機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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ギアナ─力─

 

【この電文が送られて来た時、ショウマ……。アンタは驚いているだろうね。積もる話はあるが簡潔に言うよ、ギアナ高地で待つ。アンタの為の力が完成した】

「俺の……力……」

 

 あれからプリーフィングルームにいた面々は作戦概要と今後の予定を話した後、解散しフェズの電文はショウマ宛だった為、ショウマは自分が持つ携帯端末に電文を移してもらい、暗がりの自室でフェズの電文を見つめていた。電文の内容を見てショウマは独りポツリと呟く。

 

「ほしい……。俺は……力がほしいッ!!」

 

 力は欲しかった。

 レーアは新たな力を手に入れた。

 そのお陰で救えたモノがある筈だ。

 今までどれだけ手を伸ばしても届かなかった。ショウマはその為の力を渇望していたのだ。

 

 ・・・

 

「地球……ですか……?」

「ああ、先生が待ってるんだ、頼むっ! 行かせてくれ……。いや……行かせてくださいっ!」

 

 艦長室にてショウマから話を聞いたルルはショウマの顔を見て僅かに首を傾げる。

 まさに何故と言わんばかりだ。

 だが、疑問に思っているのも束の間、ショウマは頭を下げ、ルルに懇願する。

 

「えっ!? いやっ……頭を上げてください、ショウマさんっ! その……地球ですよね。今、私達アークエンジェルは先程言ったようにコロニー軍が軌道エレベーターの軌道リング上に建造した巨大衛星レーザー砲……通称メメントモリの破壊作戦への参加を命じられています。その為、私達は軌道エレベーターからもっとも近い地球軍の衛生基地での作戦準備を行う予定です。ですが今、地球軍の軌道エレベーターはコロニー軍に占拠されています。地上にいる部隊はこの奪還の為の作戦を行うそうです。調べてみましたが、翔君もその作戦への参加することが分かってます。この作戦はパナマのような激しい戦闘が予想されますので、こちらへも援軍として作戦補助が命じられています。どちらにしろ、まだ時間の猶予は10日くらいはありますのでそれまでの間であれば可能です」

「10日間か……。十分だ、ありがとうございます!」

 

 ルルから今後の予定と作戦の話を聞かされる。

 猶予は10日間、それまでにフェズの電文に書かれていた力を手に入れる。

 それが具体的になんであるかは分からないが力は欲しい。ならば、いつまでもここにいるわけにはいかない、ショウマは頭を下げて、素早く艦長室を出るのだった。

 

 ・・・

 

「ゼータプラスは持っていけない!?」

 

 準備を整え、ルルへの申請を出し許諾をもらった為すぐにでも地球へ向かおうとするショウマだったが、格納庫ではグレイからゼータプラスの使用許可は下りなかった。

 軌道エレベーターも今はコロニー軍に占拠されていて使うことは出来ないため、大気圏を突入する手段は限られている。

 

「この間の戦闘で無理な状態で動かしたんだ。そのツケが回ってきたんだよ。地球に降りたいんだったら、この先、到着予定の基地で定期的に地球に降りているシャトルがあるからそれ乗って降りるんだな。地球にある基地で小型の飛行機を使えるよう手配しておいてやる」

「そうか……。分かった」

 

 グレイがゼータプラスを見上げながら使えない理由を説明し、さり気なくショウマに気遣うと、彼は今まで共に戦ってきた愛機を見上げる。

 確かにボロボロのこの機体にこれ以上、無理をさせるのも忍びなかった。

 ふと見上げたゼータプラスの隣のハンガーに置かれているウィングに視線が映る。ウィングのコクピットにはリーナがいた。

 

「あぁ……アイツか? 凄いもんだ、あの年でシュミレーターをしてもお前らに負けず劣らず、いやそれ以上の結果をたたき出してるからな。ウィングはこの先の基地で回収、ダブルオーライザーも調整をする予定だ。お前も期限前には戻って来るんだぞ」

「……了解」

 

 ショウマの視線に気づいたグレイがウィングを見ながら説明をする。

 レーアはリーナに関することをあまり詳しく話さなかったがそれでも前回の戦闘での操縦技術は凄まじいものだった。

 

 レーアもリーナも強くなっている。

 このままでは自分が置いて行かれてしまう。そんなことは嫌だ。ショウマは一刻も早い出発を願うのだった。

 

 ・・・

 

「ギアナ高地……近いな」

 

 翌日、漸く地球に到着したショウマはグレイとルルの計らいもあってか軍が所有する小型飛行機に乗って、フェズに示されたポイントへ向かっていた。

 ギアナ高地はフェズとの修行の思い出があり、近づくにつれて、何だか懐かしくなってしまう。

 

「……? なんだ、故障か?」

 

 感慨に耽っているとアラームが鳴り響く。

 見てみれば設置されていたサーマルセンサーが360℃真っ赤だったのだ。こんなこと普通ならばあり得ない。故障を疑うが次の瞬間……。

 

「──!?」

 

 目の前に巨大な❝何か❞が現れる。ショウマは声を上げることもままならぬまま意識を失うのだった……。

 

 ・・・

 

 

 

 どこまでも真っ黒な空間にショウマ()はいた。上も下もない。どこまでも自分の感覚さえ不確かな真っ黒な空間だ。

 

「……」

「先生!? 待ってくれよ、先生!」

 

 そんな中、俺は先生を見つけた。

 先生は俺を一瞥するとドンドン歩いて行ってしまう。

 

 手を伸ばしても先生には届かない。

 やがて先生の身体は巨大なシャイニングに姿を変えるとその先から放たれた何本もの光線に貫かれ、閃光と共に消え去ってしまう。

 

「──……」

「オッサン!?」

 

 どれだけ手を伸ばしても先生には届かない……。

 手を伸ばした俺の真横を死んだはずのおっさんが通り過ぎる。

 慌てて振り向くとおっさんの姿もプロトゼロに姿を変え、極太のビームに飲み込まれ爆発してしまう。

 

「あっ……あぁっ……!!」

 

 おっさんに手を伸ばしたころにはすでにプロトゼロはただの消し炭となって、この真っ黒な空間と同化する。

 どこまで続き、そして寒気さえ感じるこの場所に気が狂いそうになりそうだ……。

 

「ショウマ……っ!!」

「!!」

 

 俺を呼ぶ声が聞こえる。

 振り返ればそこには翔がいた。息を荒げ苦悶の表情を浮かべる翔に俺はすぐにでも駆け寄ろうとする。

 

「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!?」

「翔ォッ!!?」

 

 俺が手を伸ばし、翔がそれを掴もうとした瞬間、翔の身体は落下するように下に落ち炎に包まれる。

 耳を劈くような悲鳴と皮膚が焼けていく臭いが鼻につく。それでも俺は翔に手を伸ばすが、その手は届かない。

 

「──……なんで掴んでくれないの……? なんで助けてくれないの……!?」

「ッ!」

 

 翔の身体は焼け焦げ、涙を流し、そして炎で溶け出したグチャグチャなその顔を俺に向け恨めし気に俺を睨む。やがて落下していく翔の身体はどんどん小さくなっていき、やがては燃え尽きる。

 

「違う……っ! 俺は手を伸ばしてる……!! 助けようとしてるんだよォオッ!!!」

 

 それでも俺の手は誰にも届くことはない。

 先生にもおっさんにも翔にも……。

 

 俺は……俺は……ッ!!!

 

 ・・・

 

「うあああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!?」

「──痛っ!!?」

 

 狂ったような悲鳴を上げ、飛び起きたショウマだったが頭は何かにぶつかり、地面に転がって悶絶する。すると人にぶつかったようで、少女の苦悶の声が聞こえてくる。

 

「アンタ……なにすんのよっ……!!」

「えっ……あぁっ……悪ぃっ……」

 

 痛みが収まったのかぶつかった人物を見ると、両肩を露出させ短いスカートの中華風の服とツインテールと強気な翡翠色の瞳が特徴的な小柄の少女が恨めし気に頭を抱えながらショウマを睨むと、堪らずおずおずと謝ってしまう。

 

「悪いじゃないわよ、バカショウマっ!! アンタいつまで経っても……っ!!」

「えっ……いや……お前……っ……。でも、その髪型……まさかリンか!?」

 

 烈火の如く怒りを爆発させる少女、しかも少女は自分の名を口にする。

 まさか彼女は自分を知っているのか、今までの記憶を振り返り、目の前の少女に当て嵌まる様な人物を割り出す。

 

 一人だけいた。幼馴染のような存在が。

 

「他に誰がいるのよ……。心配して損した……」

「……えっ、お前……心配してくれてたのか……?」

「なによ……悪いの……?」

 

 痛みは引いたのか、それでも涙目な少女……リンこと朱 鈴花(シュ リンファ)はポツリと呟くと、それを聞き逃さなかったショウマがそのことについて聞いてみる。

 

 記憶上のリンはいつも自分に対してツンツンしていたからだ。

 しかしリンはそっぽを向き横目でショウマを見ながら言う。紛れもなく彼女はショウマを心配していたのだ。

 しかし素直にそれを認めたリンにどうして良いのか分からないのかショウマはあたふたしている。

 

「イチャイチャしてるとこ悪いね」

「──ッ」

 

 何とも言えない空気がショウマとリンの間に流れていると、その空気を打ち消すように一人の女性の声が割って入る。

 

 聞き覚えがあるどころの騒ぎではない。

 もう二度と聞けないと思っていた敬愛する師の声だ。振り返ればそこには紛れもないフェズ・シーアが立っていた。

 

「先生……っ!」

「まったくアンタはいつまで経っても情けない声出すね。でも元気そうでなによりだよ」

 

 思わず感涙の涙を流し、声を震わせるショウマにフェズは苦笑しながらでも再会を喜ぶ気持ちは同じなのか、穏やかな表情を浮かべる。

 

「でも、先生……。どうやって生き残ったんだよ……?」

「──儂が手を伸ばしたからだ」

 

 正直、あの状況でどうフェズが生き延びたのかが気になっていた。そのことについて話を振るとフェズの背後に控えるヤマトが声をかけてきた。

 ヤマトの存在に気づいたショウマは慌てて立ち上がり、頭を下げる。ヤマトとはフェズと共にこの場に来た時に面識があった。

 

「覇王不敗流の教えの一つは諦めない限りはその手を伸すこと。リンと共にあの場にいた儂が命を散らそうとしたフェズを助ける為に手を伸ばした。それだけだ」

「大先生が……。えっ……でも、リンもあの場に……?」

 

 ヤマトの言葉にショウマはフェズを助けた存在を知る。

 なんであれフェズが生きていたことは喜ばしい。しかしヤマトがフェズと同じようにMFを所持しているのは知っているが一緒にいたというリンがパナマのあの場にどういたのかは知らない。

 まさかと思い、リンを見ると……。

 

「アタシにはアタシのMFがあるのよ。少林寺を出て、マスターの下で修行している中、マスターにアタシだけの為に作ってもらったMF……ドラゴンガンダムよっ!!」

 

 鼻を鳴らし自慢げに話すリンは指を鳴らすと、ギアナ高地の森林からオート操作でドラゴンガンダムがリンの背後に着地する。

 ヤマトはMF開発の第一人者でもあり、リンは少林寺を継いだ親を持つ人物だ。女ながらその武術の腕はフェズをも驚かせる。

 

「アンタを呼んだのもMF絡みさ。遂に出来たんだよ、アンタの為だけの力が」

「俺だけの……」

 

 ドラゴンガンダムを見上げているショウマにフェズがある方向を指さし、釣られてその方向を見るとチューリップ型のポット……ブッドキャリアーがそこにあった。

 

「ゴッドガンダム……。アタシのシャイニングを元に発展させた機体……。今、アタシ達は地球軍だコロニー軍だっていうそういう次元を超えた相手と戦っててね。ここに来るアンタを襲った奴がそうさ。アンタが襲われてる最中にアタシ達が間に合って助けられたが、まさに悪魔のような存在だ。ソイツに対抗するためにアンタにコイツを渡しておきたかったんだ。アンタの武術を力を最大限に発揮出来る機体……。抑止力の一つになれる機体だ」

「あの時の……」

 

 フェズが指を鳴らすとブッドキャリアーは展開しそこには一機のガンダムが屈んだ状態で収まっていた。

 

 このガンダムが自分の新たな力だとフェズは言う。

 自分を襲ったあの存在について思い出そうとするが、一瞬の出来事だった為、思い出せないがフェズがここまで言うのならば、相当なモノだろう。

 

「でもゴッドはアンタ用に調整したとはいえすぐに使いこなせるモンじゃない。アンタをわざわざ呼んだ理由もその一つさ。ショウマ、アンタはゴッドを自分のモノにする必要がある。アンタはMFのスーツを嫌がってたけど、もうそんなこと聞いてられ──「望むところだよ」……ほぉ」

 

 ゴッドガンダムは強大な力を秘めた機体。

 それを使いこなせなくては意味がない。

 

 ショウマが嫌がっていたMFのスーツを無理に着せるつもりだったがショウマは思いのほか、いや、寧ろ進んで実行しようとする。

 

(コイツが俺の力……。コイツを俺のモノに出来れば俺の手はどこまでも伸ばせる……。いや、掴めるんだ……。だったら……なんだって構わないッ!)

 

 前へ進み出てゴッドガンダムを見上げる。

 屈んだゴッドガンダムもこちらを見つめているような気がした。

 

 もうファイタースーツへの嫌悪感などはない。

 ショウマの瞳には力への異常とも言えるほどの渇望がギラギラと輝いていた。

 そんなショウマの首元の衣服で隠れた皮膚に薄い金属の膜のようなモノが現れ始めたことをまだ誰もショウマでさえ知らなかった……。




そんなわけで久しぶりにリンとヤマトが登場しました。いや、こんな話でもないと出すタイミングがないんですよね。予定では以前も言いましたがレーアと同じくらいの長さですので三話で収まる話になっております。

…そう言えばクリスマスでしたね。
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