機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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パナマベース─シーサイド・ベース─

 

「お久しぶりです、師匠」

「うむ」

 

 ギアナ高地の高台の岩場にて到着したフェズはマスターガンダムを操りし、初老の男性……ヤマトに両手を突き合わせながら挨拶をすると、ヤマトもまた両手を合わせて答える。

 

「久っさしぶり! フェズさん!」

「おっ、リンじゃないかい。久しぶりだねぇ」

 

 そんなヤマトの後ろに隠れていたのは、ドラゴンガンダムの操縦者であり小柄の茶髪なツインテールを黄色いリボンで結んだ少女……朱 鈴花(シュ リンファ)だ。

 ヤマトから躍り出るようにフェズの前に現れると、そのまま嬉しそうに抱きつく少女にフェズもまた再会を喜ぶように彼女の愛称を口にしながら笑顔を見せる。

 

「悪いね、リン……。再会を喜んでいる暇はないんだ」

「その目は例の機体のことではないらしいな……。ならば……」

「──おっと……。武道家の拳は己の魂を表現する為のもの……でしたね」

 

 名残惜しむようにリンを撫でると、ヤマトに顔を向けるフェズの目を見て、何かを察したヤマトは腰を落として構えを取る。

 その姿にあっと思い出したようにフェズもまた構えを取り、数秒前まで和やかな空気が一転して、緊迫した空気に変わるなか、対峙する両者を見てリンが慌てて離れていく。

 

「「破ァッ!!」」

 

 同時に踏み込み、拳を打ち合わせる両者。

 拳と拳による鈍い音が響くなか、両者は更に拳を交わえる。

 

「フェズよ、貴様……。拳に迷いがあるな」

「ッ!」

 

 拳と拳を交わる内に心境を察したかのように呟くヤマトにフェズは驚きで目を見開き、放たれた拳もヤマトに受け止められる。

 フェズが動揺するなか、もうこれ以上の組手は必要ないとばかりにヤマトはフェズの拳を解放するのであった。

 

 ・・・

 

「なる程。部下を助けられずに復讐心に駆られ、危うく暴走しかけたと。復讐心などに取り憑かれおって……。貴様はまだまだ馬鹿弟子だな」

「ええ……。未熟さを改めて実感しました。ショウマの師匠面しているのに……。ですから自分を見つめ直すために久しぶりに師匠に喝を入れてもらおうかと」

 

 その後、焚き火を囲いながらフェズから事の経緯を聞いたヤマトは腕を組んで、咎めるような鋭い視線を向けると、彼女はどこかやるせないような表情を浮かびあがらせながら答える。

 

「フェズよ……。いくら心身を鍛え上げ、強くなろうが我らは神ではない。どれだけ頑張ろうが救えない命はある」

「それは……分かってはいますが…」

 

 焚き火に枝を放り込めば、バチバチと弾けるような音が響く。

 諭すようなヤマトの言葉にフェズはかつての自分を恥じているのか俯いてしまう。

 

「かつて会得した明鏡止水の境地を思い出せ」

「明鏡止水……」

 

 ヤマトの教えにフェズは静かに目を閉じる。

 わだかまりややましさのない澄んだ心……それこそが明鏡止水だ。

 

「明鏡止水を忘れ、復讐心に駆られるようじゃまだまだと言えるな」

「うぐっ……」

「……死んでいった者達について考えたところで戻っては来ない。大切なのは死者への想いをどう未来へ繋げるかだ。死者の分まで生きようと想う気持ちなのではないか?」

 

 近くにあるヤカンから水をそのまま口へ注ぐヤマトの言葉に反論できず、苦い表情を浮かべるもその直後に言われたヤマトの言葉にハッとまた再びフェズは考え込む。

 

「──ご飯出来たよっ」

「ふむ……。今は飯にするとしよう。時間はまだあるのだろう?」

「ええ、多少は」

 

 時刻は昼過ぎだ。

 リンが看板娘のような活発な様子で手に持った大皿を持ってきながら声をかけると、ヤマトは微笑を浮かべて昼食を誘うとフェズは手持ちの端末で作戦の時間を確認しながら頷く。

 

「ならば食事の後に鍛え直してくれる。喝を入れられに来たのだろう?」

「うっ……お手柔らかに」

「貴様の性根次第だな」

 

 フェズに対し、意地悪な笑みを浮かべると、その笑みを見て、表情を引き攣らせるもヤマトは一蹴するのだった。

 

 ・・・

 

「橋頭堡を築くために向かった先遣隊への援軍か」

「はい。パナマ基地攻略作戦に同じく参加予定でした部隊からの要請です」

 

 一方、アークエンジェルのブリーフィングルームにルルの収集によってフェズを除くMSパイロット達が集められた。

 ルルの背後にはマドックが控えるなか。話を聞いたカレヴィの第一声にルルは頷く。

 

「部隊名はセレーネ隊で隊長はエースパイロットとして知られるグラン・ライスター少尉です」

 

 ルルが書面とカレヴィ達を交互に見ながら説明すると、隊長の名前を聞いたカレヴィは僅かに目を見開き顔を強ばらせる。

 

「フェズ少尉が不在ではあるが時間が惜しい。パイロット諸君には直ちに出撃してもらいたい」

「……了解した」

 

 マドックが一歩、進み出てパイロット一同を見渡しながら声をかけると、パイロット達はカレヴィの返答と共にそれぞれ頷き、その場を離れ、ロッカールームへと向かうのだった。

 

 ・・・

 

「ゼータプラス、行くぜぇ!」

「エクシアも続いて出る!」

 

 その数十分後にはアークエンジェルの二つのカタパルトからゼータプラスとエクシアがそれぞれ発進していた。

 

 《続いてプロトゼロ、発進どうぞ!》

「プロトゼロ、出るッ!!」

 

 続いてプロトゼロも発進し、エクシアとゼータプラスと合流する。

 

「グレイさん、今度はバズーカ……ですか。それも二丁も」

「今回は水中戦も考慮してるからな。実弾兵器だからビームと違い、水中でも威力があまり変わらないんだ。だがまぁ実在のバズーカよりも弾速がかなり遅い上に無誘導だから命中精度が低くなってる。お前の腕が試されるな。ロングライフルを使いこなせるお前なら出来ると踏んでの装備だ。期待してるぞ」

「シュミレータはやったからってそう簡単に使えるものかよ……」

 

 翔が片腕に装備されたハイパーバズーカと腰部のラックに引っ掛けられたもう一丁のハイパーバズーカを見てコクピットに乗り込みながら、その周辺でブレイカーFBの最終調整をしていたグレイに声をかけると、電子機器を操作しながら答えられる。

 期待の表れとはいえ、グレイの返答に対し、翔はボヤきながら操作を始める。

 

「なにか言ったか?」

「なにも……。ガンダムブレイカーFB行きます!」

 

 発進準備が整い、ブレイカーFBから離れながら翔の愚痴を聞き逃さなかったグレイが声をかけると、作り笑顔を浮かべながら翔はハッチを閉める。

 カタパルトデッキに移動したブレイカーFBは発進するのであった。

 

「乗れ、翔!」

 

 先に出た三機と合流するブレイカーFBに合わせて、ショウマがゼータプラスをWRに変形させると、翔に通信を入れる。

 それを聞いた翔は機体を操作させ、WRの上部に乗り、四機は要請のあった場所へと向かうのだった。

 

 ・・・

 

「チィッ……。橋頭堡の為の先遣隊だったのに……。まさかな……ッ!」

 

 海岸基地にてバックパックがXの字を成す形の白いMS……ガンダムXディバイダーに搭乗する茶髪で左目に眼帯をつけた青年……グラン・ライスターとその小隊が襲いかかる敵水陸両用MSであるズゴックやアッガイ、ガフランの部隊との戦闘を繰り広げていた。

 

「そのエンブレム……! 噂に聞く“大渦”の部隊か!!」

「兄さん! このままじゃ……!」

 

 ズゴックやアッガイにはそれぞれ岩壁に打ち付けるような荒波を思わせるエンブレムがあり、そのエンブレムを見たグランは舌打ちをするなか、その隣で重兵装MSであるガンダムヘビーアームズに乗るグランの妹……オレンジ髪青目のツリ目が特徴的なティア・ライスターが声をかける。

 

「戦場じゃ隊長と呼べって言ってんだろォッ!!」

 

 妹に対し声を荒らげながら大型シールドであるディバイダーの中央で2つに割れて内臓された19連装ビーム砲であるハモニカ砲を発射することによって、群がるズゴックやアッガイ、ガフランを撃破するが……。

 

「後ろからっ!?」

 

 なんと海中からの射撃によってXDVとヘビーアームズは損傷を受ける。

 ティアが急いで機体を反転させるのだが……。

 

「──甘いなぁっ!!」

「ぐぅっ!!?」

 

 機体を反転させた瞬間、今度はまた背後からの射撃を受ける。

 まだ機体を反転せずにいたXDVはセンサーを駆使して敵機体を見つけ出す。

 

「あれは……ケンプファーか!!」

「フンッ……どこの戦場もガンダムだらけ。ガンダムだけがMSじゃないんだよ」

 

 グランが捉えたモビルスーツは濃紺の高機動MSであるケンプファーだ。

 そしてケンプファーに搭乗するのは大渦ことカイリであった。

 ケンプファーの放つショットガンを何とか避けるXDVは大型ビームサーベルを引き抜いて、ケンプファーに挑む。

 

「なっ!?」

「ビームサーベルの出力が普通のとは違うな……。だがぁっ!!」

 

 大型ビームサーベルの刃はケンプファーが素早くショットガンを捨て、引き抜いた2本のビームサーベルによって受け止められると、すかさずコクピット近くを蹴り飛ばされる。

 

「デカイ作戦の前ならば橋頭堡を築くって魂胆は最初っから分かってたんでな。適した場所に張り込んでたら、まさかガンダムが現れるとはな」

 

 よろめくXDVに声をかけながらカイリはすかさず距離を放し、流れるようにショットガンを拾って再び撃ち始める。

 ティアが損傷を受けるXDVに援護しようとするが、彼女もまた水中からの攻撃に苦しめられていた。

 

「──新手か!」

 

 XDVに追い打ちをかけようとするケンプファーだが、その時、センサーが別の敵信号を捉える。見ればプロトゼロなどのアークエンジェルから発進してきたMS隊がやって来ていた。

 

「水中の敵は俺が引き受ける……。その為のバズーカらしいし」

「なら私も行くわ。エクシアだって水中では役に立つもの」

「よしなら、俺とショウマで海岸の敵を叩く!」

 

 翔とレーアがそれぞれ己の機体の装備などの適正を省みて申し出ると、カレヴィは素早く指示を出す。

 ブレイカーFBはゼータプラスから飛び降り、エクシアと共に海中へ。プロトゼロとゼータプラスはそのままMS形態に変形して海岸に降り立つ。

 

「……久しぶりだな。グラン・ライスター」

「その機体……。へぇ……援軍は要請したが、まさかお前が来るとはな」

 

 プロトゼロはXDVの隣に降り立って通信をいれるとグランは面食らったような表情を浮かべた後、不敵な笑みを浮かべる。

 

 ・・・

 

「話は後だな。ティア、お前はあの二機と一緒に水中の敵を叩け!」

「えっ!? でも!」

「これは隊長命令だ。ティア・ライスター曹長」

 

 すぐにケンプファーやその取り巻きのMSに注意を向けるグランはティアに通信を入れると、ティアはそれを拒もうとするが兄としてではなく隊長として命令されたことで渋々、海の中に入る。

 

「さてカレヴィ。俺のXのサテライトキャノンをぶっ壊してくれた借りはここで返してもらうからな」

「……ああ」

 

 水中に入ったヘビーアームズを確認したグランはカレヴィに声をかけると、負い目を感じているのか静かにカレヴィは答える。三機はカイリとその取り巻きのMSに挑むのだった。

 

 ・・・

 

「ちぃっ……! 流石に海の中じゃ動きにくいな!」

 

 水中で敵MSであるズゴックやアッガイとの戦闘を繰り広げるブレイカーFBとエクシア。

 アッガイの腕部先端のミサイルランチャーを何とかシールドで受けながら愚痴をこぼす。

 

「ッ……!」

「フリーデン所属のティア・ライスター曹長です。援軍感謝してします。協力して各個撃破しましょう」

 

 標的がブレイカーFBやエクシアに向いていた為、真横から飛んでくるミサイルに反応が遅れて、一機のアッガイは撃破されてしまう。

 すると近くにいたズゴックやアッガイ計6機が素早く散り散りに散開するなか、驚く翔に先程のグランへの態度とは打って変わって軍人として接するティアはガトリングを散開したズゴック達へ放つ。

 

「了解。翔、私も驚いているけど実際の水中はシュミレータとは違うわ。気をつけて。現にシミュレーター以上に機体の操作が難しいわ」

「ああ……!」

 

 ティアにはレーアが返事を返すなか、翔に注意を促すと、翔は水中でのコントロールの難しさに冷や汗をかきながらも奮闘するのであった。

 

 

(早くこいつら倒して兄さんの所に行かないと……ッ!)

 

 展開するズゴックやアッガイとの戦闘を繰り広げながら、ティアは表情を険しくさせる。その頭の中にはグランとカレヴィのことが浮かび上がっていた。

 

(カレヴィ・ユハ・キウル……。Xのサテライトキャノンどころか兄さんから左目まで奪った男……! 兄さんは気にしてないみたいだけど、私は……ッ!!!)

 

 かつて思い出すのはコロニー軍のMSであった頃のプロトゼロとグランが駆るXとの戦闘。その結果、グランは左目を失明した。

 グランの話ではプロトゼロに内蔵されたシステムの暴走らしいが、それでもティアはカレヴィに対しあまり良い感情を抱けずにいたのだった……。

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