてきたのは軍服の袖を巻くった白髪頭の中年男性だ。ベロニカもその男性を歓迎する。

 

「トレント中隊長カイリ大尉。パナマ基地に着任した」

「大渦と呼ばれたアンタまで来るとはね」

「祭り事には参加したくなる性分なんでね」

 

 白髪頭の中年男性…カイリが形だけの敬礼をすると懐かしそうに目を細めるベロニカの言葉にカイリも口角を上げ不敵な笑みを浮かべながら答える。

 

「しかしまさかパナマを狙われるとはな。目的はマスドライバーか?」

「だろうねぇ。恐らく地球攻略作戦の内容の一部が漏れたんだろう。宇宙(そら)に上がるため、地球軍の地上作戦の最終目的はここになったって話さ」

 

 カイリが司令部から見えるマスドライバーを見つめながら問いかけると、隣にベロニカが立ちながらやれやれと行った様子で答える。

 

「タクティックス隊はまだ来ないのかい?」

「もうすぐ来るんじゃないんですか? 地上部隊で戦場の征服者とまで呼ばれた隊らしいじゃないですか。期待してますよ」

 

 リストを再び見つめ、未だにパナマ基地に到着していない隊のことを尋ねるベロニカにジェイクは顎に手を添えながら答えるのだった。

 

 ・・・

 

(このパナマ基地にこれだけの戦力が……。大規模な戦闘になりそうだな……。もうすぐ地球攻略作戦も開始される。それまでの間、地上の戦力を削ってもらいたいものだ)

 

 宇宙へ上がる準備を進めているルスランは続々とパナマ基地へ集結し物資を降ろしているそれぞれの部隊を見つめた後、遠目に見えるマスドライバーを見て、ヴァルター主導の地上攻略作戦に思いを馳せる。

 

「──ルスラン」

 

 そんなルスランに声をかけるのは、この場には不釣合いなほど静かで可憐な少女の声だ。

 振り返れば、そこにはレーアに良く似た金髪の少女が立っていてルスランは驚きで目を見開く。

 

「地上に……降りられたのですね……。リーナお嬢さん……」

「うん……久しぶり……。パナマ基地防衛の為に来たんだ」

 

 金髪の少女……リーナに対し、若干動揺しながら話しかけるルスランに彼女は愛らしく目を細め、懐かしそうに答える。

 

「パナマ基地防衛……? それではMSに……?」

「うん……。あの子だよ」

 

 リーナの言葉に驚きながら、彼女の指差す方向を見つめる。

 扉の開かれた格納庫には金色の角のようなアンテナとシンプルな黒い機体がハンガーに設置されていた。

 

「ルスランは宇宙に上がってお父様の為に頑張って。私もここで頑張るから」

「はい……。それでは失礼します」

 

 リーナが微笑を浮かべながらそう言うと、ルスランはその笑顔を直視するのを拒むかのように頭を下げ、すぐにその場から離れる。

 

 SIDE ルスラン

 

 宇宙へ上がる為にシャトルに乗り込む。

 まさかあのような形で再会するとは……。

 

 リーナ・ハイゼンベルグ……。

 戸籍上ではヴァルター様の娘でありシーナお嬢さん達にとっての末妹だ。

 

 だが実態はシーナお嬢さんのクローンだ。

 シーナお嬢さんを失った悲しみ……。そして奥方様などを失い、たった一人となったヴァルター様が悲しみに耐え切れずに手を出したクローン技術によって誕生した少女。

 

 しかしクローンと言ってもまだその技術は未熟なものであり、生み出されたリーナお嬢さんはシーナお嬢さん姉妹の面影はあり可憐でありながらも全く別の顔、利き手も違ければ性格も全く違う存在として生まれ育ってしまった。

 

 容姿以外の全てにおいてシーナお嬢さんの劣化したような存在……ヴァルター様はこれを嫌った。初めこそヴァルター様も彼女に目を向けていたが、やがては目を向けることも少なくなりMSパイロットとしての素質があった為、彼女はこうしてコロニー軍の一兵士として今、この場にいる。

 彼女の戦闘技術は私が教えた部分もあるが飲み込みが早く今ではその戦闘技術は私と同等かそれ以上か……。

 

「とはいえ、ワンオフ機を態々用意するぐらいであればヴァルター様も少なからず彼女に情があるのだろうか?」

 

 思わず口に出してしまった。

 他の乗組員が怪訝そうにこちらを見てくる……。

 

 とはいえあのMS……他の量産機とは違い、完全なワンオフ機だろう。

 恐らくはヴァルター様が用意してくださったのだろう。

 なんであろうと今は宇宙(そら)へ上がるだけだ。地球攻略作戦を成功させ今度こそヴァルター様のご期待に応えてみせる。

 

 ・・・

 

「ルスラン……。行っちゃった」

 

 パナマ基地にて自身のMSの前に立ちルスランを乗せたシャトルがマスドライバーを利用して宇宙へ上がる。どんどんと姿が離れ、やがては一筋の流れ星のように見えた時、リーナは一人、呟く。

 

「頑張らないと……。お父様の為にも……」

 

 彼女の行動理由は一つ、ヴァルターの為だ。

 MSパイロットの不足。これを聞きつけたことにより、MSパイロットになったのもヴァルターの為だ。

 

「お父様の笑顔を取り戻すために一緒に頑張ろうね、バンシィ……」

 

 振り返り己の機体を見上げる。

 かつて自身が物心ついた頃、ヴァルターが自身へ向ける顔の中には哀しみがあり、彼女自身も見ていて辛かった。

 

 彼女はヴァルターの微笑んだ顔すら見たことないのだ。

 自身の落ち度か、なんであれ自分が少しでも戦果を上げればヴァルターはきっと喜んでくれる。そう信じて彼女は戦うのだ……。

 




リーナ・ハイゼンベルグ

【挿絵表示】


今回、新キャラが多数登場しました。あんまりオリキャラが多すぎると自分の腕では収集がつかなくなるのであまり出さないようにはしていますが…。パナマ編はもしかしたらグレートキャニオン編より長くなるかもしれないです…。

次回はギアナに向かったフェズとパナマ基地攻略作戦です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。