機動戦士ガンダム Silent Trigger 作:ウルトラゼロNEO
「ご命令通り、手配しました。しかし本当によろしかったのですか?」
椅子に座るシャミバにデスクを挟み向かい合っている部下が報告を終え、改めて確認をする。シャミバの命令、それは公になればただではすまない、そんな内容だった。
「力を持った理想論者程、面倒なものはない。そういった奴は一度現実を見れば目を覚ます。GNドライヴはハイゼンベルクには宝の持ち腐れだよ」
対して、シャミバは回転椅子を少し斜めに動かし背もたれに身を預けながら、ただ静かにほくそ笑むのだった。
・・・
「ダブルオーライザー、目標地点に到着。準備完了です」
サイド6の領域外にやって来たのはエクシアと同じ青を基調としたガンダムタイプであり背部にオーライザーと呼ばれる支援機とドッキングしたガンダムを越えたMS……ダブルオーライザーだ。パイロットは勿論、シーナである。
・・・
「ではトランザムバーストの実験を開始する」
サイド6にある極秘のコロニー軍の軍事施設では研究員達が忙しく手を動かし、ただ一人立ってモニターを見つめるヴァルターは通信越しにシーナに、そして研究員達に号令を出す。
「──待ってくださいッ! 少数のMSの反応を確認! 地球軍のものだと思われます!」
周辺宙域を監視していた研究員の一人が振り返りヴァルターに向かって叫ぶ。
モニターを切り替え確認すると、そこには確かにコロニー軍のMSではない機体群がダブルオーライザーに向かって飛行していたのだ。
・・・
「コロニー軍のMSの技術力は相当なモノだ。絶対に捕らえろ!」
『了解!!』
ダブルオーライザーへ向かう機体群は隊列を組んで飛行しているのはウェイブライダー形態のZプラス達だ。その中でこの隊を指揮していると思われる隊長機のゼータプラスから全機に指示が入り、全てのゼータプラスから返答が聞こえる。
「聞いているのか、インゲンス!?」
「聞いてるよ……!」
だが、そんなZプラス達の先頭を飛行するのは従来のMSとはまったく違う異質なMSがいた。左右非対称のライトグリーンの機体……ターンXだ。
隊長はターンXのパイロットであるまだ若い成人男性であるインゲンスに通信を入れると、返ってきたのは不機嫌そうな声だ。
その声を聞いて隊長は苦労を感じさせるような重い溜息をつく。
インゲンスと言われる男はハッキリ言って異常だ。
その戦闘技術は地球軍の中でもトップクラスに入る実力者なのだが如何せん精神面に難があった。
インゲンスは元々孤児で地球軍に入隊したのだが戦闘を重ねて行くに連れ、戦いそのものに魅了され所謂コンバットハイのような精神異常を持つ男だ。
そんなインゲンスが乗る機体は地球軍のモノではない。
宇宙に展開していた地球軍の艦隊が月で偶発的に見つけた機体なのだ。
今回、コロニー軍の新型MSの調査とあわよくばソレを奪取。さらにこのターンXのテストも兼ねていた。
そのターンXのテストパイロットに選ばれたのはインゲンスだった。
自分はインゲンスの手綱をしっかり締めなくてはならない。その事から隊長の気苦労は増えるばかりだ。
・・・
「来た……ッ!」
ダブルオーライザーに乗るシーナはターンXとZプラス隊を確認していた。
どうするべきか、シーナは考える。
単純に考えて、彼らの狙いはこのダブルオーライザーだろう。
次に機体のこと。武装に関していえば今回はあくまでテストの為、あるのは腰部のビームサーベルとオーライザーの武装のみだ。
防御手段もGNフィールドくらいだろうか。そんな事を考えているうちにターンXがビームライフルを撃ちながら一気に近づいて来る。
「……ッ!」
素早く機体を動かしターンXからのビームを避けるが、接近を許してしまい、ターンXは右腕のアームユニットからビームサーベルを出現させダブルオーライザーの頭部を突き刺そうとする。
間一髪で腰部のビームサーベルを引き抜いたダブルオーライザーによって防ぐ。
《シーナ、退け! 今、隊を送らせる!》
「──待って、お父様!!」
続くターンXの猛攻の一つ一つを見極め、ビームサーベルとGNフィールドで防ぎ続けるダブルオーライザーのコクピットにヴァルターのシーナの身を案じた緊迫した声が響く。
これからダブルオーライザー救援の為の増援を送ろうとするヴァルターを他でもないシーナが制止する。
「ここでトランザムバーストを使う!」
《なに……!?》
「私は戦う気はないよ! ここで何とか出来ないんだったらこの先、分かり合う事なんて出来ないよ!」
シーナの言葉に驚く。
ここにきてシーナは戦うのではなく分かり合う道を選ぼうとしたのだ。
「トランザムッ!!」
シーナは叫ぶ。
コクピットの液晶にはTRANS-AMの文字と共に機体が赤く発光する。
それと同時にターンXが一文字に展開中の腕部のビーム状物質で切り裂こうとするもダブルオーライザーを切り裂くことなく宙を切る。
これにはインゲンスも目を見開いて驚く。いやインゲンスだけではない、ダブルオーライザーを知らぬ地球軍のパイロット達も驚いていた。
「──ッ!!」
なんとダブルオーライザーはターンXの背後で量子が集まり、ダブルオーライザー……いやトランザムライザーが姿を現す。
野生の勘と言うべきかインゲンスは素早くトランザムライザーに気づくと振り返り際にトランザムライザーを砕こうとマニピュレーターを伸ばす。
「チィッ……!」
しかしそれは機体を最小限に動かしたトランザムライザーによって回避される。
その事がインゲンスを苛立たせる。今まで避けてくる相手はいたが目の前の機体は決して攻撃してこない。
今の動きを見ても実力者であることは伺え、舐められているのかとインゲンスの苛立ちは募る。
「私は……戦いじゃない選択肢を選びたいッ!!」
表示されるTRANS-AM BURSTの文字と共にシーナはエヴェイユとしての覚醒の力を使う。エヴェイユの脳量子波とツインドライヴシステムが連動しダブルオーライザーの背後にoo型の粒子が現れると超高純度のGN粒子を大量放出する。
「アレは……人間が作ったモノなのか……? この心が温かくなる感じは……?」
超高純度のGN粒子を放出し続けるトランザムライザー。そのGN粒子に押されターンXは弾かれるように吹き飛ぶ。それを見ていたゼータプラスに乗っていた隊長は茫然とし、そしてこんなモノを作ったコロニー軍に戦慄する。
【──戦いたくない……】
「──ッ!? 女の……声……?」
だがしかしこの身に感じる温かさは何だろう。
それを感じた時、不意に聞き覚えのない悲痛な女性の声が聞こえ、トランザムライザーを見る。
・・・
「コレは……」
トランザムバーストの影響はサイド6内のハイゼンベルク邸にいるルスランとレーアにも影響を与えていた。
心が満たされるこの温かさ。ルスランは手を広げこの不思議な現象に驚く。
「姉さん……」
それはレーアも同じだった。
しかし二人にはこの現象を起こした人物が誰であるかある種の確信を持って分かっていた。これはきっとシーナが起こしているに違いない、不思議とそう感じてしまう。
・・・
「これが……シーナと……ツインドライヴの力……」
軍事施設にいたヴァルターや研究員達も画面に映るトランザムライザーを見て固まっている。
ヴァルターの心中にはこの心を満たす輝きがあれば、きっと地球とコロニーが分かり合える日が来ると確信を持っていた。そう、持っていたのだ……。
・・・
【私はこの力を地球とコロニーを繋ぐ架け橋として使いたい……。だから私は貴方ととも分かり合いたい】
「……」
インゲンスにもシーナの声は届いていた。
今もそうだ。
しかし、インゲンスは黙ったまま何も喋らない。
だがやがて彼の肩はどんどん震えていき……。
「ふざッけるなアアァァァァァァァァーーーーーーーーーーァァァァァァアアアッッッッッ!!!!!!」
この光を拒絶したのだ。
この温かさをインゲンスは嫌った。
今まで一人で生き、戦いを快楽として生きてきた彼に温かさなど縁のないものだし、そんなものはいらなかった。
なによりトランザムライザーのパイロットは戦う気がないのだと言う。
目の前のパイロットは相当の実力者だ。
なのに戦う気もなく攻撃を受け流しこちらに攻撃することもなく手を抜いている。これが一番、彼の怒りを爆発させる引き金となった。
「なっ……!?」
その怒りに呼応するようにターンXはGN粒子をエネルギーとして吸収し機体の背部から反射し輝く七色の巨大な蝶の羽のような光を現す。
その光を浴びた背後の展開していたゼータプラス達は全て撃墜されてしまう。
最後に残った隊長もトランザムバーストとは正反対の絶望を与えるその光を最後に撃墜されてしまった。
「クッ!!」
トランザムが解除されてしまってはいるがダブルオーライザーはエヴェイユの力によって機体はトランザムとは違った紅い光を纏いターンXへ向かっていく。
先程の光景を見た以上はこのままターンXを放っておく事はできない。
分かり合う事は難しくともせめて無力化しなくては。
「ようやく戦う気になったか……ッ!!」
「なんで貴方はそこまで戦いたいのっ!? なぜ戦うのっ!?」
「戦うのに理由がいるのか……?! 戦うから充実出来てんだよ……。お前のその力も戦うから価値があんだろ……!」
こちらに向かってくるダブルオーライザーを見て漸く戦う気になったかとインゲンスは邪悪かつ好戦的な笑みを浮かべ、今まで放っていた光を解除して真っ向から向かっていく。
機体と機体が半ば正面衝突するかのようにぶつかり合い、ダブルオーライザーのビームサーベルとターンXのマニピュレーターから伸びるビームサーベルがぶつかり合いながらインゲンスとシーナは問答を繰り広げる。
『……フンッ、だが今の時代、君のような存在に和平なんて道を求める輩は少ないよ』
「違う……ッ……。私の力は……そんな事の為にあるんじゃないッ!!」
インゲンスはあくまでシーナの操縦技術について触れたのだが、シーナは先日のシャミバの一件もあってエヴェイユの力に関する事だと言われている気分だった。
だからこそそれはどうしても否定したかった。
そんな感情のままに振ったビームサーベルはターンXに直撃するかと思いきや頭部、両腕、両肩、胸部、背部、腰部にターンXの機体は分離する。
「なっ……!? ──きゃぁあっ!!?」
驚いたのも束の間、至近距離で四方八方からまるでスコールのようなビームの波状攻撃を浴びせ続けダブルオーライザーが攻撃を何とか防ごうとした瞬間、ターンXの各パーツでダブルオーライザーを包囲し強力な磁場を発生させて拘束する。
流石にエヴェイユと言えど所詮は人間の身。
その衝撃に悲鳴を上げるシーナは攻撃が終わることには痙攣を起こしていた。
「戦いたくない? 分かり合いたい? ハッ……」
「あっ……がッ……!?」
シーナの言葉を反復しながら分離していたパーツはドッキングし元のターンXへ戻ると、そのまま行動を停止しているダブルオーライザーに溶断破砕のマニピュレーターを突き出し、ダブルオーライザーの胴体を深く抉り、コクピットにいたシーナは目を見開いて小さな悲鳴を上げる。
・・・
「止めろ……。止めてくれ……」
軍事施設にいるヴァルターは胴体にマニピュレーターを深々と抉られているダブルオーライザーを見て悲痛な声を漏らす。
しかしヴァルターの想いはあっさりと裏切られることになる。
・・・
「人の心に土足で入り込んでタダで済むとは思うなよ……ッ!!」
他者と分かり合い共に歩もうとする者もいれば、他人を必要とせず一人で歩もうとする者がいる。
実力を持ちながら和平だなんだというシーナを嫌い、インゲンスは露骨に不快そうな顔を浮かべると再び胴体部へ執拗にマニピュレーターを突き刺す。
「醜く争ってこそ人間だろうがッ……!」
何度も何度も胴体部にマニピュレーターを深く抉り、インゲンスは最後に吐き捨てるように言い放つ。
こんなに胴体部へ攻撃したのだ。
もう中のあのパイロットは無事ではないだろう。その証拠にダブルオーライザーから放たれていた奇妙な光は消えている。不愉快な相手か消え少し表情を和らげる。
【──それでも私は信じてる……】
「──!!」
インゲンスの頭の中でシーナの声が響く。
そんな馬鹿なと。あそこまでやって生きているわけがないと思った。
実際にダブルオーライザーのコクピット内とシーナの身体はボロボロでヘルメットのバイザーもシーナの血で濡れて見えず、その首元にかけられたアリスタだけはただ静かに光っていた……。
シーナの声を聞いたインゲンスは再び胴体部へ攻撃をするとその場から離れる。
その後、ターンXは地球軍に戻る事はなくインゲンスは地球軍から指名手配を受けるのだった……。
・・・
「姉さんが……死んだ……?」
ターンXの一件から時間が経ち、事後処理にひと段落がついたヴァルターからレーア達にシーナ・ハイゼンベルクの死が知らされた。その唐突で突然な出来事にレーア達は立ち尽くし愕然としている。
「なんで……どうして……!?」
「人間は分かり合えぬというだけだ」
レーアはヴァルターへ詰め寄る。
シーナの死を信じたくはなかった。
何故そんなことになったのかそれを父の口から知りたかったが、ヴァルターはただ静かに言い放つ。そのことがレーアを困惑させた。
「……私は理解した。どんな力だろうと拮抗したモノは争いを生むだけだ。ならば天秤を振り切ってしまえばいい」
自分達に背を向けるヴァルターは決してこちらを向かない。
自分の知る父とはかけ離れた今の感情を感じさせない冷淡な目の前の男にレーアは恐怖心すら感じる。
「私が終わらせる」
ただ最後にそう言ってヴァルターは屋敷から出て行き、その場にはレーアとルスランだけが取り残されていた。
・・・
「そこからあの人は変わり非人道的な事にも手を染めていったわ。しまいには私にまでその手が向けられた。姉さんが死んだ原因を調べていた私はあの人が恐ろしくなって、そして非人道的な行為が許せなくて士官学校を辞めてこの家を出たわ。その時にエクシアも持って行った。今のあの人に姉さんの形見のようなモノを置いておきたくなかった……。それが私がこの家を出た経緯よ……。今のあの人に期待をしない方がいいわ。貴女が苦労するだけ……。あの人の為じゃなく……貴女は貴女の生き方をすれば良い」
あれからどれだけ経ったのか。
その間リーナは黙って話を聞いていた。
過去を話し終えたレーアはコップの水を一口飲んで口内を潤す。
ふとリーナの様子を伺うとなにか考え込んでいるような様子だった。
最後に今、自分が言えるリーナへの助言を口にするレーア。少しでも彼女の今後に繋がればいいと思ったからだ。
「……私の生き方……。そんなこと……分からないよ」
今までそんなことを考えたことはなかった。
全ては父の為に捧げてきた人生だ。
今更、どんな生き方をすれば良いのか、そんなことリーナに分かる筈が無かった。
「……だったら私と一緒に探す?」
自分の生き方を見出せないリーナにレーアは静かに席を立ち彼女の近くに歩み寄ると手を伸ばす。
「私の知ってる男の子は怖くてもそれでも世界がなんで争いで溢れているのか知りたくて世界を見ようとした。彼が答えを見つけ出せたかは分からないけど……貴女もこの広い世界で自分があの男の為じゃなくどうしたいのかを私と一緒に探さないかしら……?」
突然のことに驚くリーナに微笑みを向けながらレーアは地球を救う為に流れ星となった青年を脳裏に思い出しながらリーナを広い世界に連れ出そうとする。
「貴女があの男の笑顔が見たいのなら……私は貴女の笑顔が見たいわ」
今まで見てきたがリーナの楽しそうな顔を見ていない。
今もずっと悲しそうな顔をしているのだ。
だからこそ彼女の笑顔を見たかったのだ。
その言葉が心に届いたのかリーナは恐る恐るレーアの手を掴もうとする。
発砲音が静寂が包むハイゼンベルク邸に木霊した───。
「……え……?」
リーナの右肩から鮮血が舞い彼女の黒いワンピース濡らす。
レーア、そしてリーナは突然の出来事にただ目を見開き、そして発砲音の発生源を見る。
「──まったくお前は悉く私を不愉快にさせる」
こちらに向けられている銃口から硝煙が昇る。
食堂の入り口には立っていたヴァルターはリーナに向かって不快感たっぷりの感情が籠った言葉を浴びせる。
「おとう……さ……ま……?」
「やはりお前がパイロットになる時、記憶や感情の類を消し去っておくべきだったか。再調整が必要だな」
撃たれた右肩が熱い。
ガタガタと震える唇でヴァルターへの呼び名を口にする。
父が自分を撃ったなんて信じたくなかった。
しかしそんなリーナを意に介さずヴァルターはブツブツと言葉を吐く。
「なんで……!? この子は貴女の為に!!」
「知っている。私にとっても必要な存在だ。大事なのはエヴェイユであるかどうかだ。❝リーナ・ハイゼンベルク❞という存在はどうだって良い」
久しぶりに会ったヴァルターは以前よりも恐ろしい顔をしていた。
だがそんなことよりもリーナとは別の意味で彼女を撃ったことが信じられなかった。
その思いが強い言葉となってヴァルターのぶつける。
ヴァルターもリーナを殺すつもりはない。
エヴェイユの片鱗を見せる彼女には利用価値があり、発砲の理由などは個人的な感情だ。
「ソレには調整をかける。ならば今のうちに言っておこう。リーナ……。シーナのなり損ないであるお前のことを……私は大っ嫌いだったよ」
「……!」
この後リーナを施設へ連れ帰り調整を施す。
今度はいらない事に心惑わされぬようハイゼンベルグの家の者ではなく、記憶もすべて消してただの兵器にする。
そうすれば今後、彼女に会うこともなくなるだろう。
ならば今のうちに思っていたことを蹲っているリーナにぶつける。その言葉はリーナにとってどれだけの衝撃だったか。
「ふふっ……あはっ……は……」
ただヴァルターの為に今まで動いてきた。
一番聞きたくなかった言葉にただ彼女の口から笑い声が漏れる。
「貴方って人は……ッ!!」
「レーア、お前も私と来てもらうぞ。お前にはお前の役目がある」
顔を上げたリーナは壊れたように笑いながら涙を流していた。
リーナの笑顔を見たいと思ったがこんな笑顔は見たくなかった。
ヴァルターに憎しみさえも籠った目で見るレーアを意に介さず逆にその動きを止める為に彼女も銃口を向けようとする。
「冗談じゃないわ……ッ! この子も私も……貴方の好きなようにはさせないッ!!」
こちらに銃口を向ける前に食卓に並んでいたナイフを投げナイフの要領で何本か素早くヴァルターへ投げる。
普段、訓練などしていないヴァルターは反応が遅れ、避けるのに精一杯だった。
その間にレーアはリーナを抱えて食堂の窓から外へ飛び出す。
「……逃がしはせん」
ヴァルターが顔を上げ、窓へ顔を向けた頃にはレーア達は障害物などに隠れ遠ざかっていた。
このままアークエンジェルに戻りサイド6を抜け出そうというのだろうか。
そんなことはさせない。もし出港するのであればそれを叩くだけだ。その為にヴァルターは連絡を取るのだった。
・・・
「グレイッ!!」
「レーア、帰ってきたのか。丁度良かった。今から出港だぞ」
あれから数十分後、アークエンジェルへと戻ったレーアは格納庫で忙しく指示を出すグレイに声をかける。
アークエンジェル全体の空気は今、とても重苦しかった。その原因は分かっている。
フェズ、カレヴィ、翔。失った者が多すぎる。例え艦内の空気が重くなっていたとしても整備班の仕事は変わらない。
なにせ以前の作戦で機体がボロボロなのだ。グレイは端末を操作しながら答える。
「ソイツはどうした……?」
「医務室に運ぶのを手伝って!」
支えられているリーナに気づいたグレイが怪訝そうにレーアに尋ねる。
なぜ態々ここに連れてきたのだろうと。しかしレーアの切迫した様子に作業を部下に任せて手を貸す。
・・・
「銃弾は取り出したよ。後は安静に、だね。彼女は無事だよ」
リーナを医務室に運んでから時間が経ち、処置を終えたドクターはレーアに声をかけ、彼女は胸をなで下ろす。
「けどどうして急に出発が決まったの?」
「こちらにコロニー軍の艦が向かってるらしくてね。流石に中立コロニーで戦闘をするとは思えないが、フロンティアⅣやフォンブラウンの件もあるし、早急に出るという判断になったんだよ」
一息ついたレーアは突然のアークエンジェルの出発に関してドクターに問いかけると、ドクターは自分が聞いたことをそのままレーアに伝える。
サイド6は中立だが若干コロニー側だ。
そのことも関係あるのかとレーアは考えを巡らせる。
・・・
「──やはり来ましたな」
「……はい」
あれからサイド6を出港したアークエンジェルはまもなくサイド6の宙域を抜け出す。
だがそれと同時にコロニー軍の戦艦をブリッジは捉えていた。
ルルの背後に控えるマドックは彼女に声をかける。
しかしルルからの返答はか細い声だ。
原因など知れている。翔のことだ。
「ルル・ルティエンス!」
「っ!?」
声を張り上げ、マドックはルルのフルネームを口にする。
さながら渇を入れるかのような声にルルもビクッと身体を震わせる。ルルだけではないブリッジの面々も驚き、マドックを見ていた。
「部隊を預かる者として貴女は強くあらねばならない。貴女が帰る者達の居場所であり還らぬ者達の誇りでなくてはならないのだから」
今までも不甲斐なかったルルだが、翔やカレヴィの一件で更に拍車がかかった。
このままではよりアークエンジェルの士気は下がる。
翔達を失い悲しいのはマドックも同じだ。
しかし副長である自分が弱い姿を見せられないと思い気丈に振る舞っている。
そしてそれはなにより部隊全体を預かる艦長にも求められることだ。そのことを伝えるマドックにルルは顔を伏せる。
「敵艦よりMS隊が出撃しました!」
「──第一種戦闘配備! 敵艦との距離を離したまま離脱します!」
そんな中、オペレーターからの報告が入る。
やはり目的は自分達のようだ。
マドックが指示を出そうとした瞬間、ルルの先程とは打って変わっての強い声が響く。
見ればルルは顔を上げていた。マドックの言葉。確かに今の自分を翔達は誇りにしてはくれないだろう。
(……もう迷わない。翔君……。カレヴィさん……。私を見守って……!!)
マドックの言葉はもっともだ。
自分は艦長。翔との約束、カレヴィが遺した言葉だってある。
今まで散々悩んできたがここにきて漸く踏ん切りがついた。
自分は艦長である役目を果たすため指示を出すのだった。
・・・
「私達を逃がすつもりはないみたいね……ッ!!」
第一種戦闘配備が発令された。
作戦の概要を聞きパイロットスーツに着替えたレーアは床を蹴ってエクシアへ向かう。
先程のヴァルターの件もあり、この件にヴァルターの意図を感じる。
「グレイ、エクシアは動かせるのよね」
「動かせるが激しい戦闘は無理だ! トランザムは使うなよ!」
エクシアのコクピットに乗り込んだレーアはエクシアのコクピット周りの整備をしていたグレイに声をかけるとエクシアの装甲を蹴ってエクシアから離れながらグレイは注意を促す。やはり前回の作戦の影響が強く残っていた。
「レーア、ゼータプラスは砲台代わりにしかなれねぇ……。実質、戦闘の多くはレーアに任せることになると思う」
「構わないわ。まともに動けるなら動くべきよ」
先にゼータプラスに乗り込んでいたショウマがエクシアに乗り込んだレーアに通信を入れる。
申し訳なさそうに話すショウマのその内容に対して、エクシアよりも損傷が激しかったことを知っている為、レーアは特に何も言わない。
「……あんな顔で終わらせたくない……。ガンダムエクシア……出るわ!」
今でも壊れたように笑いながら泣いていたリーナの顔が脳裏にこびり付いている。
今は医務室にいるがこのまま敵にやられ死なせる、もしくて連れ去られるなどはあってはならない。
特殊な生まれであれリーナは自分の妹だ。
今のリーナを守れるのは自分だけ。
ならば守らねばならない。
決意を胸にレーアは出撃するのだった……。
待った!待ってたよブレイカー3!!発売決定が嬉しくていつもより長くなったよぉぉぉぉぉぉおおっっっ!!!!!!!PV見る限り、騎士ガンダムやZプラスのビームカノンが肩についてたりと新要素盛りだくさんじゃないか!!早く続報をくれぇえ!!!!!