機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

32 / 96
パナマベース─激化する戦場─

 

 パナマ基地で激戦が繰り広げられる中、地球の衛星軌道上では円型のシールドとどこか鳥類を思わせる頭部を持つヤクト・ドーガが宙を漂っていた。

 

「行け、ファンネル達よ!」

 

 パイロットはルスランだった。

 目を瞑っていたルスランは目をカッと開いて叫ぶと、ヤクトドーガに装備されているファンネルと呼ばれるオールレンジ兵器が全て射出され、周囲にあるポインターを全て撃破する。

 

 《テスト終了だ。よくやったルスラン》

「お褒めいただき光栄であります! ファンネル……。ここまで使いこなすことができました」

 

 再び宇宙に静寂が訪れる。

 ヤクト・ドーガのコクピット内ではヴァルターの声が響き、ヴァルターだからこそ嬉しいのか表情を綻ばせるルスランはヤクト・ドーガへと戻ってきたファンネルを見る。

 

 《ああ、これならば地球攻略作戦を任せられる。ところで、なにか変わった感覚はなかったか?》

「……? いえ、これといって特に……」

 

 そう言うとヴァルターは本命だと言わんばかりに話を切り出す。

 テストも特に変わったことはなかったため、質問の意図がよく分からず首を傾げながら答える。

 

 《……まぁ良い。それよりも作戦に感づいたのか地球軍の艦隊が接近中だ。帰還して迎撃部隊に加わってもらいたい》

「ハッ! すぐに戻ります!!」

 

 少し考えるように間を置き、先程、部下から知らされた報告をルスランにすると次の指示をする。ルスランは姿勢をビンッと正し、すぐに機体を操作して帰投するのだった。

 

 ・・・

 

「人使いが荒いよなぁ、司令官殿はよぉっ!!」

 

 一方、パナマ基地の激戦区ではレギン率いる地球軍の大隊と戦闘をするコロニー軍の中にはタクティックス隊の姿があった。

 愚痴を吐きつつも、その表情をニヤァとさせながら次々にビームサーベルで地球軍のMSを斬り裂くシドの表情から、戦闘に対し楽しんでいる様子が伺える。

 

「うるさいぞ、シド。戦闘に集中しろ。今は劣勢だぞ」

「へいへい、そいつはすいませんね」

 

 そこにビシャリとティグレからの通信が入り、気分を害されたのか、少し鬱陶しそうに返答するとシドはモニターでティグレの戦闘の様子を見つめる。

 ティグレのレッドフレームの手に持つ日本刀のような実体剣であるガーベラストレートですれ違いざまに敵MSを撃破していた。

 

「っーか、とんでもない数だよなぁ。どんどん湧いてきやがる」

「その通りだ。だから口よりも機体を動かせ。お前が一番遅れているぞ」

 

 撃破してもまだ別の敵機体が襲いかかってくる。

 面倒そうな表情を浮かべるシドにティグレは冷たく言うと一方的に通信を切る。

 

「相変わらずつまんない奴だな。本当に腕だけだからな。なぁマヒロ」

「……シドさん、本当に兄さんに怒られますよ」

 

 ティグレの対応に心底、つまらなさそうに吐き捨てると通信回線を開いていたであろうマヒロに声をかける。

 近くで戦闘をしていたマヒロだが、いい加減、その口を閉じろとばかりに呆れながら答えられる。

 

「良いんだよ、向こうは通信切ってんだから。ったく、アイツは絶対、人生損してるぜ。上を目指そうとしないからな。本人はそれで良いかもしれねぇけど付き合わされる身になって欲しいぜ。アイツの腕がなければとっくに見捨ててる」

「……本当に無神経な人だね。戦闘に集中しなよ。さっきから本当に遅れてる。上を目指すなら僕を怒らせないでよ。僕の家のこと知ってるでしょ? このまま軍に居続ければ兄さんより偉くなるかもよ。その時、僕がシドさんのこと嫌ってたらどうなるんだろうね」

 

 ティグレにはどこかあまり良い感情を抱いていないのか、実の弟であるマヒロに吐き捨てると身内の悪口に気分が悪くなったのか、マヒロはどこかティグレを思い起こさせるような冷たくそしてピシャリと通信を切る。

 

「チッ、どこまでも人を舐めくさった兄弟だな……ッ!!あぁっ!?」

 

 インスラ兄弟に対して苛立ちが募るが、計器が敵を知らせる。

 見れば陸戦型ガンダムのカスタム機がビームサーベルを引き抜いて襲いかかってきていた。シドはビームサーベルで受け止め、カスタム機との戦闘を開始するのだった。

 

 ・・・

 

「うっくぅっ……!」

 

 場所が変わり、ブレイカーFBはバンシィDに地面に押し付けられながら、やがては放り投げられる。

 近くの倉庫に機体が直撃した衝撃で計器に頭を打ち付け、ヘルメット越しに顔をおさえる。

 

「──ッ!」

 

 バンシィDは素早く近づき、ビームサーベルを引き抜いてブレイカーFBのコクピット目掛けて突き出す。

 

 慈悲も容赦もない。

 ただ目の前の不愉快な敵を倒すために。

 

 間一髪で気づいた翔が機体を操作してサーベルを持つ手を掴み、ギリギリでコクピットへの攻撃を阻止する。

 そのまま右足部でお返しと言わんばかりにバンシィDのコクピットに蹴りを入れ、距離を取り、その間に機体を立て直す。各部に少しばかりに損傷が見られるが動かす分には問題ない。

 

「この感じ……。やっぱりこいつから……っ!?」

 

 気持ちの悪さを感じているのはリーナだけではなかった。

 翔は表情を険しくさせながらバンシィDに対峙していると胸の中で突然、強い鼓動を感じる。

 

 まるで目の前の機体に何かを感じ取り何か激しく訴えるように。

 鼓動は更にドンドンと強くなり、やがて……。

 

「っ……!?」

 

 ブレイカーFBから赤みを帯びた光が溢れだし、やがては強く輝いてブレイカーFBを包み込む。

 フロンティアⅣ、グレートキャニオンで見せた光だがその光はどこか不安定にユラユラと見える。その輝きにリーナは驚きつつも先程よりも不快感は増し、表情を険しくさせる。

 

「ああぁぁぁっっ!!?」

 

 しかし次の瞬間、ブレイカーFBの放つ光に触発されたようにリーナの頭の中で激しい金切り音が鳴り響き、耐え切れず両腕でヘルメットごしに頭を押さえる。

 

 苦しい。今にも頭が割れそうな程だ。

 これは誰のせいだ? 間違いなく目の前の機体のせいだ。

 そう思い、憎しみすら篭った目でブレイカーFBを睨みつける。

 

「なっ……!?」

 

 今度はバンシィDから光が放たれる。

 だが、その光はかつてブレイカーが見せた光や今のブレイカーFBの不安定な光ではなく、どこか禍々しさを感じる光だった。

 

 その光を見て翔は驚く。

 まさか自分以外にも同じことを起こす者がいるとは、と……。

 

「倒す……。オ父様の……為ニ……! こイつハ……っ……敵は……私ガ……ッ!!」

 

 互の光はまさに刺激をし合うようにどんどん光の勢いを増させる。

 なんとか意識を保っている翔だが、一方でリーナはブツブツと壊れた機械のような狂気を感じさせるような喋り方でその虚ろな瞳はギョロリとブレイカーFBを捉え、再び襲いかかってくるのだった……。

 

 ・・・

 

「はぁっ……はぁっ……!! きゃぁっ!!?」

 

 一方で海中トンネル前ではいまだに戦闘が続いていた。

 汗をかき、息を荒げるレーアは鬱陶しかったのかヘルメットは脱いでいた。

 直後に背後からのビームカノンの攻撃による衝撃で悲鳴を上げる。

 

「機体が良くてもパイロットがダメじゃなぁっ!!」

 

 カイリが声高らかに叫ぶ。

 ハイゴック、ズゴック、アッガイの3機がエクシアの周囲を飛び回り翻弄しながら矢次に攻撃していた。そうすることでパイロットの集中力を削り、エクシアを撃破するのだ。

 

「隊長、こちらは片付きました、援護します!」

「……なら後方支援を任せるぜ」

 

 どうやらアークエンジェル隊とは別にいた部隊は撃破されてしまったようだ。

 しかし先程まで別部隊と戦闘をしていたコロニー軍側の機体も損傷が激しいズゴック2機、アッガイ1機しか残っておらず、それが戦闘の激しさを物語っていた。

 カイリは機体状況から指示を出すと部下達の機体は一斉に射撃兵装で攻撃を開始する。

 

(っ……! まずいわね……!)

 

 次々と放たれる射撃をシールドで防ぐが、周囲を動き回るカイリ達の機体からの攻撃もある。カイリ達のかく乱攻撃に集中力を奪われながらもなんとか次の行動を探る。

 

(トランザムで一気に離脱をした方が……───!?)

 

 はっきり言って状況は不利。下手な行動は我が身を滅ぼす。

 ふとカレヴィの言葉を思い出し、彼に言われた通り、トランザムによる離脱を考えた束の間、周囲を動き回っていたズゴックが背後からエクシアを羽交い締めのように拘束する。集中力を削られたことによって反応が遅れてしまったのだ。

 

「隊長、今です!」

「おうよ!!」

 

 ズゴックのパイロットが喜々としてカイリに通信を入れると決着をつけるためカイリは懐に飛び込み、コクピット周辺を目掛けてクローを突き刺そうとする。

 

「えっ……!?」

 

 絶体絶命の状況にレーア自身も諦めかけたその時だった。

 大量のミサイルがエクシアの周辺に降り注ぎ、咄嗟に反応したカイリはミサイルを避けることに成功したが、エクシアの背後のズゴックに直撃して爆発した。

 

「なんだ……!? なにが起きた!?」

 

 爆風で吹き飛んでいたエクシアを高速で接近してきた機影が受け止めるとハイゴック達から距離を取る。突然の出来事に反応しきれていないカイリは必死に周囲を伺うとエクシアを掴む機体を見つける。

 

「──遅れて悪かったなっ!」

「グランッ……!? っていうことは……!?」

 

 それはガンダムXDVだった。

 接触回線越しに伝わるグランの声にレーアは目を丸くさせて驚く。

 だが驚くのは束の間、彼がここにいるということはアークエンジェルも修復完了したということだろうか。

 

「──ええ、アークエンジェルも無事。少し後の海底で隠れてるわ」

 

 通信が割り込まれ、レーアを安心させるように穏やかな声で喋るのはティアだった。

 ミサイルを撃ったのも今現在、後方にいたヘビーアームズだろう。エクシアを抱えるXDVはヘビーアームズの隣に着地することで並び立ち、エクシアを解放すると、エクシアもまたXDVとヘビーアームズに並ぶ。

 

「あのガンダム……。あの時の奴か!」

「そのエンブレム……。大渦の部隊か……。前の借りと遅れてきた分の借りも纏めて叩き返してやる」

 

 カイリもまた残った部下達を集め、ガンダム三機と対峙するとXDVとヘビーアームズを見て、かつて戦ったガンダムだと気付き、激戦を予期して操縦桿を握り締める。

 グランもまたカイリ達の機体のエンブレムを見て以前、圧倒されたことを思い出し、そしてまた遅れてきたことによる所謂、借りをカイリとレーアに返すためベダルを踏み込んでバーニアを噴射させ、一番に飛び出し、それが合図となって戦闘を再開するのだった。




グラン達がようやく合流しました。ここから一気に展開が進んでいく予定です。後余談ですが書くのが苦戦しているキャラがいましてボキャブラリーが足りない私には少し苦戦してます。まぁジェイクなんですがね。没個性にならないよう軽口を吐きまくるキャラにしましたが台詞の一つ一つが難しいです。だからスパイダーマンなんかは純粋に凄いと思えます(シビルウォーや新作映画が楽しみです)。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。