機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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アフリカタワー─自分の存在─

 

「最近、噂のおヒゲちゃんかい!」

「クソッ……!」

 

 上空から飛来したAGE-2は迎撃の攻撃を掻い潜りつつ標的をDX(ダブルエックス)に絞り、二つのビームサーベルを引き抜いて襲い掛かってくるとDXもハイパービームソードを引き抜いて剣戟を結ぶ。

 

「──お前達の相手は俺達だ、隊長のところにはいかせないッ!」

「クッ……良い!?私から離れないでッ!!」

 

 AGE-2とDXの戦闘を見て、ティアが援護しようと動きだそうとするが、レンをはじめとしたF(フォース)インパルス達がその行く手を阻む。

 ティアは素早くヴェルとカガミの二人の新兵に指示を出すと迎撃に当たる。

 

 ・・・

 

(……これがお前の機体か)

「兄さん……ッ!?」

 

 一方でキュアノス隊はタクティックス隊とGN-XⅢ隊と交戦を繰り広げていた。

 ティグレが駆るアストレイ(レッドフレーム)改はすぐさまマヒロの乗るジェスタから、マヒロ特有の操作に、確信を持って襲い掛かる。

 真っ先に自分に襲い掛かって来たアストレイR改を見て、マヒロはティグレが自分だと気付いた上で襲い掛かっているのに気付く。

 

「どうした、手を抜いていては私には勝てないぞ」

「そんな……!」

 

 接触回線を通じてマヒロのジェスタに煽るように通信が入る。

 自分はあくまでスパイだ。

 だからこそ戦闘において手を抜いていた部分がある。

 それは正体を晒すようなことになったら大変だからだ。しかし目の前の兄は全力で自分に来いという。

 

「……私は本気で行く。怪我したくないなら本気で来い」

 

 アストレイR改は脚部をジェスタの股の間に入れ、そのまま足を引っ掛けて地面に叩きつけと、ガーベラストレートを抜き放ち、マヒロに氷のように冷たく言い放つ。

 

「……クッ!!」

 

 地面に倒れるジェスタに向かってガーベラストレートを振り下ろす。

 間一髪のところでマヒロはジェスタのバーニアを利用して水平に移動して距離を取ると機体を立て直す。

 

 今の行動と良い、ティグレはまさに本気なのだと悟る。

 自分は兄には敵わないかもしれないがそれでも本気で行かねば身の危険がある。マヒロはビームサーベルを引き抜いてアストレイR改に対峙するのだった。

 

 ・・・

 

 交戦する仲間たちを援護するためにブレイカーBは見通しのよい場所でスナイプをしている。

 戦況は五分五分。シーザー達がGN-XⅢ隊との交戦を援護しつつ残りのエースに対してどう対処するか考えを巡らせていると……。

 

「──ッ!」

「気付きかやがったのか……ッ!?」

 

 そこで戦場で確認したMSの数が会わないことに気付く。

 一機だけ、撃墜され、残骸を晒しているのではなく、その姿が見当たらないのだ。

 

 すると、なにかを察知したように顔を上げた翔はビームスマートガンを地面に捨て、飛び退くと自機がいた場所に無数の弾丸が降り注ぐ。

 相手を確認してみれば、アストレイR改同様にブルーフレームを改修して、生まれたガンダムアストレイ ブルーフレーム セカンドリバイが多機能型バックパックであるタクティカルアームズⅡをMS用砲台であるガトリングフォームに変え、発砲していたのだ。

 シドは誰にも悟られないように動いていたというのに、直前で気付いたブレイカーBに驚愕する。

 

「クッ……でもお前を捕らえりゃ俺も……ッ! こそこそ隠れてるお前なんざに!」

「……!」

 

 翔の存在は特殊能力を持つ存在としてコロニー軍に知られていた。

 ヴァルターをはじめとした者達が今、翔の存在を欲しがっているのだ。

 自分が翔を撃破し捕らえればタクティックス隊でも優秀なインスラ兄弟に比較され嘲笑されてきた自分の評価も変わる。

 タクティカルアームズⅡを巨大な実体剣であるソードフォームに切り替えると激しい猛攻に出るアストレイBSRにブレイカーBはその動きを一つ一つ見極めてビームサーベルで対処する。

 

「その武器……。使いこなせてない」

「──なっ!?」

 

 タクティカルアームズⅡによる攻撃を見て、目の前のアストレイBSRのパイロットがタクティカルアームズⅡを使いこなせていないことをすぐに見抜いた翔はタクティカルアームズⅡの柄を掴み、アストレイBSRの動きを止める。

 右肩部にビームサーベルを深々と突き刺し、動揺したアストレイBSRを見て、頭部に腕部ガトリングを押し当て発砲し、損傷を与えると、そのまま蹴り飛ばす。

 

「──きゃぁっ!?」

「ティア……ッ!?」

 

 翔の耳に通信越しにティアの短い悲鳴が聞こえる。

 確認すればFインパルスの部隊に圧されているXDV達の姿があった。

 ヴェルとカガミを庇いながら戦闘を続けているXDVの負担は大きく。現にレンの駆るFインパルスによって肉薄されていた。

 

「来るなぁあっ!」

「アレックッ!」

 

 次に聞こえてきたのはアレックの錯乱した声だ。

 見ればアレックのジェスタは二機のGN-XⅢからの攻撃を受け、このままでは撃墜されてしまうのは時間の問題だ。他にもブルースやシーザーも敵の波状攻撃を受け、窮地に立たされていた。

 

「クッ……!」

 

 仲間たちの危機に翔は念じるように目を閉じる。

 するとその瞬間、翔の中で感覚的に全身に何かが駆け巡る。

 

 次の瞬間にはブレイカーBの機体は赤い光に包まれていた。

 エヴェイユとしての力を解放した証だ。

 初めてフロンティアⅣでエヴェイユとして覚醒し時間が経った影響からか翔もある程度、自分の意志でエヴェイユの力を解放できるようになってた。

 

「──ッ!」

 

 脚部のホーミングミサイルを放ち、アストレイBSRの動きを牽制しつつ、ビームスマートガンを拾い上げて一気に宙に舞い上がる。

 

 目的は当然、仲間を助ける為。ビームスマートガンを構えて照準を定め……。

 

「えっ!?」

 

 一閃。

 アレックを襲っていたGN-XⅢの一機を貫き撃墜する。

 そして次々に先程のGN-XⅢを貫いたビーム程ではないが鋭いビームが敵機を次々に貫いていく。

 

「本当に人間が乗ってるのかよ、アレはッ!!」

 

 そのビームはレン達にも襲い掛かっていた。

 撃墜は避けたものの左腕に直撃を受けてしまった。

 禍々しささえも感じる赤い光を纏いながら、こちらに銃口を向けるブレイカーBはとてつもなく悍ましく感じる。

 

 ・・・

 

「厄介だな……」

 

 マヒロと戦闘をしていたティグレはこちらに向かってきたビームを二本の刀をX字に振り、弾くも自慢の刀には皹が。

 その力を目の辺りにしたティグレはやはり一番危険なのはあのガンダムだと、マヒロから標的をブレイカーBに変え、移動の際にマヒロのジェスタに小型の発信機を取り付けバーニアを吹かす。

 

「……」

 

 こちらの存在に気づいたブレイカーBはアストレイBSRを牽制しつつアストレイR改に射撃をするが、アストレイR改は機体を最小限に動かして避け続け、あっという間にブレイカーBとの距離を詰める。

 

「チッ……!」

 

 迫りくるアストレイR改にこれ以上のスナイプは意味がないと翔は再びビームスマートガンを捨て、厄介な相手が来たと舌打ちをしつつビームサーベルを引き抜いて構える。

 

「「ッ!」」

 

 両機一斉に踏み込んでビームサーベルと実体剣で斬り結びながら交差し、振り返って再び剣戟を繰り広げる。

 

「なっ!?」

 

 しかしティグレの方がその実力は上なのかブレイカーBが突き出したビームサーベルをいなしながらブレイカーBの脚部にアストレイR改の右足部を引っ掛けて転倒させる。転倒の衝撃が翔を襲うが素早くバーニアを動かし機体を起こす。

 

「強い……!」

 

 素直にそう認めるほかなかった。

 接近戦において目の前のアストレイR改に勝てる術は自分にはない。

 

 しかし黙って負けるわけにはいかないのだ。

 翔はアストレイBSRの傍に立つアストレイR改に注意を払う。

 

「邪魔するな、ティグレ!」

「……お前が邪魔だ。下がっていろ」

 

 アストレイR改のコクピットにシドからの通信が入り、苛立っているシドの文句を聞かせられるが、ティグレは意に介さず寧ろシドに対して冷たく言い放つ。

 損傷を受けたアストレイBSRといいシ、ドが目の前の機体に後れを取っているのは明らかだった。

 

「……敵の本隊か」

 

 アストレイR改の機器が反応し確認すれば、翔達を追ってきた本隊がこちらに向かって来ていた。ティグレは状況を分析し……。

 

「……退くぞ、流石に不利だ。ターゲットの捕獲は03がやるだろう」

 

 自分達は今、GN-XⅢをブレイカーBによって失い、今残っているのはジェイク隊と自分とシドだけだ。

 この状態で敵の本隊との交戦は単純に考えても不利だろうと、ティグレは全員に指示を出す。

 

「あいよっ! 全機撤退だ!」

 

 鍔迫り合いをしていたAGE-2はDXを蹴り飛ばし、その勢いを利用して、MAに変形すると、ジェイクは部下達に声をかけて飛び去ってしまう。

 

「兄さん……」

 

 マヒロは去り行くアストレイR改とアストレイBSRを見つめる。

 アストレイR改はこちらを見ることはなく、そのまま素早く撤退していくのだった……。

 

 ・・・

 

「助かりました、翔さん! やはり貴方は特別だ……!」

 

 本隊との合流後、先程の翔の援護に救われた事でアレックが機体から降りた翔に駆け寄って、その手を取って称賛する。

 

「あの光といい貴方は英雄どころか僕達にとって神──「違う」……え?」

「……俺はお前達の仲間だ。それ以上の何者でもない」

 

 翔が人間かどうかは以前から影で語られていたこと。

 それは勿論、アレックも知っている。

 そして今日見せたあの人知を超えた光はアレックは翔が人間を超えた何かだと改めて確信し、それは神の所業であると口にしようとするが、その前に翔に遮られ、ただそれだけを言ってその場から去る。

 

「……ッ」

 

 人気のない場所でふらつき、翔は機材の陰に隠れて座り込む。

 エヴェイユの力を使ったことによる反動が翔の身体を襲っていた。

 これまでも翔はエヴェイユの力を使い、その度に医務室に運ばれていた。

 それは単純に負担が大きいのだ。

 

「……俺になにか用か?」

「──ッ!」

 

 座り込んだ翔は何気なく口を開く。

 物陰に隠れていた人物はまさか自分の存在が気づかれているとは思わず、そのまま姿を現す。

 

 

「その……今日は助けていただきありがとうございました」

「……別に気にする事じゃない。自分に出来る事をしただけだ」

 

 マヒロだった。

 咄嗟に口を開き、今日のことについて礼を言うと翔は特に気にした様子もなく答え、それ以上は何も答えようとしない。二人の間に静寂が訪れる。

 

「……如月さんはなんで戦っているんですか?」

「……生きる為だ。逆にお前はなんでなんだ?」

 

 静寂が支配する空間でふとマヒロが口を開き、戦う理由を問いかける。

 その問いかけに翔は目を瞑って答え、逆にマヒロに問い返す。

 

「……僕は……親が軍人なんです。だから……」

「……同じ軍人にか」

 

 翔の問い返しに少したじろぎ、どう答えるか視線を数秒巡らせた後、マヒロは正体こそ明かさぬものの、自分がコロニー軍に入隊した理由をそのまま話す。別に翔に話したところで何かある訳ではないだろう。

 

「……はい、でもどっちかというと兄を追いかけて入ったっていう方が正しいです。兄は優秀な人です。兄と同じ軍に入り、活動していくうちに僕は兄の背中だけを追いかけて、今じゃ少しでも兄に認めて欲しいから戦ってるようなものです……。昔から僕は何をするにも兄よりも下……。何度も注意されたことはあっても褒められたことはないんです……。こんな理由で戦って……変ですかね……?」

 

 マヒロが口にしたのは、兄・ティグレへの劣等感だった。

 幼い時からそれを感じ、一度も兄に認められたことのないマヒロは今までその為だけに戦ってきた。

 

『その機体だからこそ出来たことだ。お前に出来る事をやれ』

 

 以前の軌道エレベーター攻略作戦の際も作戦終了後にティグレから言われた言葉だ。

 確かにミラージュコロイドを搭載した機体であれば自分でなくても出来たかもしれない。しかし、とマヒロはそう思ってしまうのだ。

 

「……別に理由なんてモノは人それぞれだろう。言いたいことやりたいこと、なんだってそうだ。それに対して何か言うなら兎も角、俺は否定する気はない。……認めてもらえるといいな、いつか」

 

 起き上がって尻についた土埃を払いながらマヒロにふと優し気な微笑を浮かべて答える。無意識な翔のその微笑にマヒロは光が差したかのように目を見開く。

 

「──おーい、マヒロ! 大丈夫か!」

「えっ!?」

 

 そんな二人の間にブルースの声が割って入って来る。

 二人がその方向を見ると、ブルースが手をブンブン振りながらこちらに向かって来ていた。

 

「悪いな、初陣なのにエースなんかに当てちまって」

「い、いえ……。皆さんも戦闘中でしたし」

 

 マヒロの肩に手を回して先程の戦闘について謝罪をする。

 確かにティグレと戦闘になったが、あれは寧ろティグレが自分を狙っていてあぁなっただけだ。

 

「翔もさっきはありがとな、ハグしてやるぜ」

「……止めて、暑苦しい」

 

 今度は翔に抱き着き背中に手を回すと、嫌そうな顔を浮かべる翔も本心ではないのかブルースを振り払ったりは決してしなかった。

 

「お前らこっちにいたのか」

 

 そこにグランやシーザー達がこちらに向かってくる。

 あっという間に人の輪になって盛り上がりを見せる。

 

「そう言えば聞きました? ここ最近軌道エレベーター近くの街で人が行方不明になった事件……」

「全世界でそうらしいわね、コロニー軍の核攻撃の時も何か地球に落ちて来たっていうし、本当に気味悪いわ」

 

 ヴェルが何気なく最近、話題になっている話を出すとティアが反応する。

 もっともホラー系の話は嫌いなのか両手で身体を摩って顔を引きつらせている。

 

「……如月さん、射撃について教えて欲しいのですが」

「……構わない」

 

 輪になって話しているとはいえ、やはり自分から話すようなタイプではない翔は黙っていると、いつの間にか近くに来ていたカガミがスナイプについて教えを請うと翔は短く答える。

 

「……カガミってこの中じゃ一番、翔に懐いてないか? 無口同士、感じるもんでもあんのかね」

「羨ましいものだ」

 

 その後も翔とばかり話をしているカガミを見て、グランが腕を組みながら呟くと部下から懐かれていることにシーザーが思わずその本心を呟いてしまう。

 

「なんだなんだ? 羨ましいんだったら俺がいるだろ? 存分に懐いてやるぜー!」

「止めろぉっ!!」

 

 シーザーをからかってブルースが抱き着く。

 からかわれるのが嫌なのと抱き着かれたこともあってシーザーは逃げ出そうとするが、意外にブルースの力は強くなされるがままだ。

 

「ははっ……」

 

 その光景を見て周囲が笑い、マヒロも笑みを零す。

 それは翔が感じた目だけが笑っていないのではなく純粋に笑っていた。

 軍に入って、こんな風に笑ったのは初めてかもしれない。

 

 しかし気づいてしまう。

 自分は本来、コロニー側の人間だ。

 遅かれ早かれ自分は目の前の人達を裏切る。

 翔に至ってはその身柄を拘束しようというのだ。

 

 今、この場で彼らと共に笑った自分がとてつもなく醜い存在に感じる。

 マヒロの笑みは自嘲の笑みへと変わった。

 

 そしてマヒロの考え通り、その時は早く来る。

 そう、キュアノス隊に言い渡された軌道エレベーター近くの居住区奪還任務の際に……。




ガンダムブレイカー3の公式サイトを見ているとキャラクターの部分に書かれているロボ太の存在が気になって仕方がないです。だって松本さんですし
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