機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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バナマベース─大運河を血に染めて─

 

「──まったくいきなり動くもんだからびっくりしたじゃん」

「フェズの奴……。中々良い気迫ではないか」

 

 パナマ基地の戦闘の様子を一望できる海上でドラゴンガンダムがチューリップ型のポットの上にまるで胡座をかくように座り、ファイターのリンが近くのモビルフォース・風雲再起に騎乗するマスターガンダムのファイターのヤマトに声をかける。もっともヤマトはそれを無視して、ここからでもフェズの様子が分かるのか笑みをもらす。

 

「しかし問題は宇宙よ。儂にはドス黒い何かが今にも降ってきそうに感じるのだ」

「まーた訳わかんない事言い出すし……。それよりもショウマの馬鹿はどうしてんのよ……」

 

 ヤマトはふと空を見上げ、目を細める。

 その表情はとても厳しいものだった。

 もっともリンも同じく空を見上げたところで何かが分かるはずもなく電波でも受信したか? と呆れたような表情を見せるのだった。

 

 ・・・

 

「ティア、手はず通りにな」

「分かってるわよ」

 

 一方、海中ではどちらが先手を打つかと互いに見極めているとグランがティアに声をかけ、ヘビーアームズがビームガトリングと胸部ガトリングを同時に発砲する。

 弾丸は水泡を引きながらハイゴッグ達の足元付近に着弾し、そこからどんどんとハイゴッグ達に迫り、ハイゴッグ達は素早くバーニアを噴射して飛び上がって避ける。

 

「行くわよ、その機体の原理は分からないけど上昇するわ」

 

 するとヘビーアームズがエクシアの肩部を掴んで上昇を始める。

 レーアが限界なのは助けに来る前に分かっていた。ならばエクシアは今はただの重荷に過ぎなくなってしまう。

 

 それではこちらが不利だ。

 ならば逃げればいい。ティアの通信を聞いたレーアは機体を操作して、補助の為にGN粒子を放出し、海面へ浮上しようとする。

 

「──ダァアアッッ!!」

 

 一方、既に敵機の避ける場所を予測していたグランのXDVは大型ビームサーベルでズゴックを真っ二つに切り裂き、勢いを殺さず続けざまに近くのアッガイのコクピット付近を突き刺す。後はカイリのハイゴッグとズゴック2機、アッガイ1機だ。

 

「高エネルギー反応……!? おいおい……!」

 

 だが、緊急警報が鳴り響き、モニターを確認すれば目の前のアッガイはサーベルを持つマニピュレーターを掴み、そのモノアイは不気味にこちらを凝視していた。

 

 その姿に執念のようなモノが感じられ、グランはそのプレッシャーに身震いする。

 その間にもアッガイは機体が発光しやがては自爆する。ただ死ぬくらいなら爪痕を残し、仲間に託すために。

 爆発で吹き飛ぶXDVのコクピットではグランが操縦桿をギュッと強く握り締め、衝撃に何とか耐えていた。

 

「自爆なんてしやがって……。チィッ……散開ッ!!」

 

 部下が散り際に行った自爆攻撃。

 カイリもまた腹心の部下を次々と失っていることに己の不甲斐なさを呪い、操縦桿を握り締め、残った部下達に素早く指示を出し行動を開始する。

 

「チッ……! あの火薬庫をかく乱しつつGN粒子放出型を捕えろ! 捕まえりゃ盾にでも人質にでも何でもござれだ!」

 

 カイリの指示でそれぞれが散らばり、上方から降り注ぐヘビーアームズの猛撃を避けながらエクシアを目指す。

 

 海中ではこちらが有利だ。それを利用する。

 相手側でまともに水中戦を行えるのはエクシアだが、そのパイロットであるレーアは集中力が切れかけているのだ。エクシアだけでも手玉に取れれば勝機はある。

 

「最初っから、あの嬢ちゃんの機体狙いってか! ティアッ!!」

「ッ!!」

 

 至近距離の自爆を受けてもXDVは無傷とは言えないもののの無事であった。

 片手で頭を押さえつけ、激しく揺らし、ぐらつく視界を強引に治しながらハイゴック達が浮上しようとするエクシアに徐々に近づいていくのを見て、近くにいるティアに声をかける。

 その意図を読んだティアは再びビームガトリングを発射し、レーアもGNライフルを発射する。しかしやはり彼らは場数を踏んできたパイロット達。安々とそれを避けてしまう。

 

「イチかバチか……! ティア、左にズレろ! 頼むぞ……!」

 

 ハイゴック以下4機は動き回りながら実弾を発射する。

 エクシアや、そのエクシアを抱えて浮上しているヘビーアームズは実弾をまともに浴び、ティアとレーアは衝撃に耐える。

 グランは厳しい表情を浮かべながら、状況を見極め、ティアと共にある者達に通信を入れる。

 

「───光っ!? 全機下がれ!」

 

 あと少しで海面に近づこうとする2機を捕まえることが出来る。

 こちらを追いかけるXDVもまだ追いつけていない。

 

 だがその時、カイリの視界に海面から一点の眩い光が入ってくる。

 あれはなんだ? 険しい表情でそう思い、指示を出した瞬間、一筋のビームが近くにいたアッガイを撃ち抜いて爆発させる。

 

「海上に何かがいる……ッ!?」

 

 続いて第二射が放たれ、一機のズゴックが撃ち抜かれ爆散する。

 その状況から海上に何かがいることを察したカイリは驚くと共に後悔する。

 ヘビーアームズ達は自分達から逃げるためだけに海上に逃げたのではないのだろうと。そうこうしている間に遂にエクシアとヘビーアームズは浮上してしまう。

 

「捕まえたッ!!」

 

 海上からの攻撃を警戒した瞬間に自分達を追いかけていたXDVに残ったズゴックが背後から拘束され零距離でブレストバルカンを浴びせる。ズゴックは激しく振動しながらも拘束から逃れようともがこうとする。

 

「もう追いつきやがったか!」

 

 ズゴックを拘束し、尚もブレストバルカンを撃ち続けるXDV。

 カイリは背を向けるXDVにビームカノンを発射する。グランもビームカノンを予測していたのか素早く察知すると素早く機体を操作する。

 

「──なっ!?」

 

 XDVは機体を反転させ、ズゴックを蹴り飛ばしハイゴックに向ける。

 まっすぐ伸びたビームはズゴックを貫いて爆発する。

 

 仲間を助けるために放ったビームは逆に仲間を殺すことに使われたのだ。

 カイリの中で様々な感情が交錯する。

 爆発が消えたそこにはディバイダーがハモニカ砲を展開させ、ビームを収束させていた。

 

「この距離ならァッ!!!」

「俺によくもォオッ!!!」

 

 XDVのツインアイとハイゴックのモノアイががギュィンッと発光し、グランとカイリは同時に叫ぶ。

 カイリは部下、いや仲間を大事にしている。だからこそ仲間を殺すために利用されたのが許せなかった。良くも悪くも仲間思いなのだ。

 

 至近距離の攻防で、ハモニカ砲の収束されたビームは刃のように飛び出し水泡を引きながらハイゴックを両断し爆発四散する。それが大渦と呼ばれた者の最後だった。

 

 ・・・

 

「ふぅっ……」

 

 カイリ達を撃破したグランは海上に飛び出し、空に舞い上がって一息つく。

 そこにはグラン達と同じくタクティックス隊の攻撃から生き残った2機のジェガンがそれぞれのベースジャバーにヘビーアームズとエクシアを載せ待機していた。

 

 元々、グランとティアだけで向かっていたわけではなかったのだ。

 先に向かった部隊の状況によっては海上で待機させているベースジャバーに載せるつもりでいた。

 

「ナイスアシストだ」

「隊長の指示のお陰ですよ」

 

 勿論、先程アッガイやズゴックを撃ち落としたのも彼らだ。

 ベースジャバーに搭載されているメガ粒子砲を使ったのだ。

 部下を褒めるグランにジェガンのパイロットの片割れははにかみながら返事をする。一方でXDVは二つのベースジャバーが牽引していたベースジャバーに降り立つ。

 

「……この後はどうするのかしら?」

「一度アークエンジェルへ戻ろう。君もそろそろ限界だろう。その後、アークエンジェルはそのまま海中を限界まで進んで一気にパナマ基地に攻め込んでカレヴィ達を援護する」

 

 普段、気丈なレーアも表情に疲れが読み取れる。

 レーアの通信にグランはパナマ基地の方角を見ながら答えると機体を操作してアークエンジェルへ向かうのだった。

 

 ・・・

 

「第一防衛ラインのMS全機撃破されました!!」

「カイリのおっさんまでやられたってのかい……!? チッ……まだ耄碌じゃないと思ってたんだがねぇ……ッ!」

 

 パナマ基地司令部ではカイリ撃墜の報が素早くベロニカに伝えられていた。

 カイリと旧知の仲で彼をある程度信頼してはいたが、この無残な結果には流石に毒づいてしまう。

 

「第三防衛ラインの状況は!?」

「援軍を送った結果、こちらが優勢です!」

「このまま潰してくれると良いんだがね……! 状況によっては本当に誘い出すよ」

 

 カイリの死を切り替え、ベロニカは素早く状況を確認する。

 第三防衛ラインは今のところはまだ優勢のようだ。顎に手を乗せたベロニカはまだ奥の手があるのか表情は厳しいまでも余裕を感じさせる声色だった。

 

 ・・・

 

「くそっ、いい加減にぃっ!!」

「そろそろ泣き言かい? でもそーいうのは俺じゃなくママにでも言うんだな、ジェイクさんが強すぎて勝てないよぉってぇっ!!」

 

 一方、カレヴィ達が戦闘を繰り広げるパナマ基地内の上空で幾度も交差し、剣戟を繰り広げるプロトゼロとAGE-2。いつまでも纏わりついてくるAGE-2のせいでショウマ達を助けることもままならない。

 刃を交えて鬱陶しそうに叫ぶカレヴィにジェイクもまた行かせまいと襲いかかり、攻撃も口も止まらない。

 

「クソッ! キリがねぇ!!」

 

 地上ではショウマが鬱陶しそうに叫んでいた。

 最終防衛ラインからの援軍のせいでこちらは劣勢に立たされていた。

 このままではエネルギー切れを起こしてしまうのも時間の問題であろう。

 

「なっ!?」

「気絶している間に仲間が死んでた……!こんな情けない話があるかァッ!!!」

 

 放たれたビームがZプラスの左腕部に直撃する。

 驚くショウマのモニターが映すのはこちらに突進してくるFインパルスだった。

 

 レンがようやく目を覚ましたのだ。

 そして状況から自分の隊はジェイクと自分しか残っていなかった状況を知って己の不甲斐なさに憤り、Zプラスに向かってきていた。

 

「チィイッ!!」

 

 その近くではシャイニングが増援のMS隊との戦闘を繰り広げていた。

 ショウマへ襲いかかっているFインパルスは知ってはいるが、この状況では助けようにも助けられない。

 ならばせめて少しでも早く片付け、助けに行きたいところではあるがそれも難しい。

 なにせいま相手にしているMS隊はどれも強豪揃いだからだ。今でも漸く一機コクピットを貫いて撃破したところだ。

 

「っ!!?」

 

 だがその瞬間、後方から野太いビームのムチが2本、うねりを上げながら無差別に動き回る。あまりの出来事に驚くフェズだが、素早く拳をMSから引き抜いて回避する。

 

「あの方向は……」

 

 そこは黒いMSがブレイカーFBを引きづり去っていった方角だ。

 そこから禍々しい光と不安定な光が溢れ、そこから2本の野太いビームが放たれているようだ。こちらまでギリギリ届いてくることに注意しながらもフェズは再び戦闘を再開するのだった。

 

 ・・・

 

「ッ……!!」

 

 ブレイカーFBとバンシィD……。互いの機体から放たれる光はそれぞれが持つビームサーベルにまで影響を与えているのかのように肥大化し鞭のような状態でぶつかり合い、翔は歯を食い縛る。

 目の前のバンシィが放つ光、そしてそこから禍々しさにはこちらの精神がすり潰されそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

【このま──あの娘──も──ない──】

 

 

「──ッ!!」

 

 

 

 

 

 どうしたものかと思考を巡らましている時、己の内側から声が聞こえる。

 もう何度も聞いてきた女性の声だ。しかしその声は所々聞こえなかった。

 

(……今の……もたないって言おうとしたのか……? けどどうしろって言うんだ……!?)

【──の声──聞こ──!?】

(声……? 声なら聞こえているが……アンタはなんなんだ!?)

 

 女性の断片的な言葉から推測する翔だが、例えそうであっても方法がないのではどうしようもない。

 

 内心でそう呟いた時に再び女性の声が聞こえる。

 その声に翔は思わず心の中でそう呟いていてしまう。

 もしかしたらこの女性の声こそがそもそも自分をこの世界に呼んだ原因なのではないのかと。

 

【ごめ───な──……。で─今───の娘──を】

(ッ……!? なにか方法でもあるのか?!)

 

 やはり断片的ではあるが、なんとかその情報は読み取れる。

 要はまずは目の前の機体をどうにかしたいと言いたいのだろう。翔は今すぐにでも問い詰めたい気持ちをグッと抑え、返答があったことから内心で叫ぶ。

 まさか自分の中に何かが宿っているとは流石に思わず妙な気分だ。

 

【取─付い──。そ────ば私が──あの──を──ける。だ─らまず──取り──て!】

(取り付けばいいんだな……? けど簡単に言ってくれる……!)

 

 目の前のバンシィDは遂にはビームトンファーまでも展開して襲いかかる。

 そのリーチは伸びているせいで防戦一方だ。

 そんな中で翔は女性の言葉を読み取り目の前で猛獣のごとく暴れまわるバンシィDに全神経を集中させるのだった……。




そろそろパナマ基地攻略戦も最終局面に踏み込もうとしています。そして次回、主人公が…?

後、翔の中にいるキャラクター。まぁ…ゲームをプレイした方なら分かりますかね(こんなこと以前書いたような…?)。まぁ彼女なわけですが次回、それなりに活躍します。
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